8月4日
『血まみれ屋敷』のオフ会。その内容に関しては地下掲示板などにも報告があるのでそちらを参照してほしい。12時に東大赤門前に集合だったのだが、地下鉄に乗ってるときからイチに出会う垣原みたいにアドレナリンが全開になっていた。かんぴさんとあまり鍵ネタの話ができなかったのが残念だが、カラオケも熱く、地上最大の名にしおう凄まじいオフ会であった。
8月5日
疲労を回復させて、昼から帰郷を開始する。まず大学の研究室の後輩たちと会う約束をしていたので、かつてのホームグラウンド、阪急石橋駅へと向かう。
待ち合わせまで時間があったので、駅前のアルケミックスに寄ってみる。ゲームとマンガに特化した、マニアックな店だ。
花右京メイド隊フェアをやっていた。既刊のメイド隊3巻とともに、もりしげのエロマンガ家時代の作品集である『子供の森』『子供の森・完結編』が平積みで置いてあった。
いつもそうだった。
この店は、大学に入って一人暮しを始めた私に、いつもダメな買い物をさせてくれた。『ToHeart』も、『Kanonビジュアルファンブック』も、『QOH』も、私が欲しいとおぼろに思っていたときに店に行けば、いつも置いてあった。そして私が大阪を離れた今も、「もりしげのエロマンガを読んでみたい」という私のおぼろな欲望に応え、2秒で見つかるところに置いてくれていた。『遊戯王』とかの隣に。私は興奮と感動でいっぱいになりながら、もりしげのエロマンガを購入した。
後輩たちとは「研究室の景気の悪い話」をしながら酒を飲んだ。そのあとカラオケに行ったら、昨日のオフ会では入っていなかった堀江由衣の『Love Destiny』が入っていたので歌った。みんな引いていた。後輩の家で寝かせてもらう。
8月6日
大学の先生に挨拶をして、夕方に実家に帰ることにした。当然、途中で日本橋に立ち寄る。恵比寿町の出口をあがると、目の前に『とらのあな日本橋店』のでっかいビルが出来ていた。ここ数年の日本橋は、裏通りに『ゲーマーズ』や『とらのあな難波店』が進出し、秋葉原に匹敵する暗黒都市化が進んでいたが、堺筋の表通りに堂々とオレンジ色のビルを見せつけられると、さすがに暗澹とした気持ちにならざるを得なかった。店内に妙に余裕があるのもなんとも嫌なものだった。とりあえずコメットさん本などを適当にみつくろって、帰りのゲーマーズで『おジャ魔女DX』を一回だけ挑戦して、近鉄電車で実家に帰った。
8月7日
実家でおとつい買った『子供の森』を読む。私がもりしげにこだわっていたのは、後日川崎で合流する福岡の友人(以下、将軍)が突然『花右京メイド隊』のDVD全巻を買ったというからだ。テレビ神奈川の第1話で挫折した以外、メイド隊との接触を何一つ持ったことのない私は、後学のために噂に聞く「昔のもりしげ」を読んでみたかったのだ。
凄いマンガだった。誘拐、監禁、強姦、調教。幼女の陵辱ならなんでもありだ。解説にもあったが、ペドフィリアというものはそもそもサディスティックな欲望を裏に含んでいるのである。我々が『おんぷちゃん萌え』とか言っているのは、その裏の感情に気付いていないか、あるいは気付いていても隠しているだけなのである。人間の心の奥の欲望を、読者が嫌な気分になるのも厭わずに抉り出していたもりしげ。そして、そんな負の遺産を抱えながら、全くそのまんまの名前で月刊チャンピオンに連載しているもりしげ。もりしげという人は、すごく正直で、誠実な人なのだ。
「こんな人の描くメイド隊が、面白くないワケがない」。私は確信したのだった。
8月8日
私の実家は掛け値なしで田舎なもので、何にもない。とりあえず1日何もせずにゆっくりした。
8月9日
実家への滞在は2日間だけで、昼から川崎へ戻る。夕方に将軍が羽田に到着する予定なので、その前に部屋を開けておかなければならないからだ。近鉄特急に乗る前に名張駅でチャンピオンを買う。『バキ』がどのページも面白くって面白くってしょうがない。名古屋では『しゅーまっは』の2巻を買った。まはの投入で一気にメジャー萌えマンガ家の階段を駆け上がった伯林。巻末マンガなどはまごう事ない萌えマンガの闘い方だ。
7時ごろに川崎の寮へ戻って、撮り溜めておいた刃牙やシスプリやフルバなどを観ていると、将軍が尋常じゃない量の荷物を抱えて到着する。CD−RWや外付けHDを交えたノートパソコン一式と、私に譲渡してくれるために持ってきてくれたPS1と、DVD上映用のPS2を抱えているのだ。
ということで、『花右京メイド隊』の上映会が始まる。私は第1話で挫折してしまったこのアニメだが、将軍が絶賛するだけあって、EDさえすっ飛ばせば納得の内容である。とくにシンシアの「ハァーッ、ハァーッ」という息だけのセリフは実に新鮮であった。全12話の上映が終わったときには、すでに『花右京メイド隊の歌』を口ずさんでいた。
8月10日
起床後、将軍が福岡で買えなかったという『花右京メイド隊スペシャルファンブック』を手に入れるために、小杉駅前を案内した。この将軍も元来、メイド隊をバカにしていた人間で、5月に私が第1回のビデオを見せたときも酷評して止まなかったのだが、人間変われば変わるものである。
内容は、キャラのプロフィール紹介にもりしげの書き下ろし番外編も入っていて、なかなかお得なものであった。幼いときのコノヱさんは『子供の森』で陵辱されている子供と全く同じ表情をしていたので「やっぱり、もりしげはすごい」と感動した。声優たちのコスプレグラビアもあったが、マリエル役たちのコスプレは「3色の秘密」の3人に比べてはるかに綺麗だと、将軍が感心していた。当初あれだけ酷評しながら今になって声優まで褒め出すのはどうか、と思ったが、少なくとも私も同意見だった。
夕方になって、将軍は『はちみつくまさん』のオフに参加するため上野へ行った。一人残った私のほうはもうすることがないので、もう一度メイド隊のDVDを見てから寝た。
8月11日
朝になって将軍が帰ってきた。はちくまオフでの戦利品をいくつか見せてもらい、また上映会が行われたという『ONE』OVAの感想も聞いた。どうやら将軍はすさまじい衝撃を受けたようだった。
昼まで将軍を寝かせて、午後から秋葉原へ向かう。京浜東北線に乗っていると、祭りから戻ってきた戦士たちの姿が目立ち始める。秋葉原は大きな紙袋を抱えた連中でごった返していた。とりあえずK−BOOKSでひとつめの目的であったもりしげの『蹂躙』を買って、その後あきばおーなどを案内する。
夕食を食べながら、将軍に決断をしてもらう。「夏コミ3日目に行くかどうか」である。お互いいい歳で、疲れが溜まりやすい体になっているので、コミケはこれまでずっと静観の構えだったのだ。将軍の決断は「せっかく東京へ来たのだから、見ておこう」だった。これでまとまった私たちは、とらのあなでカタログを買い、あと私の方はソフマップでPS版『シスタープリンセス』を買って帰った。
帰ってからは二人してサークルチェックを行う。お互いかなりのレベルに達している人間であるが、コミケに参加するのは初めてである。結局まるで遠足の前の日の子供のように、3時前まで電話帳のようなカタログを引いていた。
ちなみにもりしげの『蹂躙』であるが、これも『子供の森』に輪をかけてとんでもないマンガだった。『花右京メイド隊』のプロトタイプとも言える『マリエルのメイドさん日記』というのがあるのだが、これはシンシアがマリエルを肉奴隷として調教するマンガ。マリエルは現在とは違う色黒のメガネっ娘であるのに対して、シンシアはそのまんまシンシア(むしろグレース)だ。鬼畜キャラをそのまんま萌えマンガに登場させるもりしげはすごい。それから、テロリストが小学校の教室を占領して女子を一人ずつ犯していく『学校占領』は、今ならどの商業誌も掲載してくれまい。
8月12日
将軍が起きないので、私は一人で日曜朝のゴールデンを観る。結局将軍が動き出したのは『デジモン』が始まったくらいだった。つまり完全に出遅れている。いまさらジタバタしてもしょうがないので、『コメットさん』が始まるくらいまでゆっくりして、それからJR南武線に乗りこむ。川崎駅で雨が降り出したが、浜松町で降りたときにはやんでいた。そこから日の出桟橋に向かい、欲望の島行きの船に乗る。
船は200人程度の定員に数十人程度しか乗っていなかった。初参加の二人は、この時間に出たのは実は正解だったのではないかと、互いにほくそ笑む。船着場から降りて移動すると、ビックサイトの横に出る。この位置からだと、確かに入場者の流れは止んでいないものの、人数は大したこと無いように見える。将軍は余裕の表情でタバコを吹かし、その後ゆっくりと行列の最後尾があるであろうエレベーターの下へ行ったのだが。
!!
ビッグサイト入口下の広場に並ぶ人の群れは、私たちの目にとって衝撃的だった。なんたって十万単位の人間を一度に見るなんて初めてだからだ。まさか開場後90分で依然行列がはけてないとは。二人は呆然としながら数百メートル後ろの行列最後尾に並ぶ。私たちはここで初めて、始発でやってくる人間の考え方を納得できた。
入場してからも大変だ。A館は、想像を絶する広大な売り場。油断してたら、ちゃっちゃか歩く将軍をすぐ見失ってしまう。ドジっ子だ。将軍は六道神士の本を手に入れるため、そのスペースへ向かっていたのだが、外に向かって並ぶ行列を見て愕然とする。あまりの見通しの甘さを痛感する将軍。将軍の行きたいサークルは、だいたいそういう所だったのだ。私はとりあえず八神健のサークルでななかのラフ集の入手に成功した。
B館へ移動する。私たちの前を歩いていたのは、テトムのコスプレをした姉ちゃんだった。そのコスプレ選択の濃さに感動しながら、人波に従う。
B館の将軍の目的はメイド隊本を買うことにあったのだが、その途中で私はすごい電波と遭遇する。「スルットちゃん本」だ。私も大阪にいた頃、東北のえここに対抗してスルットちゃんをメジャーにしたいとは思っていたのだが、同じ考えをもって、それをしっかり実行に移している人に出会えて感動した。やはりこういう予定外の出会いをするのも、コミケの醍醐味というものなのであろう。
将軍が目的の本を手に入れたので、タイムリミットを設けて解散した。お互い行きたい場所が別々になったからだ。私は八犬伝関係の本を探しに西館2の歴史ブースへ向かう。人波でごった返していたほかの場所に比べて、こちらははるかに落ち着いた空気が流れていた、というよりか淀んでいた。目的だった『四天王剿盗異録(してんのうしょうとういろく)』は売りきれていて前編しか買えなかったのは残念だが、なんとも濃い世界を探検することができた。
その後、企業ブースおよびコスプレスペースに向かう。移動方法はエスカレーターのみで、なんだか人がごった返していてどうしたものかわからなかったが、スタッフが管理しないうちにもなんとなく行列ができていて、日本人の行列づくりの上手さに感心した。
コスプレスペースはまさに異世界であった。中国のTV局の人たちが大騒ぎしながら歩いていたが、確かにそうだろう。納得できるものや、それはちょっと無いんじゃないかというものもあったが、例えばシスプリのコスプレでも、コスプレの出来なんかよりも12人をきっちり揃えたということ自体に素直に感動してしまうものである。たとえ、数人男が混じっていたとしてもだ。
2時45分に船着場で将軍と再合流した。ずいぶん帰り時間を早めに設定していたのだが、それでも船は1本待たなくてはならなかった。将軍は少し不満なようだったが、後ろに並び始めた人の列を見て、納得したようだった。
帰ったら二人とも疲労が溜まっていたので、早速寝た。結局5時間近く眠って、そのあと食事をして、また寝た。
8月13日
夏休み最終日。今思えば、会社が与えてくれたこの月曜日の休みというのは、まさにコミケ疲れを癒すためにあったのだと言える。起き出した将軍は、自分のノートではちくまオフの戦利品である『MilkyWay』を、私は将軍から譲渡されたPSで、シスプリを始める。お互い困った状況だ。
将軍が見てる手前、逃げるわけにはいけないので「貴之お兄様」でプレイを始める。ど本名。将軍はメイド隊などを認めても、シスプリだけは認められないようで、亞里亞の電波っぷりや四葉のチェキっぷりを大いに嘲笑していた。もちろん私も同じ目的のためにこのゲームを買ったつもりだったのだが、いつの間にか衛が可愛くてたまらなくなっていた。怖いものである。
午後になって、将軍が帰り支度を始める。PS2や衣類の類は宅急便にして、ノート一式を手荷物にして帰る。それでも存分に重かった。将軍が帰ったあと、散らかった部屋を掃除していたら、PS2のリモコンが発見された。咲耶シナリオはあちこちに手を出していたので、血縁のまま終わってしまった。