狂乱の花火大会
                   記者 1年丙申組 朝日奈徹[H152045] 新聞部所属

    
 蓬莱学園、夏休みの一大イベントとなったサノバビーチの花火大会は、華麗なる火の饗宴が夜空に繰り広げられるなか、一転して暗い砂浜は阿鼻叫喚の巷と化していた。
 本土の花火を遥かに超越する、淡いパステルカラーから蛍光色、あるいは虹色に至る炎の華とともに、「夢がかないますように」といった初々しい願いから俳句に和歌、あるいは骨太な声明文など、様々な音によるメッセージが宇津帆島の夜空を彩ったわけであるが、その騒ぎに紛れて、核や反物質、マイクロブラックホールといった危険な物質などを用いた花火や爆弾が複数団体によって多数持ち込まれていたのである。
 また、浜茶屋から出された屋台の中にも、怪しげな飲食物を提供するものがあるという噂が流れた。
 このため、実行委員会側は、急遽、式典実行委員会・校内巡回班・学園銃士隊に場内の整理と警備を、料理研究会に屋台の統制を、医療技術研究会に緊急医療のための協力を求める事となった。
 急ぎ強化された警備の網をかいくぐって、たそペンによる花火乱射や、花火に混じって打ち上げられた爆弾とおぼしき物体が、一部地上で爆発したため、怪我人が十数名出た模様。
 更に、錬金術研究会によって打ち上げられた花火式魔法陣が輝くやいなや、海からアルバ皇帝が出現する一幕もあった。
 幸い、魔法陣の効果が長続きしなかったか、あるいは対抗呪文を唱える者があったのか、皇帝は早々に姿を消したが、これは僥倖というものであろう。
 なお、消息筋によれば、このたびの負傷者が部分的に改造される見込みは救急医療のため、かなり低いと見込まれている。




                                            

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