Kanon
モラル・ハザード
ONEよりすごいゲームがある
私はつねづね「しろはた」というHPを愛読していて、そこのレビューで「ToHeart」や「ONE」を分析して、「ゲーマーがこの手のゲームに求めるものが、エロから恋愛、そしてトラウマ癒しと移って、ついにはエロすらはじき出され始めた」、という理論を展開していたので、なるほどと納得しながら読んでいたのですが、そこで「Kanon」についても取り扱っていました。内容は「Kanonで泣けない奴は人間じゃない!」と翼賛する肯定派と、「あんなの記憶障害の男が幽霊やキ○ガイをナンパするだけやがな、エロ増やせ」と身も蓋もないことを言う否定派とが討論するという、ネタばれ全開の仮想対談だったのですが、この話で私が知ったのは、「ONE」のテーマをさらに展開したゲームが、同じスタッフによって作られているという事実でした。私はさっそくそのことを友人に打電しました。友人は「いや、ONEを越えるゲームはそうそうないだろう」と半信半疑だったのですが、その後、社会人の経済力にものを言わせて買ったらしく、次の連絡では「すごい、すごい」と言い続けていました。
やってはいけないこと
とはいえ、ONEさえスペック不足で買えなかった私に、その続編(正確にはそうではないが)であるKanonを買えるはずもありません。もどかしく思っていると、折から「Kanon全年齢対象版」が出るという情報が入ってきました。ONEの時代から別に必要ないと言われてきたエロシーンをカットし、追加CGを加えた全年齢版。近所のゲーム屋でそのパッケージを眺めていて、私はひとつのアイディアを思いつきました。「全年齢対象なら特に問題ないよな…」
そうです、うちのノートより遥かにグレードが上の、学校の研究室のパソコンでやることを思いついたのです。
身も心もKanonに
もっとも、さすがにみんながいる衆人環境でギャルゲーをできるほどの雄度があるわけではありません。私は生活スタイルを変えました。10時に寝て、4時に起きる。そして誰もいない研究室に乗り込み、学校が動き出す8時ごろまでKanonをやる。折から季節は真冬。もっとも温度の下がる時間帯、時には小雪すら舞う街を、ただひとり学校へと向かう。ときには徹夜で仕事をしている同僚がいて、はよ帰れと心の中で叫びながらばつが悪いので私も仕事をする。そんな生活自体がKanonの舞台とシンクロして、私は実生活さえKanonに支配されていました。
概要とお気に入りキャラ
7年ぶりに暮らすことになった町で、思い出の女の子たちと再会し、封印されていた記憶を取り戻していくゲーム。「ONE」からそうですが、シナリオに綺麗な音楽があいまって、ボロボロ泣けます。
お気に入りのキャラは美坂栞です。病弱・薄幸というベタベタなキャラだし、その割にはやたらと元気なので最初のほうはツッコミまくってましたが、それでも後半になると見事に泣かせてくれます。
あと泣いたといえば真琴シナリオです。キャラ的には好きじゃないのですが、もの凄く痛い。終盤の秋子さんとのやり取りは、「うっ」ときます。
かように泣けるKanonですが、しかしKanonが一番すごいのは、キャラの使ってる口癖が生活の中に浸透してしまうということです。
「南君、仕事頼めるかな?」「了承」
「…そういや、あの仕事やってくれた?」「うぐぅっ…」
使いやすいことこの上ありません。以前まで自分がどういう受け答えをしていたかさえ定かでないほど、定着してしまいました。とくに「うぐぅ」はあゆ萌えでもそうでない人も、ひとりごとでも人に対しても気軽に使える、画期的口癖だといえるでしょう。