新世紀EVANGELION  AFTER STORY






 福音を鳴らすのは、彼女






 西暦2016年、第三新東京市駅ターミナル。

 「私帰ってきたんだ・・・、ここに」

 電車から降り、彼女はホームから街を見渡す。

 長い黒髪がそよ風にゆれる。

 「元気かな、シンジ君・・・」

 そう呟いて彼女は歩き出す。

 軽やかに・・・。



 とある一軒家。

 「ほらシンジ、遅刻するわよ!」

 「早く行け、でなければ帰れ」

 「なに言ってるの父さん、わかんないよ!」

 「あなたも早く支度してください!」

 「ああ、解ってるよユイ」

 「母さん、行って来ます」

 「はい、行ってらっしゃい」

 鞄を背負って走り出す少年。

 碇シンジ。

 世界を救った英雄、そして家族を取り戻した少年。

 そして今、彼はふつうの高校生になった。



 市立第一高校

 「おはようトウジ、ケンスケ」

 「おはようさん、シンジ」

 「おはよう、シンジ」

 三馬鹿トリオも仲良く同じクラスである。

 「ちょっとバカシンジ!あたしは無視なの?」

 「お、おはよう、アスカ」

 「フン!」

 相変わらず元気な少女。

 「おはよう、綾波」

 「おはよう、碇君」

 こちらは表情も言葉も豊かになった少女。

 アスカは母親と、レイはリツコと暮らしている。

 それぞれ幸せのようだ。

 情報通のケンスケがシンジに話しかけた。

 「そうだシンジ、今日転校生が来るらしいぞ」

 「へぇ、どんな人だろう?」

 「俺の情報じゃ女の子らしい」

 「可愛い子だといいなぁ・・・」

 のんきに本音を呟くシンジ。

 このシンジの言葉を聞いた青い瞳と赤い瞳の少女二人。

 『このバカシンジ、あたしとゆうものが側にいるのに・・・』
 
 『碇君・・・』

 二人の背後にはなにやら炎が・・・。

 「ちょっと鈴原、花瓶の水換えてくれる?」

 「オー、ええでヒカリ」

 もちろんこちらの少女も元気だ。

 ヒカリは高校入学と同時に告白した。今では公認カップルだ。



 「おっはようみんな!」

 教壇に立つのは葛城ミサト。

 すっかり平和になり、暇になったネルフから出向してここで先生をしてる。

 戦いの後、生きていた加持と結婚して一児の母である。

 もちろん相変わらず家事はできるわけもなく加持任せである。

 「喜べ男子!噂の転校生を紹介する」

 紹介の後ドアを開けて入ってくる少女。

 ミサトの横に立ち、クラスのみんなと向かい合う。

 「山岸マユミです。よろしくお願いします」

 一人立ち上がるシンジ。

 挨拶の後、歩いて少年の前にたつ少女。

 「また会えてうれしいです、シンジ君」

 頬を染めてほほえむ少女。

 ぽろっ。

 こぼれ落ちる滴。

 「あれ?うれしいのに変ですね・・・」

 ぽろぽろぽろ。

 「涙・・・止まらないです・・・」

 「僕も会えてうれしいな、マユミさん」

 そう言って微笑むシンジの顔を見てマユミは感じた。

 ああ、会いたかった人がここにいる。

 見たかった笑顔がある。

 うれしい・・・。

 そしてそのままシンジの胸に顔を寄せた。

 最初はびっくりしたシンジもそっとマユミを抱きしめた。

 教室であることを忘れて。



 「ちょ、ちょっとバカシンジ!!離れなさいよ!!」

 真っ赤な顔をして怒るアスカ。
 
 「不潔!不潔よ!碇君!」

 相変わらずのヒカリ。

 「碇君」

 なにやら殺気のこもった目で睨むレイ。

 「う、うらぎりも〜ん」

 自分を棚上げするトウジ。

 「い、いや〜んなかんじ」

 言いつつビデオを撮るケンスケ。

 「そのまま続けて続けて、興味あるし〜」

 注意するどころか煽るミサト。

 その他クラスメイトの叫びに教室がゆれる。

 我に返った二人は顔を見合わせて。

 クスッと笑って。
 
 教室から逃げ出した、手をつないで・・・。



 「ごめんなさい、いきなり抱きついてしまって」

 「いや、僕も抱きしめてごめんね」

 「ううん、私の方こそごめんなさい」

 「いや、僕の方こそ・・」

 そこまでいって二人は顔を見合わせて笑った。

 「図書室でのことを想い出しました」

 「僕も」

 「シンジ君が元気でよかった」
 
 「マユミさんも元気みたいだし、それに・・・」

 「それに?」

 「その・・・綺麗になったかな・・・」

 「・・・・・・ありがとう」

 俯いて顔が真っ赤な二人。

 少しの間沈黙が続く。でも穏やかな感じ。

 先に顔を上げたのはマユミ。

 「シンジ君、あの時助けてくれてありがとう」

 「私、あの時は自分のことが嫌いだった、でも」

 「あの戦いでシンジ君は逃げなかった、頑張っていた」

 「だから私もシンジ君みたいに頑張ろうと思った」

 「だから、今は自分が好きになりました」

 マユミの告白を優しい目をしてシンジは聞いていた。

 そして思った。

 自分のしたことで他の人が救われたんだと。

 その気持ちに答えるように話した。

 「僕も自分が嫌いだった、でも今はマユミさんと同じ」

 微笑み合う二人。

 「「あのっ」」

 同時に話そうとして言葉が詰まる。

 何か伝えようとするマユミの唇をシンジの人指し指が押さえる。

 「僕からマユミさんに言いたかった事があるんだ」

 高鳴る鼓動を抑えて精一杯の笑顔でシンジは伝える。

 「マユミさんのことが好きです」

 口に手を当てて驚くマユミ。

 その瞳からは涙がぽろぽろこぼれ落ちる。

 自分と同じ思いで居てくれただなんて。

 こんなに嬉しいことはない。

 優しく指でマユミの涙を拭うシンジ。

 「わ・私も・・シンジ君が・・好きです」

 見つめ合う瞳。

 二人の距離は近づいていく。

 どちらともなく閉じる瞳。

 そして触れ合う唇。

 言葉はいらなくなった。







 屋上に通じる扉の前。

 お約束のように野次馬達が二人の様子を見ていた。

 「バカシンジのやつ〜」

 アドレナリン全開のアスカ、その握りしめた拳は白くなっていた。

 「碇君・・・」

 涙全開のレイ、その流れは止まるところがない。
 
 「・・・・・・・」

 「・・・・・・・」

 真っ赤になって俯くトウジとヒカリ。

 こちらは経験ありのような・・・。

 「シンジ、高く買ってくれよ」

 ビデオを撮り続けるケンスケ、彼はこれしかする事がなかった。
 
 「シンちゃん上手いわ、教えた甲斐があるってものね」

 ニヤリと笑いながら覗くミサト、その手にはなぜかエビチュが。

 しかしこの発言は失敗だった。

 「ミ〜サ〜ト〜、シンジと何したの!!」

 髪の毛を逆立てて詰め寄るアスカ、まるで赤鬼のように顔も赤い。

 「葛城三佐・・・」

 全身から殺気をみなぎらせるレイ、こっちは青鬼のように冷めた表情で。

 「ミサト先生不潔です!」

 手を顔に当てて頭を振るヒカリ、いつものように。

 「シンジ!おのれちゅう〜奴はミサト先生まで・・・」

 今にも飛び出しそうなトウジ、ヒカリのことは頭から抜けていた。

 「シンジ、ネットにこの映像を流してやる・・・」

 涙を流しながら撮影するケンスケ、いと哀れ。

 「ちょちょっとみんな、落ち着いて・・・」
 
 冷や汗を流しつつ落ち着かせようとするミサト。

 「俺も聞きたいな?その話」

 いつの間にかミサトの背後にたつ加持、無精髭を撫でながら。

 「私もね、ミサト」

 同じく手に注射器を持っているリツコ、その顔はいたずらっ子のように。

 「な、何であんたたちまで・・・」
 
 振り向いて驚くミサト、前門の虎後門の狼。
 
 「さあ!きっちりと話してもらいましょうか」

 手を組んで仁王立ちするアスカ。

 「ちょ、ちょっち用事を思い出したから・・・」

 言った途端、素早い身のこなしで逃げるミサト。

 そして追いかけるみんな。






 そんな騒ぎはここまで届かない。







 手をつないだ二人はいつまでも空を眺めていた。



 青く染みわたる春の空を・・・。



 いつまでも・・・。



 おわり


 エヴァよりマユミの話です。

 この子ってエヴァの世界では一番ふつうの女の子では無いでしょうか?

 結構気に入っています。

 それになんだかシンジが女の子だったらこんな感じかな?

 またこの子の話が書きたいな・・・。

 じろ〜でした。

 


 

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