刃牙とギャルゲー
このHPのこんな場所まで入ってきて、知らないという人はよもやいないとは思うが、「グラップラー刃牙」「バキ」というのは、板垣恵介作・秋田書店刊の格闘マンガのことである。地上最強の男を目指す範馬刃牙という少年が、地下闘技場最強トーナメントに優勝するまでを描いたのが「グラップラー刃牙」で、現在もその続編である「バキ」が、週刊少年チャンピオン誌上で連載されている。現在は深夜枠ではあるがアニメ化もされているので、知らない人がいれば「男だったら読んでみな!」と強要したくなるくらい、たいへん熱いマンガである。
ところが実は、我々刃牙ファンにとって現在の「バキ」は、非常に初心者に薦めにくい状況にある。何故なら死刑囚編に入ってから、ストーリーが完全に壊れてしまっているからだ。両膝を破壊された男が元気に歩き回ったり、いきなりラブコメが挿入されたり、すっかり生死の忘れられてるキャラがいたりと、本当に初心者に読んでもらって楽しんでもらえるかどうか、心配な内容である。
かといって、我々刃牙ファンは、今の「バキ」に魅力がなくなったと思っているわけではない。我々は刃牙の本質がストーリーでないことを知っているからだ。我々は破綻したストーリーにいいように振りまわされながらも、独歩とか烈とかの濃い燃えるキャラが、燃えるセリフを吐きながらメチャクチャに動きまわっているのを見るだけで、それでもう満足なのだ。(当然、限度というものもあるが)
ここへ来て突然、ひとつの事実に突き当たった。
我々刃牙ファンにおけるこの「バキ」の楽しみ方というのは、ギャルゲーファンにおけるギャルゲーの楽しみ方と一緒ではないか、ということである。
ギャルゲー、特にキャラゲーと分類されるゲームの本質は、ストーリーやゲーム性ではない(もちろん、限度というものはあるが)。巧みにデザインされた萌えるキャラが、萌えるセリフをしゃべりながら動いているのを見るだけで、十分に満足することができる。そしてこの楽しみ方が、一般人に容易に薦められるものではないことは、我々自身が良く知っている。つまり、刃牙とギャルゲーというのは、「燃え」と「萌え」をシンプルに入れ替えるだけで、全く同じ内容のことが言えてしまうのである。
こうなると、刃牙サイトに(我々を含めた)ギャルゲーファンが多いことにも納得がいく。結局、刃牙ファンとギャルゲーファンの求めているものが、源流において同じであったからだ。ムチャクチャな展開にもだえながらも、極限まで高められたキャラの破壊力によって、自らの内に秘めた脳内麻薬を噴出させる、これが刃牙とギャルゲーの共通の魅力なのである。