グラップラーあゆ!
〜達人登場〜   作:雀バル雀さん

『言わせてもらうぞぉぉ』

アナウンサーが、マイクをかけて絶叫。
あいかわらず、ノリがいい。

『秋子さんは保護されているっ!』

観客がざわめく。
ちっと舌ウチをして、頬を歪める美坂香里。

「あの人…ダブー中のダブーに、ふれちゃった」

そんな呟きなど介せず、演説は続く。

『よく考えてみろぉ、あんなでかい娘がいるんだぞ、いったい幾つだぁ、若いってツラしてんじゃねぇ!』

会場のざわめきが、さらに大きくなる。
アナウンサーは、満足そうに一呼吸おいて

『我々は秋子さんに甘い。なぜ、どの同人でも“無敵な奥さん”なんだぁ! 40過ぎのオバンに、あそこまでのさばらせていいと思ってるのかぁ。――このバトルにおいて、秋子さんという“聖域”の、その真価が問われるのだっ』

そのころ、玄武の控え…

「…美凪…」
「どうしたの、チルチル?」
「うん…」

みちるは、不満そうに呟いた。

「だってぇ…あのおばさん、みちるとの年齢差は、5倍はありそうだもの…いいのかな」
「みちる、いい?」

美凪はみちるの肩を掴むと
その大きな瞳を、覗き込んで

「じゃあ、あなたは、2歳児におばさん呼ばわりされたら、どうする?」
「…えっと…コロス」
「でしょう?」

にっこりと微笑んで

「…遠慮なく。バシバシ」
「うん♪」

ふたりでガッツ。
意気込みは十分。手を繋いで、ゆっくりと歩み出す。


――戦場へ。




一方、白虎の方角は…

「あらあら、あゆちゃんがセコンドについてくれるなんて」
「秋子さん…」

あゆは、心配そうに

「主催者も意地が悪いよ。――遠野みちるって言ったら、今大会最年少の選手じゃない。ボク、心配で…」
「あ、あゆちゃんっ」

あわてて、その口を封じようとする名雪。
秋子は、それを制して

「いいのよ、名雪」
「おかあさ…あだだっ」

それ以上続けられなかった。
名雪は、捻られた手をおさえて、のたうちまわる。

「うぎゃあ! 手、手がっ」

そして、あゆの血の気を引いた頬を、ゆっくりとなで

「あ、秋子さ…」
「そのうち、あゆちゃんと当たるかもしれませんもの。ふふ」

謎の微笑みを残し、試合場へ歩き出す。
その背中を、あゆたちは黙って見送ることしか、できなかった。

選手控え室――


「いいわね、あの水瀬秋子という女…よく見ておきなさい」
「うん」

モニターを見ながら、美坂香里は
側に立つ妹に促す。

「どちらが勝つにせよ――面白いものが見られるわ」




幾多の血を吸いこんだ場所に降り立つ
2人の戦士。

「武器の使用一切を、認めます」

ついに、試合開始!
運命のゴングが鳴るっ

「はじめっ!」



    グラップラーあゆ!


      〜達人VS子供〜




「いくよっ」
「はい、おてやわらかに」
「うん♪」

元気よく挨拶。
――とみせかけて、いきなりタックルをかます。
さすがいまどきの子供。要領がいい
 
「とりゃあ!」

おもいっきりのいい突撃。
軽量とはいえ、みぞおちに食らえば大人でも辛い。

『遠野選手いきなりっ! このスピードは高齢者にはキツイかぁー!』

だが、秋子はあっさりとかわしてみせる。
最小限の動きで、さらに足を残して

「にょわっ」

どさりっ

バランスを崩して倒れるみちる。

「うう…ひきょうものぉ…」
「ごめんなさいね。つい」

余裕の笑み。
それが、みちるのプライドをくすぐった。

「こんどはにげるなぁ!」
「まあ」

前転で勢いをつけてのぶちかまし。
先ほどとは比べ物にならないほどの、威力とスピード。
秋子は、今度は避けようとせずに

「あら、あんなところにボケモンカードが」
「え? どこどこ?」

示す先には、たしかにカードが落ちていた。
みちるは試合そっちのけで、とんでゆく。


『いつのまにー! というか、やっぱり子供だー!』


それが隙を生む――
わけではない

「なーんて、“ボケモン”じゃなくて“ポケモン”だよ、おば…」
「あら、そうなんですか」

フェイントにあえてのってみせたみちる。
だが、予想した進路に、秋子はいない。

「みちるっ、後ろですっ」
「にゅ、にょあ!」

美凪のアドバイスも虚しく
先ほどとは比べ物にならないほどの加速で、背後にまわると

「ほぃ」
「うにゅっ…うひゃひゃひゃ」

脇に手を入れられ
防ごうにも、体を掴まれて逃げられない。


『なんとぉー! くすぐり攻撃だぁ〜!』

子供の弱点など、とうにお見とおしとでも言わんばかりに――
やがて、笑いもだえの末、ぐったりと崩れる。

「う、うにゅ…」
「さーて、かっこよくきめさせてもらいますわ」

容のよい唇が歪む。

『おっとー、秋子さんがジャムを取り出したぁー! どこに隠してたんだぁ』
「ふふ、秘密です」

指ですくって、だらりと開いたみちるの口に…

「ほい♪」
「!」

途端に、もだえ苦しみはじめる。
それも、尋常な苦しみではない。

「にょおお〜」
「だめですよ、好き嫌いは」

口を房がれ、吐き出すことさえできない。

「これだけ食べたら…ドロドロでしょうね」
「ううう〜、美凪た…」

やがて、白めをむいて、意識を失った。

「み、みちる…」
「勝負ありっ! タンカをっ!」

その瞬間、声を失った観客が
一斉に総立ち。


『強すぎ…強すぎるぞ秋子さぁぁん』


わああああああ〜。

割れんばかりの歓声――


「え、エゲツないよ…」

あゆはただ、あまりの強さに
そう形容するしかなかった。

「とどめは忘れないんだよ、あの人は」
「うぐぅ」


   (次回へっ!)


雀バル雀さんコメント:
「つーことで、トーナメント表無視して
 またやっちゃいました(^^;
 ではでは」
ということですが、もう無茶苦茶面白いんで好きなように無視しまくってください!
雀バルさんの作品をもっと楽しみたい方は、
さっそく雀バルさんのHP(雀のお宿です!)にGO!

二次創作置き場へ
「グラあゆ!」indexへ

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル