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Pia・キャロットへようこそ!!2 2018MIX・SPECIAL ]
PRESENTED BY じろ〜
「ふっ・・・」
いつものように髭おやぢは椅子に腰掛けお得意のファイティングポーズで口元を隠して笑った。
「約束の時はもうすぐだシンジ・・・ぐふっ」
しかしその口元は半角笑いとかけ離れた、それはもうだらしなく緩みまくって涎を垂らしていた。
「碇、いい加減口を締めんか」
「むぅ」
冬月に言われ仕方なしにごしごしと袖口で拭うが、その袖口も幼い子供が鼻水を拭くようにてかてか光っていた。
「まったく・・・おまえは子供か?」
「ふっ」
今度はニヤリ笑うと冬月が手に持っている物を見つめた。
「なんだ碇?」
「初孫の名前は譲れませんよ、先生?」
「ふん、残念だったな碇、それはユイ君から是非にと頼まれているからな」
ニヤリ。
姓名判断の本を横目にしてやったりと笑う冬月を見て、ゲンドウのサングラスの下に隠されていた目が大きく見開いた。
「ユ、ユイ・・・」
「すべてはユイ君のシナリオ通りか・・・」
机の上に流れた物は涎ではなく、見開いた目から止めどもなく流れるゲンドウの涙だった。
「うぐぅ」
「変な泣き声をだすな」
「・・・」
そして薄暗い部屋の中に沈黙が訪れた。
その頃シンジは一人、第三新東京市が見渡せる・・・ミサトと出会って初めて案内された高台に来ていた。
無言のまま、街を見ながら昨夜耕治と話していたことを思い出していた。
「それでシンジ君の気持ちは決まったのかい?」
「・・・正直、迷っています、だってこんな事なるとは思ってもいませんでしたよ」
「だよな、普通日本じゃあり得ないことだよなぁ」
「はい、でも今の日本を支配しているのはNERVで、しかもその司令が父さんなんですよ」
「あの人か・・・確かにつかみ所が無い人だよな、おっとすまん」
「いえ、僕から見ても変な父さんですよ、実際朝食卓で見かける度に違和感が未だに消えませんし・・・」
「そ、そっか・・・」
「はい、ですから気にしないでください」
「ん、じゃあ話を元に戻すけど、シンジ君はどうしたい?」
「出来たらみんなが幸せになれるようにはしたいけど、でも・・・」
「マユミさんを裏切ることになるって思っているのかい?」
「そ、それは・・・」
「確かに心ない人はそう思うかもしれない、でもマユミさんはそうなのかな?」
「マユミは別に、どちらかと言うと僕に任せるって感じなんです」
「ふ〜ん、じゃあ後はシンジ君の気持ち一つだ」
「そうですね・・・」
お互いにコーヒーを口に含んで暫く沈黙していたけど、不意に耕治はニヤっと笑う。
「シンジ君、本当はもう決めているんだろう?」
「えっ、どうしてそう思うんですか?」
「だってそうだろう、シンジ君は自分で決めてそして戦ったんだからなぁ・・・」
「あっ・・・」
「良いじゃないか、胸を張って堂々と彼女たちを幸せにして上げる、それが君のやるべき事だと俺は思うよ」
「耕治さんがしたみたいにですか?」
「ああ、今までがんばってきて解ったことが沢山あるけどこれを逃す手はないぜ」
「チャンスって事ですか・・・」
「そうだな、だから俺から言うことはもう無いさ、がんばれよ、同じ立場の者として応援しているよ」
「はい、ありがとうございました」
「なんかあんまり気の利いたこと言ってないけど、シンジ君なら大丈夫だ」
「いえ、なんかすっきりしました、自分で出来ることを精一杯がんばってみます」
「そうそう、世界を救ったヒーローが彼女たちを幸せに出来ないはずが無い!」
「はい」
「まあ浮気をしようモノなら殺されちゃうけどね」
「その前に確実にばれちゃいますよ、特にこの第三新東京市でそんなことしたら・・・」
「お互い長生きしような?」
「そうですね、僕もまだ死にたくありません」
「「あはははは〜っ」」
深夜の事務所で耕治と同じ立場として対等に話が出来た事でシンジの心は決まったのかもしれない。
「うん、もう大丈夫だ」
一人頷きぎゅっと握りしめた拳を見て、そして最後に自分が戦い守ってきた街並みを見つめて振り返ると
知った顔の人がタバコの煙を揺らめかしていた。
「加持さん?」
「よお、シンジ君」
「どうしたんですか、こんな所で・・・」
「俺だって散歩ぐらいするさ」
「あ、そう言えばここはミサトさんとの思い出の場所でしたね」
「まあな、それよりシンジ君」
「はい?」
「男の顔になったなぁ、良いことだと思うよ」
「ありがとうございます」
「そうだ、浮気がしたくなったら遠慮なく相談してくれ、良い方法教えて上げるぞ」
「加持さん、ミサトさんに言いつけますよ?」
「それは勘弁してくれないか」
「じゃあ内緒にしますけど、一つお願いがあるんですけど良いですか?」
「うん? 俺に協力出来ることならOKだ」
「交渉成立ですね」
「シンジ君、段々碇司令に似てくる気がするよ」
「しょうがないですよ、だって父さんの息子なんだから・・・」
「お、言うようになったな〜」
「あはははっ」
そしてシンジは加持の車に乗り込むと行き先を告げ、街に向かって行った。
その頃、キャロットではシンジが居ないことに気が付いていたマユミ達が心配そうにしていた。
お陰で普段より静かではあったが、どことなく店内の明るい雰囲気が一緒に無くなってしまった様でもあった。
「彼女たち元気ないけどどうしたのかしら?」
「そうですね、もっと元気な娘たちだって聞いていましたけど・・・」
「う〜ん、なんか不安そうな顔しているよね」
久しぶりのトリオで仕事をしていたとユキ、紀子、ともみはその様子を見ながら小さな声で話していた。
「ほらほら〜おしゃべりは仕事が終わってからよ♪」
「はいはい、それで何でそんなに機嫌がいいんですか、留美さん?」
「えへへ〜、何でもないよ〜♪」
「全然説得力に欠ける笑顔で話しても意味無いです」
「そ〜お〜♪」
「あ〜ん、わたしにも教えてくださいよ、留美さん!」
「ふふ〜ん、どうしようかなぁ〜・・・えへへへ〜」
「だめよともみ、すでに逝っちゃっているから今話しかけても無駄ね」
「誰が逝ってるですって、ユキちゃん?」
「留美さん」
「そ、即答とは良い度胸しているわね・・・」
「すいません、物怖じしないのが私ですから」
「ほ〜んと、出会ったときからがさつなんだからしょうがないよね〜」
「それはどうも、若くて元気が有り余っているんですよ、おばさん」
びきっ。
「・・・・・・なんか言ったかな〜、ユキちゃん?」
「ふふふっ、耳も遠くなったんですか留美さん?」
「ユ、ユキちゃん、ダメですよそんなこと言ったら・・・」
「わたしもそう思うよユキちゃん、留美さん年のこと気にしているんだから」
めきっ・・・・・・から〜ん。
「ともみ、あんたが止めさしてどうするのよ?」
「えっ? ・・・あ」
「ふふふふふふふふふふっ」
「ほ〜ら、留美さん本当のこと言われたから喜んでいるわよ」
「確かに体は小刻みに震えていますけど雰囲気は違う感じが・・・」
くしゃくしゃになったトレイを踏んづけながら一歩踏み出した留美の様子に、三人の背中に戦慄が稲妻のごとく走った。
「覚悟は良いかなぁ〜三人とも・・・」
ゆらりとまた一歩三人に近づく留美はあずさに負けないぐらいの笑顔を浮かべていたが、目の奥は鈍く光っていた。
「残念だわ、せっかく耕治くんと結婚できるのに入院なんてあずさちゃんみたいね、意味は違うけど」
「じょ、冗談ですよ、やだなー留美さん」
「お、落ち着いてください、留美さん」
「ご、ごめんなさい、留美さん」
「助かりたい?」
「「「こくこくこく」」」
「ダメね」
あっさりと言い放ちそしてゆっくりと腕を上げて三人に襲いかかろうとした留美を後ろから抱きしめておとなしく
させたのは、みんなの将来の夫でもある前田耕治その人だった。
「はい、そこまで・・・ダメですよ、留美さん」
「あん、耕治くぅ〜ん♪」
がたがたがた。
恐怖のため緊張していた三人は留美の急激な変化に力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
「三人とも大丈夫?」
「な、なんとかね」
「はぁ・・・」
「ううっ、怖かったよ〜お兄さ〜ん」
「ごろごろ〜♪ 耕治くぅ〜ん♪」
留美の様子を確認した耕治は体を離すと真面目な表情で言い聞かせるように四人を叱る。
「ふぅ、みんなお店では仲良く楽しくいつも明るい笑顔でいなきゃダメじゃないか?」
「ごめんね耕治くん、留美が悪かったの・・・すん」
「ご、ごめんなさい」
「すいません」
「ごめんなさい、お兄さん」
「家だったらまだ良いけど、ここではお客様がいるんだからね、それを忘れないで?」
「はい」
「解ったわ」
「はい」
「はい、お兄さん」
「うん、みんなのこと信じているから・・・だからがんばろう!」
「「「「はい!」」」」
と、再び笑顔が戻った彼女たちの頬に素早くキスをする耕治に一瞬驚いたが顔を真っ赤にしてしまった。
「こ、耕治くぅ〜ん」
「ば、ばか・・・」
「はぁ・・・」
「おにいさ〜ん」
「がんばったらもっと凄いご褒美上げるけど・・・ケンカしてるんじゃ上げられないな?」
「る、留美がんばっちゃうよ!」
「わ、わたしだって!」
「がんばります!」
「ともみだってがんばるもん!」
「くすっ、やっぱりこうでなくっちゃ彼女たちらしくないよな〜、さてと・・・」
だっとフロアに勢いよく出ていった四人を見送ると、耕治はもう一つのグループへ近づいていった。
「ねえマユミ、シンジはどこに行ったのか知らない?」
「いえ、私も知らないです」
「ふ〜ん、隠してない?」
「マナさんこそ知らないんですか?」
「わ、わたしだって知らないわよ」
「それは無いわね、マナだったらこっそりと一人で抜け駆けするから今頃ここにいないわ」
「アスカ、それって誉めているように聞こえないんだけど?」
「あたしも誉めたつもり無いけど〜♪」
「くっ」
「フフン」
「まあまあアスカさんもマナさんも落ち着いて・・・」
「レイ? あなたは聞いてない?」
「何も」
「そう・・・」
「でも、碇くんは逃げない」
「そうですね」
「そうね」
「うん、シンジだもんね」
「だから、大丈夫」
レイの確信に満ちた瞳は、シンジに対して絶対の信頼を表すように輝いていた。
さっきまで不安だった表情は消え去り、大好きなシンジの事を思い浮かべて彼女たちに笑顔が戻った。
「シンジ君もそこまで思われているなんて幸せだなぁ」
「店長さん」
「あー、あんたもしかしてシンジの事何か知ってるわね!?」
「ア、アスカ、店長に向かってその言い方は・・・」
「知っているんですか?」
「う、うん、まあね、これでも店長だし休む理由ぐらい知っているよ」
四人の少女に囲まれて、その迫力に一歩後ずさった耕治だがいつもの笑顔で答えてあげた。
「今やるべき事がなんなのか・・・解っているシンジ君はそれを実行しているだけだよ」
耕治の物静かに諭すような言い方に、食って掛かったアスカを始めみんなは神妙な顔になった。
「なら、今の君たちがやるべき事がなんなのか、言わなくても解るよね?」
「「「「はい」」」」
「うん、それじゃお仕事がんばってね」
耕治の言葉に背中を押されたのか、ユキたちと同じ笑顔になってフロアに戻っていった。
「くすくすっ」
「笑うなよ、神楽坂」
「ごめんごめん、つい可笑しくってさ・・・」
テーブルで台本読みながら耕治たちの様子を見ていた潤は、肩を震わせて笑っていた。
「なんかさ、あの頃の木ノ下店長に重なって見えたよ」
「俺もそう思ったよ、もっとも今その店長をやっているんだから、それだけ大人になったって事かな?」
「でも、耕治は全然変わってないけどね」
「神楽坂の胸と一緒だな?」
「こ、耕治!」
「くくくっ、冗談だよ」
「も、もうっ、耕治がどう言う目で私を見ているか解ったわ」
「俺にとってはそれはそれは可愛い女の子さ♪」
「そんな事言っても誤魔化されないんだから・・・よ〜し!」
そう言って立ち上がった潤はすれ違いざまに耕治を軽く睨むと、そのまま店の奥に行ってしまった。
「う〜ん、ちょっと言い過ぎたかな・・・」
頭をぽりぽりとかいて拙い表情の耕治だったが、すぐに現れた潤を見て驚いた顔に変わった。
「どう、これでもまだそんな軽口を言える?」
「うっ」
舞台以外ではズボンがほとんどの洋服姿しか見た事無い耕治にとって、久しぶりのピア・キャロットの制服姿は
新鮮かつ違った魅力を見せられた。
しかも今着ているのはアイドルタイプの物で、潤の白い胸元は耕治の目には眩しかった。
「私だって女の子なんだから少しは成長したでしょ?」
そう言って耕治の顔をしたから見上げながら、さりげなく胸元を見やすいように側に近寄っていた。
「わ、解った・・・俺の負けだよ」
「ふふん、解れば宜しい」
「それにしてもよく似合っているよ、さすがだな」
「耕治、いったい私をなんだと思っているの?」
「俺の奥さん」
「こ、耕治!?」
「あれ、違ったのか?」
「ま、まだ籍だって入れてないし・・・式だって・・・その・・・」
「くくくっ、ホント面白い奴」
「耕治!」
からかわれた恥ずかしさで真っ赤になってぽかぽかと胸をたたく潤を、耕治は笑いながら抱きしめてあげた。
無論、お店の中なのだが、こんな事は日常茶飯事のキャロットにおいてはお客さんは楽しそうに見ているだけだった。
「今日はナイスだ! あの神楽坂潤の貴重な写真まで撮れるとは・・・」
そのお客に混じってケンスケはメモリーがなくなるまでデジカメのシャッターを押し続けていた。
すでに彼の財政はかなりの潤いを見せていたが、後にアスカたちに強襲されほとんどを没収されるのは確定事項だが
この時だけはケンスケは幸せの最高潮だった。
「あ〜ん、潤くんだけずる〜い!」
「留美さん、仕事してください」
「もうっ、あいつったら所構わずなんだからっ!」
「ふふふっ、ユキちゃんもして貰いたいんですよね♪」
「紀子・・・どうしてあんたっていつもいつも・・・」
「あ、留美さん行っちゃいましたね」
「こ、こらっ、何で止めないの?」
「ともみも行く〜」
「待ちなさい、ともみ!」
「ほらっ、ユキちゃんも行きましょう♪」
「ちょ、ちょっと紀子、離しなさ〜い!」
「ふふふっ、楽しいですね♪」
結局見ていた三人は、先に抱きついていた留美に追いつくとそこでまた騒ぎ出してしまった。
「あずさ・・・おまえの苦労がやっと解った、今までごめんなぁ・・・」
女の子五人に体を揺さぶられながら、遠退きそうな意識を必死に繋ぎ止めようとする耕治を、お客さんたちは
楽しいコントを見られて喜んでいた。
「あら、シンジ?」
ケイジに封印してあるエヴァ初号機の前にいたシンジに、白衣姿のユイが歩いてきた。
「母さん、どうしてここに?」
「うん、ちょっとお話ししてたのよ・・・キョウコとナオコさんと」
「何を・・・って、あ、あの?」
「こんにちは、アスカちゃんがお世話になってるわね」
「キョウコ、これからはもっとお世話になるんでしょう?」
「もちろん、それにリツコさんもでしょ?」
「当然、しかしこれでシンジ君は私たちの息子にもなるのよね、ユイ?」
「ふふふっ、そうね♪」
「あ、あの、お二人はどうして僕に抱きついているんですか?」
「息子を抱きしめるのはダメなのかしら?」
「アスカちゃんも可愛いけど綺麗な息子も大好きよ♪」
「いいじゃないシンジ、他に誰もいないんだし・・・甘えてもいいのよ?」
「こ、ここじゃ絶対父さんが見てるって・・・」
妙齢の女性に抱きつかれながら、沸騰寸前のシンジは真っ赤な顔のままユイにそう呟いた。
「あの人ったら・・・ウフフッ、今晩が楽しみだわ」
同時刻、司令室で慌ただしく逃げ出そうとする髭おやぢを初老の男がお茶を啜りながら楽しそうに笑っていた。
一通り息子をからかって満足したのか、ユイは改めてシンジに質問した。
「そう言えばシンジはここで何をしていたの?」
「うん、エヴァに会いに来たんだ・・・」
「そう・・・じゃあ乗ってみる?」
「えっ、でも初号機は封印されているんじゃ、それに父さんの許可無しじゃ・・・」
「そんなの必要ないわよ、私たちがいるんだから」
「か、母さん?」
「そうよね、何もできないんだし・・・」
「そうそう、ネルフの司令しかできないんだから大丈夫よ」
同時刻、司令室の中で髭おやぢが泣いているのを、初老の男が将棋を指しながら大きな声で楽しそうに笑っていた。
それからロッカーでプラグスーツに着替えたシンジは、当時と同じようにエントリープラグに乗り込んだ。
「久しぶりだな・・・ここに座るのも」
「それじゃ用意はいいかしら、シンジ?」
「あ、うん」
「いくわよ・・・キョウコ、エントリースタート」
「はい、スタート」
「ナオコさん、せっかくだからデータの採取しちゃいましょう」
「すでに取ってるわよ」
「さすがね」
ネルフの、現時点で世界のトップ3の科学者たちの見守る中、エヴァ初号機は起動を果たした。
「ハーモニクス正常、その他問題なし、凄いわね・・・それにこのシンクロ率」
「キョウコ、いくつなの?」
「99.89%」
「ふーん、貴重なデータね・・・と言うよりさすがユイの息子ってことかしら」
「ふふふっ、あなた達の息子にもなるのよ」
「そうね、自慢の息子ね」
「うーん、早くりっちゃんと結婚しないのかしら」
「それはもうじきよ・・・どう、シンジ」
「母さん・・・どうして初号機は動くの?」
「うーん、実は私にも解らないのよ・・・でも、ひょっとして」
「ひょっとして?」
「エヴァに愛されちゃったのかもね♪」
「は、はぁ?」
「うん、あり得るわね」
「そうね、愛の力で動くのがエヴァだし・・・」
「あ、愛の力って・・・・・・・・・母さんたちって本当に科学者なの?」
「「「もちろん♪」」」
非科学的な事を言っているなぁ〜っと思いつつも、エントリーした時から暖かい波動を感じているので
それも本当なのかと思ってしまうシンジであった。
「でも、エヴァって性別有るの?」
もっともな疑問であるが、それを答えてくれるべき人たちは起動データを確認しながら話し合いに没頭して
シンジの呟きを聞いていなかった。
その後、一通りの作業が終わりエヴァから降りて、シャワーを浴びたシンジはユイたちの元にやってきた。
「ありがとうシンジ、今日はご苦労様」
「あ、うん・・・」
「じゃあ、今度はシンジの番ね」
「えっ?」
「何か話があるんじゃないの、シンジ?」
「どうして?」
「これでもあなたの母親なんだから・・・ん?」
微笑むユイに顔を赤くしながらシンジは一人肯くと、キョウコとナオコに向かってはっきりと自分の思いを口にした。
「父さんより悪い人になってみようと思います・・・だから、アスカとリツコさんを頂きます」
「もうシンジったら・・ふふっ」
「良いわよ、あげちゃうから幸せにしてね」
「もちろん、貰い手が見つかって安心したわ」
「ありがとうございます」
その言葉を聞いたシンジは笑顔から真面目な表情になると、深々と頭を下げて感謝した。
「良かったわね、シンジ」
「うん」
「あ、シンジ君、私からお願いがあるんだけどいい?」
「はい、キョウコさん」
「あのね・・・これからはママって呼んでね♪」
「あ、キョウコずるい、それは私が言おうと思ってたのに」
「早い物勝ちです、ナオコさん」
「むうっ、だったら私もママって呼んでね、シンジ君♪」
「えっ」
「「シンジ君♪」」
「あ、あは、あははは〜・・・えっと、その・・・」
ユイの目の前で二人からからかわれているシンジを楽しそうに見ていたユイは何となく呟く。
「でもそうすると私たち姉妹になるのね・・・」
「そうね、でも前からそんな感じだし・・・ねえナオコさん」
「うん、美人三姉妹・・・良い響きだわ」
キョウコとナオコに揉みくちゃにされながら、シンジは世界一危ない三姉妹だと内心で思っていたが
口に出すほど愚かではなく、ただ笑っているだけだった。
そしてシンジがいなくなった後、残っていた三姉妹はこれからの事を話し合っていた。
「結婚式は前田さんの所と合同で行おうと思っているんだけど・・・」
「そうね、あちらも可愛い娘ばっかりだし・・・前田さんもシンジ君に似て格好いいし」
「りっちゃんもPiaキャロットのコーヒーお気に入りだし、ここで私たちが盛り上げたいわね」
「そこでなんだけど・・・ちょっと耳かしてくれる」
ユイが手招きをして側に呼ぶと、顔を付き合わせてひそひそと話し出す。
「「「かくかくしかじか」」」
「ユイ、あなたって本当に策士よね〜」
「ナオコさん程じゃありませんよ」
「ううん、昔っからユイはいたづらに関しては天才的よ」
「キョウコまで・・・くすん、ユイ悲しい」
「「猫かぶりは止めなさい」」
「はいはい、それじゃ早速招待状を送らないといけないわね」
パソコンに向かって座り直すユイは、華麗なタッチでメールを作成していく。
「起動するのは初号機だけでいいのね」
再度、さっき入手したばかりのデータを元に修正していくキョウコは、ユイと同じような指裁きで打ち込んでいく。
「ふっふっふ、こんな事が有ろうかと密かに作らせていた物がお披露目できるのね♪」
らんらんと目を輝かせながらナオコは、職員達に命令をだしていた。
ピッ。
「はい、送信終わり・・・楽しみだわ」
「こっちもいつでも起動可能よ」
「装備もばっちり、エヴァに搭載しておいたわ」
「「「ふふふふふふ〜っ」」」
周りにいた職員は、その背筋が凍る感じがする笑い声から逃れる様に足早にこの部屋から退出していった。
世界の三大科学者・・・もとい、三大魔女は有る意味ゲンドウより恐ろしいかもしれない。
その頃、司令室にいたゲンドウは何やら震えていたらしい。
「なんだ碇、風邪か?」
「いえ、ただ背筋が寒かっただけだ」
「ふっ」
「冬月、なんだその笑いは?」
「ふっ」
「むうっ」
パチンと冬月の指す将棋の音だけが静かな部屋に響いた。
ガシャーン!
その音に、部屋にいた職員達は音の方向に注目した。
モニターの画面にキーボードが刺さっており、青白い火花と煙がモクモクと上がっていた。
ザー!
スプリンクラーが作動して部屋中が水浸しになっていく中、その壊れたモニターの前で一人の男が
肩を振るわせて叫んだ。
「うぉのれぇ〜! NERVの、ゲンドウのくそったれがー!!」
「あ、あの、時田博士?」
「くっくっくっ、そんなに人をおちょくりたいのか・・・」
「あ、あの?」
「・・・いいだろう、望み通り招待されてやろうじゃないかっ!!」
「ひぃ〜」
「あの時とは違う、究極になったJAを見せてくれるわー!!」
そんな時田博士を見ていた職員は、肩を落としてこう思っていた・・・またやられるのに。
「がっはっはっ〜、目に物見せてくれるわっ、碇ゲンドウーっ!!」
ちなみにユイが書いていたメールの送り先は時田博士宛であり、差出人は碇ゲンドウとなっていた。
そこにはどんな内容が書かれていたのか? 知っているのはユイと時田博士だけであった。
To Be Continue
どうもー、ご無沙汰です(汗)
お待たせしました、第十弾になります。
想像以上にカウンターの周りが早くて正直驚いています。
戦闘シーンは次回に持ち越しです、まあそんなシリアスではないので安心してください。
次をお楽しみにー♪