機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−

























 悔しい。
 あんな負け方したのは初めてだ。
 とても悔しい………

 強くなって、できる事なら………
 もう一度、戦ってみたい………

 

川澄舞の日記より

















第12話「叛旗」




















 <ジャブロー基地内・射撃場>

 「なんじゃこりゃー!!」

 祐一は自分でも考えられないくらいの大声をあげてしまった。
 その驚き具合でこの部屋の状況がうかがえる。

 「なんでこんな所にテントが張ってあるんだ………?」

 目を丸くしながら部屋の中を眺めている。
 驚くのも無理は無いだろう。いきなり目に映ったのがテントなのだから。
 それも普通のテントではなく、サバイバル用のしっかりしたテントであった。
 祐一が恐る恐るテントの中を覗いてみると、ちゃんと人が住んでいる形跡がある。

 「………もしかして、ずっとここに住んでるのか、あいつは………?」

 あいつ、と言うのはもちろん舞の事である。
 落ち着いてくると、今度は奥の方から銃声が聞こえる。
 祐一はもしやと思い、足早に奥へ進んでいった。

 「舞! 居るのかっ!?」

 しばらく進むと、見知った後ろ姿を見つけた。
 表情は解らないが、凄まじい集中力が感じられる。
 祐一が声をかけるが、耳栓をしているのだろうか、全く気付く事は無かった。
 銃を構えたまま動かない。再度、祐一が声を掛けようとした時、殺気と共に弾丸が放たれる。




 

ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドウンンッ!!!!






 装填された全ての弾丸を吐き出す。
 その弾丸は多少ばらつきはあったが、まとまっているのでなかなかの成績と言えるだろう。
 祐一は舞の上達振りに感心していた。
 舞は休憩に入るのか、銃を置き、汗を拭きながらこちらにやって来た。

 「………祐一………?」
 
 祐一に気付いた舞が不思議そうに近寄ってきた。
 心なしか嬉しそうであった。

 「よう。すごい上達振りじゃないか、ビックリしたよ」

 祐一は子供を誉めるように、舞の頭を撫でる。
 少しくすぐったそうにしていたが、舞も顔を赤くしながら大人しくしていた。

 「でも、LAM(レーザー・エイミング・モジュール)が付いてたから………そんなに威張れるものじゃない………」

 LAMとは、一定周波数の電磁波やレーザーを放出して、目標にねらいを定めるコンピュータ・システムの事である。
 元々は夜間専用の物なのだが、レーザー・ポインターで簡単に照準を合わせられる為に、実際は新兵の訓練用に用いられる事が多いのだ。
 ただ、それなりに重量があるために苦労する事になる。
 舞のベレッタにもそれが付いていたのだ。

 「そんな事は無いぞ。いくら照準を合わせても、いざ撃つとなると多少ぶれてしまう物なんだ。MSに乗った時の事を考えても、十分及第点を取れてると思うぞ」
 「そう………ありがとう………」

 祐一は優しく、何度も何度も舞の頭をなでていた。
 誉められて照れているのか、下を向いてしまった。
 そのまま祐一に寄りかかってくる。

 「しかし、ホントによく頑張ったなあ………あまり寝てないんじゃないか?」
 「………」
 「………舞?」
 「………すー、すー………」
 「………寝ちまったか………」

 よっぽど疲れていたのだろう。ほとんど立ったままで寝てしまっている。
 祐一は苦笑しながらも舞を抱き上げて舞の部屋に戻る事にした。
 舞の方は安心しきった表情を浮かべながら、身を任せている。
 参ったな………
 祐一は女性の甘い香りに、少々意識せずにはいられなかった。
 どぎまぎしながらも舞の部屋に訪れ、舞を寝かすと静かに部屋を出ていった。




 

 舞を寝かしつけてから通路をぶらぶらと歩く。
 ふと佐祐理の事を思い出していた。

 「そう言えば佐祐理さんも様子がおかしかったな………」

 脳裡に佐祐理の寂しげな表情が浮かぶ。
 祐一は踵を返し、佐祐理の部屋へと足を向けた。
 



 

ドンッ!!





 「うわっ!」
 「きゃっ………!」

 突然振り向いたために、誰かとぶつかってしまった。
 相手の女性は衝撃でしりもちをついてしまった。祐一は慌てて手を差し伸べる。

 「す、すいません。こっちの不注意で………って、佐祐理さん?」
 「祐一さん………」

 女性は佐祐理であった。
 二人はそのまま数秒見詰め合ってしまう。祐一は我に帰ると、すぐさま佐祐理を助け起こした。
 佐祐理はありがとう御座います、と沈んだ声で言いながら祐一の横を通りすぎようとした。

 「ちょ、ちょっと待った、佐祐理さん!」
 「え? なんでしょうか………?」
 「少し時間あるかな? よかったら飯でも食いに行かないか?」
 「………」
 「………なんか悩み事でもあるのか? 俺で良かったら相談に乗るが………」

 実際、祐一は気分が治っていないために腹など空いてはいなかった。佐祐理を誘うための口実だ。
 祐一の性格からして、佐祐理を放っては置けなかったのだろう。
 少しでも力になりたいと思っていた。
 そんな祐一の願いが通じたのか、佐祐理は首を縦に振った。

 「よし、今はもう昼過ぎだし、食堂もガラガラだろうからそこにしようか?」
 「はい。佐祐理は何処でも良いですよ」
 「それじゃ行こうか」
 「はい」

 佐祐理の了承を得ると、二人は食堂へと足を運んだ。
 







 
 「ほい、コーヒー」
 「あ……ありがとう御座います」

 食堂に入ってみると、祐一の言った通り中にはほとんど人が居なかった。
 二人は適当なところに坐ると、祐一が買ってきたコーヒーを啜っていた。
 しばらく二人の間には沈黙が続いた。

 「元気無いな、佐祐理さん」
 「え………?」

 突然の呼びかけにはっとなる佐祐理。
 その瞳はどこかおびえた色が映っていた。

 「この前の斗い、なんかあったのか?」
 「ど、どうして………?」
 「いや、多分そうじゃないかと思ってな」
 「………」
 「………俺じゃ相談に乗れないかな?」
 「………」
 「………」

 ややあって。

 「………佐祐理は、偽善者なんでしょうか………?」
 「佐祐理さん………?」
 「佐祐理は………」

 佐祐理はあの時の戦闘でハインツと闘った事、降伏勧告を出したが受け入れてもらえなかった事、その事で偽善者と呼ばれ、鋭い非難を浴びた事………。
 俯きながらも淡々と話していた。
 祐一も一字一句聞き逃すことなく、耳を傾けていた。

 「なるほどな………」
 「………」
 「なんとなくそのパイロットの気持ちも解らないでもないな………」
 「やっぱり………」
 「ああっ! 誤解しないでくれよ。だからそんな悲しい顔しないでくれ」

 祐一は内心悔やみながらも話を続けた。

 「人間てさ、時々自分の命よりプライドを選んでしまうものなんだよな………特に男はその傾向が強いんだよ」
 「………」
 「まだ自分は戦える、なのに何故止めを刺さなかったのか………それが彼には堪えられなかったんだろうな」

 コーヒーを啜りながら目を細める。
 ゆらゆらと湯気が立ち上る向こうには、佐祐理の姿がある。だがその表情は未だに芳しくない表情であった。

 「佐祐理さん、その優しさは間違ってないと思うよ? 俺も出来ることなら、殺し合いをしないで解決できる方法があるなら、そっちの方を選ぶに決まってるさ」
 「祐一さん………」
 「けどな………」

 手に持ったコーヒーを一気に飲み干す。
 何時の間にか、祐一の表情は真剣なものになっていた。

 「彼の言う通り、中途半端な気持ちなら止めてくれ。少なくとも俺達は死地に居るんだ。心に迷いがあっては佐祐理さんだけでなく、舞や名雪や栞にも危険が及ぶ事になる」
 「………」
 「………もしそれが出来ないなら、軍を抜けた方が良い………今ならまだ間に合う、よく考える事だな………」

 沈痛な面持ちで聞いている佐祐理。
 祐一もまた、苦虫を噛み潰したような顔で話している。
 佐祐理のことを思って苦言を呈しているのだった。
 佐祐理は優しすぎるのだ。それこそ自分を犠牲にして構わないぐらいに。
 祐一はこのまま佐祐理が軍を抜けた方が良いと考えていた。だが心の片隅には、ここに残って欲しいという気持ちもあるのは確かであった。
 こんな事を舞に話せば殴られるだろう………不謹慎ながらも祐一は口元に微笑を浮かべていた。

 「………答えが出たら………いつでも呼び出してくれ。出来る限りの事はして置くよ」
 「………」

 祐一は立ちあがると佐祐理の方を振り向かずに、食堂を後にした。
 心に少し痛みを残しながら………






































 <ジャブロー基地・特別取調室>

 薄暗い部屋の中で、一人の少女が身じろきもせずに佇んでいた。
 手と足にはそれぞれ手錠と足錠が着けられており、さらにそれらを鎖で繋いでいるという、念の入れ様だった。
 少女、天野美汐は大きなホールの真中に立たされており、まるで美汐を見物するかのように回りを連邦の官憲や士官達が取り囲んでいた。

 「そろそろ吐いたらどうかね? このままだんまりと言う訳にもいかんだろう?」

 初老の男が黙秘を続ける美汐に痺れを切らし、詰問するように言い放った。
 美汐は捕まってから五日間、ほとんど尋問に答えていないのだ。
 業を煮やした士官が拷問するように提案もしたが、戦時条約であった南極条約の名残であろうか、グラン大佐を初めとする良心的な官僚によってその案は破棄されていた。
 だが一部の高官によって、極秘にこの尋問が行われていたのである。
 
 「君もその格好では辛いのではないか? 本当のことを言ってくれればすぐにでもその辱めを止めてあげようじゃないか」
 「我々には良い目の保養ですけどねえ………」
 「誰の差し金でこんな事をした? 答えによっては恩情を与えてやっても良いんだぞ?」

 下卑た笑いが部屋に木霊する。
 そう、美汐は身に着けるものを一切着けていなかった。全裸だ。
 女性にとっては屈辱的な辱めを受けているのであった。
 まさに、常軌を逸しているとしか言いようがない。

 「………」

 回りが異常な雰囲気を醸し出している中、美汐は何も感じていないかのように冷静であった。その無表情の仮面からはどんな感情も図り知る事が出来ないであろう。
 
 「何か言ったらどうかね、天野美汐!!」

 何時まで経っても何も言わない美汐に、いい加減腹が立ったのだろう、身を乗り出して激しく非難した。
 明らかにそれは焦りであった。恐らくは女性という事もあって甘く見ていたのだ。
 美汐はそんな光景をつまらなそうに見ている。
 やがて口々に詰問や罵詈雑言が飛び交い始めていった。

 「君は処刑を待つ身なのだぞ! わかっているのか!?」
 「質問に答えろ!!」
 「貴様、死にたいのか!!」
 「何を黙っているのだ!?」

 様々な怒鳴り声が響く。
 だが完全に彼らを無視していた。
 
 「これは君だけの問題ではない。聞くところに寄れば、君の部下の状態が非常に悪いと言うじゃないか。我々の命令如何では、彼の生命維持装置をすぐに止めることだって出来るのだよ………」

 とうとう彼らは禁じ手を使い始めた。脅迫と言う名の禁じ手を。
 その言葉にはっと顔を上げる美汐には明らかに動揺の色が見えていた。
 目ざとい士官の一人が、その表情を見て口元を歪め、細く笑んだ。

 「おや、どうしたのかね? 随分と良い反応をしてくれるじゃないか………そんなに部下の身が心配なのかね?」
 
 美汐の眼光が鋭くなる。握っていたこぶしに力が入っていた。
 そんな美汐を気に留める事無く、男達はここぞとばかりに捲くし立てていた。

 「部下の安全を守りたいなら、素直に吐く事だな」
 「………そうだ。交換条件と行こうじゃないか。全ての事を洗いざらい話してくれれば君だけではなく、彼の極刑も免除してあげようじゃないか………」
 「だが、従わない場合は………わかっているだろうな?」

 目的のためなら手段を選ばない、
 まさにそんな言葉がぴったりであった。
 ここまで連邦も腐敗していたとは、露にも思わなかったであろう。
 美汐は下を向きながらじっと耐えていた。
 美汐の白い肌にうっすらと赤みがさしていた。
 それは羞恥からであろうか、それとも怒りからであろうか………

 「………とりあえずこの場は閉会しようじゃないか。次会までに色好い返事を期待しているよ、天野美汐君?」

 リーダーと思われる男に釘を刺される。
 士官たちは笑いながら会場を後にして行った。
 しばらくすると、残ったのは数人の看守と美汐だけが取り残されていた。

 「………ゲスが………!」

 美汐は誰ともなく呟いていた。






































 <同基地・地下MSデッキ>

 祐一は何か考え込みながら歩いていた。
 先程の佐祐理の事が気に掛かってしょうがなかったのである。
 
 (さっきは言い過ぎたかなあ………いやいや、あれぐらい言わないと解ってもらえなかったはずだ………だけどなあ………)

 物の見事に思考のループにはまっている祐一であった。
 ふと我に帰ると、何時の間にか地下のMSデッキに入っていた。
 知らず知らずの内に地下へ潜ってしまったようだ。
 
 「あっ!! ゆーいちさーん!!!」
 「ん?」

 機械オイル臭いデッキには、似つかわしくない明るい声が響いてくる。
 トトト、と小走りにその声の主が近寄ってきた。

 「どうしたんですか? こんな所に居るなんて」
 「なんだ栞か」

 よく見るとツナギを着た栞だった。所々に油染みが染み付いてしまっている。
 手には工具を持ったままだった。

 「むー、非道いですー。そんな言い方する人嫌いです」
 「悪い悪い………ところで、なんでお前がこんな所に居るんだ?」
 「あ、人手が足りないからって言われたので、臨時で手伝っているんです」
 「ああ、なるほど」

 そう言えば名雪がそんな事言ってたな、と思い返していた。
 栞は体は小さいが手先は結構器用なので、たまにメカニックとして使われる事があるのだ。
 
 「よしよし、それじゃ頑張ってる栞に褒美をやろう」

 そう言って栞の頭をわしゃわしゃと豪快に撫でる。

 「わっわっ! もう子供じゃないんですからーっ!!」
 
 必死で抵抗する栞。
 祐一は笑いながら栞と戯れていた。
 殺伐とした仕事場に、しばし明るい笑い声が響いていた。

 「もー………でも本当にどうしたんですか? なんか考え事してたみたいですけど………」
 「ん………? まあな………」

 くしゃくしゃになった髪を整えながら祐一に尋ねる。
 祐一の方はというと、先程の佐祐理の事が頭をよぎっていたために、どうも歯切れの悪い答え方になってしまった。
 
 「? ………あー、もしかして誰かとケンカしたとか?」
 「(ギク)」

 栞の指摘にドキリとしてしまう。
 厳密に言えばケンカではないのだが。
 
 「い、いや、別にそう言う訳では無いんだけど………」
 「じゃあ………あ、倉田せんぱーい!!」
 「へ?」

 栞が急に佐祐理の名前を呼ぶ。
 祐一は驚いて振り向くと、そこには肩で息をしている佐祐理の姿があった。
 
 「さ、佐祐理さん………」
 「はあはあ………やっと見つけました………」
 「どうしたんだよ、そんなに慌てて………」
 
 ひざに手をかけ、苦しそうに呼吸をしている。それも時間が経つにつれ、治まってきた。
 息を整えながらようやく言葉を紡ぎ始めた。

 「祐一さんに言われた事………しばらく考えてて………」
 「………」
 「………迷いましたけど、祐一さんや舞や他の皆さんを失いたくないから………覚悟が出来ました………それで、その事を早く伝えたくて………」
 「………後悔しないな?」
 「はい」
 「そうか」

 話を聞いていた祐一は険しい顔を崩し、微笑を浮かべた。
 佐祐理にも栞と同じように頭を乱暴に撫でた。

 「はえーっ!」
 「ま、なんかあったら何時でも相談に来な。………これからもよろしくな」
 「は、はいっ! こちらこそ〜」

 佐祐理は少し困った顔で、だがどこか晴れ晴れとした顔をしていた。
 その様子を羨ましそうに見ている影が一つ。

 「むー、なんだか分からないけど、ずるいですー! なんの話をしてるんですか!?」
 「はっはっは。子供は知らなくても良い事だ」
 「そんな事言う人嫌いですー!」
 
 膨れる栞を見ていると更に笑いがこみ上げてくる。
 佐祐理はしばしその光景をぼうっと見ていたが、段々自分も楽しい気持ちになってきた。
 口元を押さえ、必死に笑いを押さえている。
 暖かな雰囲気が、辺りを包んでいた。







































 <火星衛星フォボス基地>

 


 

カタカタ………


 

 
 薄暗い部屋の中、キーを打つ音だけが響いている。
 画面に映し出される情報を、一文字も逃さず記憶している人物、エル・アーバインは、疲れている目を酷使しながらキーを打ち続けていた。
 
 「………!? これだ!!」

 思わず大声をあげてしまう。
 慌てて口を塞ぎ、辺りを見まわす。
 どうやら大丈夫のようだ。
 目的の項目を見つけ出したのか、焦りながらも的確にパスワードを打ちこんでいく。
 エルが見つけ出したフォルダには、





『ネオ・マンハッタン計画の概要』






 「ネオ……『マンハッタン計画』って………!!」

 あまりにもショッキングな内容に、エルは言葉を失ってしまった。
 『マンハッタン計画』とは、旧アメリカ軍がプルトニウムの入手と共に、核兵器開発に乗り出した時の計画書である。
 この計画を機に、各国による核開発競争が始まってしまったのだ。
 それではまた核を使用するのか………
 そんな推測がエルの頭をよぎる。
 エルははやる気持ちを押さえながら、画面をスクロールしていった。

 「!!!!???」

 そこには想像を絶する事が書かれていた。
 エルの手は心なしか震えているようにも思える。
 冷や汗が止まらなかった。





 

パッ!!






 いきなり電灯に明かりが灯った。誰かがスイッチを押したようだ。
 エルははじかれた様に後ろを振り向く。
 入り口に誰かが居た。
 だが暗いところにずっと居たため、眩しくて判別できなかった。

 「だ、誰だ!」
 「そこで………何をしているのかな………?」
 「えっ!?」

 聞き覚えのある声だった。
 その人物はゆっくりと部屋の中に入ってくる。

 「何をしていたんだい? エル・アーバイン大尉」
 「く、久瀬中将………」

 ようやく目の慣れたエルに映ったのは、フォボスを統治している久瀬連邦軍中将であった。
 彼はにこにこしながら入ってくる。
 ………何故か寒気がした。

 「ど、どうしてこんな所に………?」
 「質問しているのはこっちだよ。もう一度聞く。何をしていたんだい?」
 「くっ………!」

 まさか軍事機密をハッキングしていた、などとは言えるはずも無かった。
 エルが言葉に窮していると、笑顔を崩さず、久瀬が追い打ちをかける。

 「何をしていたか当てて見せようか?」
 「………」
 「どうだい、面白い内容だったろう? 『ネオ・マンハッタン計画』は………」
 「なっ!?」
 「驚いたかい? 悪いが君の動向はこちらで全て把握していたんだよ。もちろん、君が軍事機密を盗み見ていた事もね………」
 「………」

 まさか全て監視されていたとは。
 言葉も出なかった。

 「これでも私は君の事を誉めているんだよ? こうも見事なハッキングは珍しいからねえ。本当にすばらしいよ」
 「久瀬中将………あの計画は本当の事なんですか………?」

 声を絞り出すように質問する。

 「ん? 『ネオ・マンハッタン計画』の事かい? 本当だとも、エレガントな内容だとは思わないかい?」
 「まさか、本当に核なんて物を使うんじゃ………!!?」
 「………その様子だと計画書を全部読んでいないようだね………核なんて下品なものを使うつもりは無いよ。私の美学に反する」
 「それでは………!?」
 「おっと、その先は無しだよ」
 「え?」

 一瞬、エルの動きが止まる。
 久瀬がゆっくりと銃を向けた。

 「だって君は死ぬんだから」






 

パンッ!







 





 





 「はっっ!!!?」

 あゆはベッドから飛び起きた。
 全身凄い汗である。
 
 「今のは何………?」

 嫌な夢を見た。だが内容は思い出せなかった。
 あゆはとりあえず水でも飲もうと、立ち上がろうとした。
 だが、激しい頭痛と嘔吐感があゆを襲った。

 「うぐっ!」

 思わずへたり込んでしまう。
 そのまま背中を丸めて、痛みに堪えていた。

 「なんなのこれ………怖いよ、怖いよぉ………エルさん、助けて………」

 がたがたと震えながら、あゆは助けを求めていた。
 唯一の理解者である、エルの名を呼びながら………
















 「それでは、後の事頼むよ?」
 「はい。承知しました」

 久瀬は洗面所から出てくると、側近に依頼をして部屋に戻ろうとした。
 側近は小走りにその場を離れる。

 「ああ、ちょっと待ってくれ」
 「はっ、なにか?」
 
 何かを思い出し、慌てて側近を呼び戻す。

 「あと、電報を打っておいてくれ。連邦軍に」
 「承知しました。して、内容は?」
 
 にやりと口元を歪めた。

 「我々率いる『サクセサーズ』の旗揚げだ。そして、火星は我々によって、新たに独立を宣言する、とね」









 時に宇宙世紀0082、10月。
 久瀬中将の策略により、新たな局面を迎えようとしていた。
 黒い歴史が、今また始まる………。









カスタム「どうも、カスタムです」
    栞「しおりでーす」
 カスタム「久しぶりのレジェンド更新です。待っていた方々、お待たせいたしました」
    栞「そんな人居たんですか………?」
 カスタム「うぐっ、人が気にしている事を………!」
    栞「まあ、それはともかく。今回、いよいよ動き出したって感じですね」
 カスタム「そうですね。いままで余り動き無かったですから」
    栞「確かに………」
 カスタム「今回難産だったのは、やっぱり久瀬の計画ですね」
    栞「いろんな資料見てましたね………それにしては、内容薄いような気がするけど」
 カスタム「………それは言いっこ無しです」
    栞「とりあえず、次からは宇宙ですっけ?」
 カスタム「………多分、です」
    栞「………多分、ですか」
 カスタム「ま、まあ、なににしても第13話をお楽しみに〜!」
    栞「大丈夫かな………」



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