グラップラーあゆ!
 AYUΩ   作:かんぴさん




〜これまでのあらすじ〜


ついに向かえたメインヒロイン対決、月宮あゆ VS 長森瑞佳。
KEYとタクティクス、『Kanon』と『ONE』、久弥と麻枝、ドジッ娘と完璧 超人、本家うぐぅと元祖うぐぅ、
なにからなにまで対照的なメインヒロイン二人が、今、地下闘技場で激突するッ!!

「うー、わたしのときのキャッチコピーと似てるよー」

先の闘いで名雪を秒殺した『八匹のファンネル(別名:見えない猫じゃらし)』の前に苦戦するあゆ。
しかし、うっかり落としたタイヤキに、子猫達の注意がそれたその瞬間。

「うぐぅ〜。タイヤキ落としちゃった…」
「あゆ! お前まで気をそらしてるんじゃない!!」

とにかく一瞬の隙を突いて、あゆの食い逃げダッシュからのタックルが瑞佳に炸裂。
闘技場の柵まで、吹っ飛ばされる瑞佳。
勝負ありかと思えたその時… 起きてはならないことがその時起こった!!!

「…えいえんはあるよ」




『Kanon』TVアニメ化記念作品





土煙がはれるとそこには、瑞佳の隣にもう一人、見知らぬ幼ない少女が立っていた。
手にカメレオンのおもちゃを持ち、幼い頃の瑞佳を思わせる顔立ちの少女だった。

「ま、まさか! なんであいつがこの世界に!!」
「ちょっと、折原! あんた、何か知ってるの?」

「キ、キミは誰なの……?」
「わたし? わたしはね…」
「みずか、だよ」


みずかが言葉を言い終えると同時に、隣の瑞佳の姿が空間に溶け込むように消えていった。
いや、闘技場の空間そのものが変化しているのだ。
闘技場の天井は雲の動かない空となり、大気は動くことをやめ、地面はその感触を失い、時はその歩みを停めた。
観客席に戦慄が走る。タクティクス、KEYに連なる者達なら、知らない者はいない『世界』だからだ。
そこは……痛みも無いが変化も無い、あの夏の日が終わらない世界だった。

『え……、永遠の世界ですッッッ!!!
 あの伝説のッ! ONEの禁断の奥義、永遠が今ッ、地下闘技場究極ルールに降臨したのですッッ!!!』

ヒロイン達は皆動揺していた。
無理もない、永遠とはONEのヒロイン達でさえ全貌がつかみきれていない、禁断の奥義なのだ。
しかも、現実の世界とは異なる世界に存在するといわれていた筈の永遠の世界が、今、目前にあるのだ。
どのヒロインも動揺は隠しきれない。

「ONE発売以降3年余りの歴史で、本物の永遠を身につけた者は、恐らく10人にも満たないでしょう。
 でもそれらの使い手は全て、自分の作り出した異世界の中でしか永遠を使用できませんでした。
 現実の世界で永遠を使用したのは、あの瑞佳さんが初めてでしょうね」

もはや異世界と化した闘技場をみつめながら、秋子さんがつぶやく。


動揺しているのは、ONEのヒロイン達も同じだった。

『瑞佳さん、すごいの』
「ま、まさか瑞佳があの永遠の使い手だったなんて」
「まったく、私達は恐ろしいメインヒロインを持ったものだよ」

そんな調子よく、いきなり瑞佳を持ち上げ始める七瀬達から離れ、茜は浩平に尋ねる。

「浩平、あの長森さんは、やはり…」
「ああ、おそらくあいつは、お前らの知っている長森じゃない。
 しかし、だとしたら何故あいつ… いやあの世界がこの現実の世界に…」



「たぶん、お姉ちゃんがよんだんだと思うよ」

みずかがあゆに向かってつぶやく。

「ボ、ボクが?」
「だってお姉ちゃんも同じでしょ? しあわせだった思い出を永遠にするために、
 現実を、今をうそにするために生まれた存在……」

その言葉に、あゆは一瞬動揺する。
あゆの脳裏にフラッシュバックする、季節の無いあの四角い部屋…。
その瞬間を、みずかは逃さないッッ!!

「でもお姉ちゃんは、わたしには勝てないよ」

そういうなり、みずかはすっと身をかがめる。

「明日を夢見るお姉ちゃんには、
 思い出しか認めないわたしには決して勝てないんだよ」

バシーーーン

みずかの強烈な飛び膝蹴りが、あゆの鳩尾を襲う。

「どうかな、お兄ちゃん直伝の“しんくうとびひざげり”は」
「う、うぐぅぅぅ……」

飛び膝蹴りのダメージに喘ぎながらも、あゆは左アッパーを放つ。

「あゆちゃん得意のあゆぱんだよ!!」

しかし……みずかの身体は蜃気楼のごとく、あゆのパンチをすり抜けてしまうッ!!

『なッ、なにが起こったーーッ!
 月宮あゆが繰り出した起死回生のパンチが、長森瑞佳、いやみずかの身体をすりぬけているッ!
 永遠の世界の戦いは難しすぎるーーーッ!!』

なおも攻撃を続けるあゆ。しかしどの攻撃も、みずかの身体をすりぬけるばかりだった。

「あれってもしかして、闘気察知ってやつ?」
「いや、そんな甘いものじゃない」

七瀬の言葉を、浩平は否定する。


「う、うぐぅ…… ひょっとして、きみって幽霊……?」
 
ダッフルコートを頭からかぶってガードしながら、涙目で尋ねるあゆ。

「違うよ、ここはえいえいんのせかい。なにもかもが止まっている世界。
 ここは思い出しかない世界なんだよ。
 どんな強力な攻撃も、思い出でないもの、この世界にないものは存在していないのと同じなんだよ」


「極めていますね。
 現実世界では実現不可能と思われた永遠の理論を、ああまで完全に体現できるものとは思いませんでした。
 それをやられてしまっては、誰にも勝てる道理はありません」

秋子さんの解説に愕然とする、名雪達一同。

「落ち着け、あゆ!
 そいつの思い出しかない世界ということは、使える攻撃には限りがあるはずだ!
 とにかく攻撃パターンをよく読んで、防御に徹するんだ!!」

あゆを相手に、どこまで意味があるのか疑問なアドバイスだったが、祐一は藁をも掴む思いで叫んでいた。


「考えたね、お兄ちゃん」

祐一に向かって、みずかが答える。

「でもね、ほかのみんなの思い出も、わたしに味方してくれたらどうだろうね」
「ど、どういう意味?」

言い終えるなり、みずかはあゆめがけて、2発目の真空飛び膝蹴りを放った。

「いくらボクでも、2回も同じ攻撃なんてくらわないよ!」

体をひねって、みずかの膝蹴りを躱すあゆ。
しかしあゆが体勢を直したとき、視線の先にみずかの姿は無かった。
いや、そこはさっきまでの世界ですらなかった。

「うぐぅ… なんでボク、いつのまに知らない教室にいるの?」

「あ、あれは、もしかして、あたし達の教室!?」

驚く七瀬。だがそこに彼女をさらに驚愕させる存在が現れた。

「電話帳を豪快に破りながら登場。乙女にしかできない技ね」

突如電話帳を素手で破りすてながら、ツインテールの少女が現れる。

「な、七瀬さんっ!?」
「ちょ、ちょっと! あたしがなんで?? 何者なの、アイツは!?」

混乱する七瀬。その隣で浩平は今までの自分の考えを確信をしていた。

闘技場、いや教室では“七瀬”がどこからともなく取り出した墨汁がいっぱいのバケツを、あゆめがけてブチまけるッ!!

バシャーーーン

「ちまちま描いてなんかいられるかー!!」

墨汁で真っ黒になったあゆを、巨大な半紙めがけて投げつける“七瀬”。
魚拓、いやあゆ拓の出来上がりである。

「うぐぅ、ひどいよ…」

半泣きで半紙を体からはがすあゆ。しかしすでに“七瀬”の姿は無かった。
空間はさらに変化を続け、混乱しているあゆに攻撃は続く。

「みゅー」
  後ろから髪の毛を思い切り引っ張られる!
『あのね』
  学食で、うどんを背中にぶちまけられる!
「嫌です」
  雨の日の空き地で、練乳ワッフルを口につっこまれる!
「夕焼け、きれい?」
  屋上で夕焼けをバックに、元祖マッハ頭突きが炸裂する!


『こ、これは、どう表現したらよいものかッッ!!!
 マクー空間のごとく変幻する闘技場で、ONEヒロインのフルコースだッッ!!
 超えているッ!! もはや一ヒロインの闘いを超えているッ!!!」


「というか、いくらなんでも今までの世界観から逸脱しすぎてないか?」
「ゆ、祐一… なんで瑞佳さんの思い出の世界に、七瀬さんや茜さん達まで出てくるの?」
「俺にだって分からんっ!」

祐一は当初、あのみずかは舞の「ちから」のようなもの、瑞佳によって創られた存在だと理解していた。
だとしたら繰り出される攻撃は当然、瑞佳の知るものに限られるはずだった。
しかし目の前には瑞佳以外の思い出の世界が、瑞佳とほとんど面識が無いはずの澪やみさきまで出現しているのだ。
 
「やっぱりあのみずかちゃんは、瑞佳さんとは異なる存在のようですね」
「秋子さんっ!?」
「あのみずかちゃんが『お兄ちゃん』と言った時点で、そうではないかと思っていました。
 瑞佳さんは妹系のキャラではありませんし、御兄弟がいるという公式設定もありませんからね。
 あのみずかちゃんを、そしてあの世界を創り出した、本当の永遠の使い手は別にいるのです」
『秋子さん… あんた、さっきまで、瑞佳が永遠の使い手だと言ってなかったか?』

そう思っても、口にはだせない祐一だった。

「さっきみずかちゃんの言ったとおり、永遠の世界とは誰かの思い出から生まれた、
 その人の思い出しか存在しない世界です。
 そしてあのみずかちゃんもまた、永遠の世界の一部。
 あの世界を創り出した、誰かの思い出の中の存在なのです。
 おそらくその人の思い出の中で、その人の妹と幼い頃の瑞佳さんが重なって、
 あのみずかちゃんが生まれたのだと思います。
 そして、あの世界を創り出したのはおそらく…」


「瑞佳じゃない? あのみずかが?」

七瀬が呆然とした表情で、浩平に聞き返す。

「ああ、あの世界は、俺の思い出から始まった、俺が創り出した世界…。
 あのみずかは俺の思い出の中の存在。さっきのお前達も、俺の思い出の中のお前達なんだ。
 この折原浩平が冗談抜きで真剣に話しているんだ。誰も言い返すことはできねェ。と言うか言い返すな」

「てっ、折原ッ! あんたは一体、あたしをどういう風に記憶しているのっ!!」

七瀬のツッコミを無視して、浩平は闘技場の柵を、今や現実世界と永遠の世界の境界となっている柵を越えようとする。

「浩平、ひょっとして…?」

茜が尋ねる。

「ああ、もうこの試合は、瑞佳とあのあゆってヤツとの試合じゃない。
 この闘いはこんな形で終わらせるようなものじゃない。
 それに… あの世界は本当は、俺自身が決着をつけなければいけないんだ」
「待ってよ、浩平君」
「せ、先輩!?」
「浩平君の気持ちは分かるけど、もうちょっとだけあのあゆちゃんに任せてほしいんだ」


ふたたびあの夏の日に戻った闘技場で、みずかがあゆの顔面を鷲掴みにして責め続けている。

「どうかな? お兄ちゃん直伝の“あいあんくろー”は?」

ミシミシミシミシミシミシミシミシミシッ

「たとえ悲劇のヒロインになっても、明日を生きたいのかな、お姉ちゃん?」
「うぐぐぐぐぐ………」


「そうだ! 浩平君の思い出の世界なら、今から浩平君にあゆちゃんと会ってもらえばいいんじゃないかな?」
「そんなヒマあるかっ!
 それより、あのみずかが本物の瑞佳じゃない以上、勝負はもうついているって、審判団に抗議するべきじゃないか」
「却下(一秒)」

一秒で秋子さんに却下される祐一の意見。

「面白ければルールはいくらでも改変、反則はアダルトな行為以外は一切なし、それが地下闘技場究極ルールです。
 たとえ闘っているのが本人かどうか微妙でも、試合を終わらせることはできません」

そんな無茶苦茶なという表情の祐一に、秋子さんは言葉を続ける。

「それに祐一さん、もう少しあゆちゃんを信じてあげましょうよ。
 あゆちゃんが持っている、あゆちゃん自身の力を」
「あゆ自身の力…?」


「私はね、強さとは、自分の願いを貫き通す力、どんな無茶なシナリオでも押し通す力…、だと思ってるんだよ。
 闘ってみて初めて分かるんだよ。あのあゆちゃんが持っている、そんな力は」
「せ、先輩………」
「だからね、もう少し、もう少しだけ、あゆちゃんに任せてみようよ」

ズドーーーーーーンッッ!!

「うぐーーーーーーーーーーーーーーーーーーぅッッ!!」

そのとき突如、轟音と悲鳴が。
一同が闘技場に目を移すと、人間大風車と化したあゆが宙を舞っていた。

「……先輩… 本当にあいつを信じてもいいのか?」
「ごめんね、浩平君。私、目が見えないから、今何が起こったのか分からなかったよ」
「……信じていいんだよな… 先輩の言ってること、全部……」


ドガシャーーーーーーンッッ!!

みずかに再度真空飛び膝蹴りをくらったあゆは、選手入場口の柵を突き破り、奥まで吹っ飛ばされていた。

「あゆーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」

祐一は思わず、あゆのもとへ駆け出していった。




『…勝てないよ』
『奇跡なんかで助かっちゃうボクじゃ、みずかさんには勝てないのかな…』
『最後のお願いも使っちゃったし、ボク、もう…』

あゆはこれまでのダメージで、身体はおろか心まで折れかけていた。
その時…

「しっかりしろ、あゆ!!」
「ゆ、祐一くん… ボク、もうダメだよ…」
「あきらめるな! 傷は深いぞ、がっくりしろ!」
「うぐぅ… こんな時に冗談言わないで…」
「あゆ、確かにKanonのメインヒロインとして、あのみずかと闘っても勝ち目はない」
「なんか、とどめ刺してるし…」
「だから、あゆ」

祐一は一呼吸置いてから言葉を続けた。

「Kanonのメインヒロインではなく、月宮あゆとして戦うんだッ!!」

「祐一くんッ!?」




そうだよ、祐一くん。

ボク、一番大切なこと、忘れてたよ。

今、ボク達はボク達のいるべき場所にいない。

祐一くんと一緒にいるために闘うなら、そこがボクのいるべき場所なんだ。


ボクの本当のお願いは…












あゆが本当の最後の願いを発動させたその瞬間、ここが地下であるにもかかわらず、
あゆの身体に一筋の光が降りそそいだ。
光をあびたあゆのダッフルコートや羽リュックに亀裂が入り、光とともに吹き飛んでいく。

「あ、あゆっ!?」

永遠の世界降臨レベルの飛躍した事態を再び目撃してしまい、しばし言葉を失う祐一。

「ありがとう、祐一くん」

光に包まれたあゆは、闘技場へ向けて駆け出していく。
その姿は、まるで…




♪ダダンッ ダンダンダダーン



『これは一体どういうことだッ!
 月宮あゆが吹き飛ばされた玄武の方角のから、輝かんばかりの光が放たれ出しているッ!!
 まるで永遠の世界でさえ、断ち切らんばかりの輝きだッッ!!』

閃光の中、みずかをめがけて一直線に駆け出している、小さな影。


♪「キミといた 夢の跡」



『閃光に包まれて、月宮あゆ、復活だーッッ!
 しかし、いったいこれ以上なにをしようというのか!?
 永遠の世界は完璧です! あまりにも完璧すぎますッ!!』

スピードを殺さず、みずかに突っ込んでいくあゆ。

パチーーーーーーーーーン

残像を残すほどの超スピードの左ストレートが、ついにみずかの身体をとらえるッ!!


♪「本当の…求むべき未来が眠る」



『当たった〜〜〜〜〜〜ッッ!
 完全無欠の永遠の世界がッ、Kanonの執念の前に、今クリーン・ヒットを許しました〜〜ッッ!!
 しかし違うッ!! わたしたちの知っていた月宮あゆとは何かが違うッッ!!!」

そこにはトレードマークのダッフルコートや羽リュックのかわりに、オーバーオールを身にまとい、
切りすぎた髪を大きすぎる帽子で隠しているあゆの姿が合った。
もう、何かが違うとかのレベルじゃない。

「あの姿って… エピローグのあゆちゃん!?」
「いいえ、あれは」

名雪の問いに秋子さんが答える。

「あの姿こそ、あゆちゃんの最強モード、シャイニングモードです」
『お母さん… もしかして、思い付きで言ってる?』


♪まだ、届かない願いと現実



なおもみずかに攻撃を続けるあゆ。
残像を残すほどのスピードの、パンチが、キックが、タックルが、碁石クッキーが、つぎつぎとみずかの身体にヒットしていく。

「お、お姉ちゃん、その力は…、一体」
「みずかさん… ボクと同じKEYのメインヒロインには、お母さんは死んじゃって、お父さんは逃げ出して、
 育てのお母さんには冷たくされて、お友達もできないうえ、主人公はカラスになっちゃて、 結局ラストで死んじゃうという、
 過酷すぎるシナリオを、真正面から受けいれた人がいるんだ。
 ボクには、きみのようにも、その人のようにも生きることはできない。
 でもボクは信じたいんだよ! ありふれた日常で生きていくことは素晴らしいことなんだって!!
 ボクは、ボクは生きるために戦うんだ!!」

「あゆ! なんだか無理矢理まとめたような気もするが、とにかく勢いだけはあるぞ!!」

入場口から祐一は叫ぶ。


♪それでも走り出す



みずかの真正面に立ったあゆは、体をやや前傾に、重心を低く構える。
あゆの前方の空間に光が集まり、羽を持ったなにかの形を象っていく。

「あれは… ひょっとして、あのときの天使の人形…!?」


「あれ? そういえばあゆちゃん、シャイニングなのに、さっきの氷川さんのセリフだよ?」


♪Ready to go,Count ZERO 華音グラップラーAYUAYU!



「お、終わらないよ。この世界は終わらないよ…
 だってもう終わってるんだもの……」

みずかは最後の力を振り絞るように、カメレオンのおもちゃの舌をカラカラ出しながら、あゆに向かって突進していく。


「だったら不器用ネタははずせませんね」
「あゆちゃん、料理の材料切ってたら、包丁折っちゃうんだよ」
「それで『そんなことないよ!ボクに任せてよ』と言って、二本目の包丁を奪うんですけど、また折っちゃうんですね」
「お前ら、クライマックスの最中なんだから、妙な話で盛り上がるんじゃない」

戻ってきた祐一が、名雪と栞にツッコミをいれる。


♪信じぬけば、奇跡は起こる



臨界寸前のタメを解放し、光の天使めがけてジャンプするあゆ。
光の天使を頭から突き破り、みずかをめがけて急降下していく。
みずかの視界の中、ズームアップされていく、あゆの前頭部ッ!!

「美汐ー、今の歌、真琴がこの間聞いたのとずいぶん違うよ」
「どうやら一番と二番をゴッチャにしているようですね」

「ところでAYUΩよりAKIKOΩのほうが語呂がよくありませんか?」
「お母さん… もしかして、あのシャイニングモードやりたいの?」


♪Here we go,Count ZERO 華音グラップラーAYUAYU!



ゴーーーーーーーーーーーーーーンッッ


みずかの頭部に、あゆΩシャイニングモードの最強の技『閃光のシャイニングマッハ頭突き』が炸裂する。
止まっていた世界が再び動き出したかように、高速回転しながら吹っ飛んでいくみずか。


「ちょっとあゆちゃんの懐に、宛名が私の名前の空の封筒を入れておくんですよ」
「秋子さんまで、話をこれ以上無茶苦茶にしないでください……」


♪動き出す季節へ Get on!



 「華音グラップラーAYU 24.7version」
  作詞:月宮あゆ   
  作曲・編曲:三宅一徳(希望)
  歌:石原慎一(希望)



『閃光のシャイニングマッハ頭突き』の直撃を受けたみずかの頭上に、光の輪が出現する。

「そうか、そうだったんだ… 奇跡とは限りなく進化する力……
 あの人が恐れていた、そして本当に求めていた力………」
 


チュドーーーーーーーーーン



光の輪の輝きが頂点に達したとき、みずかは閃光と爆発とともに消滅していった。
みずかの消滅とともに、永遠の世界は消滅し、元の地下闘技場が現れる。
爆煙がはれた闘技場には、気絶している瑞佳をヨロヨロと抱きかかえた、あゆの姿があった。

「うぐぅ… 重いよー」

「勝負あり!!!」

子坊主の勝利の宣言とともに、観客席は喧騒を取り戻す。
実は小坊主も一緒に永遠の世界に閉じこめられていたのに、誰も気付いてなかったというのは秘密だ。

「あれ?」

あゆの視線の先に、青白く光る光球が浮かんでいた。

「ひょっとしてみずかさん? そうか、きみもやっと本当のきみの場所に帰れるんだね」


『Kanon VS ONE、完全決着ッ!!! 永遠の世界、ここに終焉するッ!!!
 しかし、なんという象徴的な結末でしょうッ!!!
 永遠のもつ超ド級の哀しみを、明日を信じる心が生んだ奇跡が打ち破ったのですッッッ !!!』


「わかってねえなあ、こいつら。そんなんじゃないって、今の闘いは」

苦笑しながら、浩平はつぶやく。

「しかし、月宮あゆ… ただのうぐぅとばかり思っていたが、
 あのみずか… いや、みさおを救ってしまうとは、まったくたいした…」

そのとき… 中空に浮かんでいた光球が浩平めがけて飛び込んできていた。

「…たやつだ……、って、
 ギャーーーーーーーーーーッ

ズドーーーーン

浩平に激突した光球は、浩平の体内に入っていく。
あゆの言葉どおり、『本当にいるべき場所』に帰ったのかもしれない。

「ア〜○〜ゾ〜ン〜〜〜〜〜」
 
某ライダーのOPの如き、雄叫びをあげて倒れる浩平。
その際、幽波紋のルールに従い、『閃光のシャイニングマッハ頭突き』と大爆発のダメージを、
その身体に再現してしまったようだ。


「あはは〜、だったら佐祐里は、久瀬さんの鳩尾めがけて膝蹴り入れるんですね」
「…フレイムモードさんもサウスポー」
「ラーメンセットでなると占い〜」
「はい、エクシード(みちるのおさげを操演している)」
「わーい♪ しょくしゅー、しょくしゅー」
「アナザーはやっぱりお姉ちゃんだよね〜。
 そしてあたしは、お姉ちゃんの右腕一号だ〜♪」

AIRのヒロイン達まで加わって、もはや収拾がつかなくなっているKEYサイドを横目に、
祐一は闘技場のあゆを見つめていた。

「やったな、あゆ」

その瞬間… 祐一の脳裏に映像が飛び込んでくる



  歓声がしない観客席…

  夕焼けに染まる雲のように、真っ赤に染まった闘技場…

  手足を投げ出し、倒れているあゆ…

  あゆを見おろしている、恐竜のぬいぐるみを抱きかかえた、短い髪の少女…



ハッ、と我にかえる祐一。

「あゆは負けないよな、どんなことにも…」

まだ脳裏に染みついている記憶の残像を、振り払うように呟く祐一。

「祐一くん、これだけ設定も時間軸も無視しまくってるのに、今更意味がありそうなこと言っても、無駄だと思うよ」
「うわ、あゆ! いつの間にそこにいる!」
「うぐぅ、さっきからいたよー」
「それに、いつの間に元に戻ってるんだ。シャイニングモードとやらはどうしたんだ?」

そう、今祐一の目の前のあゆはシャイニングモードから、元のダッフルコートと羽リュックのあゆに戻っていたのだ。

「それはね、祐一くん」

少し間をおいて、あゆは答える。

「劇場版ネタだから、先行登場したんだよ」


「そういう、オチかいッ!!!」

(つづく)





目覚めよ、その魂!
ということで、Kanonアニメ「東映」で製作決定記念の対戦でした。
アニメ版はいったいどんな内容なのか、
果たして春の東映アニメフェアには登場するのかなど疑問はつきませんが、
1ファンとしてとりあえず期待していたいですね。
かんぴさん、投稿ありがとうございました。



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