機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−



















 いよいよ私達は宇宙へ飛び立とうとしている。
 初めてなだけに不安もいっぱいだけど、祐一がついていてくれるなら恐くはない。
 久瀬中将の好きにはさせないよっ!

水瀬名雪の日記より




















第14話「宇宙へ(後編)」




















 <北極・シャトル打ち上げ基地>

 「見えてきたな………」

 北極の寒々とした荒原の中に、ぽつんと一箇所だけ人工的な建物が建っている。
 ここが祐一達の出発点である、北極の打ち上げ基地である。
 
 「なんだってこんな所に作るかねえ………」

 目の前に広がる氷山を片目に見ながら祐一は一人ごちた。
 一応、輸送機の中は暖房が効いていて寒くはないのだが、外の景色はそれを上回るが如く寒さを際立たせていた。

 ”間もなく到着します。各員、下船準備を行ってください”

 艦内放送が流れる。
 くつろいでいた(祐一を除いて)メンバー達は、各々準備を整え始めた。
 
 「祐一〜! 早くしないと遅れちゃうよ〜!」

 ぼけっとしている所に名雪の間延びした声が届く。
 
 「わかった、わかった。今行くよ」

 やれやれといった感じで、小走りに名雪の後を追っていった。
 その祐一に寄り添うように、佐祐理が近づいてくる。

 「………名雪さん、なんか嬉しそうですね〜。どうしたんでしょうか?」
 「秋子さんと会えるからだろうな。名雪の奴、久しぶりに会うから」
 「ああ………なるほど」

 佐祐理も両親を故郷に残している。だからと言ってはなんだが、名雪の気持ちに感応するものがあった。
 
 「………なんか、羨ましいな………」
 「ん? なんか言ったか?」
 「いいえっ! なんでも無いですよ!」
 「そうか。んじゃ、さっさと準備しますかね」
 「はいっ!」

 艦内はにわかに人通りが激しくなっていた。
 臨時の艦長であるグランも指示に力が入っている。
 間もなく着陸だ。
 そのまま機体は滑走路を滑り、徐々にブレーキを掛けていく。
 完全に停止するとタラップが降り、乗組員が姿を現し始めた。

 「やっと着いたな………」

 やや足取りが重く感じられる祐一がぼそりと呟く。
 実質、二日間の長旅であった。
 佐祐理達にも疲れが見え隠れしている。ただ、名雪は逆に元気いっぱいであった。

 「元気だねえ………」

 思わず苦笑してしまうのだった。










 北極。
 全てが氷に覆われている極寒の地。
 ………が、度重なる地球の異常気象によって、寒さはかなり和らいでいる。
 
 「ようこそ、北極基地へ。はるばる良く来てくれたわ」
 「久しぶりだね! お母さん!!」

 北極の地に降りたって、最初に出迎えてくれたのは誰であろう、秋子であった。
 これには祐一もグランも驚いてしまった。秋子は仮にも連邦将校なのだ。その人物がわざわざ一介の部隊のために出迎えるなど、考えられなかった。
 だが名雪はそんな事お構い無しに、秋子との久々の対面を楽しんでいた。

 「中将自らが出迎えて下さるとは………光栄の至りであります」
 「ふふふ………グラン大佐。そんなに畏まらなくても結構ですよ。私がこうしたくて来ているのですから………」
 「は、はあ………」

 さすがのグランも秋子相手ともなると、少々戸惑ってしまうようだ。
 根っからの軍人であるグランと、どう見ても軍人には見えない秋子とのツーショットは、はたから見れば滑稽にしか映らなかっただろう。

 「祐一さんも久しぶりね」
 「ご無沙汰です、秋子さん」
 「ジャブローでは頑張ってくれたみたいですね。あらためてお礼を言います」
 「そんな………俺は当然の事をしたまでですよ。こいつ等の協力のお陰です」

 少し照れているのか、祐一は舞の頭をぽんぽんと叩く。
 すかさず舞からお返しとばかりに、チョップを見舞った。

 「祐一、痛い………」
 「照れるなよ、舞」
 「照れてるのは祐一………」
 「ぐあ………そ、そんな事はないぞ」

 何時の間にか漫才になっている二人を、微笑ながら秋子は見つめていた。
 
 「とりあえず立ち話もなんですし、中に入ってからお話しましょう」

 秋子の提案に異を唱えるものは一人も居なかった。
 皆、足早に建物の中に入っていった。






































 <火星衛星フォボス・久瀬中将執務室>

 執務室は異様な雰囲気に包まれていた。
 デスクの前で腕を組みながら黙ったままの久瀬中将。その傍らに薄ら笑いを浮かべながら佇む、ドクター・サロ。そして、彼らの視線の先には沈痛な面持ちで下を向いている、月宮あゆの姿が在った。

 「………君に来てもらったのは他でもない、ある重大な出来事を君に伝えるためだ」
 「………」
 「君も噂で聞いているだろう………先日、エル・アーバイン大尉が何者かに射殺された」
 「………!」

 びくりと体を強張らせる。
 固く握っている拳に力が入っていた。

 「まだ詳しい事は判らないが………恐らくは我々の独立を快く思わない者の犯行であると推測される。コンピュータへのハッキングが確認されたのだよ。………エル君は偶然、その現場に居合わせてしまったのだろう」
 「………」
 「エル君は部下からも信頼の厚い、有能な人物だった。私も犯人に対し強い憤りを感じている。………あゆ君、我々は絶対犯人を捕まえて見せる。だから、エル君の分まで頑張って欲しい」
 「………はい」
 「話は以上だ。今日はもう休みたまえ。身心的にも疲労がたまっている筈だからね」
 「………はい。失礼します………」

 それだけを言い残すと、フラフラとした足取りのまま部屋を出ていった。
 その様子はまるで幽霊のようであった。いつもの快活としたあゆの姿は何処にもなかった。
 あゆが退出した後、静寂が包む。
 しばらくすると、くつくつと、笑いを押さえたような声が聞こえてきた。

 「くっくっく………いや、素晴らしい演説でしたな。私め、感服いたしましたよ………」
 「それは皮肉か?」
 「いえいえ、滅相もない。ただ単純に感心しているだけでございます」
 「ふん………」

 尚も笑いつづけているサロを、久瀬は仏頂面で睨みつけていた。
 サロは階級こそ不明だが、久瀬と対等に渡り合えるのは彼と秋子ぐらいのものだろう。
 
 「サロ、あの娘は大丈夫なんだろうね?」
 「心配無用でしょうな。あゆは単純でございますから………まず感づかれる事はないでしょう。まあ万が一、ばれる事があっても………」
 「『消せばいい』、か?」

 久瀬が首をかっ切るようなジェスチャーをする。
 
 「優秀なモルモットが居なくなるのは少々、惜しいですがね………」
 「それはいいが、奴に監視をつけなくてはな………やれやれ、面倒な事だ」
 「その件ですが………私めにお任せ下さいませ。適任の奴がございますので………」
 「信用できるんだろうな?」
 「はい。私めの成功作ですからな。ヒヒヒ………」
 「いいだろう。まかせたぞ」
 「はっ、必ずや久瀬様のご期待の添いましょうぞ………」

 サロの陰湿な笑い声が、いつまでも部屋に響いていた。












 あゆは今自分が何処を歩いているのか、判っていなかった。
 ただ惰性で歩いているだけであった。
 心の支えであったエルの死。この事実が、あゆの心に大きなダメージとなっていたのであろう。
 
 「………あっ……」

 足がもつれて転倒してしまった。
 
 「………」

 いつまでたっても起き上がろうとしない。

 「………ぐっ……うく………」

 肩を震わせながら、嗚咽を漏らす。
 涙の雫が、床に染みを作る。

 「………誰………誰なの……?」
 
 かすれた声で呟く。その声は震えながらも異様な迫力があった。

 「誰が…エルさんを………うぐっ…殺したの……? ………………ゆるさない……絶対にゆるさない………エルさんを…殺した奴………絶対にこの手で………」

 あゆが急に顔を上げる。
 その表情には………怒りと憎悪が渦巻いていた。
 快活な少女の面影は、何処にもなかった。
 






































 <ジャブロー基地近郊・ジャングル地帯>

 「このままジャングルの中突っ切っちゃって!!」
 
 ディランが声を張り上げる。
 その声に反応するかのように、運転手はアクセルを踏み、速度を上げ始めた。

 「振りきれますか?」
 「振りきれなくても振りきらなきゃいけないでしょっ!!」

 言いながらアサルトライフルを掃射する。
 美汐はハインツを抱きかかえてハインツの体にかかるショックを和らげようとしていた。

 「森に入ったからなんとか地上の方は逃げ切ったみたいだけど………今度は上からかよっ!」
 
 そう彼らは追われる身なのだ。
 連邦も馬鹿ではないらしく、すぐさま美汐達の乗るエレカの所在を突き止めたのだった。
 今も上空から戦闘ヘリがけたたましいプロペラ音を響かせながら彼女らを追撃している。

 「ちっきしょ、この武器じゃ届かねえや………って、うわっ!!」

 ディランのすぐ近くを、銃弾が掠める。
 慌てて車内に逃げ込むが、弾丸の一つが彼の足に当たった。

 「ディラン!」
 「くうっ………俺とした事がまずったな………」
 「動けますか?」
 「……ふつーは『大丈夫ですか?』とか言わない? まあ、あんたの事だから期待はしてなかったけどね………」
 「減らず口を叩けるなら大丈夫ですね」
 「ま、そーゆー事。けど、ちっとばかしヤバイ状況だな………俺、こんな状態だし」

 その間にも戦闘ヘリからは鬼のような攻撃を仕掛けて来る。
 エレカは右へ左へ、大きく揺れながら走行していた。

 「私に任せてください」
 「? どうするんだ?」
 「シートの下からこんな物を見つけました」
 
 美汐が手に持っていたのは、大口径のバズーカ砲であった。
 弾丸は既に装填されているらしい。

 「いきます」
 「あ、おい!」

 ディランが止める間もなく、




 

ドゴォォォォンン!!!





 戦闘ヘリに向かって撃ちはなった。
 弾丸がヘリに吸い込まれていく。そして見事命中。ヘリは轟音を立てながら樹海の中へと消えていった。
 だがこれだけでは終わらなかった。
 美汐達の乗るエレカが………爆風での煽りで危うく横転するところであった。
 事の重大さに気付き、恥ずかしそうに肩を竦める美汐。
 視線が痛い。

 「お〜い………」
 「す、すみません………」
 「………だから、至近距離でのバズーカ砲は危険極まりない、って言おうとしたのにな〜。あっさり無視するんだもんな〜」
 「ご、ごめんなさい………咄嗟の事で頭が回りませんでした……」
 「ま、いいけどさ。結果的には振りきれたみたいだしね」

 ディランの言う通り、追っ手はどうやら戦闘ヘリだけらしく、後方からは何も追っては来なかった。
 
 「もう………大丈夫のようですね………」
 「そうだな。でも本当に時間がなくなってきた。急いで合流しなくちゃな………」
 「はい。足の方は大丈夫ですか?」
 「あ、平気平気。こんなのかすり傷だから。このまま直行だ!」
 「急ぎましょう」

 エレカは再加速すると、目的地に向かう為にジャングルの中を駆け抜けて行った。
 真琴とハラルトの待つ、リマの地へと………






































 <再び北極>

 基地の中に入った祐一達は、秋子の執務室に通されていた。
 執務室は塵一つ落ちておらず、綺麗に整頓されている。
 さすが女性の部屋といった所だろう。
 祐一達は秋子と対面するように、ソファーに坐っていた。

 「さて………早速なのですが、少々困った事になりました」
 「困った事?」
 「ええ」
 
 頬に手を当て、いつものポーズで切り出し始めた。
 
 「実はちょっとした手違いで、物資の搬入が遅れてしまっているのです」
 「それってどういう事なの、お母さん?」
 「こら名雪。茶々を入れるんじゃない」
 「うー………」
 
 祐一が名雪をたしなめる。
 不服なのか、名雪は祐一を横目に見ながらうーうー唸っていた。
 その様子に秋子はクスクスと口元に手を当てながら微笑む。
 しかしすぐに表情を引き締めると本題に切り出し始めた。

 「それが少し深刻な問題なのよ………宇宙での久瀬中将一派、彼らでは『サクセサーズ』と呼んでいるみたいだけど、近頃動きが活発になり始めたの。サイド6も危ないという情報も入ってきているわ」
 「いよいよ本格的に始動、という事ですな………」

 グランが口惜しそうに眉をひそめる。

 「もっと深刻なのは、遅れている物資の中には舞ちゃんと栞ちゃんのMSも入っている、という事なの………」
 「………?」
 「え? じゃあ、私達はどうするんですか?」

 正に寝耳に水といった感じの舞と栞。
 少なからず嫌な予感がしていた。

 「………私達にはもう時間がありません。遅れているものに関しては、第二陣と言う事にさせて頂く事になりました」
 「「え!?」」

 綺麗に声がはもった。
 秋子は申し訳なさそうな顔をしながらも話を進める。

 「戦力的にも心もとないのだけれど………第一陣は、私、祐一さん、名雪、佐祐理さん、の四人で出発する事に決定しました。同機には、NT2カノン、ジム・カスタムを搬入する事になりました」
 「あれ? 私のジムキャノンは?」
 「名雪のジムキャノンは、地上での防衛に使用されるわ。貴女のMSは上の方で既に用意してあるから安心しなさい」
 「え、本当!? もしかしてアレ?」
 「ええ。名雪が一番得意なアレを着けてあるわ………」
 「そっか〜。やっとこれで祐一の役に立てるよ〜」
 「おい、名雪。アレってなんだよ?」
 「うふふ〜。秘密だよ〜」
 「なんなんだよ………」

 秋子と共に含み笑いをする名雪。
 その二人の姿は、容姿が似ている分、はっきり言って恐い。
 と、こんな事を言ったら怒られるのだろう、きっと。
 グランはその二人の様子を気にしながらも、気を取り直して聞き始めた。
 
 「では、私は第二陣を指揮すると言う事でよろしいのですか?」
 「はい、二人をよろしくお願いしますね、グラン大佐」
 「了解です」
 「………今言った様に、第二陣はグラン大佐、栞ちゃん、舞ちゃんの三人です。………ごめんね、栞ちゃん、舞ちゃん」

 秋子がショックで固まっている二人に頭を下げる。
 
 「そ、そんな、頭を上げてください!」
 「でも祐一さんと離れるの嫌だったんでしょう?(ヒソヒソ)」
 「それは………そうですけどぉ………(ヒソヒソ)」

 他の人に聞こえないように小声で話している。
 その様子を、他の面々は不思議そうな顔で眺めていた。
 そして舞はというと………

 「舞? どうしたんですかー?」
 「おい、舞どうした………? って、なんで泣いてんだ、お前!?」
 「………(ぐしゅぐしゅ)」

 涙をはらはらと流しながら泣いていた。

 「どうしたんだよ、いきなり泣いたりして………?」
 「………祐一と離れ離れ………いや………(ぐしゅぐしゅ)」
 「あ〜……でも、ほら、しょうがないだろ、こういう場合」
 「いや………祐一と一緒がいい………(ぐしゅぐしゅ)」
 「あはは、祐一さん、モテモテですね〜」
 「茶化すなよ、佐祐理さん」

 佐祐理が痛いところを突く。
 舞が祐一を好きだと言う事は佐祐理にも充分判っているはずである。
 ちょっとした嫉妬心から出た言葉だろう。
 佐祐理もまた祐一の事が好きなのだから。
 祐一はそんな美女二人に囲まれて困り果てていた。
 そこへ秋子さんが忍び寄ってくる。
 そして爆弾を投下していくのであった。

 「大丈夫よ、舞ちゃん。離れ離れと言ってもほんの一週間程度だから。しかも逢ったらすぐにデートに連れてってくれるそうよ?」
 「………ホント、祐一………?」
 「俺はそんな事、ひとこ………」
 「本当ですよね? 祐一さん?」

 秋子がニッコリと微笑ながら祐一に聞く。
 その表情は笑っているが、目は鋭い光を放っていた。 
 祐一はまさに蛇に睨まれた蛙状態である。

 「は、はひ………」
 「ほら、祐一さんもああ言ってる事だし。今回は我慢してね?」
 「うん……我慢する………」

 素直に頷く。
 その頬はほんのり桜色に染まっていた。おそらく祐一とのデートの事でも考えているのだろう。
 だがそんな事では問屋が降ろさない、と思っている者が三人程居た。

 「お母さん! なんで勝手に決めちゃうの〜!?」
 「ずるいですっ! 私もデートしたいですぅ!」
 「佐祐理も上に同じです〜!」
 
 一気に詰め寄ってくる三人娘。
 その様子は、正に姦しいと言った感じであった。

 「あらあら困ったわね。それじゃ祐一さん、あとよろしくお願いしますね」
 「あ、秋子さん! 逃げるなんてずるいですよ! ちょ、ちょっと〜!!」
 「「「祐一(さん)!!! 聞いてるの(ですか)!!!???」」」
 「祐一とデート………(ぽっ)」

 たちまち阿鼻叫喚の世界に変わる。
 もう彼女達を止める事は出来なかった。

 「わ、私は一体どうしたら良いのだ………?」

 グランの呟きが、空しく部屋に響き渡った。







































 <リマ・シャトル打ち上げ基地>

 連邦と同じく、ここでもまたシャトルの打ち上げ準備が、間もなく完了という所までこじつけていた。
 既に真琴とハラルトは準備を終えており、分厚い宇宙服を身に纏っていた。
 
 「やっぱり緊張してますか?」
 「あったりまえでしょ。真琴なんて宇宙上がるの初めてなんだから!」
 「あはは、そりゃそうですよね」
 「全く………上に上がったらちゃんと教えてよね?」
 「お、俺がですか? 無理! 絶対無理ですって!」
 「なんでよ〜。良いじゃないのよ〜!」
 「だ、だって………そんなの大尉に教えてもらってくださいよ。俺が人にものを教えるように見えますか?」
 「ああ、そう言えばぜんっぜん! そんな風には見えないよね〜」
 「ひ、非道いっ!! 普通は思ってても口に出さないのにっ!」
 「ふふん、悔しかったら真琴や美汐みたく強くなってみなさいよ〜だ!」

 狭いシャトルの中で一際目立つ明るい声。
 真琴はすっかりいつもの調子を取り戻していた。
 ハラルトもいつも以上にハイになっている真琴の相手をするのに、少々骨を折っていた。

 「それにしても美汐はまだなの〜? 早くしないと出発しちゃうじゃない!」
 「まあまあ………あの人の神出鬼没なところは有名じゃないですか。俺も何度、振り回された事か………」

 さり気なく遠い目をするハラルトを尻目に、窓の外を眺める真琴。
 
 「あ」

 ふと外の光景に目を奪われていた。
 何やら騒がしい事になっている。

 「ハラルト………」
 「なんですか?」
 「ホントに…なんて言うかさ………神出鬼没だよねえ………」
 「? なにがです?」

 真琴が体をずらし、ハラルトに外の光景を見せる。

 「あ」

 ハラルトも同じような反応をしていた。

 「ね?」
 「全くもってその通りですね………」
 「「はあ〜っ………」」

 二人は席に戻ると、同時にため息をついた。
 不意に顔を見合わせる。

 「………」
 「………」

 ジッと二人ともお互いの顔を凝視している。

 「………ぷっ……くっくっく………」
 「くっ……ふふっ……あははっ…」

 二人はとうとう堪えきれなくなったのか、肩を震わしながら笑い始めた。
 他の乗組員達は、何事かと訝しげな顔をしながら二人を眺めている。
 尚も笑いつづける二人だったが、しばらくするとピタリと笑うのを止めていた。

 「来たね………」
 「来ましたね………」

 その言葉を肯定するかのように。




 

シャッ!!





 シャトルの扉が開く。
 そして。


 「ただいま………」

 「「お帰りなさい」」





































<北極・シャトル打ち上げ基地>

 「それでは後の事をよろしくお願いします、グラン大佐」
 「はっ、ご武運を祈っております!」
 「ありがとう………三人とも、行きますよ?」

 秋子は準備の整ったシャトルに乗りこむ為に、タラップを上っていく。
 別れを惜しんでいる祐一達三人に声を掛けるとそのままシャトル内部へと入っていった。

 「じゃあ、俺達も行くからな。お前達も頑張れよ」
 「うう〜………祐一さん、お達者で〜!」
 「祐一……佐祐理………バイバイ………」
 
 秋子の説得(?)で了承した舞と栞であったが、やはり別れは辛いものであるらしく、二人とも泣きながら祐一達を送り出していた。栞にいたっては、ハンカチを振りまわしながら見送っている。
 祐一は二人の様子に、苦笑をたたえながらも笑顔で乗りこんでいった。

 「祐一さ〜ん! お手紙下さいね〜!」
 「出せるかっ! オマケにたかだか一週間だろがっ!」
 「じゃあ、メールでも良いです〜!」
 「わかったわかった………毎日送ってやるよ」
 「絶対ですよ〜」
 「ハイハイ。栞も風邪引くなよ!」
 「ほら、祐一! 早く乗ってよ〜!」
 「おお、名雪悪い悪い」
 「なんか佐祐理、ワクワクしてきました〜」
 
 彼らにはあまり緊張感がないようだ。
 和気あいあいと喋っていた。
 



 

シャッ!!





 扉が閉められる。
 いよいよ宇宙へ飛び出す時が来たようだ。
 各自、シートベルトの確認を行っている。異常がないと判ると、カウントダウンが開始された。

 「いよいよだな………」
 「うん、祐一頑張ろうね」
 「ああ………佐祐理さんも大丈夫か?」
 「ええ、無事に帰ってきましょう………」
 「そうだな………」

 メインブースターに火が灯った。
 シャトルに振動が伝わってくる。


 「出発だ………」


 この時、宇宙世紀0082 10月25日。
 新たなる戦乱の序曲が始まる………














続く




















 カスタム「いやー、長かったー!」
 栞「これで一応一区切りですね」
 カスタム「そうですね。第一部、完! といった所でしょう」
 栞「それにしても………私を祐一さんから引き離すとは良い度胸ですね………」
 カスタム「(ギクッ)そ、そ、そ、それはですね………」
 栞「それはさておき、カスタムさんに見せたいものがあります」
 カスタム「な、なんでせう………(汗)」
 栞「先日、某旅館経営の美人会長(自称)さんから切れ味の良い包丁を頂きました」
 カスタム「それは、羨ましいですね………(汗)」
 栞「で、お願いがあるんですよ」
 カスタム「な、なんでせう………(汗)」
 栞「ほら、良くあるじゃないですか。試し切りしたくなるって言う………」
 カスタム「(ビクッ)ハイ先生! それは意味が違うと思いますです!」
 栞「問答無用ですよ………」
 カスタム「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃーーーーーー!!!!」

          
          ………


 栞「………と言うわけで、次回いよいよ宇宙編です! 馬鹿な作者が書いたものですが、これからもよろしくお願いします!」
 香里「栞〜! 生ゴミはちゃんと分別しないとダメでしょ!」
 栞「あ、ごめんなさ〜い。テヘッ☆」

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