「日野森さん。休み時間に悪いんだけど、ちょっといいかしら?」
「はい。もう終わるところでしたから、大丈夫ですよ。」
「悪いわね。食べ終わったらマネージャー室まで来てくれるかしら?」
「判りましたぁ。」

忙しい昼過ぎのランチタイムを終えたピアキャロット二号店。
やっと、お昼のシフトのあずさが遅い昼休みを取っていると二号店のマネージャーある涼子が声をかけてきたのだった。

「でもなにかしら?もしかして怒られるとか?・・・なんて、いつもバカやってるアイツじゃあるまいし。」

あずさは、苦笑いした顔を思い出しながらくすっと笑うと最後の一口だけが残ったアイスコーヒーを飲み干し、昼食の食器を従業員指定のトレイに置いて、マネージャー室に入っていった。

涼子の姿を見つけるのと同時に、その傍らにまだ窮屈そうにピアキャロットオリジナルのウエイトレスの制服を着込んだ少女が立っているのに気がついた。

「あれ、新人の子かしら?・・・そういえば。」

あずさは数日前のミーティングの内容を思い出して照らし合わせると、涼子が自分を呼び出した理由をだいたいの事を把握した。

「あ、日野森さん。悪いわね、休み時間だっていうのに。」
「いえ、構いません。涼子さん、その子が夏休み一杯にアルバイトをしてくれる子ですか?」
「さすが察しが早いわね。」

涼子がにっこり笑って、その彼女の背中にそっと手を置くと、彼女は弾かれたように頭を下げた。

「は、始めまして!夏休みいっぱいピアキャロットでアルバイトをさせていただきます、成瀬なぎさです!」
「始めまして、日野森あずさです。これからよろしくね。」
「こ、こちらこそ!よろしくお願いします!」




じろ〜さんのHP開設記念SSって事で・・・

ピアキャロットへようこそ!2  S・S・S 
                Written By Maki



素敵な出会い





あずさがマネージャー室を出ると、さきほど紹介された新人のなぎさがあずさの後ろをくっつくように歩き始めた。
彼女が思った通りに、大袈裟で言えば新人の彼女の教育みたいなものを頼まれてしまったのだ。

「なぎさちゃん・・って呼んでも構わないかしら?」
「はい!」
「そんなに肩の力を入れて答えなくてもいいわ。普通どうりに、ふつうに、ね♪」
「はい、日野森さん。」
「うん、私のこともあずさって呼んでもらって構わないから。」
「はい、あずささん。」

恥ずかしがりながら、あずさの名前を呼んだ彼女の笑顔ははあずさから見てもアイドル並みのクオリティを持った可愛らしさに見えた。

(どうも、ピアには可愛い子がたくさん入って来るのよね。・・・あいつ浮気しないでしょうね?)

店長が本当に何を基準にしているのか一度聞いてみたいとあずさが真剣に思っていると彼女の顔をじっと見ながら、むむむ〜と悩んで心配そうに自分の顔を覗くなぎさにやっと気がついた。

「あの、私の制服の着かたが何か間違いがあるんでしょうか?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事をね。」
「そうですか、良かったです。」
「ちゃんとした自己紹介をしようっか?私は日野森あずさ、19歳。現在は大学1年生。ピアキャロットには高校3年生の夏休みからだからちょうど一年間バイトをしている事になるわね。」
「私は成瀬なぎさ、17歳で高校2年生です。」
「あら高校二年生なの。ここで一緒にバイトしている私の妹も、2年生なのよ。」
「へぇ〜、そうなんですか。」
「後で紹介するわ。さてと、まずはウエイトレス達のスタッフルームから案内するわ。」
「はい!」

元気一杯が新人のモットーらしいなぎさの返事にあずさはにこりと笑って、スタッフルームに入っていった。
あずさはそこに葵がいるのを見付けた。

「葵さん、お休みいただきましたぁ。」
「あずさちゃん、ちょっと遅かったわねぇ・・・ってあれ?その子は?」
「この前のミーティングで店長が言ってたじゃないですか。」
「ああ、夏休みにアルバイトしてくれる女の子というのが彼女なのね。」
「始めまして、成瀬なぎさです。よろしくお願いします。」
「なぎさちゃんね、私は皆瀬葵。葵さんってみんなに呼ばれてるから、あなたもそう呼んでちょうだいね。」
「はい、葵さん。」
「よろしい♪」

葵は指を上げて微笑むと、彼女の顔に自分の顔を近づけた。

「・・・・・あの、なにか?」
「奇麗なお顔をしているなぁと思って♪」
「え、私なんてそんな!」
「あずさちゃんもうかうかしていると、彼をなぎさちゃんに取られちゃうわよ。」
「ご心配無く、2人とも強く想い想われ同士ですから。」
「あはは、言い切るわねぇ♪でも店長は毎年毎年、美少女をウエイトレスのバイトに採用するわよね。」
「葵さんもそう思いますよね。やっぱり店長の趣味なんですか?」
「こらこらあずさちゃん。・・・でも昨年はあずさちゃんでしょ?年々私の地位が脅かされていくようで辛いのよ。とほほ〜。」
「そんなことありません!葵さんは私なんかよりとっても美人で大人らしくて奇麗です。憧れてしまいます!」
「あらぁ、なぎさちゃん。嬉しい事を言ってくれるわね♪」
「・・・結局、大人らしいって年を一番とっているって事なのよね。」
「(ぴく!)・・・あずさちゃん、なにか言ったかしら?」
「ひ、ひぃえ〜!」
「この頃、そっちはラブラブなもんだから余裕じゃない!あたしなんかねぇ〜、あたしなんかねぇ〜!」
「やばいなぁ。」

あずさの言ってはいけない禁句に首をぎしぎし軋ませながら振り向く葵の表情は先ほどの奇麗といわれたものから180度雰囲気が変っていた。

「な、な、な。なんなんですか、あずささぁ〜ん。」
「葵さん、挨拶回りに行ってきますねぇ〜!」
「あ、こら待て!」
「なぎさちゃん、行くわよ!」
「え、はい!葵さんスイマセン!」
「なにがスイマセンなのよぉ〜!」

2人はぴゅ〜うっと怒れる大魔神と化した葵の前から逃げ出した。
スタッフルームから葵が欲求不満で暴れる音を聞きながらあずさは、はぁ〜っと息をついた。

「とりあえずほとぼりがさめるまで他の場所にいっていましょ?」
「私は今日が初日なのにいいのでしょうか。」
「大丈夫、大丈夫♪」

本当に大丈夫なのかしらとなぎさが首を傾げていると、あずさは自然に店の奥の方に脚を向けていた。
あずさが立ち止まった大きなドアの前になぎさは立つと訝しそうにそのドアを見つめた。

「ここはどこなんですか?」
「ピアキャロットの倉庫よ、いろんな食材とかナプキンとか置いてあるとこ。」
「・・・ウエイトレスのお仕事にも何か関係があるんですか?」
「ちょっとね♪」

なぜか口調も嬉しそうにしながら、倉庫の中に入っていくとあずさはキョロキョロ何かを探し始めた。

「なにを探しているんですか?」
「う〜ん、ピアキャロットで見付けた一番素敵なものかな?」
「素敵なもの?」

すでに奥の方にまで早歩きで探すあずさを見ながら、なぎさが素敵なものってなんだろと悩んでいると、目の前の棚の影から何かが飛び出してきた。

「きゃっ!」
「わ!」

なぎさがびっくりしてバランスを崩して倒れそうになる所を、誰かの手が支えた。
しっかり身体を支えてくれるウエイター姿の青年の顔をぼぉ〜っとした表情で見詰めていたなぎさに心配したようにウエイターの青年は声をかけてきた。

「ごめん、大丈夫?」
「は、はい。」
「そう、良かったよ。女の子に怪我でもさせちゃったら大変だからね。」
「すいません、突然だったものですから。」
「こっちこそ驚かせたようでゴメンね。・・・あれ?見なれないんだけど新しいバイトの子かな?」
「はい、今日からバイトする事になった成瀬なぎさです。」
「なぎさちゃんだね。俺は前田耕治っていうんだ。・・・でも初対面がこんなシュチュエーションだからすぐに名前を覚えてくれそうし、なぎさちゃんとぶつかったのは結構ラッキーかな?」
「え?・・・・くすくす、前田さんて面白い方なんですね。」
「この頃はそう言われる事が多いかな。」

照れたように頭を掻く耕治になぎさも少し照れたような笑みを向けると、耕治もにこっと笑いかけた。

「・・・・なに、鼻の下を伸ばしているのよ。」
「イタタタタタタタ!あずさだろ、つねるのは止めろ!!」

そんな2人の雰囲気を壊すようにあずさは耕治の背中をギューっとつまむと耕治は情け無い声を出してしまった。
耕治は背中をさすりながら後ろを向くと、あずさはむ〜っとして耕治を上目づかいで睨んでいた。

「なにをするんだよ?」
「ふん!いつもいつも可愛い女の子には節操が無いんだから!」
「なぁにぉ〜!あ、判った、ヤキモチ焼いてるんだろ。そりゃそうだよなぁ、なぎさちゃんはあずさなんかより可愛いし。」
「そっちこそなんですって!耕治なんかピアキャロットの女の子達を次から次へと毒牙にかけているくせに!」
「あのなぁ?俺がこの店で毒牙にかけたのは・・・・あずさだけなんだから、な?」
「え?・・・嘘よ、そんなの、みんなとあんなに仲が良かったじゃないの。それに出会いなんか最悪だったし。」
「馬鹿だな、あの夏休みの最悪の出会いから俺はあずさの事しか見ていなかったんだぞ。親友の真士にだってあずさの事を譲れなかった位なんだからな。一年間付き合って、俺の気持ちが簡単に変わらないっていうのは判っているはずだろ?」
「うん。判ってる、判ってるけど・・・不安なの。ピアキャロットには私より可愛い子が一杯だし、なぎさちゃんみたいな子も新しく入って来たりすると耕治の心が、いつか、その、私から離れていかないかって不安に思っちゃうの。」
「本当に馬鹿だな、あずさは。・・・ずっと好きだよ。」
「うん♪」

耕治は胸に飛び込んできたあずさをよしよしと長い髪を撫でながらぎゅっと抱きしめた。
完全に周囲にハートが飛び交っているのが認識できそうなくらいなラブラブム〜ドにいつもなら誰も割り込めないのだが・・・

「あのぉ、もうよろしいですか?」
「わ!」 「きゃっ!」

耕治とあずさは、横になぎさが居たのを完全に忘れていたようで本当にびっくりしたようで抱き着きながら飛び上がってしまった。

「恥ずかしい所を見られちゃったな。」
「ご、ごめんね、なぎさちゃん。」
「あずささんも前田さんもちょっと酷いです。」
「ごめん!」
「もう、いいですけど。おふたりは恋人どうしなんですか?」
「まぁね。」
「わぁ♪だったらあずささんがバイトで見付けた一番素敵なものって前田さんの事なんですか?」
「え?・・・・・うん。」

興味津々で聞いたなぎさにあずさは真っ赤な顔を向けながら、こくんとなぎさに肯いた。
さっきまでは先輩の顔をしていたあずさの恥ずかしそうな表情になぎさは少し苦笑し、少し羨ましく思ってしまった。

「へぇ、あずさはそういうふうに言ってくれていたんだ。」
「そうなんですよ。前田さんみたいな人が彼氏なんてあずささんも羨ましいなぁ。」
「ありがとう。でもね、なぎさちゃんだってきっとこのバイトでなにか大切なものを見付けられると思うよ。」
「そうでしょうか?」
「俺も高校最後のバイトだってフワフワした気持ちでやっていたけど、最後の最後で何かを掴めたような気がしたもんな。」
「あずささんの事ですか?」
「それ以外にも自分のこれからとかね。なぎさちゃんも最初はそのウエイトレスの制服に憧れてピアキャロットに入ったんだろうけど、この夏休みが終わる頃にはきっと何か見付けられるだろうし、素敵な事が起きるよ。俺よりもカッコイイ男の子との出会いとかね♪」

耕治の軽口にかぁ〜っと顔を赤くしたなぎさの肩をポンポンと叩くと、まだ恥ずかしそうなあずさのおでこにデコピンをした。

「あっ!」
「ほら、いつまでもポ〜っとしていないの。まだなぎさちゃんに店内の説明を終えていないんだろ。早くしないと涼子さんだって怒っちゃうぞ。」
「うん。葵さんも恐いけど・・・。」
「また年齢の事でからかったんだろ?」
「へへへ♪しょうがないね。じゃ、後で。」
「うん。なぎさちゃん、今後もよろしくね。」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

なぎさはペコリと頭を下げるとあずさの後を追うように倉庫から出ていった。
前を歩いていたあずさの横に並ぶと少しうつむき加減であずさの方を向いた。

「あずささん。」
「なに?」
「前田さんが言ったように私は最初は制服が着たいだけでこのピアキャロットにバイトしたいって思ったんです。」
「うん、みんなそうじゃないかな?」
「・・・こんな私でも、もっと大切ななにかが見付けられるんでしょうか?」
「大丈夫よ、私だって耕治の出会いなんか最悪だったもの。だけど今ではこうやって付き合って、その、幸せだしね。」
「いいなぁ、私もあればいいなぁ。」
「それは私が保証してあげる。きっとここで素敵なことがなぎさちゃんの事を待ってるよ。」
「本当ですか!」





「うん!それがピアキャロットの魅力なんだもの♪」






最初に感じた事だけが全てじゃないんだよね


どうもMakiです。
じろ〜さん、ホームページ開設おめでとうございます♪
お約束のまじにショートなSSをお送りいたします。
あずさ×耕治のラブラブものでしたが、HP開設記念SSとしてちゃぁんとコアは作ったつもりです。
ほんとかな?(笑)
自分のページを作った事できっと今、思っていることよりも楽しくて素敵な出会いがたくさん待っているはずです。
どんどん頑張ってくださいね!


Makiさんありがとうございます!

う〜ん・・・いいなこれ。

大丈夫です!しっかりとコアな作品ですよこれ!

しっかりと読ませてもらいました。自分の書くSSに足りない物が見えたような気がします。

やはりテーマを決めて書かないと後が続かなくなりそう・・・。

私って行き当たりばったりだから勢いで書いてるときが多いいから気をつけないと・・・。

Makiさんの書くSSを読むたびに自分で書きたくなるのでこれからも楽しいSSを期待しています。

それでは。


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