kanon
             祐一と香里の腹痛道中記・栞編  
 

「気持ちーな・・・」
 とある初夏の日曜日、俺は近所の公園のベンチに座りながら日向ぼっこををしていた。
「ふぅ・・・」
 ああ・・・このまま眠ってしまいそうだ・・
「・・・くすー」
 ・・・さて、このまま夢の中へ・・・
「祐一さ〜〜ん!」
 ・・・と思ったら、誰かが俺を呼ぶ・・・
「祐一さ〜〜ん!」 
 栞・・・・の声だな。
 何やら嬉しそうに走ってくる。
 まあいつものことなんだがな。
「よお栞。どうした?」
「こんにちは祐一さん。これから祐一さんの所に行こうと思ってたんですよ。見てください。」
 そう言いながら栞がポケットから取り出したのは超特大のバニラアイスを2つ取り出した。
「・・・」
「祐一さん、一緒に食べません??」
「あ・・・ああ。」
 そう言うと栞は俺の隣に座る。
 俺は渡されたアイスを見ながら思った。
 本当にデカイ。
 直径だけでも5cm、高さだと10cm・・・
「どうしました?祐一さん。美味しいですよ。」
「いや・・・何でもない。」
 今夜・・・腹壊さなきゃいいけど・・・ま・・・何とかなるだろう。
 
 パク

 まず一口食べてみる。
 ・・・確かに美味いな。
「どうです?」
「ああ、美味い。」
「祐一さんにそう言ってもらえると嬉しいです。」
「そうか?」
 俺はそう言いながらアイスを食べる。
 ほんのり(?)甘いバニラの味が口の中一杯に溶けてゆく。
「あれ・・・2人して何やってんの?」
「ん・・・あ、お姉ちゃん。」
「おお香里。」
 気がつくと目の前に香里がいた←失礼
「・・・アイス?」
「そうなんですよ、見てくださいお徳用なんです!お姉ちゃんもどうですか?」
「そ・・・そう。」
 栞が自分の持っているアイアスを香里に見せる。
 あれ・・・香里のやつ、何慌ててるんだ?
「あ・・・私は遠慮しとくわ。それに・・・2つしか無いんでしょ??」
 ・・・明らかに慌ててる。
「大丈夫ですよ♪」
 そんな香里の様子を知ってか知らずか、栞は笑顔で3個目のアイスをポケットから取り出す。
「え・・・・・・」
「ね、お姉ちゃんも食べましょうよ。」
「う・・・・・・」
「一緒に食べてくれないんですか?」
 栞は上目遣いをしながら香里に聞く。
「く・・・・・わ、わかったわよ。」
 とうとう香里は栞に根負けし、俺の隣にどかっと座り込んだ。
「はいお姉ちゃん。」
「・・・・・・」
 香里は栞からアイスを受け取ると黙って食べ始めた。
「・・・何で私までが・・・」
 そんな香里ボソッと呟いたが、俺はそれを聞き逃さなかった。
「ここに来たから。」
 と、俺もボソッと呟く。
「・・・・・・」
 そんな俺に香里は凄い目つきで睨んでくる。
「昨日・・・」
「昨日?」
「昨日。うちの両親が栞と一緒にアイスを食べていたのよ、3時のおやつに。そしたら・・・」
「・・・・・・」
 俺の脳裏に嫌な予感が浮かび上がった。
「今朝、揃ってお腹壊してたわ。」
 ・・・予感的中。
「私はね、薄々そうなるだろうと思って・・・食べなかったのよ。無理やり理由つけて。なのに
・・・」
「・・・・・・」
「何でこうなるのよ!!」
「お・・・俺に聞くなよ・・・」
 俺と香里が話をしていると、栞が不思議そうに話し掛けてきた。
「アイス、食べないんですか?」
「「は、はい!食べます!!」」
 ・・・俺と香里の声がハモった・・・
 そんな時、ふと俺は気づいた。
 香里が来るちょっと前・・・栞のアイスは半分くらいまで減っていた・・・、なのに、今栞の
手元にあるアイスは3分の1くらいまでしか減っていない。
 俺は恐る恐る栞に聞いてみた。
「なあ栞・・・そのアイスって、もしかして2個目か?」
「これですか?違いますよ。」
 ほ・・・何だ、俺の見間違いか・・・。
 と・・・安心したのは束の間。
「3個目ですよ。」
「・・・・・・」
 何も言い返せなかった。
 隣では香里が頭を押さえてる。
「さ・・・3個目・・・ね。」
「ええ。さんこ・・・」
「13個目ね・・・」
「「「へ??」」」
 栞が3個目と言いかけたとき、何処からとも無く『13個目』という言葉が聞こえた。
 俺と香里、栞は揃って声をあげる。
「13??」
「栞、あんた13個も食べたの??」
「ち、違いますよ・・・私は3個です。」
 栞じゃない・・・となると誰だ・・・、と俺が思った時、今度は
「14個目。」
 ・・・という声が聞こえた。
「ん・・・?」
 俺はふと、後ろを見た。
 すると噴水を挟んで俺達とは向かい側のベンチに3人組が腰掛けている。
 その3人組は男1人に女2人という俺達と同じ組み合わせだった。
「香里、栞・・・あれ。」
「ん?何なの?」
「何ですか?」
 俺は香里と栞に声をかけ、後ろの3人組を見る。
「ちょっと・・・何あれ?」
 俺達は何となく、その3人組の会話に耳をかたむけてみた。

「15個目・・・」
「パクパク。」
「せ・・・先輩。」
「ん・・・?なーに?浩平くん。」
「じゅ、15個って・・・お腹大丈夫ですか?」
「んー・・・私は大丈夫だよ。」
「「・・・・・・」」
「パクパク。」
「16個目・・・。みさき、ちょっと食べ過ぎじゃあ・・・」
「んー・・・私は大丈夫だって。浩平くんも雪ちゃんも、心配性だなぁもう。」

「「「・・・・・・・・・」」」
 3人組の会話を聞いた俺達は言葉を失った。
「なるほど・・・」
「そういう事・・・ね。」
「「はぁ・・・」」
 俺と香里は揃ってタメ息をついた。
 そんな時、栞の口から俺と香里を奈落の底へと導くかのような言葉が出た。
「私達も負けてられません!!」
「「・・・達・・・??」」
 俺と香里は目を見合わせる。
 栞はそんな俺と香里はお構いなしといった感じで自分のポケットに手をつっこんだ。
 そして・・・
「「・・・・・・・・・」」
「さあ。祐一さん、お姉ちゃん。頑張りましょ!!」
 栞の目の前には大量のお徳用アイスが積み立てられていた・・・
「・・・香里。」
「何・・・祐一。」
「・・・逃げるぞ。」
「・・・逃げれるのなら、もうとっくに逃げてるわよ。」
「祐一さん、お姉ちゃん、いきますよ!!」
 俺と香里は・・・ただ俯くしかなかった。

「みさき・・・22個目・・・」

 翌日・・・
 俺と香里はそろって学校を休むこととなったのは・・・言うまでもない。
 
 


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