シンセティック・ヴァギナ 第3話 美奈II

 本当に俺はどうしてしまったんだ?
 宿酔いにずきずきする頭を抱えて、俺は溜め息をついた。
 あいつがロボットだって事は解りきっている。
 ロボットでも構わないのだ……あいつに『心』さえ存在するならば……。
 俺には、健気に俺を慕うあいつに、心が無いなんて信じられない。
 女性器に至るまで精巧に造られた身体は、人間そのもの、いや人間以上だ。
 心さえあるのなら、完璧な美しさとSEX能力を持つあいつは、本当に俺の理想通りだ。
 その場合は、あいつがロボットである事など関係ない。
 俺も、あいつを愛する事が出来るかもしれない。
 どうせ、人間の女には幻滅していたのだ。
 だがあいつが、プログラムに従って、感情が存在するふりをしているだけの『人形』にすぎないのなら、そんなものを愛する事などできない。
 その事を考えだすと、眠ることも出来なくて、つい昨夜は飲みすぎてしまった。
 心を決めるか……。
 いつまでも、うじうじ考えていても仕方ない。
 今日……あいつに尋ねるのだ。



 昼になった。
 今日は土曜日だからこれで放課だ、俺のクラスは小テストがあったので少し遅くなったが、美奈津は待ってくれているはずだ。
「あなた……階くんよね? 美奈ちゃんと、一緒に帰ったんじゃなかったの?」
 美奈津のクラスに顔を出すと、美奈津の親友である北川夏湖が、俺にそう話し掛けて来た。
 北川夏湖は、170cmを越える大柄な女だが、スレンダーな、なかなかの美人だ。きつめの整った顔立ちで、美奈津とはまた違った魅力がある。こんないい女が居たとは知らなかった。
 しかし……これは、どういう事だ? 
「半田君があなたから伝言を頼まれたって言って……それを聞いたらあの娘、急いでどこかに行ったわよ。だから、あなたと一緒に帰ったとばかり思っていたんだけど……」
「それは本当か!!」
「ええ……」
 俺は、半田にそんなことを頼んだ覚えはない。
 これはいったい……。
 その時、俺は半田の奴が向こうの廊下を歩いているのを見つけた。
「半田!!」
 呼び掛けると、半田は俺に振り向いた。
「佑也さん。探しましたよ!!」
 半田は、俺のパシリみたいなもので、どこか憎めない奴だ。
 だが今日は、妙に真剣な表情をしている。
「半田、お前、美奈津は……」
「佑也さん、その事なんですけど……彼女だけは許してやってくれませんか?」
 はあ?……話が見えない。
「お前、まさか俺があいつと、付き合うのに文句があるんじゃないだろな?」
 俺がそう脅すと、半田はビビって声を震わせながらも、肝を据えて俺に答える。
「本気で付き合おうってのなら、俺も文句はいいません。だけど……彼女はそこいらの淫乱女とは違います。あんないい娘でも、俺達にまわしてくれるのは嬉しく思ってますけど……彼女だけは、許してやってくれませんか? 美奈ッちゃんは、ずっと以前から佑也さんの事が好きだったんス。佑也さんの方も美奈ッちゃんの事まんざらでもないみたいだったから、俺、涙を飲んで橋渡しを引受けたんッスよ、それを……酷いッス」
「美奈津をお前等にまわす? 誰がそんなことを!!」
「誰がって、佑也さんがおっしゃたんじゃ……由紀子さんがそう……」
 なるほどそう言う事か……。
「半田……俺はな……由紀子とは昨日きっぱり別れたんだ」
 そう言って、俺は半田を鋭く睨みつける。
「え……それじゃあ……」
 蒼白になった半田を、俺は絞めあげた。
「半田……言え……美奈津はどこに居るんだ!!」
「部室ッス……」
 俺は、半田を放り捨てると、軽音楽部の部室へと急いだ。
「佑也さん、急いでください……早くしないと、美奈ッちゃんが……あっわっ!」
ずでん……。
 そう言って半田は派手にこけた。
 相も変わらずどじな奴だ。
 こんな奴にかかわっている暇はない、今は美奈津を助けなければ。
 俺は軽音楽部の部室へと急いだ。
 やがて到着した俺は部室の扉を勢い良く開く。
 一応、この4年(この学校は6年制なので、高校1年に当たる)をシメている事になっている大川信吾と、その他の奴の取り巻き数人が俺の方を振り返る。
「階さん!!」
 悲痛な表情で美奈津が叫んだ。
 美奈津は、股間を開いたはしたないポーズで両手足を縛り上げられているが、まだ、下着は付けている。どうやら間に合ったようだ。
「まさか!? 今日は小テストだって……後、30分はかかるはずじゃ……」
美奈津を剥こうとしていた由紀子が、蒼白な表情でそう言う。
 俺は、こいつらを鋭くねめつけると、怒りをこめて、わざと抑えた口調で言った。
「大川……俺はな、昨日、由紀子とは完全に手を切ったんだ」
 俺がそう言うと、大川達は明らかに動揺している。
「そ……それじゃあ……」
「苦労して落とした本命を、どうしてお前等にまわしてやらなければならないんだ? 由紀子のようなどうでもいい女なら、もうくれてやってもいいがな」
 俺がそう言うと、美奈津の表情がぱっと輝く。
 俺は美奈津の方に優しくウィンクしてやると、大川を睨み付けた。
「すまん……階……」
 大川は俺に一礼すると、由紀子の方に向き直り、胸倉をつかんだ。
「このくそアマめ、俺達をだましやがって……」
「この娘を抱かせてもらえるって聞いたら、ほいほいにやけ顔でついて来たのは誰だったかしら」
「くそぉ!!」
「やめろ……大川」
 言葉に詰まって、思わず手を振りあげた大川を制して、俺は退場を命じる。
「大川、俺が決着をつける。お前達はちょっと席を外してくれないか。終わったら、由紀子はお前にくれてやる。落し前を付けた後は、何でもお前の自由にしていいぞ」
「解った」
 大川はうなずくと、子分達を連れて立ち去った。
「残念だったな、由紀子。俺はあんなテストぐらい、10分もあればできるんだ。さあ、美奈津を返してもらおうか?」
 憎々しげに俺を睨み付ける由紀子に、射殺さんばかりの視線を向け、俺はゆっくりと近づいて行く。
「近寄るな……近づいたら、この女を刺すよ」
 どこからか、由紀子はナイフを取り出すと、美奈津に突きつけた。
「階さん!!」
「しゃべるな……しゃべると刺すよ」
 脅されて美奈津は口をつぐむ。
 しまった……油断した。
 由紀子は残忍な笑みを浮かべると、ナイフで美奈津のパンティを切り裂き、ま○こをあらわにした。
「きれいな……ま○こだね。これで佑也を誘惑したんだ……」
 由紀子は美奈津のあらわになった、ピンク色のきれいな人造ま○こに、嫉妬と羨望の入り交じったまなざしを向ける。
「クリトリスを削ぎ落としてやろうかなぁ? ラビアを切り刻んでやるのもいいわねぇ……」
「由紀子!……やめろ!!」
 俺がそう言うと、由紀子はさらに憎々しげな表情になる。
「佑也ぁ……本気でこの女に惚れてるんだね……ねえ、佑也……あなたが土下座して謝ってくれるなら、許してやってもいいよぉ?」
「由紀子、本当だな」
「ええ……ほらぁ、やってみせてぇ……」
 俺は巧妙に由紀子との間合いを詰めながら、ひざまづく。
「階さん……私なんかのために、あなたがそんなことをする必要はありません。私は構いませんから……止めてください」
 美奈津は必死の表情でそう言う。
 身体を傷つけられても、ロボットである自分は修理可能だ……。
 そう言いたいのだろうが、俺はあいつの美しい身体を傷つけたくない。
 それに……これで間合いを詰める事が出来た。
 由紀子に隙が出来れば、飛び掛かる事が出来る。
「すまなかった。由紀子。俺が悪かった」
 そう言って俺は額を床に付けた。
 顔を上げると由紀子が勝ち誇った表情で笑っている。
 バタンッ!
 その時、突然この部屋の扉が勢いよく開かれた。
「美奈ッちゃんは無事ッスか……」
 半田の奴だ。
 今だ、由紀子の注意がそれた!! 
 俺は由紀子に飛び掛かり、右手を手刀ではたいてナイフを弾くと,鳩尾に正拳を叩きこんだ。
「ぐふっ……」
 気絶したのを見届けて、半田に命じる。
「こいつを縛り上げろ」
 半田はぽかんと口を開けて俺の後方に視線を集中させていた。
「あっ……は……はいっ……」
 何を見てボッとしていたのか? 半田の視線の先を見て俺は納得した。
 そこには秘処をさらしたままの美奈津が居たのだ。
 半田の奴、後で覚えてろよ!!
「美奈津……大丈夫だったか?」
「階さん……」
 美奈津はま○こが露になっているのが恥ずかしいのか、もじもじもがいている。
 俺は由紀子が落としたナイフを拾って、美奈津を拘束する縄を切って自由にしてやった。
 美奈津はぴっちりと股間を閉じて、手で恥ずかしい部分を隠す。
 俺がはぎ取られたスカートを渡すと、美奈津は素早くそれを身につけた。
「美奈津……おいで……」
「階さん……私……私……」
 美奈津は俺の胸に顔を埋めて、泣きじゃくった。
 こいつに心が無いはずがない……
「美奈津……」
 あごをつかんで顔を見上げさせると、美奈津は瞳を閉じる。
 俺は優しく、こいつの唇を奪った。
「あの〜、お取り込み中のところ申し訳ありませんスけど……」
 半田が俺に声をかける。
 気の利かない奴だ。
「由紀子を縛り上げやした。もうそろそろ、目を覚ましそうッス」
「そうか……。そうだ半田、お前、昨日、ゲーセンのゲームで取ったパンティ、まだ持ってないか?」
「おいらにゃ、プレゼントするような彼女は、いませんしね……有りますけど、どうするんッスか?」
「美奈津の替えがいるんだ……出せ……」
「はい……」
 部屋の隅においてあった鞄を漁ると、その中からプラスティックのカプセルに入ったパンティを取り出して来た。
「美奈津……これを奥の部屋ではいて来い……サイズはあわないかもしれないが、ノーパンでいるよりはましだろうからな」
「はい……」
 俺は美奈津が隣の部屋に行ったのを、見届けてから半田に静かに尋ねた。
「半田、お前……さっき美奈津のアレを見なかったろうな?」
 俺がそう尋ねると、半田は明らかに動揺して答える。
「そ……そんな恐れ多い事。もちろん見なかったッスよ……」
「そうか……それならいいんだが……。それともう一つ、美奈津がずっと以前から俺の事を好きだった、って言うのはどういう事だ?」
 半田はほっとした表情で答える。
「ああ、そのことッスか。いえね、美奈ッちゃんが4月に転校して来て一週間ぐらいした時ですかね……。おいらに美奈ッちゃんが、『さっきあなたが話していた人はだれ?』なんて、ほほを染めて話し掛けて来たのは。その時おいらが話してた相手が、佑也さん、あなたッスよ。それから、あの娘はあなたが運動場で体育をしてたら、溜め息をついてそっちを見てたりして、健気にあなたを思ってたんスよ。まあ本人が明言した訳じゃないッスがほぼ確実ッスね……」
「そうか……」
「しかし……あんな可愛い娘に、そこまで思われてるなんて、うらやましいッスねえ……佑也さんと美奈ッちゃんは、本当に御似合いッスよ」
「そうかな」
 照れるじゃないか。
「後は、あのくそアマの処分ッスね……本当に酷い女だ」
「酷い女で悪かったわねぇ……ドちび虫」
 目を覚ました由紀子が、憎々しげにはき捨てる。
 由紀子はバージンだったころから、ちょっと可愛いのを鼻にかけた、嫌な女だった。
 半田もいろいろ酷い目にあわされていたようだ。
「由紀子……解っているな? 美奈津にやった事の、御礼をさせてもらう。まずは……」
「きゃあぁ……」
 俺はナイフを振るうと、パンティを切り刻んだ。
 真っ黒に色素沈着した由紀子の局部が、露になる。
「しかし佑也さん、いつ見ても汚ねえま○こッスねえ……さっきの美奈ッちゃんの、ピンク色の素敵なのと、とても同じものとは思えないッス」
「半田ぁ……お前、さっき見なかったって言わなかったか?」
「あっ……しまった……」
「まあその事は後だ。おっ、美奈津の着替えが終わったらしいな」
「階さん……着替えおわりました……」
 そう言って美奈津が、奥の部屋から現れる。
「美奈津……いいものを見せてやるよ……こっちに来い」
 そう言って、美奈津に由紀子のま○こを見せる。
「階さん……いったい何をしてらっしゃるんですか!?」
 驚きから立ち返った美奈津は、由紀子を背にかばって、俺を真剣な表情で見つめた。
 美奈津が怒っている……。
「何って、お前の仕返しをしてるんじゃないか……こいつはお前に酷い事をしたんだぞ……」
「そうです……私もさっき階さんに助けられるまでは、こうして身体の自由を奪われ、酷い扱いを受けました……そして、その時……私の心は張り裂けそうでした。そんな思いを、他の人がするのは耐え切れません……階さん……止めてあげてください……お願いします……」
「美奈津……俺に逆らうのか?」
 そう言いながら、俺は溢れて来る喜びを隠すのにすごく苦労した。
 こいつには……美奈津には心がある……俺は確信した。
 もしこいつが心の無いロボットなら、俺に逆らう事など有り得ないはずだ。
 そして、俺の質問に、美奈津は小さくうなずいた。
 不安げな表情で見返す美奈津に、俺は会心の笑みを浮かべて答えた。
「お前は……優しいな……お前が、自分から進んで仕返しをするような女なら……俺はここまで惹かれなかっただろう。美奈津……お前に免じて、こいつは許してやる事にしよう」
 だが皮肉な事に、この美奈津の行為によってもっとも傷ついたのは、かばわれた当の由紀子だった。
 美奈津の優しさは、由紀子の自尊心を粉々に打ち砕いたのだ。
「どこまで……ぶりっこしてんだい? 誰が助けてくれって言った? おまえに助けられるくらいなら、死んだ方がましだよ……この偽善者め……佑也、あんたに最後のお願いがある。最初に言った通り、私をめちゃくちゃにするように大川達に命じてくれよ……。こんな偽善者に助けられるくらいなら、その方がよっぽどましだ……。お願いだよぉ佑也……」
 美奈津にも、由紀子が本気で、自分に助けられるくらいなら輪姦された方がいいと、思っている事が解ったらしい。
「……」
 哀しげな表情でうつむいた。
「と、言う事だそうだ。半田……大川達を呼んで来てくれ。俺はこいつを送って返る」
 半田は鬼の首でもとったような顔で、美奈津に言う。
「美奈ッちゃん、解ったろ? こいつは美奈ッちゃんみたいなまともな女の子とは、違う人種なんだ……慎みとかそう言う感情は全く存在しない、とにかく欲しいのは快感だけなのさ……」
 大川達が、下品な笑みを浮かべながら入って来たのと入れ違いに、俺は美奈津の肩を抱いて、部室の外へ出た。



「ああ良かった。美奈ちゃん、階君と会えたのね……」
 昇降口で靴に履き替えようとした時、北川夏湖が、俺達を見つけて話し掛けてきた。
「夏っちゃん……」
 二人で仲睦まじくしているのを見られたのが恥ずかしいのか、美奈津がほほを赤らめる。
「ああ。どうやら半田の奴が勘違いしたみたいでな、部室で待ってたこいつを、いまやっと見つけたんだ。さっきはありがとよ……」
「そっか……でも、本当に仲いいんだね、妬けちゃうなあ……だけど階君、こういう娘がタイプだったんだね、知らなかったなあ……」
 この北川夏湖とは初めて会ったはずなのに、そんな気がしない。どこかで、見た事が……
「あっ……北川先輩じゃあ……」
 思い出した……1年半ほど前、俺がまだ2年生だったころ、交通事故で重傷を負い、アメリカへ治療のため渡っていた、一つ上の先輩だ。俺は学生会で世話になった事がある。
「階君、もしかして私の事忘れてたの? 薄情ねえ……。それに、私、今はもう同学年なんだから、先輩なんて付けなくていいわ……」
「それじゃあ、北川さん……こう呼ばせていただきます。でも、身体良くなったんですね、良かった……」
 俺の言葉に、北川夏湖は一瞬、哀しげな表情をした。
「あっそうそう……美奈ちゃん。これ……落としてたよ。大切なものなんでしょ……はい……」
 そう言うと、北川夏湖は美奈津に、小さなお守り袋を渡した。
「夏っちゃん。ありがとう」
「どういたしまして……あっと、これ以上邪魔しちゃ悪いわね。それじゃあ、お幸せに……」
 そう言って笑って去って行く。
「夏っちゃんたら……もう……」
「そうか……北川さんが戻ってきてたのか……」
「あの……階さん? 夏っちゃん、いえ北川さんが、身体を壊して留年してたって事は知ってたんですけど、どこが悪かったんですか?」
「そうか……美奈津は知らなかったんだな。彼女は1年半ほど前、交通事故に遭って重傷を負ったんだ。一時はかなり危険な状態だったらしいが、アメリカで治療を受けて、あそこまで回復したらしい」
「そうだったんですか……それで、体育とかは休んでたんですね……」
 そうか……かなり良くなったように見えるが、まだ後遺症に苦しんでいるんだ。
 それが、さっきの哀しげな表情の意味だろう。
「それじゃあ美奈津……いこうか?」
「はい……」
 それから数分の間。俺達は無言で歩いていった。
 俺は、人通りが少ない通りに入ったのを確認すると口を開いた。
「美奈津……今日はすまなかったな……俺の注意不足であんな目にあわせてしまって……」
 俺がそう言うと、美奈津は小さく首を振った。
「私は……いいんです……私は、モノ、ですから……ですけど由紀子さんは、人間です……そして、彼女は階さんの事を、本当に愛してました……私……馬鹿でした、私にかばわれる事で、彼女がどれほど傷つくか、解ってなかったんです。そして私は、彼女が言ったとおりの偽善者です。こうして階さんが、彼女よりも私を選んでくれた事を、本当に嬉しく思ってるんですから……私……私は……」
「美奈津、もう由紀子の事などもう気にするな。あいつには悪いが、俺はあいつのことなど、なんとも思っていない。俺が今、関心のあるのはお前だけだ」
「階さん……ですけど……」
「美奈津……俺はあいつに最初から遊びだと明言してきた。それを今更俺の事を好きだといわれても、どうしようもないだろ?」
「階さんにとっては遊びでも、由紀子さんにとっては違ったんです。たとえ相手にとっては遊びでも、愛する人に抱いて欲しかったんだと思います。私には……その気持ち、良く解ります」
 そういって、少し哀しげにうつむく美奈津を俺はそっと抱き寄せた。
「それは……お前もそう思っているってことか? 半田が、お前は俺が手紙を出す以前から、俺の事を想っていたように見えた、と言っていたんだが、お前が俺の所有物になったのは、ロボットである事がばれたためじゃなく、俺を愛していたからなのか?」
 俺の言葉に美奈津は驚いて顔をあげた。
「解りません……私には、解らないんです!……私……階さんの事を心から愛していると信じたい……ですけど……御存じの通り私は人間ではありません……私が心だと思っているものは幻かもしれません……階さんは、どう思いますか? 私に心があると思われますか?」
 そう……だったのか……。
 美奈津自身も自分に心があるかどうか悩んでいたのだ……。
 んっ? 悩んでいたって……。
「美奈津……お前にはちゃんと心があるさ……俺が保証してやるよ」
「階さん……本当に?」
 ぱっと顔を輝かせた美奈津に、俺は優しく微笑みかけてやる。
「ああ、証拠もあるぜ。美奈津、もしお前に心がないとしたら、どうやって自分に心があるかないか悩めるんだ? そういう悩みがあるって事が、お前に心があるという確かな証拠じゃないか? 本当にお前は馬鹿だな」
 俺がそう言うと、美奈津はにっこりと会心の笑みで微笑む。
「本当ですね……階さんのおっしゃる通り、私って馬鹿みたいですね……」
「美奈津……今からお前の家に行っていいか?」
 俺がそう言うと美奈津は、ほほを染めて嬉しそうに微笑む。
「はい……階さん……」
「そう言えば美奈津? さっき、北川さんから受け取ったお守りは何なんだ?」
「これは……」
 美奈津は困ったような表情をして口篭る。
「見てみたいんだけど……だめかな」
「階さんがおっしゃるなら、仕方ありません……どうぞ……」
 美奈津が手渡した、お守り袋を開けると、プラスティックで出来た、玩具の指輪が出てきた。
 これは……?
 何の変哲もないそれは、何かを俺の心に訴えかけてくる。
「美奈津?……この指輪は……」
 その時、俺に心の中に、忘れていた記憶がよみがえってきた。
「美奈津……美奈?……美奈ちゃん?……」
 目の前の美奈津に、幼いころ遊んだ、ある少女の面影が重なった。
 思い出した……辛くて、忘れていた記憶を。
 藤澤博士の本当の娘、藤澤美奈に関する思い出を。


幕間……幼きころの記憶

「美奈ちゃんよ……佑也、ごあいさつなさい」
「うっす」
「佑也、ちゃんとごあいさつなさい」
 祖母にせっつかれて、幼き佑也は無言で頭をさげた。
「さっ、美奈、こちらが佑也くんよ、ごあいさつなさい」
 美奈も母にせっつかれて、口を開く。
「……はじめまして……。私、美奈っていいます。よろしく……おねがいします」
 人見知りするタチなのか、美奈は真っ赤になって、それでも、小さな声で必死にそう言うと、ぺこんと頭を下げた。
「これ、佑也。美奈ちゃんはちゃんと挨拶できるのに、あなたはどうして出来ないの? きちんと挨拶なさい」
「うっす。僕、佑也」
 むすっとした表情で、佑也が言う。
「もう、ほんとにおまえって子は……美奈ちゃんが可愛いから照れてるんだね?……そうね?」
 祖母がそう言うと、佑也はずいっと美奈に近づく。
 佑也にじろっと睨みつけられて、美奈はびくっと脅えた。
「たしかにかわいいけど、僕の好みじゃないね……僕、暗いコはきらいなんだ」
 佑也がませた口調で言う。
「これ、佑也。もうどうしておまえって子はそんなにひねくれた事を言って……ごめんなさいね、美奈ちゃん。佑也はあなたがかわいいから照れているのよ、気にしないでね……」
「照れてなんかいないよ……本当のこと言ってるんだよ……だって僕、このコとコンヤクってやつするかもしれないんだろ? そして、コンヤクってやつしたら大人になったらケッコンしなきゃいけないんだろ? この前、横田のおじさんが言ってたよ、好きでもないのにケッコンしたら、一生こうかいするって……だからこういうことは、はっきり言わなきゃ」
「佑也、どこでそんな事……」
「この前、ばあちゃんと由佳さんが話してたの聞いたよ。由佳さん僕をほめてくれててとっても嬉しかったけど、やっぱり好きでもないコとケッコンするのヤだ」
「佑也くん、じゃあ佑也くんは、どんな女の子が好みなの? おばさんには教えてくれるよね?」
 美奈の母親、由佳がしゃがんで、佑也と視線をあわせて聞いた。
「明るくて……優しくて……由佳さんみたいな人がいいな……・それから由佳さん、由佳さんてまだ若くてとってもきれいなんだから、自分で『おばさん』なんて、言っちゃだめだよ」
 佑也の言葉に由佳と君江は顔を見合わせて笑った。
「もう……佑也くんっておませさんね……・あなたって絶対大きくなったら、女の子にもてるようになるわよ……男前だし、勉強もできるし、運動もできるし、お世辞まで心得てるもんね……」
「オセジなんかじゃないよ、本当に由佳さんってすてきだよ……胸も大きいし」
「こら! 子供がそんなこと言うんじゃないの!! 本当におませさんね、それなら、佑也くん、今、美奈を振っちゃっても良いのかな? 後、十年もすれば、この娘だって胸が大きくなるわよ。顔立ちだって私の小さいころにそっくりだから、大人になれば私そっくりになるだろうし……それから後悔しても、知らないんだから……」
「ほんとう?……ほんとにこのコも、由佳さんみたいになるの?」
「ええ、私の娘だもん。保証書書いてあげてもいいわよ」
「ま、かわいいのは確かだもんね……横田のおじさんも、女の子をダイイチインショーだけで、判断しちゃいけないっていってたし……」
 そう言って、佑也はもう一度美奈を、まじまじと見つめた。
 今度はさっきみたいな怖い目じゃなかったので美奈は脅えなかったけど、あまりまじまじと見つめられたので、ちょっと恥ずかしくなったようだ。
「あらためて見ると、ほんとにかわいいや、おとなしい女のコっていうのもいいかもしれないし……ごめんね、さっきはひどいこといって、僕、佑也って言うんだ、君は美奈って言うんだよね、美奈ちゃんって呼んでいいかな?」
 そう言って佑也は美奈に、にっこりと微笑みかけた。美奈もつられて思わず微笑む。
「はい……あの、わたしは佑也さんってよんでいいですか?」
 美奈が耳まで真っ赤になって小さな声で言う。
「うん、もちろんいいよ。声もすごくかわいいね。よし……決めた。僕、君とコンヤクしてもいいよ……。由佳さんも好きだけど、横田のおじさんが由佳さんはヒトヅマだからだめだって言ってたし……。それに、君みたいなかわいいコはめったにいないし、おおきくなったら由佳さんみたいになるって、由佳さんもホショーしてくれたから……美奈ちゅん、いいよね?」
 美奈は意味も解らずコクンとうなずいた。
 友達になろうって言われたのだと思ったのだ。
「それじゃあ、いいものあげるから目をつむって……」
 佑也のことばに、美奈がすなおに目をつむる。
 佑也はすっと美奈のくちびるに、自分のそれをかさねた。
「佑也くん!! あなた、なにしてんの! もう……本当に凄いおませさんね。でも佑也くん、キスしたからにはちゃんと責任取ってもらうわよ?」
「セキニンって?」
 聞き返す佑也に由佳は悪戯っぽく笑って見せる。
「美奈と本当に婚約してもらうってこと。いいわね?」
「うん。男にニゴンはない……です」
「ぜったいよ!!」


 そして数日後……
「美奈ちゃん……左手を出して……」
 美奈はいわれたとおりに、可愛らしい手を佑也に差し出す。
 佑也はおもちゃの指輪を取り出すと、その薬指にはめた。
「佑也さん……ありがとう」
「お礼はいいよ、これは男のセキニンってやつだから……横田のおじさんに教えてもらったんだ。コンヤクしたのなら、あいての女のコに、指輪を贈らなくちゃいけないって……ほんとは、だいやもんどとか、ニジュウヨンキンとか、高い指輪を贈らなくちゃいけないみたいなんだけど、僕の今のカイショーではそれでめいっぱいなんだ……それでも十日もばっちゃんの肩たたきをしなきゃならないんだよ」
 美奈は、いわれた言葉の意味はあまり解らなかったみたいだけど、本当に嬉しそうに微笑んだ。
 しかし、それが、佑也が美奈と会った最後……だった。

話は、いま、に戻る……
「美奈津……君は……いったい……」
「階さん……思い出されたんですね……」
 少し哀しげに……美奈津が笑う。
「君は……美奈なのか?」
 俺の質問に、美奈津はかぶりをふる。
「私は美奈津……美奈さんとは別の存在です……ただ……私は美奈さんの記憶を受け継いだだけ……亡くなった美奈さんの脳から記憶を取り出して、私のAI回路にリンクしたんです。身体が出来上がるまで、10年の間、私は仮想現実空間で暮らしていました。その間……ずっと私、階さんの事を想ってきました。そのころ、私は自分を美奈さんだって、信じて疑いませんでした。無邪気だったんですね……。身体が出来上がったら、階さんが迎えに来てお嫁さんにしてもらえるって信じてたんですから……。やがて……私は本当の事を知りました。私という存在が、本当はお母さんがプログラムした電子回路にすぎなかったのだって事を……。この記憶が私のものではないという事を……階さん……本当に、私には心があるのでしょうか……それとも……あなたに対する、この切ない想いは幻なんでしょうか……」
 ぽろぽろと涙をこぼす美奈津が愛しくなって、俺は力強く抱き寄せた。
「美奈津……おまえのAI回路の設計図と、ソースコードを、見せてくれないか……確かめられるかもしれない……」
 美奈津は俺の言葉に、小さくうなずいた。



 美奈津の家の応接室で、自分の鞄から携帯コンピュータを取り出し、データディスクを取りに行った美奈津を、俺は待った。
「この中に私の身体について、すべてのデータが収められています」
 やがて現れた美奈津に手渡されたディスクを携帯コンピュータに入れた。
 沢山あるファイルの中から、AI回路に関するものを検索すると、メモリ上に展開する。
 まずはAI回路の設計図だ……。
 携帯ターミナルのモニターに映しだされた内容を見て、俺は溜め息を付いた。
 美奈津のAI回路は、ごく一般的なものでしかなかったのだ。
 いや……ハードウェアではない、ソフトウェアの方が問題なのだ。
 そう言い聞かせて俺は、新たにウィンドウを開いて、AI回路のプログラムリストを表示させる。
 ん? これだけか? 
 膨大な量があるだろうと予想していたプログラムは、ウィンドウを画面に最大化すれば収まってしまう程の量しかなかったのだ。
 美奈津のような複雑な反応を、これだけのプログラムで実現するのは不可能だ。
 ということは……まてよ? 
「美奈津……本当にお前のAI関連のデータはこれだけなのか?」
「はい……そのはずですけど……」
 美奈津は俺の質問に答えると、哀しげに顔をうつむかせた。
「やっぱり……私は……心のないロボットにすぎないんですね……」
「違う……美奈津……お前に心があるにしろ、ないにしろ、これだけのプログラムでは、お前にこんな複雑な反応をさせるのは不可能なんだ。まだ、他にもあるはずなんだが……」
「いいえ……それだけのはずです……後は頭部に記憶を、左胸の内部に学習内容を、それぞれ格納するメモリがあるだけです」
「美奈津……その内容を見る事は出来るか?」
「はい、接続ケーブルで、階さんの端末機と、私の身体をつなげば可能なはずです」
「それじゃあやってみよう……」
「はい……」
 美奈津はうなずくと、恥ずかしげに制服の前をはだけ、白いおなかをあらわにする。
 へそに指を差し込んで左右に引くと、腹部が観音開きに左右に開いて、複雑な内部のメカニズムがあらわになる。
 俺は、自分の端末機からケーブルを引っ張って、美奈津のネットワーク端子に接続した。
 美奈津を制御するためのOSを介して、学習データを端末にコピーしようとする。
 なんだ……これは……。
 美奈津のAIの学習データを、端末にコピーするのは不可能だった。
 美奈津のAI学習データは、何千万個の独立素子が連結し、その動作内容を相互にフィードバックしあう、完全な並列システムだったのだ。
 これは……ニューロコンピュータだ。
 俺は笑った。会心の笑みで。
 美奈津には心がある。100%心がある。
「美奈津……お前には心が存在する……あれだけしかプログラムが必要ないのは当然だ。完全に心がある存在に対して、どんなプログラムが必要だというんだ?」
「階さん……本当ですか? 私……私……」
「ああ……美奈津、お前には通常のAI回路の他に、感情回路とでもいえるものがあるんだ。それは藤澤博士によってプログラムされたものではない、10年間かけて育てられたものだ、お前の仮想現実環境での生活は、身体の完成を待つためではなく、感情回路を育てるためのものだったんだろう」
 美奈津は俺の言葉を聞くと、会心の笑顔で、そっと自らの左胸に手を添えた。
「階さん……私、今なら言えます。心からあなたを愛していると……」
 その美奈津の心からの愛の告白に、思わず胸が切なくなる。
 だが、照れ隠しに俺はつい美奈津に意地悪な事を言ってしまう。
「心があるといっても所詮おまえは作り物、ロボット人形に過ぎない。こうして腹を開けば、内部の機械仕掛けが丸見えだ。いくら人間そっくりに造られていても、心があっても、おまえは人間じゃない。おまえが俺を愛していようがいまいが、俺の所有物であるおまえは、俺の命令に必ず従わなければならない」
 その俺の意地悪な言葉に、美奈津は健気にうなづく。
「はい……階さん。心も身体も、私のすべてはあなたのものです。階さんのためになら私、どんなことでもいたします」
 俺は、そう言って微笑む美奈津の拡張端子からケーブルを引き抜くと、露出している美奈津の腹部の内部メカを見つめた。
 内部のギミックを見られるのが恥ずかしいのか、美奈津はほほを真っ赤に染め、左右に開いた腹のカバーを閉じようとする。
「閉じるな、おまえのロボット仕掛けをもう少し観察してやるからそのままで居ろ」
 そう言って美奈津を制すると、俺はゆっくりと美奈津の露出した内部メカの上に視線をさまよわせた。
「おまえはよく出来たロボットだが、目新しい技術は使われていないな。こんなに人間そっくりに造られているおまえの身体に、まさかガソリンエンジンや歯車が使われているとは思わなかったぞ」
 俺がそう言うと、美奈津は哀しげに瞳を伏せ、恥じ入るように身体をこわばらせた。
「どうした? そんなに俺に内部の仕組み……機械仕掛けの本性を知られるのが、嫌なのか?」
 俺の言葉に美奈津は首を振ったが、表情がそれを裏切っている。
 ロボットであっても人間と変わらない心を持つ美奈津は、機械仕掛けの自分の身体に対して、コンプレックスを抱いているのだろう。
 俺はそんな美奈津に、意味ありげな笑みを浮かべて笑いかける。
「美奈津、おまえ、こんな機械仕掛けのロボットでなく、人間として生まれたかったなんて思っているんじゃないだろうな?」
 俺の質問に、美奈津は哀しげにうつむき、口ごもってしまう。
「どうなんだ、美奈津。俺の質問には必ず正確に答えろ。これは命令だ」
 俺がそう命じると、美奈津は小さくうなづく。
「はい……」
「人間の女だったなら、俺の本物の恋人になれたかもしれないなんて思っていたんだろ? 違うか?」
「…………」
 無言でうなづいた美奈津の身体を、俺は柔らかく抱きしめ、唇を奪う。
「んっ」
 短く熱い口付けを終えると、俺は美奈津の耳もとにそっと囁いてやる。
「馬鹿だな……おまえは。もしおまえが何の取り柄もないただの人間の女なら、俺はおまえを、歯牙にもかけなかっただろうよ。それでも、おまえは人間として生まれたかったと思うか?」
 俺がそう言うと美奈津は、はっと顔をあげた。
「よく考えてみろ。由紀子はもちろん人間だが、俺は今日、あいつでなくおまえを、ロボットのおまえを選んだ。理由は簡単。おまえの方が俺の好みにあっていたからだ。美奈津。パンティを脱いで、ま○こが良く見えるように、ソファーに座って足を大きく開いてみろ」
「はい」
 俺がそう命じると、美奈津は羞恥にほほを染めながらも、パンティを脱ぎ、俺が命じた通りにソファーに座って足を開いた。
 薔薇のつぼみのような、愛らしい人造ま○こがあらわになる。
「こうして、ま○こに至るまで精巧に造られたおまえのボディは、人間そのもの、いや、人間以上だ。人間では到底不可能な完璧な美しさを持っている。おまえも由紀子の黒々としたま○こを見ただろう。それに比べておまえの人造ま○この、この美しさはどうだ?」
「階さん……私……わたし……んっ」
 恥じらいながらも嬉しそうに微笑む美奈津と、もう一度短いキスをかわし、抱き寄せながら、股間にそっと指を差し入れる。
「はあ……はあ……はあ……はあ……」
 弱い部分を巧みにいじられて、うっとりとほほを染め、吐息を乱れさせた美奈津の耳元に、甘い言葉を囁いてやる。
「そして、感度も反応も人間以上、女としての性能も完璧だ。美奈津、容姿も性格も、おまえはすべてにおいて俺の理想通りだ。美奈津……おまえにひとつ、重大な命令を与える。おまえは、今から俺の本物の恋人として振る舞うこと。期限は、俺がおまえに飽きるまでだ。解ったな?」
「階さん……私で……こんな機械仕掛けの私で、本当に良いんですか?」
「機械仕掛けのロボットだからこそいいんだ。俺にとって恋人とは支配する対象であって、決して対等な存在ではない。ロボットだからこそ、俺はおまえのすべてを支配する事が出来る。人間以上に美しいおまえの身体を自由に制御し、俺の望むままに操る事が出来る。そして、いくら心があっても、ロボットであるおまえは、人間と対等に付き合う事は出来ないんじゃないか? おまえも愛する俺に、すべてを支配される事を望んでいるはずだ。違うか?」
「はい……階さんのおっしゃる通りです。いくら心があっても私は、他人に所有され支配されるために造られたロボットです。階さん。私を……この機械仕掛けの私のすべてを支配してください」
「よし。今から俺はおまえを恋人として支配し、そして愛してやる。おまえは、ロボットとして備えられたすべての機能を使用して、俺に仕えるんだ。いいな?」
 俺がそう言うと、美奈津は心から嬉しそうに、会心の笑みで笑った。
「はい……不束な私ですが、どうぞよろしくお願いします。階さん。何なりとご命令下さい」
 健気な台詞に胸が熱くなる。股間に添えた手を、少し激しく動かしてやる。
「あっ……ふっ」
 羞恥にほほを染めながらも美奈津は嬉しそうによがり声をあげる。
「どうだ。気持ちいいか?」
「はい……とっても、とっても、気持ちいいです。階さんにこうして大切な部分をいじってもらってるなんて、本当に夢みたいです……」
 美奈津はそんな可愛い事を言う。
「夢じゃないさ。おまえが望むならいつでも、この敏感な人造ま○こを可愛がってやる。俺も、おまえがこうして悦ぶ姿を見るのは好きだからな」
 既に美奈津の股間は熱く火照り、その中心部の穴からは、甘い蜜が漏れてきている。
「あっ。ああんぅ!」
 指をその穴の奥に差し入れてやると、美奈津は小刻みに身体を震わせ、はしたなく声を上げた。
 ぴゅわっと奥の方から、愛液がほとばしり俺の手を濡らす。
 ぐいっ……かちりっ……。
「あっ。ああんっ!」
 びくびくんっ!! ウィーン……カチャン……。
 クリトリスのスイッチを押してやると、美奈津は、人造ま○この内部から機械音を発して、激しく身体を震わせる。
 全身から力を失い、俺の胸に顔を埋めて、せつない吐息を漏らす。
「はあ……はあ……はあ……はあ……はあっ!」
 ぷしゅうぅぅぅぅぅ〜。
 お尻から勢いよくガスが漏れ、美奈津は羞恥に顔を手で覆ってしまう。
「クリトリスのスイッチを押しただけでこんなに感じて、ガスまで漏らしやがって。おまえは本当に恥ずかしい女だな」
「階さん……ごめんなさい。ご不快な思いをさせてしまって……・」
「馬鹿だな、誰も不快だなんて言ってないだろ。こんなに俺を感じてくれて、嬉しく思ってる。褒美に、もっとおまえを気持ち良くさせてやろう」
 そう言って俺は、左腕を美奈津の腰にまわし力強く抱き寄せ、乱暴に唇を奪った。

第3話────

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