(前回まで)
ついに準決勝。
ゴールデンゴール方式でここまで勝ちあがってきたあゆ。
しかし、上には上がいた!
「うぐっ、な、なんのマネだよ!」
「あゆちゃん・・・どうか・・・」
大観衆がざわめく。
なんと、みさきはてらいもなく、土下座を
「うう、視覚障害者を哀れんで・・・どうか・・・」
「キ、キミは、こうやって優勝するつもりなのっ」
「うん♪」
しかし、その時
見えないはずのみさきの瞳が、怪しく光る。
「・・・とみせかけて〜 みさきアターーック!」
ごんっ
『おーっと、みさき先輩。壁に激突〜! いったいなにがしたかったんだー』
大量の出血で、顔を朱に染めて
倒れるみさき
「うう・・・ひどいよぉ、あゆちゃん・・・避けるなんて」
「よけてない、よけてない」
予想外の結末に、観客はいっせいにブーイング。
「ひど〜い、あゆちゃん」
「目が見えない先輩に、なんてことを」
「ボ、ボクのせい?」
一瞬の隙…
「甘いですわ」
控え室でモニターを見ていた、秋子の呟き。
「ふふ…」
それを見逃すほど、川名みさきは甘くはないっ
「祐一くん、タオルちょうだい」
「あゆ! まだ勝負はついちゃいねぇ」
「うぐ?」
セコンドの祐一の警告に、慌てて振りかえろうとするあゆ。
だが…
「かかったね♪」
「うぐぐ…ひきょうもの」
背後から、抱きかかえられるようにチョークを決められ
身動きひとつできない。
「審判も誰も見ちゃいないんだよ」
「うぐぐ…い、意味がわからないよぉ!」
そのエゲツなさに驚愕する、七瀬。
「な、なんてセコイの」
「…セコイ?」
秋子は、いつもの微笑のまま
ジャムの瓶を取り出し
「格闘はね…このジャムのように…甘くないのもあるのよ」
みさきの責めは続く。
苦悶のあゆに、ゆっくりと顔を近づけ
「うふふ、かわいいあゆちゃん」
「ひぃぃ」
頬にふきかかる、生暖かい吐息。
おぞましさに、背筋が凍る。
「見かけはお嬢様、でもね」
そのまま腰を落とし、あゆの頭を脇で抱きかかえ
「この技は、見かけだけの技じゃないよ♪」
「っ! うぐぐぅ〜」
途端に、あゆの悲鳴が
会場を震わせる。
「うぐぅ〜、臭いよぉ〜」
「どう? 秘儀、ワキガ固め!」
ワキガ固め…黒木薫が編み出したという伝説の技。
腋毛に繁殖した雑菌が、脂質を腐食させ生み出す悪臭は、ヒロインのイメージをも打ち砕く。
「あゆ、しっかりしろっ」
「うぐぅ〜、祐一くーん、たすけてよぉ」
「だ、大丈夫! 大丈夫だ! なにせおまえは…」
祐一は、一呼吸おいて…
「おまえの顔には、鼻がないっ」
「あ、あるよぉ〜!」
(つづく?)
・次回予告
遂に目覚める月宮の血。
「ありがと…ありがとう…みさきさん」
「な、なに!」
流れる涙は、なにを意味するのか!?
次回“グラップラーあゆ!”――『恐怖のマッハ頭突き』にレリーズっ
記念すべき頂きものSS第一弾は、
キャラを壊させたら日本一の雀バル雀さん!
みさき先輩、ホントにお嬢様なところが見かけだけしかなくなってるし…
というわけで外道みさき先輩や苦労人あゆのSSをもっと読みたい方は、
さっそく雀バルさんのHP(雀のお宿です!)にGO!