宇宙世紀0082、8月。
1年戦争勃発からすでに2年の歳月が流れていた。
コロニー、そして地球ともども戦争の処理に手間取っていたが、今では落ち着きを取り戻したようだ。
その後のジオンの残党もあちこちでゲリラ戦を展開しているみたいだが、大事には至っていない。
俺、相沢祐一、が住んでたサイド6は中立だったためかあまりひどい被害を受けなかった。
両親を置いてきて戦争に参加していた俺にとっては何よりだった。
その他の大打撃を受けたコロニーもここ2年の補修工事のおかげでかなり回復してきている。
色々な事が動いているときに、俺に地球への帰還命令が出された。
内容は地球圏ジャブロー地域の治安維持。簡単に言えば宇宙の方は落ち着いたから今度は地球の方を、と言う事らしい。
まあ、何はともあれ地球に戻れるのはとても嬉しい。残してきた人たちとも会えるかもしれないし………
<連邦軍拠点・カルフォルニア地区>
「祐一さん……いえ、相沢中尉は今日ここに到着の予定だったかしら?」
連邦軍少将、水瀬秋子は机の上に山と積まれた書類に目を通しながら側近に訊いた。
「はい。しかしよろしいのですか?わざわざ少将自らがお出迎えにならなくても………」
「あら、どうしてかしら?」
「いえ…たかだか中尉階級の者と会うのはどうかと思いまして」
今までペンを走らせていた手を止め、いぶかしげな表情をしている側近の方に向かって微笑んだ。
「祐一さんはとても素晴らしい人ですよ。私も尊敬しています」
「そういう人と会うのだからおかしくは無いでしょう?」
そう言うと、秋子は休めていた手を再び走らせ始めた。
「……わかりました。しかしそれ程の人物なのですか?………相沢祐一と言うものは」
「ええ。そして………なにか秘めたる力を持っているみたい……」
相変わらず微笑みながら窓の外を見た。
窓のそばを2羽の鳥がつがいとなって飛んで行った。
<同地区・正門前>
5時間と言う長旅を終え、祐一は目いっぱい背伸びをして体をほぐしていた。
「うーん、さすがに重力が少し厳しいや」
長い間宇宙に出ていたのだから無理も無いだろう。
そのまま少しの間感慨にふけっていたが、秋子との面会の時間も押し迫っていたため、そのまま急いで秋子の執務室に向かった。
(こんこん)
「どなたですか?」
「相沢中尉です」
「ドアは開いていますよ。入ってきてください」
「失礼します」
重厚そうな扉を開けると秋子が、微笑みながら祐一を待っていた。
秋子の執務室はさすがに上官の部屋らしく広いが、花などがいたるところに飾ってあり、華やかな雰囲気が漂っている。
「………お久しぶりね、祐一さん。何年振りかしら……?」
「ええ、7年と2ヶ月ぶりです、秋子さん」
祐一は秋子に歩み寄り、しっかりと握手をした。
「無事で何よりだわ。祐一さんがいなくなってしまってさびしい思いをしていたのよ?」
「はは……すいません。なんか余計な心配をかけてしまったみたいですね」
ここには上司と部下という間柄は無く、数年来の友人といった感じだ。
秋子は終始笑顔をたたえており、祐一もまた穏やかな表情を浮かべていた。
「ところで秋子さん。何故急に俺を地球に来させたんですか?」
しばしの間二人は他愛の無い世間話をしていたが、不意に祐一が今まで不思議に思っていたことを尋ねてみた。
「そうそう、すっかり忘れるところだったわ。祐一さん、これから南米のジャブローに向かってもらいます」
「へっ!?」
祐一は突拍子も無い秋子の言葉に、分けがわからないといった表情を作った。
「い、今からですか?」
おそるおそるといった感じで祐一は秋子に尋ねた。
「ええ、今から。お願いしますね、祐一さん?」
「……まあ、秋子さんの頼みじゃしょうがないですけど。………でもどうして俺なんですか?他にも有能な人が………」
「いいえ。祐一さんだからですよ」
秋子は祐一の言葉をさえぎって、きっぱりと言った。
ややあって秋子は、祐一に語り始めた。
「実はここの所、ジャブローの付近でジオン軍の残党が不穏な動きを見せている、という報告が入ったんですよ」
「ジオンの残党が!!?」
「ええ、それで万全を期すためにはもう少し人員が欲しいと言う事なんです」
長話で冷めてしまったお茶を口に含み淡々と語る。
「………それで俺に、ですか?」
「そう言う事なの。………悪いわね、来た早々こんな任務を与えてしまって………」
少しだけ申し訳無いような表情を浮かべながら微笑んだ。
「わかりました。そう言う事ならすぐにここを発ちます。秋子さん、今度はゆっくりお茶でものみに行きましょう」
「あら、こんなおばさんを誘ってもいいこと無いわよ?」
「いやいや、秋子さんはまだまだ若者で通じますって、……本当ですよ!」
この二人は本当に仲が良いようだ。まるで実の親子のように。
「それじゃ、俺はこの辺で失礼します。いろいろと用意がありますから」
「ええ、任務がんばってくださいね、祐一さん」
「もちろんですよ、秋子さん。………それでは」
軽く会釈をして執務室から出て行った。
<秋子の執務室>
祐一が退出した後の秋子はこれまでの仕事の疲れがうそのように消え去っていた。
秋子は久しぶりに楽しいと言う気持ちになっていた。
なぜか?
(ふふふ、祐一さんもかわってないわね。元気なままだわ)
(でも任務の事を教えた時の顔といったら………)
秋子は先ほどの出来事を思い出しながら感慨にふけっていた。
(祐一さん早く行ってあげてくださいね)
「あの娘たちが待ってますから………」
秋子は誰とも無く呟いた。
続く
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という訳でやっとこさ第1話です。
こう見てみると結構長くなりそうなので気長に見てやってください。
まだガンダムっぽくないですね(^^;
次回からようやくMSを出す予定です。
でも予定は未定………