グラップラーあゆ!
〜裏葉 VS 美坂香里〜   作:忌呪さん

「彼女もまたヒロインなり」

 法術本家・裏葉 VS 美坂流奇跡・美坂香里


  控え室

「法術は初めてですかな、月宮殿」
「えぇ、まぁ」
 一回戦第七試合、旧知の仲である美坂香里の対戦相手、『法術本家・裏葉』の控え室をあゆは尋ねていた。
「裏葉殿がこれから試合前のウオームアップをするそうです…… なかなか見応えがありますぞ」
『法術』……
 それはあゆ達Kanon系のキャラがよく使用する『奇跡』とも、Moon系のキャラが使用する『不可視の力』とも大系を異とする。
 裏葉の師である『知徳法師』の話を聞きながら、あゆは目の前で法衣に着替えている最中の裏葉を見つめていた。

 澄んだ大気のようなその気配。
 凛とした顔からは、開会式の時に見かけたような天然お姉さん系ヒロインの片鱗すら伺い知ることは出来ない。

(うぐぅ……この人、強い……)
 幾多の美少女達と死闘を繰り広げてきたあゆには、裏葉の力が手に取るようにわかった。
 かつて自分と闘った頃のままなら、美坂香里には万に一つも勝ち目はないだろう。

「数年前から、彼女は試合以外には防具を付けないのですよ」
 着装した三人の屈強な僧侶(イメージ映像・ハート様、チャン=コーハン、サムソン)に対し、あくまで涼しげな態度をとる裏葉。

「ぶふぅ〜っ!!」
 北斗○拳すら通用しそうにない肉の壁に覆われた巨体が、裏葉の小さな体を押し潰そうとする!

 ……しかし……


 メキョオッ!!


「タハベラッ!!?」
 いつの間にかデブの背後に回った裏葉が手を触れただけでデブの巨体は醜く歪み、吹き飛ばされた!

「『不動金剛力』、ですな」
 呆然とするあゆの横で、知徳法師のうんちくが始まる。
「過去、この技を得意とするキャラが他ジャンルで活躍してることは貴女もご存じでしょう。うし○と○らの秋葉流殿、孔○王の王仁丸殿…… いずれもトップクラスの実力を有している」
(うぐぅ、王仁丸さんのは呪禁道息吹永世だった気が……)
「しかし、拙僧の知る限り裏葉ほどの不動金剛力の使い手はまだ現れていない……」

 そうこうしてる間に、二人目の髭面が鉄球を振り回して裏葉に襲いかかる!
 と同時に、再び高速で髭面の背後にまで移動する裏葉。
 気付いたときには、髭は宙を舞っていた。

「兄きぃっ!!」
 間髪を入れず最後の一人が不気味なにやけ面をひっさげて、裏葉に向かって筋肉を見せつける!
 クルクルと回転しながら、頭のてっぺんにある穴より弾を連射する筋肉!
 だが、それすらも裏葉の法術の前には徒労に終わった……

「拙僧達はのぉ、月宮殿」
 裏葉の放った光覇明宗最強単独降魔捨法・月輪を喰らって両断される筋肉を眺めながら、知徳法師は滔々と話し始めた。
「あぁいう戦い方を千年もやってきている」
「昨今、ギャルゲー業界もエロ主体からシナリオ主体に変わりはじめたようだが……」
「我々は積み重ねてきた千年に自負があります」
「たとえば……」
「過去編一つとっても他のしょぼいゲームを制した事実を見てわかる程度にのぉ……」
 内蔵をぶちまけ、異臭を放つ三つの死体が片づけられてゆく脇で、出もしない汗を拭う裏葉。
「美坂香里殿だったかね、確か……」
 不意に香里の名を出され、そのことが気になりながらも裏葉から目を離せないあゆ。
「十七歳の名脇役、大層な裏人気らしいが、もし裏葉殿がそのような輩に不覚をとるようであれば……」
「それは裏葉殿本人の負けでも、日本法術の敗けでもない、いわばヒロインそのものの敗北と言っても差し支えないでしょうな」
「なぜなら、シナリオに則していようがいまいがHシーンがある、それこそがヒロインなのだから」 

(大丈夫かな……美坂さん……)
 圧倒的な裏葉の力の前に、あゆは不安を隠しきれなかった……



 美坂香里の控え室


 ……ゴク、ゴク、ゴク……
 ドロリ濃厚・アボガド味を飲み干す香里。
(う、うぐぅ……大きい、四年前より……)
 胸を前方に突きだしたその姿勢だと、バストのラインが余計に強調される。
「今のお姉ちゃんはあのころとは違いますよ」
「栞ちゃん……」
 飲んだが最後、多古西応援団並の肺活量がなければ飲み干すことは不可能と言われるドロリ濃厚を一気飲みする香里。
 その勇姿のなんと心強いことか。
「調子良さそうだね、美坂さん」
 あゆのミトン手が香里に差し出される。
「うぐぅ、応援してるよ」
 だが……


 バシィッ!


 差し出された友情のシェークハンドを振り払う香里。
「戦争よ……」
「この大会はあなた達正規のヒロインと、あぶれ者である私との意地の張り合い……」
 そう言って、あゆと栞を振り返ることなく闘場へと闊歩してゆく香里の背中に、あゆは確かに修羅を見た気がした。



 闘場


『現れました!! 伝説の脇役、美坂香里です!!』
「反則はアダルトな行為のみ、他、一切ありません」

「み・さ・かーっ!!」
「見れるんだ、美坂香里のバトルがッッ」
 ざわめく観客席。
『同人ルールでのみ磨き抜かれた脇役の妙ッ 過去編SUMMERでヒロインをはった相手にどこまで通用するのかッッッ』


「地鳴りですね、まるで……」
「みんな、期待してるんですよ。伝説のお姉ちゃんがどんなギャルッぷりなのか……」

 その時、裏葉が何かを取り出した。
「これをお使い下さいませ」
『こ、これはたまげた!!! お、お手玉、お手玉です!!!』


「あ…… あの人、埋められちゃいますよ」
「うぐぅ…… ボクもそう思う……」


「悪いことは言いません、言うとおりになさいませ」
『伝説の脇役を相手取り天然なこの挑発!!!』
 ニコニコと笑みを絶やさぬ裏葉。
 どうやら本気らしい。
『恐るべし、裏葉!!! 恐るべし過去編ヒロインの余裕!!!』
『さァ この申し出にどう応える脇役ッッ』

 ポ〜ン

『こッ』

 ポ〜ンポ〜ン

『これはッ』

 ポンポンポンポン……シャシャシャシャシャシャシャッ!!!

『これは雄弁な応え方だーッ』
『凄まじいスピードでお手玉が宙を舞って……というか、見えないーッ!!!』
『一体本気で部活は何をやってるんだッ!? 美坂香里、謎が多すぎるぅッ!!!』

『しかし、この荒技に対し裏葉いささかの動揺も見せませんッッ』
『この女、挑発ではなく本気でお手玉がしたかっただけなのかもしれませんッ』

 その時、お手玉をやり終えた香里が担いできたサンドバッグから何かを取り出した。

『!!!!』
 もぞもぞと這い出す、それは……

『で、出たーッ 美坂香里と言えばこれ!! 必携の相棒、北川潤だァアッ』
 よろよろと這い出してくる北川を裏葉へと差し出す香里。
 しかし、ずっとあの中にいたのだろうか?
『なんと、此奴を使って初めて私と貴女は対等なのよとのデモンストレーション』
『さァ裏葉、どう応える!!!』
 裏葉の細くしなやかな手が北川へと伸び、そして……
『!!!』
『つ、掴んだッ! 裏葉が北川君の襟首を掴みましたッ!!』

 ポイッ

『捨て……』


 メキゴシャアッ!!!


『な、ぶん殴った!!!!』
『一枚絵もなく、そして表情もろくに変わらずと言われた北川潤を拳一発で叩き潰したのです!!!』
 北川潤、出番終了。長い間応援ありがとうございました!

「両者もとの位置ッッ」
『さァーッ 両嬢並び立たず、血戦の時が来た!!』


「うぐぅ、美坂さん……」
「勝ってよ!!」
 あゆの激励。


「ヒロインのなんたるかを知らしめるには絶好の手合いです」
「私もそう思います」
 余裕の裏葉。


「始めぃっ!!!」


 開始早々香里のスーパービンタが火を噴く。
 しかし、大振りなそれは裏葉には掠りもしない!

 ビュッ!

 ドゴォッ!!

 裏葉の金剛力のこもった拳が香里の土手っ腹を貫く!!

 反撃を試みる香里に対し……

 メチィッ!!

 更にもう一発!

 並の少女ならこの二発で勝負が決まっていただろう。
 しかし、北川を瞬殺した拳を二度も喰らっても香里は怯もうともしない。


「うぐぅ…… 女の子のお腹はあんまり殴っちゃいけないんだよ」
「良い子のみなさんは真似しないで下さいね。真似なんかする人、嫌いです」


 そんな中、香里のアッパー気味に放った掌打が裏葉の体を捉え……たかに見えた……が!
 
「あ……足で受けたッッ」
 そのまま空中で宙返りし、着地する裏葉。
「すっげぇ運動神経」

 着地して再び香里に向かって突進しようとするが……

「!!」

 何故かずっこけてしまう裏葉。

「え……?」

 場内がざわめく。

『こ、これはッ!!』
『裏葉の、裏葉の帯がほどけているぅッ!!!? 一体いつの間にやったんだ美坂香里ィッ!!!!』


「見せてあげるわ……」

 なんとか防御姿勢をとろうとする裏葉。

「脇役と蔑まれてきた者の……」

 しかし、脱げかかった法衣が邪魔で姿勢がままならない。

「ギャルメンツ!」

 
 バシィッ!!!!!


 ついに裏葉の頬を捉える香里のビンタ。
 更に往復!!

「あんッ! い、いたッ!」

 それでも止まらない。


「うぐぅ…… 痛そう……」
「よっぽど腹に据えかねてたみたいですね…… あんなお姉ちゃん見るの、久しぶりです」


「うぅ…… すみません…… 参りました……」


「勝負ありっ!!!」


「……」


「が、がお……」
「へん…… すごいもん見たさの観客が、声も出せへんなんてな……」


 その時、突然闘場へ躍り出た人物がいた。

「あ、あの人!」

 知徳法師だった。

「非常識は百も承知です…… この場で拙僧と立ち合ってもらいたい!」

 法師を止めようとする小坊主達を制する香里。

「彼女もいない寂しい独り身の男性を慰めるのがヒロインの存在意義なればこそ、君のようなHシーンもない脇役がこのような大会で勝利するのを我々は見過ごすわけには行かぬのです」
「このまま君を試合場から出すことは日本ヒロイン界の名折れなのだ」
「さぁ、拙僧と立ち合うのです、美坂香里ッ」

「……やってることはたかがギャルゲーよ…… シナリオも何も無いものだわ」
 いきり立つ知徳法師に対し、静かに語り出す香里。
「犯りたい人は犯りたいときに犯ればいい。犯られるほうはいつだって脱げばいい」
「ギャルゲーって、そういうものじゃない?」

「私達脇役も、いつだって準備は出来てるわ…… いつだって隠しシナリオを用意してくれてかまわない」

「放課後の教室でも、真夜中の屋上でも……」

「そ、そこまでの覚悟か、脇役……ッッ」
 知徳法師の両手が力無く下がる。


「ヒロインだ」


 担架で運ばれていく裏葉のもとへと無言で近づく香里。
「私の脱衣術がもう少し甘かったら、きっと逆だったわ……」
「ヒロインやらせておくには惜しい人ね」


「美坂香里…… もし正規のヒロインであったなら…… 確実に日本ギャルゲー界の歴史を塗り替えていた……」



 かくして、伝統派ヒロインと脇役の対決は終わった……

(つづく)


忌呪さんコメント:
「どうだったでしょう?
 なんとなく突発的に思い浮かんだものですからいまいちだった気がしますが……
 ネタはまだまだあるんで、良ければまた近いうちに投稿させてもらうかもしれません。
 川口茂美ちゃんも活躍させたいですし(笑)
 ではっ!」

忌呪さんのSSあるいはオリジナル小説を読みたい方は、
「黒色彗星帝国」へGO!
それから、
川口茂美をいじめていいのは私だけだっ!
……取り乱してスマなかった…


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