【タイトル】28
【 名前 】仮想戦記@コミケット
【 日付 】2000/08/22 04:28:00

二千年十二月二十八日午後十一時五十三分 

有明ビッグサイト 

「嫌な感じだな・・・雨でも降りそうだ・・・」 
飯野健一は呟いた。 
「オイ聞いたかよ。準備会の連中、徹夜組は実力排除するなんて言ってるらしいぜ」 
隣の男が言った。飯野は彼のことを知らない。ここで会ったばかりの男だ。 
「そいつは大変だな」 
「ケケケ、準備会の連中どもなんかに俺達が排除できるわけねえのによお、ケケケ」 
転売屋だと言うその男は、裾がすり切れたケミカルウォッシュに紺のトレーナー、その上にダッフルコートを着ている。 
ファッションは学校で教えるべきだ。飯野はそう思った。 

同午後十一時五十五分 

TFT屋上 

「状況は?」 
「千人強といったところです」 
「予定通りか。しかし、なんだな」 
「はい」 
「最後くらいは、しっかりと終わりたかったな」 
「同感です」 
「作戦開始は0000」 
「はい」
.
【タイトル】29
【 名前 】仮想戦記@コミケット
【 日付 】2000/08/22 04:40:02

二千年十二月二十九日午前九時十八分 

水上バス後部座席 

人混みを極端に嫌う日野一郎は、どちらかと言えばコミケットは嫌いだ。 
昼過ぎに来るのもそのためだ。本当のところ来たくないのだが、彼には 
目的があった。 
「だからね、コミケットは大きくなりすぎたと思うんだ。そして準備会 
の連中にはそれを統率できるだけの能力がなかったんだ」 
彼の隣の席に座る男が、奇妙なTシャツを着た男と喋っていた。大きく 
www.2ch.netと書いてある。 
「ふうん」 
奇妙なTシャツを着た男は、興味がなさそうに言った。 
「だからね、僕からいわせればね」 
やれやれ。辛抱強いこった。日野は思った。
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【タイトル】31
【 名前 】仮想戦記@コミケット
【 日付 】2000/08/22 04:46

二千年十二月二十九日午前八時二分 

有明ビッグサイト内 サークル「Cut a dush」前 

「販売停止・・?!」 
「そうだ」 
「どういうことですか?!」 
「どうもこうもない。荷物をまとめてさっさと出ていってくれ」 
「イヤです!絶対に!」 
「あまり手を煩わせないで欲しいんだがね」 
「だって、いきなりそんなこと言われたって、無理に決まってる 
じゃないですか!今回は三万ですよ!?」 
「・・・やれ」 
銃声。 
「本は中央に集めておけ」 
足音。悲鳴。また銃声。
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【タイトル】34
【 名前 】仮想戦記@コミケット
【 日付 】2000/08/22 04:59

二千年十二月二十八日午後十一時三十五分 

オマエモナ準備会事務局 
「兵隊は?」 
「集められるだけ集めました。スターフ内、ギコバッジ組より二百三名、モナバッジ組より 
二十二名です」 
「足りん。田中バッジも連れてこい」 
「た、田中をですか?!」 
「そうだ。今回は今までで一番激しい戦いになる」 
「わ、わかりました!」 
机に脚を投げ出し、男は天井をじっと見つめる。 
「やるしかない。そうだろ?」 
自分に言い聞かせるようにいう。 
「やるしか、ないんだ。俺に残された道は、それしかないんだから」
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