NEW GRAPPLER AYU
IN SEARCH OF STORONGEST UGOO
あゆ! (グラップラーあゆ 第二部)
「強者への執念」
作:かんぴさん
〜これまでのあらすじ〜
「現在(いま)のあたしは、水瀬名雪にだって勝てるんだよぉ!!!」
最凶私刑宗との闘いへの電撃参戦を宣言した、仮免魔法少女“霧島佳乃”
対する私刑宗は、超絶☆甘党少女“里村茜”
「夏場所優勝を目指すあたしが、倒れた相手に襲いかかることはないんだよぉ。
何度でも何度でも起き上がり続ける限りは倒し続けちゃうんだから。
でも、それも終わったようだねぇ〜」
ダウンした茜の起き上がりを狙ったハメ攻撃で、まさかの優勢の佳乃。
「キミの肉体には、もう反撃の体力は残ってないみたいだねぇ。
秘密兵器はワッフルかな? それともタイヤキかなぁ?」
倒れた茜に近づく佳乃。しかしヨロヨロと動いた茜の左腕が佳乃に向けられた。
その手には缶ビールが握られている。
『射程距離……』
缶ビールの意図に気付く、実況&驚き役の詩子。
プシュ―――――ッッ
あらかじめ臨海寸前まで振っておいた缶ビールは、
炭酸の勢いでロケットパンチが如く発射され、佳乃の顎にクリーンヒットッ!!
もちろん茜は、自身にビールがブチまけられたことなどは気にも留めていない。
「おいしいです…」
顔にかかったビールを舐めながら呟く茜。
ちょっともったいなかったとは、思ったようだ。
ガキッ
佳乃は外れた顎を、姉の見よう見まねでムリヤリはめ直す。
そして再び四股を踏み、迎撃体勢をとり直す。
対する茜は、全身の至る処から、包丁、フライパン、泡立て器、フライ返し、ボール、カセット式コンロ等々、
様々な調理器具を取り出して佳乃に迫る。
『どんなに迅く動いても、なにを使っても、あらゆる格闘技の中でも最速を誇る、
相撲のブチカマシが先に届くんだよぉ』
四股を踏んで迎撃体勢を取りながら、佳乃は心の中で呟く。
わずかでも茜が攻撃の『起こり』を見せたら、必殺の双手突きをくらわせるつもりだ。
しかし… 茜は佳乃の間合いに入りながら、ぴくりとも動こうとしない。
焦る佳乃。だが、ようやく茜の右腕がゆっくりと動き始める。
「どすこーいっ!!」
その瞬間を佳乃は逃さない。怒涛のツッパリが茜に迫る。
その佳乃に対し、茜はどこからともなく取り出した紙袋の中身をぶちまける。
舞い上がる白い粉塵。茜が取り出したのは家庭用薄力粉だった。
同時に茜の身を隠すが如く、銀色に光る円形の物体が現れる。
それは耐火使用を施された、茜愛用の傘だった。
「メリケン粉っ? 粉塵爆破っ? 特命リサーチで見たっけっ?」
混乱する佳乃が最後に観たものは、足元で光るカセット式コンロの炎だった。
チュド――――――ンッ
部屋の壁をブチ破るほどの大爆破に直撃し、半死半生の佳乃。
一方この粉塵爆破の張本人は、特性耐火使用の傘のおかげで、最小限のダメージで済んでいた。
「これがヒロイン同士の闘いと呼べるの?」
と言いつつ、しっかり爆破の直前、ソファーの陰に身を伏せて、同じく最小限のダメージで済んだ詩子。
「詩子、だったらどういうのが
ヒロイン同士の闘いなのですか?」
逆に詩子に問いかける茜。
詩子の脳裏に浮かぶ、これまでのヒロイン達の闘い。
・
・
「秘儀、ワキガ固め!」
「これが、『奇跡』だよっ」
『愚・礼志の舞』
「人間ナイヤガラ!!!」
「あの姿こそ、あゆちゃんの最強モード、シャイニングモードです」
・
・
…回を重ねるごとに無茶苦茶を通り越して、微妙になっていくヒロイン達の闘い…。
ルールなし!
それこそがただひとつのルールである「グラあゆ」にとって、詩子の疑問は、何を今更な話だった。
「うーん、やっぱりイチゴサンデーはおいしいよー」
所変わって、ここは百花屋。
大好物のイチゴサンデーをたいらげ、水瀬名雪は至福の時を過ごしていた。
その名雪の傍らを、バケツが如き容器に盛り付けられた巨大なパフェを運ぶ、百花屋のウエィトレスが通り過ぎる。
百花屋名物、ジャンボミックスパフェデラックスである。
「お待たせしました」
「へぇー、すごいね、あの人。ジャンボミックスパフェデラックスを一人で食べるんだ」
ジャンボミックスパフェデラックスは、奥のテーブルの客に運びこまれる。
後姿しか解らないが、テーブルに座っているのは、名雪より少し年下の少女のようだった。
しかし…
デカッ
「大きい………… 90cm…… いや100cm… それ以上……」
後ろ姿からでもハッキリわかるほど、少女の胸は大きい…イヤ、巨大だった。
…それは乳房と呼ぶには、あまりに大き過ぎた。
その通常のヒロインの限界を遥かに超えたサイズに、名雪は思わず見入ってしまう。
その時、突然少女が席を立つ。
たっぷん
「空!! ジャンボミックスパフェデラックスが、ものの10秒で!!!」
ジャンボミックスパフェデラックスの容器は既に空になっていた。
わたしの胃袋は宇宙だよ“川名みさき”に匹敵する、フードファイトだった。
驚愕する名雪。その名雪の前に、少女が近づいてくる。
巨大なバストが、少女の歩みにつられて左右に揺れる。
たっぷんたっぷん
「お久し振りです、名雪さん。東京ドーム地下スタジアムのトーナメント以来でしょうか?」
「あなたは……… もしかして美坂栞ちゃん!!? 別人だよっ! まるでっっ」
驚愕している名雪に対し、栞は微笑みながら、いつもの右人差指で口を押えたポーズをとる。
そのわずかな動きにつられて、今度は上下に揺れる胸元。
ユッサユッサ
『し…おり……ちゃん? 体格が全然違うよっ!! なにより胸が…… 20cm…… いや30cm……!?
別人!? 3人目の姉妹!? でもわたしのこと知ってるし……
パット……… 天使のブラ………? そ、そんなハズないよ』
「それでは名雪さん、今日のはこれで失礼します」
たっぷんたっぷんたっぷん
名雪に挨拶を終え、再び胸を左右に揺らしながら、栞は去っていく。
萌えキャラにおいて、バストのサイズは重要な要因(ファクター)を占める。
水瀬の血を受け継ぐ名雪が、よもやバストのサイズの見誤ろうわけもなく、
80未満の手の平サイズがこの短期間で、100cmを超える大容量になるなどということが果たして………
「適切な処置ではないでしょうか。この病院に運ばれた妹は幸運でした」
Kanonの各シナリオでお馴染みのあの病院。
その集中治療室で、里村茜との闘いで瀕死の重傷を負った霧島佳乃が、昏睡状態で眠っていた。
佳乃を見つめる実の姉、ヒマヒマドクターK“霧島聖”
佳乃重傷の悲報を聞き、取るモノも取らずにこの街へ来たのだ。
もちろん霧島診療所は、白い毛玉“ぽてと”が留守番中。
「爆発物の使用による決着…… 通常のヒロイン同士の闘いだというならば、良し悪しの判定は議論を待たない。
しかし――― 佳乃が自ら踏み込んだこれは――――
萌えなどという、生易しいものではない」
「おいしいです〜」
たっぷんたっぷん
病院内の軽食堂、19杯目のバニラアイスを食べながら、美坂栞は目を細める。
その席の向かいでは、霧島聖がお茶を啜っていた。
「奇跡だな。脂肪注入法の効果がこれほど顕著に現れた例は世界空前だろう。
しかも――― 一年に満たぬ時間で32cm…………!!」
脂肪注入法
脂肪吸引の技術を応用、太腿や腹部等の痩身と同時に、吸引した自分の脂肪を用いてバストアップを図る。
脂肪吸引と同時に行うので、プロポーションバランスを改善するという意味において、まさに一石二鳥の手術といえる。
しかし、吸引するような脂肪など最初から存在しない栞が、聖に希望した脂肪注入法とは、
毎日百個を超えるバニラアイスの摂取による脂肪の確保という非常識であった。
「生理食塩水等、人体に副作用のないバッグ(人工乳腺)があるにも関わらず、
あの苦しみと引き換えにさらなる高みを…。
美坂栞君、まさに君だけの発想だ」
感心とも呆然ともつかない表情で語りかける聖に、栞はまた胸を揺らしながら答える。
ユッサユッサ
「妹キャラ同士のよしみというワケではありませんが………
私が聖さんの仇を打つことになるんでしょうね」
たっぷんたっぷんたっぷん
最凶私刑囚との闘いに新(ニュー)しおりん参戦!!
戦況はさらに混沌としていくのだった。
チンッ
『な…』
『なんて…………』
『偶然(です)(だよ)』
デパートのエレベーター内で対峙する、水瀬名雪と里村茜。
名雪は時計屋の紙袋を抱き抱え、茜は手さげの紙袋を持っていた。
『買物帰りの二人が――』
『偶然出会ったということだね』
「…こういう偶然もあるワケですね」
しばしの沈黙の後、茜が口を開く。
「出会ったが最後、闘争開始の約束になっている私達ですが―――
こんな場所ではそうもいきませんね」
「わたしはOKだよ」
名雪の意外な返答に、キョトンとする茜。
同時にエレベーターは1階に到着、二人は揃って降りる。
「このまま別れるワケにもいきませんし、
かと言ってこの場でザクザク開始めるのも」
「わたしはOKだよ」
再び沈黙して対峙する二人。
ほどなく茜が表情をゆるめて呟く。
「ワッフルでも食べませんか?」
「蜂蜜練乳ワッフルです」
再び百花屋、ウエィトレスが茜が注文したワッフルを運んでくる。
「乾杯はできませんね」
ワッフルを口に運ぶ茜。
名雪も一口かじってみると… 想像を絶する甘味が口の中に拡がる。
思わず少し顔が歪んでしまう。
「私の故郷のワッフルです。
甘味が強めですが、慣れるにつれてヤミツキになります」
…本当にそうだろうか?
「霧島佳乃ちゃんを相手に、爆薬を使ったらしいね」
名雪が茜に問いかける。
「正確には薄力粉を使った粉塵爆破ですが…
卑怯(アンフェア)と言いたいのですか?」
逆に問い返す茜、名雪はワッフルを一息に呑み込んで答える。
「わたしは全然OKだよー」
名雪の答えを聞いた茜は、さりげなく皿の上のワッフルを数枚手に取る。
相手の口に複数の蜂蜜練乳ワッフルを一気に押し込んで、味覚と呼吸を同時に破壊する必殺の奇襲だ。
だが…
「……………………ッ」
一瞬早く茜の口に投げこまれる、赤いゲル状の物体が入った小瓶。
奇襲には奇襲、名雪が水瀬家特製イチゴジャムを茜の口に投げ入れたのだ。
これは「試合」ではない!! 名雪の非情な決意表明だった。
「な…る…ほ…ど…ですね。目には目を…、歯には……ッ は…ッッ!?」
必死に口から小瓶を出した茜の前には、残りの蜂蜜練乳ワッフルを皿ごと持った名雪がいた。
名雪は茜の口に皿の上のワッフルを一気に押し込む。
食味に関しては無限のキャパシティを誇る茜だが、食事の量とスピードに関しては平均以下、
大量のワッフルに食道が対処しきれず、思わずのたうちまわる。
対する名雪は慌てず厨房へ向かい、紅茶をポットごと持ってくる。
茜に紅茶を飲ませて、口内と食道のワッフルを胃袋に流し込ませる。
「コホッ、コホッ」
窒息の憂き目は去ったものの、まだセキ篭っている茜。
追撃の手を弛めない名雪は、カーデーガンのボタンを外し左右に開く。
カーデガンの内側には、色とりどりのジャムの小瓶が備えられていた。
もちろん、あの危険なオレンジ色なヤツも混じってたりする。
名雪はジャムの小瓶を取り出すと、矢継ぎ早に茜の口へ投げ込んでいく。
今度はジャムで溢れる茜の口内。たまらず茜は店外へ脱出する。
逃げる茜に、名雪は水瀬家特製手打ち麺を投げつける。
手打ち麺が足に絡まり、茜は地面に倒れてしまう。
地面に座り込んだ茜の前に立つ名雪。茜は名雪の顔目がけて、顔に付いたジャムを飛ばす。
名雪の顔にジャムがかかる。しかしそんなことには全く動じず、名雪は叫ぶ!!
「あなたは水瀬家を嘗めたんだお――っっっ」
『料理をやらせてもわたしの方が上、水瀬家が上なんだよっ』
と言わんばかりに、名雪の水瀬流調理殺法は続く。
手打ち麺をさらに絡み付かせて茜の動きを封じた名雪は、背中から愛用の包丁を取り出す。
包丁をふるい茜の迫る名雪、斬撃の刹那、茜はわずかに体をずらして直撃を避ける。
同時に手打ち麺が断たれ緊縛が解ける。茜は再び逃走する。
『敗北? 負けるのですか? 私が!?』
逃走しながら茜は家庭用薄力粉を取り出し、地面に叩きつける。
薄力粉の煙幕で、名雪は茜を見失う。
地面を見ると、マンホールが人が入れるぐらいズレている
名雪がマンホールの中を覗き込んだその瞬間!
背後から近づいた茜は、名雪の口に小瓶を突っ込む。
先程、名雪が投擲したジャム瓶の不発弾の一つだった。
「ばぼー(だおー)」
すかさず茜にバックスイングを放つ名雪。
名雪のバックスイングを避ける茜。だが名雪の攻撃は停まらない。
零距離からの連続マッハ頭突き! 正中線に連撃を喰らい、茜は再び座り込む。
「いけません… 慌ててジャムを間違えてしまいました」
茜の手に残るオレンジ色のジャムの瓶、
名雪の口に入っているのは赤いイチゴジャムの瓶、
これでは敵に塩を送ったようなものである。
「準備してないから、あれもダメです…」
『これが……敗北…… 負けるのですか、この私が』
「いくよ――」
茜に向かい、凪、陸上でいうクラウチングスタートの構えをとる名雪。
『マッハ頭突き』に、天沢郁未の『クラウチングスタート』の要素を付加した新奥義、
陸上部の部長たる名雪だからこそできた『名雪砲(カノン)』の構えである。
「どうしました? あと一歩です。
そこからスタートするだけで、勝敗は決まるのですよ」
「もう決定だよ。逆転の可能性は果てしなく皆無なんだよ」
茜の挑発に乗らず、冷静に答える名雪。しかし茜は不敵な表情で立ち上がる。
「学習能力がありませんね。
そうやって最後の詰めを誤り、取り返しのつかない敗北を喫した仲間を見てきたのに」
名雪に向かって投げつける、本日二袋目の家庭用薄力粉!
続いて特製防火仕様傘にカセット式コンロ、佳乃を倒した粉塵爆破コンボである。
チュド――――――ンッ
再び起こる大爆破。
しかし爆炎が去ったとき、茜の目の前に名雪の姿はなかった。
驚く茜の頭上に名雪が現れる。その手には長さ数mはある棒が。
名雪はこの棒を使い、棒高跳びの要領で粉塵爆破から逃れたのだった。
「な、名雪さん、その棒は…?」
驚く茜は、思わず名雪に問いかける。
「棒高跳びで使う、グラスファイバーのポールだよ――」
「どこから出したのですか、そんなモノ…」
「わたし、陸上部の部長さんだから」
理由になっていない。
しかしそんなことは全く気にしない名雪、
グラス・ポールで茜を打つ! 打つ! 打つ! 打つ!
「どっちが勝ったのかはね」
名雪はポールを捨て、大ダメージの茜目がけて、再びクラウチングスタートの構えをとる。
「わたしが判定するよー」
茜に向かってスタートを切ろうとする名雪。
だがその時!
プスッ
突如、名雪の背中に突き刺さる注射器。静脈に正体不明の薬が注入されていく。
同時に糸のように細くなっていく名雪の眼。
その背後に巨大な二つの影が揺れる。
たっぷん
「くー」
そのまま熟睡して、影にもたれかかる名雪。
名雪の顔が二つの影の谷間に埋まる。
ムニュッ
二つの影…突然の乱入者は、眠っている名雪をビルの壁にもたらかせ、時計屋の紙袋を抱かせてやった。
「だれですか?」
予想外の乱入者に茜は問いかける。
すると乱入者は、茜に手さげの紙袋を投げ渡して答える。
はずみで、影…巨大な胸が上下に揺れる。
ユッサユッサ
「忘れものですよ。あっ、私のこと覚えてますか? 栞、美坂栞です。」
たっぷんたっぷん
『み、美坂栞さん!? で、でも、なんであんなに胸が…」
「私はあなたの敵なんですよ。でも今日の所はもう帰ってもらっていいですね。
元気になったら私と遊びましょう。その時はアイスクリームも込みで(はーと)」
たっぷんたっぷんたっぷん
呆然と立ち尽くす茜を背に、栞は111cmのバストを揺らしながら去っていく。
なんと新(ニュー)しおりんに救われた茜。
だがこれは、新たなる死闘の幕開けに過ぎないのだった
たっぷんたっぷんたっぷんたっぷん
(つづく…?)
<次回予告>
「結構いいカラダしてやがるな、こいつ」
名雪が体をまさぐられている!? ついにグラあゆも18禁に突入か!?
「…わたしを警護してくれたというの?」
何故!? 茜、見事な「夾客立ち」!?
「15mまでだったら、問題ないよー」
「二人だと、さすがに沈むよ――――」
名雪、茜を背負って、水の上を奔る、奔る!?
次回『奔走(はしる)よー』
ピュアピュアドリーム、でっかく、そーだてっ!!
(つづく)
久しぶりの「あゆ!」投稿ということで、かんぴさんには感謝です。
原作とともに先の見えない闘いを続けているヒロインたちですが、
板垣先生ともどもいったいこれからどこへ行くのでしょうか?
ニューしおりんの活躍に期待して…いいんっすか?