グラップラーあゆ!
〜倉田佐祐理 VS 名倉由依〜   作:雀バル雀さん


数多の激闘が繰り広げられてきた、地下闘技場。
更に生贄を欲するかのように
血は熱く滾り、咆哮が木霊する。


玄武の控え…

「…由依…」
「おねえちゃん」

交わす言葉は少ない。
茨の道を歩く姉妹。その先に待つのは、生か…それとも…

「今日ね、わたしの誕生日だから」
「わかったわ♪」

薄幸のヒロイン同士とはいえ、扱いの差は歴然。
人気は…その倍。
勝ち目は、薄い――

由里は、笑って

「祝勝会の準備も、ついでにしとくわ」
「残念会にならないといいね」
「あんた次第よ」
「あはは…」

覚悟を決めて、一歩を踏み出す。
懐の凶器を、確かめつつ

「こういうのが…オイシイんですよね」

まばゆいライトが、戦士を照らす。
その先に立つのは、直立不動・天下御免のお嬢様。
 
 
 第3試合――

 倉田佐祐理 VS 名倉由依


  〜異色対決 その1〜


(数日前――)

「どうしても、行くのか?」
「ごめんなさい…おとうさま」

倉田家の居間。
深々と頭を垂れる娘に、父親はやさしく語りかける。

「おまえ…まだ一弥のことを…」
「おとうさま」

きっぱりと、父を見つめ返す。
強い光を湛え、射抜くかのように

「佐祐理こそ…ヒロインですから」

鋼鉄の意志。
己を晒すことで、自分に打ち勝つために…
佐祐理は、ここに立った。

「武器の使用、一切を認めます」

張り詰めた空気が震え
両者に戦いの刻を告げる

「よろしく」
「あははー、いつでもどうぞ」

微笑み会う両者。
だが、片時とて、視線は相手から逸れることはない。
互いに隙を探り合う。

『おっとー! 先に動いたのは由依選手っ』

機先を制し、リーチを埋めるべく、一瞬で懐に飛びこむ。
たが、佐祐理は慌てず、冷静に対処。

「あははー!」

弧の軌道を描いて
右手が由依の顎を、正確に打ちぬく。

バチィィン

小気味よい音が響く。
さらに、張り手の連打連打連打!

「あははー! そらそら〜」
「きゃあ」


乾いた表土に、由依の鼻血が紅い溜まりをつくる。
ダメージは大きくなる一方。

「すごーい。おかあさん、すごいね」

客席で戦況を見つめる神尾親子。
観鈴は身を乗り出して、食い入るように観戦
興奮を隠しきれない娘の様子に、あきれながら

「わからんでぇ、あのねーちゃん、なにか狙ってはるで」

由依の瞳は、まだ死んでない。
懐の膨らみに、視線を落し

「これでとどめですよー!」
(いまっ!)

その時、二人の間合いが
ほんのわずか、開いた。
伸びきった佐祐理の腕を手繰り寄せ

「やぁーっ!」


ぐさっ!


『おおおっとぉー! 名倉選手の懐から刃物がぁー! これは危険だぁ』


右手には、血が滴る銀色の凶器。
的確に、手首を切り裂いた。

「……ふぇ」

呆けたように、自らの傷をじっと見入る佐祐理。
血が腕を伝い、制服を汚す。

惨状に静まり返る会場。
審判がドクターストップの判断を、考慮しはじめた。

そのころ、控え室…

「あゆ…あの戦法、どう思う?」
「うぐ?」

たいやきを頬張るのに夢中で、画面から目を離していたあゆ。
あわてて注意を向け、様子を把握すると、一言。

「手首を切るってネタは、もう飽き飽きだよ」
「またか、って感じだよなぁ」


はたして、佐祐理は――

「…あはは…あはははっ」
「え」

狂ったように、笑いはじめた。
さも、おかしそうに

「知らなかったの? バターナイフじゃ人は殺せないのよ」
「え、ええ!」

慌てて手元を見る。
たしかにそれは、パン用のバターナイフ。

「どうしてっ! ちゃんとカッターナイ…」
「それに」

気付いた時、由依は空中にいた。
頬には猛烈な激痛。
張り飛ばされたのに気付いたのは、さらに数秒後…

「あわわ」
「それにね。もっと深ーく切らないと」
「ひぃぃ」

引きずり起され、とっくに戦意を喪失した由依。
その顔を覗き混む、満面の笑顔

「…佐祐理のしゃべり方…」

いつもの“敬語”は消えている。
親友の勝利を確信した舞は、モニターに背を向けた。

『高々ーぁと吊り上げた、この技はぁ〜』

逆さまになった世界。
迫る地面に、背筋が凍る。

「寺尾がまだ若かったころ、無謀にも千代の富士に正面からぶつかっていったの。結果、どうなったと思う?」
「し、知りません…」

残酷な響き。
佐祐理はにやりと、頬を歪めて

「こうなったの!」

声と同時に
体重を乗せた投げが、炸裂。


ぐしゃりっ


ひしゃげた音。
もう、勝負は決まっていた。


『しょ、勝負ありぃぃぃ!』

激闘の余韻の残る観客席。

「強いね」
「立ち業最強は、案外あのおじょーかもしれへんで」
「にはは…」

観鈴は心の奥で
次戦の相手でないことを祈った。


そのころ、医務室――

「……すまないな、名倉くん」

聖はあたりに誰もいないことを覗うと
カッターナイフをロッカーにほおりこみ、ガチャリとカギをかけた。

「佳乃が興奮すると、いけないからな」


    (おわり)


         <次回予告!>

新たなるトラウマを抱えこんでしまった由依は、祝福の夢に戯れる。
黄昏の敗者と栄光の勝者。
次なるカードは舞VS繭――最後に笑うのはどっちだ!

次回グラップラーあゆ! 『番狂わせ』にれりーーずっ!


雀バル雀さんコメント:
「すんません(笑)
 またやってしまいました。
 しかも、今回はあんまり(^^;
 次回予告も嘘ばっか(笑)
 では〜」

てなわけで、
雀バルさんの作品をもっと楽しみたい方は、
さっそく雀バルさんのHP(雀のお宿です!)をチェックだ!

二次創作置き場へ
「グラあゆ!」indexへ

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!