「馬琴衒学館」連動レビュー

敵討裏見葛葉
 曲亭馬琴といえば『南総里見八犬伝』が有名ですが、その他にも大小280以上の読本を記した江戸時代の大文豪でして、私は『馬琴衒学館』というHPを別に持ってるくらい好きなのですが、その作品群の中で見つけたのが『敵討裏見葛葉』(かたきうちうらみくずのは)でした。
 なんたって『敵討見葛』です。関係ないかもしれません、無いかもしれませんが、馬琴が好きでAIRも好きならこれは読まなければなりますまい、ということで、そのレビューを報告します。

あらすじ

 あらすじや作品解説については、『馬琴衒学館』の方に書きました。直リンクはここですが、たぶんまどろっこしいと思うので飛ばしちゃってください。


挿絵は北斎です。 江戸時代の武論尊・原哲夫コンビ。違うか。

 結果から言うと、予想どおり裏葉との関連性はゼロでした。「敵討」と銘打っていますが、実際に敵を討つのは安倍晴明(童子)とその父親でして、童子の母親である狐の葛葉(くずのは)と人間の葛の葉は、それほど目立った活躍をするわけではありませんでした。(ちなみに「裏見」というのは「恨み」の掛詞で、クズの木葉の裏が白いことと関連して「葛の葉」という普通名詞と「うらみ」という言葉は、よくセットで使われるらしいです)。

「裏葉=狐」説

 そもそも、陰陽師・安倍晴明の母親が実は葛葉という名の狐だったというのは、安倍晴明伝説の中でも結構有名な話らしく、AIRの解析系においても「裏葉=葛葉=狐」説というのは、裏葉の神通力を裏付ける、有力な説のひとつになっています。私は陰陽道にはあまり興味が無かったので今まで気づきませんでしたが、詳しい人にとって、SUMMER編と安倍晴明伝説との関連性は、簡単に気がつくことだったようです。実際、裏葉の師匠である「知徳法師」というのは、「今昔物語」において安倍晴明と術較べをする相手ですし(「裏見葛葉」にも一度だけ名前が出てくる)、「陰陽師」という単語自体もSUMMER編のテキストの中に数回出てきています。
 しかしながら、この関連性をもって、「葛葉=裏葉=安倍晴明の母」とするのは早計のようです。安倍晴明の没年が1005年であることから計算が合いませんし、「宮廷陰陽師の一派と藤家が手をむすび、権力を意のままにしようと謀った」という記述があるように、むしろ安倍晴明側の勢力は、裏葉たちにとって敵役だとしたほうがよさそうです。
 何にしても、『AIR』はフィクションですし、『安倍晴明伝説』もそのほとんどがフィクションです。その関連性を詳細まで是非したところでせん術無いことです。しかしながら、SUMMER編は安倍晴明伝説を基にし、「葛葉」という狐が裏葉のモデルのうちの一人になったことは間違いなさそうですし、そのときに種本にしたのが『敵討裏見葛葉』ではないことも確かなようです。

感想

 結局私は、普通の人なら京極夏彦や夢枕獏などで十分たどり着けるであろう結論に、馬琴という大変な遠回りをして、たどり着いたにすぎないようです。しかしながら、この『敵討裏見葛葉』という作品自体は、馬琴の戯作者としてのセンスの良さが垣間見え、なかなか味わいのある一品です(ただし、馬琴本人は出版社に請われて適当に書いたと言っている)。とくに、安倍晴明の父親の保名(やすな)が、敵の男と暗闇で荷物を間違え、そのせいで村人に殺されかかったり、敵討の許可を得るため上洛したら3ページ後にあっさり返り討ちにあって殺されたりするところは、どことなくKEYの男キャラのようなだらしなさがあって、なかなか面白いです。
 文章も古典としては圧倒的に平易ですし(だいいち、千年前の源氏物語と二百年前の馬琴が同列に扱われること自体おかしい)、日本の古典教育が馬琴によって行われれば、古典嫌いも減るだろうになあ、と慨嘆しきりです。

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