Original Works 『EVE−burst error−』
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EVE Short Story
氷室恭子の探偵日記 日常編その2
私の名前は氷室恭子。
職業はエリート捜査官からちっちゃい貧乏な私立探偵事務所に転職したばかり。
現在、とある人物を尾行中。
男と女が腕を組んである建物の中に入っていく。
私は持っていたカメラでその現場を写真に納める・・・よし。
「ふぅ・・・これで証拠写真はばっちりね」
ウェストバックにデジカメをしまい、事務所に戻ることにした。
「♪〜♪♪〜」
途中、スーパーによって夕飯を考えながら食料を買い気分良く歌なんて口ずさんでみる。
人気があまりない港の倉庫街に来ると、事務所の前でちっちゃくて汚くそれで貧乏な私立探偵事務所の
所長、天城小次郎が岸壁から釣り糸を垂らしていた。
「よう、お帰り・・・どうだった?」
「案の定お決まりの浮気よ、写真もちゃんと撮ってきたわ」
「さすがは氷室、感心しちゃうな」
「それはどうも、そう言う小次郎はどうなの?」
「ダメだ・・・まったく釣れん」
どうでも良いけど何でいちいち胸を張って偉そうに言うのかしら?
「だから氷室・・・慰めてくれ〜♪」
「ちょ、ちょっと止めてよ! こんな所で・・・あっ・・・んんっ」
「口で嫌がっても体は正直・・・うごっ!?」
持っていた大根で思い切り小次郎の顔面を強打してあげる・・・まったく節操がないんだから!
もっとムードを大切・・・って違うわね、はぁ〜。
段々自分が小次郎色に染まってきている様で、なんだかとてもやり切れない気持ちになってくる。
「あ〜あ、これじゃ大根おろしにするしかないわね・・・」
「俺の顔は良いのかよう?」
「ああ、それ以上可笑しくならないから別に良いわ」
「くっ・・・俺はおまえの上司なのに・・・」
「上司だったら部下にお金を借りないでよね?」
「まったくもってごめんなさい」
「もう良いわよ、ともかく中に入りましょう」
「おお、そうだな・・・続きは食事の後でたっぷりとな、ぐふふふ〜」
「はあぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
本当にどうしてこんなスケベ大魔人の女ったらしに惚れちゃったのかしら・・・。
「おい氷室、そのため息はなんなんだ?」
「別に・・・さあ夕飯の支度しようっと♪」
しょうがないわよね・・・良くも悪くもこれが私の選んだ現実だから・・・ね。
「ふぅ・・・」
「ごちそうさまでした♪」
「ばか」
倉庫の高い天井をぼんやりと見上げながら、私は小次郎の言葉に小さく呟く。
それでもこいつのたくましい胸に顔をつけながら微笑んでいるんじゃ悪口にならないわね。
無意識に顔を擦り付けて甘えてしまう私を、背中に回した腕で抱きしめて応える小次郎・・・。
私は・・・私は変わってしまったのかな?
良い方に、それとも悪い方かな?
自分で自分が解らなくなる・・・特にこうしてこの男に抱かれている時に感じてしまう。
「どうした、恭子?」
「ん? ・・・何でもない」
「ふむ・・・」
「きゃっ!?」
私の体を自分の上に載せると、小次郎は顔を覗き込むようにじっと見つめる。
「可愛いなぁ〜恭子って」
「な、なによ、急に・・・」
「いや、本当に可愛いから本音を言ったんだけど・・・」
「・・・小次郎」
真剣に見つめるから私は顔が赤くなっていくのが解る。
どうやらそんな私を見て楽しいんでいるらしい・・・小次郎って悪趣味ね。
「う〜ん、その照れた仕草が初々しくてまた良いっ♪」
なんか悔しいわ・・・うん、そうだ!
私はニヤッて笑うと小次郎の胸に顔を付けてさりげなく考えたことを口にした。
「あのね小次郎・・・あなたに言わなければならない事が有るの」
「ん? なんだ? 愛の告白ならいつでもOKだぞ〜♪」
「そう・・・あのね、できちゃったみたい」
ピクッ。
小次郎の体が硬直して固くなったのが頬を通して伝わってきた、ふふっ。
「氷室・・・もう一度言ってくれないかな?」
あ、声が上擦っている・・・くすくす。
「だから・・・無いのよ、あれが・・・」
「あ、あれ?」
「そう・・・確か妊娠するとこなくなるんだけどね、どう思う小次郎?」
「どうって・・・うっ」
私の顔をのぞき込んできた小次郎に、微笑んで見つめ返す。
「男の子かな? 女の子かな? ねえ小次郎?」
「いや・・・その、なんて言うか・・・でかしたぞ恭子」
「声、裏返っているわよ?」
「き、き、気のせいだ」
「ふ〜ん・・・」
「・・・・・・」
「・・・と、言う訳なんだ、だから・・・おい小次郎?」
「ん・・・ああ、聞いてるぞ弥生」
今日は弥生さんが事務所にきている、私はその横で美味しそうに果物を口にする。
「・・・ん? どうしたの小次郎?」
「いや、何でもないんだが・・・なにを食べているのかと思ってな・・・」
さっきからずっと私の事を横目でちらちら見ているので、微笑みを浮かべて答えてあげる。
「ああ、グレープフルーツだけど食べたいの?」
「いや・・・俺はすっぱい物とイカの頭は嫌いだ」
「そう、こんなに美味しいのに残念ね・・・弥生さんはどう?」
「そうだな、一つもらおうかな」
私は一房取って弥生さんに手渡す、小次郎が冷や汗を流しているのが解る、ふふっ。
「ん〜すっぱい! でも、美味しい♪」
終わり。
はろはろ〜、内容が無くても第二話です。
毎日毎日イベントが有ったら忙しくって大変ですね。
でも、日常こそが大切であり面白いと思うので書いてみました。
基本的にBurstErrorの後日談って感じなのでほのぼのに
書いていきたいです。
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