DEATH TRAP

2004.7.2(金)
東京グローブ座
開場12:30 開演13:00

―この芝居の結末はご覧になられていない方に絶対に話さないで下さい。―

 行って参りました、デ・ストラップ…ではなく、デストラップ(笑)
 長野博単独と言う意味では、2回目の観劇です。
 そうそう、トイヤーと同じくサスペンススリラーですので、まだ本編をご覧になってない方は、読まない方が懸命です。
 なんてたって、ネタバレしまくりですから(爆)
 いやはや、上手く誤魔化して書ければ良いんですけど、ネタをバラさずに語るのはやはりちと難しいです(^^;
 てなわけで、感想。
 今回は、博初の翻訳劇。しかも役柄的にゲイ…をいをい(苦笑)相手役は田中健さんという…ねぇ、凄いっす(苦笑)
 簡単なあらすじは以下に… 

―最近ヒット作のないベテランミステリー劇作家(シドニー・ブリュール/田中健)の元に、一作の戯曲が送られてくる。
 完璧の仕上がりで、舞台化されればロングラン間違いなしのその作品は、彼の教え子(クリスフォード・アンダーソン/長野博)の作品だった。タイトルは『死の罠』
 その作品を自分の物にしたいと思った劇作家は、教え子を自宅に呼んで殺害することを企てる。
 首尾良く教え子を呼び出しす。好奇心旺盛な作家志望の青年は、興味深々と書斎を歩き回り、飾られている武器のコレクションを眺める。共同作の申し出も断られていたシドニーは、壁のコレクションから取り出した手錠をクリスにはめてみろと言い出す。脱出劇を得意とするマジシャン(フーディーニ)が使った手錠だからと、いって手錠をはめさせる。タネがあるにもかかわらず、外せない手錠に焦ったクリスに、鍵があるからと言って安心させ、鍵を手渡すが、それは偽物で、外れない手錠に悪戦苦闘するクリスの背後から近寄ったシドニーが、喉に絞首刑具をまきつけ、そのまま首をしめて殺害。止めようとしていた妻(マイラ・ブリュール/山下容莉枝)を巻き込み、庭先の野菜畑へと埋めた…はずだった。

 嘘、裏切り、疑惑…そして恐怖。
 何が本当で、誰がしかけた罠なのか。
 真実がどこにあるのか…そして、最後に笑うのは一体誰か…

 と、まぁ、パンフの言葉を借りつつ、イントロダクションにして見ましたが、これだけでははっきり言って物語りの1/3ですらない!
 この他に、霊能力者(ヘルガ・テン・ドーブ/江波杏子)・弁護士(ポーター・ミルグリム/清水鉱治)が登場。全部で5人の登場人物出てくるわけです。
 まぁ、弁護士役はちょっとしたかませ役…はっきり言って物語り上の第三者です。
 自体が発展するきっかけを与えるために登場し、最後のオチを創る為の役。と言うような気がします。
 霊能力者も割りとそう言う感じ。客観的な役。正し、彼女の場合は物語の進行上で重要なきっかけを出す役なので、実際の事件とはかかわりがなくとも、相当重要なキーパーソンであると考えます。
 と、いうわけで、実質上この舞台はメイン3人の中で事件が動いていきます。
 しかし、いきなり手錠出されてはめてみろって言われてもなぁ…まぁ、好奇心旺盛って言う設定だったから無理はなかったのか? それでも、博に手錠はちょっと萌えました(爆)外れなくてがちゃんがちゃんやってる姿もかわいくて◎
 クリスフォード殺害の時も、仰け反る博の上半身だとか、ソファーの上でのたうち回る身体とか、見ごたえたっぷり(笑)
 …なんのことやらって感じですがね(苦笑)

 ここら辺で、物語の本当のあらすじをネタバラししちゃいましょうか…

 クリス殺しのあと、取り乱すマイラをなだめていたシドニーのもとへ、近所に引っ越してきたヘルガが訪れる。
 『この部屋に強い痛みを感じます…本物の死を感じます…』という。
 戯曲のタイトルや、クリスの使っていたタイプライターのメーカーを口にするヘルガにマイラのショックは強くなるばかり。 さらに芝居が原因で女性が短剣を使う、ブーツを履いた男があなたを襲うと伝え、気をつけなさいと忠告して帰っていく。不安に怯えるマイラを慰め、戸締りをして眠ろうとシドニーがカーテンに手を伸ばした時、何者かがその手を掴む! 
 掴まれた腕を振りきって部屋へ転がり込むシドニーに続き、部屋へ入って来たのは、泥と血にまみれたクリスだった…
 クリスの手にした薪に叩きのめされ、やがてシドニーは動かなくなる。
 恐怖で身動きが取れなくなるマイラへ、矛先をかえ振り上げた薪で部屋の隅へと追い込んで行く…『止めて!』 と懇願するマイラにクリスが薪を振りかざした瞬間、マイラは叫びを上げて倒れ込む…マイラは心臓が弱く、恐怖に彼女の心臓が耐えきれなかったのだ。
 心臓発作を起こし、そのまま呼吸の止まったマイラを確認して、クリスが『死んだ…間違いない』と呟く。
 その声を聞き、倒れていたシドニーが起きあがった…

シドニーの本当の目的は、戯曲の盗作ではなく、妻の遺産…つまりマイラの殺人こそが、シドニーの真の目的だったわけです。
 クリスフォードは実は共犯者で、しかも彼の愛人(笑)。
 戯曲を巡る殺人は、2人の考え出した偽装殺人だったわけです!!
 殺害されるまで…つまり、教え子としての演技をしていたクリス…はさわやかな好青年でしたが、ここで本性を垣間見せます。が…凄いのはそんなとこじゃなくて、何故か上半身裸で登場する博の肉体に釘づけ(爆笑)
 肉付きが良くて、それでいて引き締まった筋肉…くびれたウエストに動くたびに浮きあがる割れた腹筋…ハナヂものです(>_<)
 泥と血にまみれたクリスに、タオルを差し出すシドニー…なんかやり取りがえろちっくでした…
 通常露出の少ない博の、貴重なお披露目にドギマギしてると、すぐに首からかけたタオルでちくびは隠されてしまいました…やはり、無駄に見せないのが博のスタンスなんでしょうか…てか、見せたらあかんもんなんでしょうか…いや、むしろ誰かからストップがかけられてそうだけど(爆)
 しかし、後を振りかえった時にさらされる背中だけでもかなりエロい…やべぇ、あの腰掴んで引き寄せてみてぇ(大爆)
 そして、殺人という非日常の行為の所為でアドレナリンがでまくってた2人は、互いの身体を引き寄せてキス(爆笑)
 双眼鏡を持っていかなかったんで、アップでは見れなかったんですが…持ってても、あの劇場のあの場所(ど真ん中)でガン見は出来なかったけど(^^;…田中健さんの顔で博の顔を覆い隠す感じで…ありゃ、やってねぇな(爆)
 やってなくても、雰囲気は抜群で、見てて恥ずかしくなるっちゅうねん!! 『車に積んである荷物を取りにいくよ』というクリスを玄関まで見送る。
 『2階は床が軋むから、早くシャワーを浴びてベッドに入っていなさい。医者に電話をしないといけないから。』『どれ位待っていたら良い?』『2時間位かな、一緒に行かなくてはならないと思うし。』『わかった…』という会話の後、出ていくんですが、『ちゃおv』は止めなさい!!! くはぁ…!!!! くそ恥ずかしいっ!!!!!
 なんなんすか! その妙に甘ったるい会話は!! …まぁ、恋人どうしの会話だからしょうがないか(^^;
 …『ちゃおv』って聞いた時に、シェルブールの時のまあくんの『ちゃおっ』を思い出した…2人で『ちゃおっv』って挨拶してたら嫌だなぁ…(爆笑)
 で、泣き崩れた演技をして電話をかけたシドニーに、後から抱きつくように腕を回して、見詰め合って暗転…1幕終了
 ………それはどうなの?

 休憩時間、義妹にメールしました。…あまりに大変だった為、自分一人で情報を処理し切れなくて…『たいへんだぁ』って言う慌てたメールを送ってしまいました…(苦笑)
 いやね、ホントに凄かったんだって、半裸で甘ったるい雰囲気を纏った博の色気っていうか…エロ気っていうか…
 なんか、リアルでナチュラルにゲイっぽかった博に脱帽(大爆)

 まもなく始まる2幕。
 マイラの葬儀が終わってしばらくたってからのシドニー宅
 一人用だったデスクが、ニ人用になっていて、クリスが助手として働いていた。
 彼はスリラーを書く事に興味をなくしたと言って、前の職場である福祉事務所でのドラマを書きたいと、一心不乱にタイプを叩く。そんな日常が来客によって動き出す。
 シドニーの顧問弁護士ポーターがマイラの遺産についての書類を持ってくる。
 来客に席を外すクリス。
 その時に、自分の書いていたものを引き出しにしまって鍵を掛けるのをポーターが見てしまう。
 ポーターはクリスがシドニーの戯曲を盗作してるんではないかと、心配する。
 その言葉に不安になったシドニーは彼の作品を見ようと計画を練る。
 クリスの隙を誘い出し、彼の作品を盗み見ると、それは彼らがマイラを殺した手口を戯曲にしたものだった。
 こんなものが発表されてはたまらないと、クリスを説得するシドニー。
 しかし、クリスは作家になれるこのチャンスを逃すことは出来ないと拒む。
 『邪魔するのなら、ここを出ていく。』というクリスの言葉に、シドニーは作品を共同執筆することを承諾する。
 その1週間後の嵐の夜、再びヘルガが訪れ、物語が動き出す。
 シドニーの留守にやってきたヘルガは、『ろうそくはないか』と言う、その時に、クリスのブーツをみて、またもや危険が迫っているとシドニーに警告する。彼こそが、『ブーツをはいた男』だというのだ。
 それを聞いて、『彼は今夜にでも首にする予定だったのだ。弁護士に、その相談をしていたところだ。』という。
 不安に駆られたシドニーは、ポーターにクリスの素行調査を依頼していたのだ。
 クリスには『なんでもない、ヘルガの霊感はあてずっぽうだ』と言いつつ、コレクションの武器の中から、拳銃を一丁取り外し、安全装置を外して隠しているのだ。
 共同執筆を約束した戯曲…マイラの殺人劇…『DEATH TRAP』は1幕が書きあがる。
 2幕の案を尋ねるクリスに、『2.3戯曲として成り立つかどうか分からない個所があるから、付き合ってくれ』と頼み、乱闘シーンを演じさせる。
 シャツが破れるのを気にするクリスに、『そんな些細なことは気にしないで良いから、本気でやれ』という。
 もつれ合って、本格的な乱闘を起こし、自分の衣服を乱れさせた。
 その後、コレクションの中から斧を取らせ、それを距離をあけた2人の間に置かせた。
 『どうするの?』 と尋ねるクリスに、シドニーはゆっくりと銃口を向ける。
 つまり、それまでの乱闘の前振りは、襲ってきた秘書を正当防衛で殺してしまったという証拠を作るためだったわけですな。

 『DEATH TRAPはもう終わりだ。この作品が世に出させないためには、これしか思いつかなかったんだ。さよならだクリス。』 詰め寄ってくるシドニーから一歩ずつ後退するクリス。『なにか言うことは?』尋ねるシドニー。『僕に何を言えというの?…』『こんな台詞はどうだい? 戯曲にするのは止める。自動車修理工になる…』『その言葉を信じるの』 クリスの声に、ゆっくりと首を左右に振る。『なら、なにも言うことはない…ただ、僕のかわいい顔に情がわいてくれると良いのに…』『さようならクリス』…パァーンと銃口から煙を吐く…崩れ落ちるクリス。 『死んだ…間違いない』呟くシドニー…
 しかし、クリスは死んではいなかった…立ちあがる。再びの銃声…それでもクリスは倒れない。
 『くっ…はっ…あぁ〜はっはっ!』突如笑い出すクリス。『ゆうべ、空砲を買ったんだ。これの銃弾を買う時にね。』壁にかかったもう一丁の拳銃を取り、銃口をシドニーへ向ける。
 壁に掛かっていた手錠を…1幕でクリスがつけたものではなく、その上に飾ってあった別の手錠…とりだし、椅子に座らせたシドニーの手を肘掛を通して固定する。
 拳銃で脅しながら、ここから出ていくと告げるクリス。
 『有り金を全部持っていくよ』と言って、マイラの遺した宝石を取りに寝室へと上がっていった。
 クリスのいなくなった書斎で、カチリと手錠をはずす…『こっちが本物のフーディーニの手錠だよっ!』
 手錠から抜けたシドニーは壁からボーガンを手に取り、クリスを追う。
 激しくなる嵐の夜、緊迫した空気の中で、玄関ホールへクリスが現われる。
 周りを気にしつつ、ゆっくりと書斎へ足を踏み入れるクリス…その背後の階段から、シドニーのボーガンが狙いを定めていた。クリスが気づく前に、ボーガンの矢が放たれて、クリスの背に刺さる。
 崩れ落ちるクリス。
 倒れたクリスから拳銃を奪い元の壁に戻してから、クリスの身体をソファーの後へと引きずっていく。
 そして、床に置いた斧をハンカチを巻いて取り、クリスの横へ置き直す。
 嵐の所為で停電したなか、物証を消していくシドニー。
 全ての始末がすんでから、ソファーに座って警察へと電話をかける。
 『今、秘書を殺しました…斧を持って襲ってきたんです…住所は…』
 そこへ、ソファーの後で倒れていたはずのクリスの腕が伸びる…手には背に刺さっていたボーガンの矢…
 振りかぶった腕を、シドニーの腹へと振り下ろす…引きぬき、再び矢を振るい心臓を射抜く…力尽きたクリスはその場に崩れ、刺されたシドニーも受話器を持った手の下ろすことなく、息を止めた…

 どんでん返しもいいとこの2幕。
 2幕冒頭の甘ったるい空気は、『同棲始めて3ヶ月v』のにわか新婚ごっこっぽい雰囲気で面白かった(笑)
 しかし、物語が進むにつれて、だんだんと雲行きが怪しくなっていく…『DEATH TRAP』がシドニーの目にとまった辺りからの険悪な空気の中、重大な問題が発覚! なんと、田中健さんのほうがネコだった!! びっくりしたぁ…(爆)
 『芝居が原因で女性が短剣を使う』という予言を例にとって、クリスがシドニーに向かって『あながち間違いじゃないし…』って言う台詞があったのと、ヘルガが家に来た時に外から帰った来たシドニーが内股ギャル歩きをしていたので、多分彼がネコなんだろうと…
 っていうか逆にいうと、そこくらいしかそれっぽい描写がなくて、二人の素の会話のやり取りを聞いてるだけでは、逆に見えるんだよねぇ…シドニーは高圧的だしさ…なんていうか攻め度98%って感じ…後の2%は、スキャンダルに怯えて臆病になってるところで引きました(苦笑)
 それに引き換え、好青年してる博はほえほえしてるし…ってそれだけじゃなくてね、ふたりが甘い雰囲気をかもし出してる時の博の態度が、受けっぽいのっ!なんて言うか…典型的なBL本の主人公っぽいって言うか…うわぁ…説明できねぇなぁ…あの、背中とか、腰つきとかに色気があるっての?これは絶対私の贔屓目じゃないはずっ! 突き上げるより振ってる方が似合う腰つき…は言い過ぎか?(爆)
 …まぁ…ただ単に、私がシドニー受け説に納得できないだけなんだけど…あ、でもね、ふたりが殺るか殺られるかっていう駆け引きをしてる時は、なっとく出来た。田中健さん可愛かったし、博怖かったから(苦笑)
 だからきっと、脚本上はそう言う設定だけど、割り当てた配役がそうだったということなんだと思いました。
 クリス×シドニーでも田中健×長野博だったてことだよね(大爆)
 って、作品の感想じゃなくなってないか?(汗) きっと、博の色気にやられたのよ…そうよ、そうに違いないわ(>_<)
 しかし、それでもツッコミをいれたい『僕のかわいい顔』
 確かに、可愛かったけどさ(爆) 
 ポーターが引き出しに鍵を掛けるのを見てしまうシーンもちょっと良かった…腰を曲げて引き出し鍵を掛けてくんだけれど、客席に向けてむっちりおケツがぷりっと…あぁ…それにうはうは言っちゃったよ…自分、このままじゃヘンタイさんみたいだ(泣)

 1幕とは違って、畳み掛けるように一気に展開する2幕は、集中して見てないと取り残される感じですが、その割りに見ていてつかれない。
 適度に盛り込まれた笑いが、重くなり過ぎないように調節しているようです。

 ふたりが息絶えたあとの暗転明け、シドニーの書斎にヘルガとポーターの姿。
 ヘルガが書斎を霊視して、何があったのかを暴いていく…全貌を聞いたポーターは、これが戯曲として素晴らしい出来になると確信する。
 『DEATH TRAP これは私が書こう』 『アイディアは私よ。私が言わなければあなたは知らなかった…ギャランティはフィフティフィフティね。』『なんだとっ!』 『DEATH TRAP』の戯曲化をめぐって、この二人の間でも争いが起きる…そんな話は飲めないと拒絶するポーターにキレたヘルガが、壁から短剣を取り出してポーターへ向ける。そのしぐさをして、ヘルガが気づく…『芝居が原因で女性が短剣を使う…私のことでした』

 をいをい、そんなオチかよ…とちょっと口をあんぐりしてしまいました(爆)
 結局オチは、良く分からなかったんですが、ギャラを分けられないというポーターをヘルガが脅しているところで、暗転。
 下手の窓の辺りにピンスポ、クリス登場『この戯曲はオレが書く!』でTHE END…をいをい…
 まぁ、結局そんなオチしかつけらんないだろうなぁ…とは思いましたが、それはそれで表し抜け。
 とはいえ、その場の空気で不自然にならずに持っていけていたのは素晴らしい。
 後々考えるとなんだか納得できないけど、あの流れで持っていくならそれもありかな。と思わせる創りは素晴らしかった。

  そんなこんなで本編のあらすじとツッコミだけでここまで来てしまったけれど、久しぶりに熱く語りたい舞台に出会った気分です。 なんせ、久しぶりに真面目にアンケート書いちゃいましたし(苦笑) …最近めんどくさくって…(爆)だってさ、結局タレントしか見てないわけよ…まぁ、ちゃんと内容も見てるけど、比重がねぇ…偏るし(^^;
 でも今回は、そんなこと考えずに楽しめた、貴重な作品ですね。…途中ちょっと趣味に走っちゃったけど(笑)

 今回の役者ピカイチさんはヘルガ役の江波杏子さんでした。 エキセントリックな雰囲気と、真意の掴めない飄々とした演技…そして、最後に見せる狂気…色んな顔をヘルガという役の中で見せていただきました。
 良く、色んな面を見せるあまりに、キャラクターが変わったりすることがあるけれど、そんなこともなく、やっぱり凄いなぁ…とただ、ただ脱帽って感じ。
 マイラの山下容莉枝さんも、恐怖と不安に押しつぶされていく演技は素晴らしかったですが、難を言うなら、もちっとおちついてとか思ってしまった…女性のヒステリックな演技って、ホントに難しいんだなぁと…感情とテンションは上げていかないといけないけど、そうすると必然的に声のトーンも上がるわけで…そうするとさ、台詞が聞こえなくなるんだよね。
 台詞が聞こえなくても、ヒステリックに叫んでるって状態が必要な場合もあるし、そう言う時は別にかまわないんだけど、今回の舞台みたいに緻密に計算された台詞のキャッチボールって、一言聞こえないだけで後々に響くことがあるから、ホントに難しい。台詞が聞こえてなんぼだしなぁ…
 ポーターは…あまりに出番が少なくて、キャラがいまいちわかんなかった…(爆)
 真剣にシドニーを心配する姿は常識人っぽいけれど、最後ヘルガに暴露されたように、影ではちょっと質の良くないいたずら電話をかけていたりと、やっぱりちょっと普通ではなかったですね。
 そして、このいたずら電話も、実は1幕から複線が引っ張ってあったんですね…いらない台詞が一つもない。全ての台詞が、後々の芝居で繋がってくる。凄いなぁ…
 シドニー田中さんは…2幕ん時もちょっと触れましたけど、ネコっぽくないけど、リアルにゲイっぽくて凄い(苦笑)
 一応誉めてるつもりなんだけど、これって誉めてる? ちょっと心配だけど…でも、凄いと思いました。膨大な台詞量と、複数の感情を使い分けるところなんか特に。誰も信じない猜疑心の塊。…彼が本心で欲しかったものは結局なんだったんだろうと考えます…保身の為にクリスを撃ってしまえたと言うことは、愛が欲しかったわけではないってことなんですよね。
 ポーターに『クリスはゲイに見えるかい?』と聞いてみたり、『女性の秘書を雇うと噂になる』と気にしてみたり…クリスにも言われてましたけど、『スキャンダル恐怖症』なんですよね。自分の名前に傷がつくのが怖い…ってことは、ホントに欲しかったのは、名声なんだろうか…でも、それもすでに『欲しい』って言うよりかは、しがみついてるって印象が拭えない…
 妻を殺して遺産という富を得て…わが身の為に愛した人を手にかけて…どこへ行きたかったんだろうか…
 マイラにも確かに情はあったんだろうし、クリスのことは出ていくといわれて動揺するくらいには愛してたんだろうし…実は、一番キャラが明確だったのにもかかわらず、この人が一番分からなかった…
 さてさて、我らのクリスフォードですが…もうね、博、最高ね(爆)
 びば裸体(大爆)
 まったくさ、出し惜しみしないで欲しいよね…コンサでも脱げって(爆笑)
 かわいい好青年のクリスと、ブラックで野心家のクリス。 二つの面を器用に使い分けていましたね。
 ギャップの激しさも気になるほどではなかったし、台詞も、はでに噛まなかったしね(苦笑)
 でもさ…『さちゅじんしゃ』と『でしゅ』はちょっとまずかったかな(^^;
 なんとなく、1幕3場で彼の見せ場は終わったしまった感がありますが…いや、ホントにさっきからうるさいくらいに言ってるけど、見ごたえあったのよ博の上半身(笑)…井ノ原大絶賛の胸板も、しっかり観賞させていただきました。
 後半としては、表裏の使い分けのメリハリが良かった。ブラッククリスの時は、『狂気』って感じで何をされるか分からない恐怖と向きあってる感じがしました。
 彼は比較的分かり安い。若さゆえか、欲望が単純でしたね。作家としての成功と名声。お金はむしろ、それに付随するものって感じかな。利用できるネームバリューを持っていて、同じ性癖だったからこそ、シドニーと関係を持ったんだろうなぁ、きっと。そこに愛情があったのかさえ、ちょっと疑わしい…ま、多少の情はあったと思いたところだけど…
 そうそう、忘れるところだった。2幕の博一押しポイント(笑)
 2人用のデスクで向かい合って、カチカチタイプライターのキーを叩いてるんだけど、背中を丸めた体勢のまま、二本の人差し指でカチカチカチカチ…………絶対打ってるわけねぇだろって言うくらいのスピードで猛烈にキーを叩いてました…その姿がなんとも小動物っぽくって…くるみの殻を一生懸命向いてるリスの姿がダブって見えた(苦笑)
 きっとあの瞬間、客席にいた多数の担当が、なつかしの『V炎』を思い出したのではなかろうか…だって、今にも空中で打ち出しそうだったんだもの(爆)

 舞台的なところでも、今回は見てて凄く面白かった。
 大道具のチェンジは、デスクが一人用から二人用に変わるだけ。後は移動なしというシンプルなセットチェンジ。
 その代わり、しっかりとした家のセットが組んでありました。
 開演まではセンターのところに薄い幕が掛かっていて、そこがスクリーンになっていました。
 客電が消える前までは、『DEATH TRAP』のタイトルと、血しぶき、タイプライターのキーが映っていて、客電が消えてから、そこにCASTテロップ…映画のオープニングのようでびっくり。
 場面転換の時も、玄関ホールの壁のところに『1週間後』だの『1時間後』だのテロップが出る。その活字の使いかたも、どこか映画っぽかったな。あ、あと、このレポの冒頭にも書きましたが、『この芝居の結末は〜』っていうフレーズが、最初と最後…『THE END』のテロップの後にでました。
 1幕1場で殺人をほのめかすシドニーの台詞に、『昨日は満月だった』という台詞があったけど、実際満月は当日だったのか?メインテーマ(エンディングと、冒頭…マイラの鼻歌)は『FLY ME TO THE MOON』 と、『月』が良く出てくる。
 満月の夜は人が狂うってやつですね。
 暗転中、客席の真上にあるフルムーンの張りぼてが光る。
 当然、観客の目はそっちに行くわけで、暗転中にありがちな、大音量で気配を消すってこともなく、自然に観客の視線を動かす工夫が面白かった。
 音響も映画っぽくて、登場人物のメインテーマみたいな感じの曲のつけかたをしてましたね。あと、音のメリハリが凄くはっきりわかれてて、良かった。
 そんなに大きなBGMを使うことは少なくて、反対に効果音を大きい音でどーんと放つ…マジでびびった…
 最後カーテンコールの時も、すでに舞台に出てた役者さんが窓の方をさしてるのに、暗転してピンスポ抜きのしかも効果音つきで博が反対側から出てきた時はマジビビリしました。ふつーに『びっくりした』って言っちゃったもん(^^;
 カーテンコール後もスタッフロールとか流れて、ほんと、映画みたいな作りにしてました。
 それがなんか新鮮で面白かったかな。
 かなり自分的に褒めちぎってますけど、やっぱり完全無欠の舞台なんてあり得ないわけで、それなりに良くない点とかもちらほら見えました…例えば、笑いについて。
 サスペンススリラーですから、緊張感が大切。だけどそれだけじゃやっぱり疲れるわけで、適度に笑うという要素は必要になるのだけれど、それが流れちゃってるところが何箇所かありました。
 クリスが斧持ってシドニーに向かい合うところ。笑いと言う観点でだけ見れば、あんなにおかしかったことはないんだけど、それの後に続く場面を考えると、あともうワンクッションくらいは欲しかったかな。
 斧持って…持ちかたが悪いって言って直させるんだけど、バットみたい持ってみたり、変な格好してみたりと博がめちゃくちゃおかしかった…ひとネタやった後、すぐシドニーの銃口がクリスにロックオンなわけですよ。まぁ、確かに、油断をさせる手口としては非常にうまいやり方ではあるんだけど、それなりの緊張感はほしかったかな…多分原因は、素に戻りすぎな博と、くだけ過ぎちゃった田中さんの台詞回しかな…とは思うんですけど(^^;
 そう言うところで、もっとはっきりメリハリつけて欲しかったな。
 折角音響やキャラクターづけであんなに綺麗にメリハリついてるから、余計にめだったのかも知れません。
 でも、ま、そんなところもひっくるめて、今回の芝居は非常に面白く観劇させていただきました。
 やっぱり、ちょっとエキセントリックで複雑な芝居の方が見てて楽しいし、テンション上がるなぁと、今更ながに痛感。
 楽しい芝居でした。
 CAST・STAFFのみなさん、お疲れ様です。あと4日6公演、がんばってください。

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