AIR
卑怯な手口

待たされる

 正直に言うと、私は最初「AIR」にあまり期待していなかった。「ONE」「Kanon」と、エロゲ界のルールさえ変えてしまったあまりにも偉大な作品を二つも連続で送り出してきたKeyのスタッフ。そのシナリオはすでに「Kanon」で行き着くところまで行き着いたのではないか、そう考えていた。「AIR」は「Kanon」を越えられないだろう、だけどこれまでの業績をたたえ、どんなゲームでもきっちり受け止めてやろう、そう思っていたのだ。ところが発売2週間ほど前になって突然告げられた延期の知らせ。そしてあれよあれよという間に発売日は9月8日まで延びてしまった。覚悟をしていながら、それを透かされたくやしさ。私の気持ちはいつしか「これでクソゲだったらただじゃおかねえぞ」というものに変化して、AIRに対する期待は知らぬうちに高められていた。9月になって店から入荷の連絡が入ったとき、私は駆け出していた。

エラーが出る

 まず霧島佳乃のシナリオに流れた。解いたときの印象は、「やっぱりKanonは越えられないのか?」というものだった。彼女については、HPの画像ででっかいバンダナをみたときから、大体の予想がついていただけに、そこに至るまでの流れがどうも唐突すぎてあまり納得がいかなかったのだ。友人にその旨を報告すると、「いや、驚くから続きをやれ」ということだった。友人は私より1日後に買ったのだが、18時間ぶっつづけでやって完全に解いてしまったらしい。観鈴シナリオをやったら、えらいところで中途半端な痛い終わり方をした。とりあえず観鈴はほうっておいて遠野美凪シナリオをやる。
 ところが、ここで問題が発覚した。蝉しぐれなどのSEが入ったときに、ゲームの応答が止まってしまうことがあるのだ。佳乃と観鈴のシナリオが普通に解けたのは、単に偶然止まらなかっただけなのだ。その旨友人に聞いてみたが、彼のマシンではそんなことはないという。おそらくQOHで起こったパッドの暴走と同じような、私のパソコンのへぼさによるものなのだろう。美凪シナリオはそれが顕著で、しかも一番ショッキングなシーンの直後で止まるため、痛い思いを何度もする羽目になってしまった。

やられたっ!

 美凪シナリオはすごかった。泣きまくった。お母さんの話には弱いのだ。そしてエンディングを迎えて、サウンドモードでその余韻を楽しもうとタイトルに戻ったとき、驚いた。導かれるままにそれを選択すると、もっとびっくり。なんだこの展開、聞いてない! そしてそれが終わったら、さらに次の展開が。夜8時から始めて、すでに朝になっていた。でも止められなかった。
 そこから先はあまりにもとんでもない展開だった。泣かせよう、泣かせようとシナリオがどんどん攻めかかってくる。率直に言うとあざとい。でも私は泣かされる。だまされやすい性質なのだ。もうエロゲじゃない、恋愛ゲームでもない、さらにゲームですらもない。そしてラスト……卑怯です、卑怯すぎます。思い出しただけでも泣けてくる。

概要とお気に入りキャラ

 とにかくこのスタッフの伝統として、エロシーンが淡白だ(MOON.は良いが)。そのうえテーマが恋愛ですらなく、しかも最終盤は選択肢皆無で、ゲームでもない。これを非難する人たちもいるが、私は違うと考える。抜かせる代わりに泣かせるのだ。モニターの前でちんちんの先をティッシュで拭いているのと、モニターの前で涙と鼻水を流してティッシュで拭いているのとには、何の変わりがあるだろうか? まさにそういうゲームである(まあ、泣けないというのなら仕方ないが)。
 お気に入りのキャラは霧島佳乃である。発売前情報を見てたときから、あの手首に巻かれたでかいバンダナの下を想像して勝手に悲しんでいた。だから初めて解いた印象がイマイチだったのには残念だったが、それが2回目を解いてみると、一気に印象が変わった。最初唐突だと思っていた展開に、AIR全般に流れている伏線の全てが含まれていたのだ。二度三度解いたらわかるその深さ。見事なものである。

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