気がつくと眺めてしまっている、ちょっと会えないだけなのに。

期待して目がそれに流れてしまう。

たまにはあるのよ、そういうときって…。

あ、また見ちゃった…でも、変わらないわ。







早く変わらないかしら、日にちと時刻の表示が”相沢祐一”っていう着信画面に……。







Kanon another story
feat.Kaori-Misaka

久しぶりのTelephone call


by 白川凍耶








「はぁ…」

机に頬杖をついて思わずため息がこぼれた。
変われば変わるものよね、今まで親友の好きな人としか思ってなかったのに、ね。
だけど、今ではちょっと会えなくなっただけでこれだもの。




§   §   §





「香里」
「何?」
「暫く、会えないんだ」


デート中、突然言われた言葉。


「え? どうしてよ?」
「ずっと会えないってわけじゃないんだ」
「そう…電話くらいは、いいでしょ?」
「時間があるときに俺からかける」
「番号、知ってるわよね?」
「もちろんだ」


理由が知りたい、そう思った。


「でも、どうして?」
「企業秘密♪」
「浮気、じゃないわよね?」
「おいおい、俺は香里一筋だぜ?」
「どうだか…」
「信じられないのか?」
「信じてるわよ、浮気だったら…秋子さんの謎ジャムね♪」
「ぐぁ…」


でも、祐一の事、信じてるから気にしない。


「だから……今日は目一杯愛してあげるからな♪」
「え? ちょっと、えぇ〜?」

とは言いつつもなかなか会えないのなら祐一の温もりをたくさんもらっておきたかた。
一杯、愛して欲しかった。だって、私も祐一を愛しているんだから♪
でも、私が気絶するまで頑張らなくてもいいじゃない…もう♪




§   §   §





べ、別に…よ、夜のことまで思い出さなくてもいいじゃない。
き、きっと今、鏡を見たら顔が真っ赤ね。
あれから3週間も経つのね…。

「その間にかかってきたのは2回…。ここ2週間は話さえしてないじゃない…。」

電話しても留守電で…何やってるのかしら。
やっぱり、祐一と一緒の大学にすればよかったわ。
進学のときに祐一にそう言ったら怒られたわね。
レベルを落とすな、俺が勉強して同じ所に行ってやるって…でも、落ちちゃったのよね。
あのときの落ち込みようはなかったわ〜。
思い出すと……くすっ 笑っちゃ悪いけど、笑っちゃうわ。
それで大学の場所がちょっと離れてるからって、祐一は一人暮しをはじめちゃって…。
あたしは自宅から大学へ…寂しいのよ、本当に…。

「はぁ……」

一体何回目でしょうね、このため息は。
また視線が携帯電話の待ち受け画面にいっちゃうわ。
重症ね、こんなにも祐一と話せないだけで落ち込むなんて。

「ふぅ…」

あたしは片手で頬杖をつきながら携帯電話を取って、裏返す。
そこには、笑顔で映っている二人のプリクラが張ってある。
もちろん、あたしと祐一よ。

「祐一に無理矢理とらされたのよねぇ…なのに、我ながらいい笑顔ねぇ」

まぁ 祐一といるだけで顔が綻んじゃうのも事実なのよね。

――ぽ〜☆

思わず見惚れちゃうわ。

――コンコン

「−−ひぁっ!?」

あたしはノックする音にビックリして変な声が出てしまった。
とりあえず、落ちついて…。

「開いてるわよ」
「お姉ちゃん、晩御飯だよ」
「わかったわ、すぐに行く」
「うん」

栞はそれだけ言って部屋のドアを閉めた。
あの子も祐一のこと好きなのよね。
前、祐一の家はどこか聞かれたっけ…教えたら押しかけるのは分かってるから秘密で通したけど。
あの子、ときに積極的になるから気をつけないと行けないわ。
あたしは部屋の電気を消して、居間まで晩御飯を食べに降りていった。



「香里、彼氏とは上手くいってるの?」
「ぶっ!!」

 ご飯を食べている所にお母さんったら何を言い出すのよ!

「あらあら、汚いわねぇ」
「お姉ちゃん、かかった〜」
「栞、ごめん」

 吹き出したご飯が栞の顔についちゃったわ。
 お母さんが変なこと聞くからよ。

「栞、なんて人だったっけ?」
「祐一さんです。相沢祐一。」
「そうそう、祐一さん。一回あっただけだけど、頼り甲斐がありそうじゃない。早くお父さんにも紹介しないと駄目よ」
「お、お、お母さん! まだあたしと祐一はそんなじゃ……」
「祐一さんがお兄さんになってくれるのは嬉しいです」
「そうよ、香里。早すぎていけないってことはないんだから」

 栞とお母さん、性格が似すぎだわ…栞にいたっては何をたくらんでてもおかしくないわね
 なんで結婚とかお父さんに紹介とか…いずれはそうなって欲しいけど、それは祐一次第だし…。
 あ、あたしもなんだかんだ言ってても期待しちゃってるのかしら。
 な、な、何言ってるのよ……あたし達はまだ学生よ、そうよ、まだ早いわ。

「香里、こどもができちゃってからじゃ駄目よ」
「−−っ!?」
「避妊はしなさいね」
「−−っ!?」

 お母さん、何を言ってるのよ…もう…。
 ちゃんと避妊は…ってそうじゃないわ。たまに祐一ったらわすれ…だからそうじゃないのよ!

「ごちそうさま!」

 あたしは逃げるようにして居間をでて、お風呂へいった。
 お母さんも栞も、最近どうもあたしをからかってるような気がするけど、本気で言ってるのよね…きっと。

「栞、早くお兄さんができるといいわね」
「はい。………どうせならお兄さんよりも彼氏になって欲しいです」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないですよ」




§   §   §





「ふぅ……さっぱりしたわ」

本当にお風呂は命の洗濯ね。
ベッドに腰掛け、読みかけだった雑誌を開いてぱらぱらと目を通していく。
ふぅ〜ん…そうか、もうすぐクリスマスになるのね。
………な〜んちゃって、クリスマスのためにずっと前からプレゼント用意してるんだから。

「あと少しね…」

雑誌をテーブルの上に置いて、机の脇においてある紙袋の中から毛糸と作りかけのマフラーを取り出した。
初心者のあたしにとっては難しいのよ。
でも、祐一のためだから頑張るわ。

「クリスマスには間に合うわよね」

せっせと毛糸でマフラーを編んでいく。
セーターも編んでみたいわね、結構楽しいのよ、こういうの。
祐一、喜んでくれるかしら…。視線がまた、携帯電話へいってしまう。
あぁ もうしっかりしなさいよ、あたし…本当にあたしらしくないわ。
でも、祐一の声が聞きたい、祐一に会いたい…。
もう、彼女がこんなに寂しい思いをしてるっていうのに、電話くらいよこしなさいよ。


――Truuuuuuuu Truuuuuuuu


携帯電話がなった。名雪かしら?
腰掛けていたベッドから経ちあがって鳴っている携帯電話を取りに行く。

「あ…」


”着信 相沢祐一”


「あ、あ……」

祐一!!

あたしはすぐに携帯電話をとり、通話の状態になるようにボタンを押す。

「もしもし!!」
「あ、香里か?」
「あたし以外に誰がでるのよ」
「栞とか」
「でるわけ無いでしょ」
「それもそうか」
「久しぶりにかけてきたと思ったら…」
「すまんな」
「祐一のところにかけてもいっつも留守電になってたし」
「あぁ…大抵、いな…いや、いろいろあってさ、ごめんな」

 祐一、どうしたのかしら? ちょっとどもってるけど…。

「ううん、いいわよ。ちゃんとかけてくれたんだもの」
「それでさ、明日、空いてるか?」
「空いてるけど、会えるの?」
「あぁ、ちょうど休…いや、暇だからさ、久しぶりにデートでもしようぜ」
「いいわよ」

 断る必要なんかないわよ。祐一からの誘いを断るわけないじゃない。

「じゃあ、明日…駅に9時でいいか?」
「えぇ」
「わかった、送れるなよ?」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「うが…遅刻はしないようにする」
「期待はしないで待ってるわ」
「厳しいなぁ」
「ふふっ 冗談よ」
「へいへい、さいですか」
「そうそう祐一………」

 その後、いろんなことを祐一と話した。 久しぶりに祐一の声を聞いたわ。
 時間も忘れてお互いの近況とか話した。居間、この時間を祐一と共有してるって感じた。


「もう、こんな時間だな」
「早いものね、時間が過ぎるのって」
「そうだな。また、明日、な?」
「えぇ……遅刻しないで来てね」
「努力します」
「じゃあ、明日ね、祐一」
「あぁ おやすみ、香里」
「おやすみ」

 電話をきった後もずっと携帯電話を眺めていた。 明日、デートかぁ……何着て行こうかな。
 本当に突然電話してきて明日会おうなんて…祐一らしいわ。
 あたしはきゅっと携帯電話を抱きしめた後、充電するために置いて洋服ダンスから服を選ぶことにした。

「何を着ていこうかしら」

 これもいいわね、あ、でも…こっちもいいわ。
 久しぶりのデートだからしっかりしなきゃいけないわ。
 あたしは鏡を見ながらあわせてみたり、着てみたりして選んでいった。



「うん、これでいくわ」

 明日着ていくものも決まり、回りを見まわすと……それはもう、ひどいありさまだった。

「服選びに夢中になりすぎたわ」

 そこら中に散乱している洋服の数々…なぜか夏物まででてるじゃない。
 片付けるのが大変ね、きっと…。

「はぁ…大変だわ…」

 あたしがベッドに入ったのはその後1時間後だった…寝坊しないようにしたら馬鹿みたいだわ。

「おやすみ♪ 祐一♪」

 ベッドの脇においてある写真立てに映っている祐一にキスしてあたしは眠りについた。




§   §   §





「早く来すぎたかしら…まだ7時半じゃない」

 ちょっと気合入れすぎたかしら。そんなことないわよね。
 駅前には大きなツリーが飾ってある。街ももう、クリスマス一色ね。

「きゃっ」

 ふと視界が真っ暗になった。

「だ〜れだ?」

 こんなことするのはたった一人しかいないじゃない。

「祐一でしょ」
「当たり、早いな」
「そういう祐一も早いじゃない」
「いやぁ 久しぶりに会うだろ? 緊張しちゃってなかなか寝れなくてさ」
「あら、祐一でも緊張するのね」
「きつなぁ」
「ふふっ 冗談よ。さ、行きましょ」

 あたしは祐一の腕におもいっきり抱き着く。
 久しぶりの祐一の腕は温かくて、たくましかった。

「あぁ、久しぶりだからな。楽しもうぜ」






「まぁまぁ だったな、この映画」
「そう? 結構素敵だったわよ」
「香里って結構ロマンチストか?」
「そんなことないわよ、素直にいいものはいいってことよ」
「そうか」

 さっきから祐一、俯きがちね。 どうも疲れてるみたい。
 楽しそうだけど、無理してないか心配だわ。

「祐一」
「どうした?」
「何してるのかわからないけど、無理しちゃだめよ」
「ははは。大丈夫だ。これでも体力には自信があるぞ」
「でも…一人暮しなんだし…」
「大丈夫だって、いざとなったら、つきっきりで看病してくれよな」
「そうならないようにしてよね」

 一体何をしているのかしら……。でも、あたしにできることは祐一を信じてあげることだけよね。
 街はいろんなイルミネーションでクリスマスの雰囲気をかもし出している。
 まだ1ヶ月も先のことなのに…。
 祐一、今年のクリスマスも一緒にいられるのかしら?

「「祐一(香里)」」

「「何?(どうした?)」」

「ぷっ」
「くすっ」

 あたし達は顔を見合わせて思わず笑ってしまった。

「ははは、どうしたんだ? 香里?」
「ううん、祐一からでいいわよ」
「いや、香里からでいいって」
「そう? あのね、クリスマスは一緒にいられるのかなって…」
「あ、あぁ もちろんだ。………そのために俺もがんばってるんだし」
「? 何か言った?」
「いや、なんでもねぇよ」

 真っ赤になってそっぽを向いてどうかしたのかしら?
 頭をぽりぽり掻いて…祐一が照れてる証拠なのよね。

「祐一はなんだったの?」
「俺も同じ事を聞こうと思ってたんだよ」

 そっか、祐一も……同じ事考えてたって言われるだけで嬉しく感じるわ。
 そして、今日待ち合わせをしたツリーの前にやってきた。
 そこに……

「あ、雪……」
「また寒い日々が始まるのか」
「ロマンがないわね」
「寒いのは嫌いだ」
「ふふっ 祐一らしいわ」
「どういう意味だよ」
「言葉通りよ」

 それに、鈍感でスケベなところもあいかわらずだけどね。

「…何かひどいこと言われた気がしたぞ」
「そんなことないわよ」
「そっか…」

 そう言ってあたしは上を見上げた…とき。

「んんっ……」

 祐一が突然キスをしてきた。
 あたしは最初こそ驚いたけど、すぐに祐一に体を預けた。

 祐一はそっと抱きしめてくれた…。









 大きなツリーと静かに舞い降りる雪がオーケストラのように雰囲気をかもし出してくれていた。

 久しぶりのデート、それはとっても楽しかった。やっぱり祐一がいると楽しいって感じた。









「香里」

「何?」

「明日、休みだろ?」

「休み、だけど…?」

「じゃあ、俺の部屋に行こうぜ」

「え? ま、まさか…」

「久しぶりに香里さんをおいしく食べさせていただきます」

「ほ、本気?」

「本気♪」

「祐一、講義は?」

「自主休講♪」

「そ、そんなぁ〜」

「さぁて、がんばるぞ〜〜」









「がんばらなくていいわよぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」









HAPPY END♪



あとがき

   初めまして、白川凍耶と申します。じろ〜さん、このような作品、受け取ってくださってありがとうございます

   かおりんSSです…首尾一貫としてないような(^^;;
   あまあまらぶらぶのはずが何故か季節ネタ…(汗)
   一応はたぶん、クリスマスの1ヶ月前ですね…クリスマスネタがあるかどうかはわからないということで(滝汗)

   KanonSSはこれが2作目なんですよね…まだまだだめだめのようです
   こんな僕ですけれど見捨てないで下さいm(_ _)m

   ここまで読んで下さいまして、ありがとうございました。

 00/11/25初出

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル