Papa M / Live from a shark cage
 元スリントのメンバーで一時はトータスにも在籍していたディヴィッド・パホの”Papa M”名義でのファーストアルバム。P-VINEよりリリースです。アコースティックギターやチープなおもちゃのピアノ(?)などを巧みに駆使した美しい作品。演奏自体に派手さはないのですがそれが逆に隠し味的要素になっていると思います。個人的には狭い空間(車の中など)で聴くのが好みです。まったりというよりは質感的にざらっとしていて時折光る音に気づくような感覚があります。地味な割に(地味だから?)何度聴いても飽きないのもまた良しです。
Yo la tengo / And then nothing turned itself inside-out
 ヨラテンの中でこのアルバムが一番好きかも知れません。これまでの作品とは大きくかけ離れ、ほとんどの曲では以前まで多用されていた特徴的な歪んだギターが使われておらずアナログシンセやオルガン、ヴィブラフォンなど柔らかめな音色が静かに目立っています。どんなに頭が疲れていても受け入れられる非常に希有なアルバムではないでしょうか。リリック面でもヨラテン節は遺憾なく発揮されており、「グリースのヒットメドレー」だの「ケイト・モス」だのユニークな表現や固有名詞がポンポン飛び出す様は痛快です。来日公演では7曲目の”you can have it all"のカヴァーをカラオケスタイルと称して振り付けまで披露していましたがマクニューの動きは悶絶級に笑えます。音場としてはヘッドフォンで聴くのが好みです。
Aphextwin / Selected ambient works 85-92
 かなり古い作品ですが気に入っています。特に3曲目まではもう何度聴いたかわからないくらいのヘヴィーローテーションでかけまくってました。勿論今でもちょくちょく聴いてます。古いだけあって音色とその響かせ方の凄さがはっきりとわかります。ヘッドフォンで聴くのが好みです。勿論クラブサウンドなので低音をズンズン効かせるのが良いと思いますが、1曲目だけは低音をシンセヴォイスのハモりが聞こえるか聞こえないか位にまで抑えるイコライジングが気に入ってます。 幻想的な響きと重い4つ打ちが相まって気分が高揚する一枚。
Mice parade / Mokoondi
 マイス・パレードの3枚目のフルアルバム。これまでエレクトロサウンドを頑なに拒否し、生にこだわって1曲1サンプリングの原則を貫き通してきたアダム・ピアーズでありましたが、今回は遂に一切のレコードサンプリングを捨て完全”生”のインプロ作品に仕上げてきました。唯一サンプルが聴いてとれるのは8曲目のドラムループですがこれは自身のバンド、ディラン・グループ(どっちがサイドプロジェクトなのかわからなくなってきてますが)のライヴ音源だそうで、そのこだわりようはハンパじゃありません。プロセスの変化がテクスチャーにも影響を及ぼした模様で、1〜3曲目、4〜6曲目まではそれぞれ3部構成の組曲式になっており個人的にはこの1つめが非常に気に入ってます。突如鳴らされる普段聞き慣れないエキゾチックな音は中国琴chengという楽器だそうです。 その他にもアフリカの熱帯雨林に住むピグミー族の音階を取り入れたり、偶然出会ったココナッツ売りの唄をミニディスクに録音して使ったり遊び心満載のアルバムに仕上がっています。自室のオーディオで聴く事が多いですが、スピーカーの配置がかなりいい加減なので定位をきっちり把握して楽しみたい時はヘッドフォンで聴きます。ラジカセで聴くのは避けた方が良いと思います。

Radiohead / O.k.computer
  英ギターバンド・レディオヘッド3作目にしておそらく最後のギターアンサンブルアルバム。ドローンでもノイズでもないロックギターサウンドでこれ以上美しいポップミュージックは皆無ではないかとさえ思います(しかも歌モノですからね)。このアルバムは世間一般的にもかなり高い評価を受けているようですし、またひとつひとつの楽曲がそれぞれ粒ぞろいなので好みの曲や聴き所も大きく意見の分かれるところでしょう。確かにどれもそれなりに思い入れのある曲なのでこの中からひとつ選べと言われれば考えます(ひとつ外せと言われれば即座に7曲目を外すのですが)。小一時間悩んだ末、”subterranean homesick alien"を選ばせて頂きました。オルガンとギター(最初に聴いたときはギターの音だとは思わなかった)の絡まり具合が最高なお気に入りの一曲です。音場は断然ヘッドフォンだと思います。低音が程良く響くように調節し、あとはロックアルバムよろしく鼓膜が耐えうるレッドラインまでヴォリュームを上げて聴くのが好みです。ダイナミックレンジの広いヘッドフォンがあればホールリヴァーヴをいっぱいにして音量は控えめに聴くのも良いかも知れませんね。


美しく煌びやかな世界観を内包した作品群です