『エイケン』第1巻発売記念SS
松(ショー)☆バン

松(ショー)☆バン 第1話
 松山せいじ(松バン)と、伯林(伯チン)は親友同士の新人マンガ家。
 揃って秋田書店のチャンピオン編集部に出入りするようになった二人は、週刊連載という世界のレベルの高さに驚愕するが、編集長にそのマンガを認められて、増刊号に読み切りが載ることになった。
 入稿を終えて家路につく二人の前に、大先輩の板垣恵介があらわれる。

板垣「聞いたぜ…二人とも。増刊号に読み切りが載ったんだってな」
松「うん!」
伯「やっぱオレらって、目をかけられたのかなー?」
板「ああ。おめーら二人は、そこら辺の新人マンガ家に比べたらはるかにうめーよ」
伯「よーし、せいじ! 目指せ連載だ!」
松「うん!」
板「だがな、目をかけられたって事は…いつまでも仲良しコンビじゃいられないってことだ」
伯&松「え…?」
板「二人で仲良くマンガの練習し合えるのも…いつまでかな?」

 板垣恵介の言葉どおり、二人は2000年秋から始まるチャンピオン新連載攻勢の枠をかけて、争うことになった。
 そんな中、持ち前のセンスの良さで株を上げていく伯林。
 その才能に、松山は友人でありながら嫉妬を覚えていることに気がつく。

 ……結局、新連載の枠を獲得したのは伯林だった。

松「う、ううっ…せっかく連載が始まったら、上京して秋葉原で目一杯オタクライフが送れると思っていたのに…」

 悔し涙を流す松山。
 そんな松山に、何者かが声をかける。

瀬口「おい、松バン」
松「あ、瀬口キャプテン!」
瀬「お前のそういう態度、伯林にしてみればスッゲー嫌だと思うぜ」
松「え?」
瀬「伯林だって、自分ひとり連載に入るのは心苦しいんだよ。それなのに、お前が連載をしたい動機が秋葉原に行きたかったからだなんて……メーワクなんだよ、『くそオタク』はよ」
松「え……」
瀬「ま、オレも似たようなことした覚えはあるけどよ」

 瀬口たかひろは、にっこりと笑う。
瀬「…スケブ出せ。付き合ってやるよ、練習」

 手本として「菊之助」の1シーンを描いて見せる瀬口。
 それに応えて、松山はよりアレンジを加えたシーンをスケブに描く。

瀬「ナマイキに…菊之助くらいのエロだったら、軽く描けるようになった…か」
松「……」
瀬「松バン君よ…オレは穴狙いってことで…お前の方に賭けてたんだぜ、新連載争い」
松「!」
瀬「オマエ、ひょっとしたら人気が出るかもしれないなァ! 失礼なくらい『くそオタク』なヤツだから!」
松「はいっ!」

 松山せいじのマンガ道は、まだ始まったばかりだ!



松(ショー)☆バン 第2話
 ついに始まった、少年マンガ誌大会。
 新人ながら連載陣に入った伯林がヒットを放つなどの活躍はあったものの、結局コナンの差でサンデー編集部に敗れてしまう。
 そして、キャプテン・瀬口、エース・野々村などの旧連載陣は、チャンピオンを去ることになったのだった。

瀬口「不本意ながら今週で、オレ達元エロマンガ家の連載はすべて終わってしまった。もーちょっと長くやりたかったけどな……」

瀬「来週からは萌えマンガ中心の新チャンピオンがスタートする! オレは新チャンピオンのキャプテンを……高柳ヒデツに任せたいと思う──!! 異論があるヤツいるか!?」

一同「いいえ!! 僕たちも『ぷろちゃ』がいいと思ってます!」

瀬「来週からはオマエ達の時代だ! 来週オレ達みたいな終わり方したら承知しねーぞ!!

一同「はい!」

 そして始まった新チャンピオンだが……

八神「おい、知ってるか、高柳? 瀬口さんの後ガマ連載に松山が内定したんだってよ! それも瀬口さんが直々に指名して…」
高柳「ああ、聞いたよ……」
八神「瀬口さんは松山のことをかなり買ってるみてーだ。キャプテンとして、連載奪われでもしたら大変だぞ」
高柳「松山に連載奪われたら……オレはマンガやめるよ!!」

 …結局、高柳ヒデツはチャンピオンを去っていったのだった。



松(ショー)☆バン 第3話
「おーい、松バン! お前、萌えマンガを描け!」
 編集長のツルの一声で、春からの連載が決定した松山せいじ。
 しかし。
読者1「線がごちゃごちゃしすぎ…!」
読者2「カラーのセンスが悪すぎ…!」
読者3「ストーリーが全然ない…!」
 待っていたのは、チャンピオン読者からの酷評の嵐だった。

松「うっ、うっ……」
 一人泣き崩れる松山。
松(ぶち壊しだ…! オレひとりでみっともないマンガを描いて…チャンピオンをぶち壊しちまった……!)

編集長「それでもまだ、連載をやるか? 松バン」
松「編集長…」
編「生半可なオタクライフを送っていると、ものすごく怖いポジションだぞ。
 困っても誰も助けてくれない…いつもたったひとりぽっちだ…
 売上が落ちたら9割は作家の責任になる。来週売上が落ちたら10割オマエの責任だ」

厳しい言葉を投げかける編集長。
しかし。

松「や、やりますよ……! 僕やめるなんて一言も言ってません!」

編「あんな『恥』をかいてもか…?」

松「『恥』くらいいくらでもかきますよ! 僕は連載をやめません!」

編「よーし、良く言った、松バン!」
松「!」
編「今週のオマエのマンガは、心が弱くなかったぞ。思いっきり乳を描いていた! どんなにパースが狂っても…バランスを修正しようとはしなかった」
松「そりゃ自分で巨乳を描こうと決めたことだし…でも正直言うと…途中でその誘惑にはかられましたけど…ってゆーか、担当に忠告されなかったら、ちはるはもっと地味なキャラになってました」
編「正直でよろし。よーし! 来週も42ページだ! 覚悟しろ!」

 心も乳もデカくなれ! がんばれ松山せいじ!



松(ショー)☆バン 第4話
 監督の檄をうけて、連載を続けることになった松山せいじ。
 しかし、ネームの悪さは一向に治ることはなかった。
 困った松山は、伯林とともに板垣恵介のもとを訪れる。

板「まあ、ネームの悪さはバカマンガ家の宿命みたいなもんよ。根気良く練習していくしか道はねえなあ」
松「で、でも…」
板「じゃ──オレがチト、ネームを良くするためのヒントを教えてやろうか?」
松「ヒント…?」
板「いや、ヒントつっても、この方法は合うヤツと合わんヤツがいるから…それに連載が始まったばかりだからなァ、この方法が薦められるかどうか…?」
松「ねえ、それって何?」
伯「もったいぶらないで早く教えてよ」
 おもむろに口を開く板垣。

板「新キャラを登場させてみることさ! しかもライバルキャラな」

松&伯「ライバルキャラ…!?」
板「現状のキャラでストーリーの展開に困ったとき、より強力なライバルキャラを投入することで話が回るようになる場合があるんだ! オレの経験上、そういうことを何回かした──って程度だが…」
松「オレにライバルキャラを教えてよ! 板垣さん!」

 ──数日後。
伯「回る! スゴイ話が回るぞ、せいじ!」
松「うん!」
編「おい、松バン! 何だそのキャラは!?」
 松山と伯林が新キャラの練習をしていると、突然編集長が怒り出した。
編「誰がライバルキャラを出していいって言った? まだ全員のキャラ紹介が終わってないだろうが!」
松「いえ…僕は『ライバルキャラ』を作ったんじゃありません! 『顧問の先生』を作ったんです!」
編「何ぃ? ちょっと見せてみろ」

 松山のネームを読み始める編集長。
伯(せいじの『先生』は…最初は地味なドジ要員にしか見えない)
編「……」
伯(しかしここから…お約束の展開がある!)
編「!」
伯(せいじの『先生』は『エロ要員』! それも菊之助キャラ以上の…! そして…)

編「…このキャラだとそんなにネームが良くなったというのか?」
松「はい! 細かい話は描けませんけど…『お約束オチ』だったら9割方は笑いが取れるんです!」

編「うむ…『ライバルキャラ』だったらやめさせていたところだが…この『顧問の先生』ならいくら出してもいい」
松&伯「え」
編「来週は『まんがの森・吉祥寺店』で秋田書店のイベント枠をとってある。その店で松バン──お前の原画展を開いてみろ!!」


 果たしてせいじの原画展は成功するのか!? 次週につづく(かどうかは未定)!



松(ショー)☆バン 番外
 合宿で、OBとの練習試合をすることになった松バンたち。
 新4番に座った伯林は、元エース、野々村秀樹と対戦することになったのだが。

伯(不思議だ…チャンピオンで連載をはじめたとき、あんなにデカいと思った野々村キャラの尻が…今はそんなにデカく感じられない…)

伯(絵柄を修正したのかな…? いや! ここ最近、オレのマンガがせいじの前か後ろかに載ってるからだ!)


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