機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−





















 宇宙での初めての闘い。
 私は経験不足のために出撃する事ができませんでした。
 祐一さんと名雪さんが撃退してくれましたが………なんだか悔しいです。
 私は本当に祐一さんのお役に立てるのでしょうか………?

 

倉田佐祐理の日記より




















第18話「合流」




















 <サイド6・コロニー「リプトン」付近宙域>

 ただっ広い宇宙の中で一際目につくものがある。
 宇宙での生活の拠点となる、スペースコロニーだ。
 遠くで見ると全く動いていないように見えるコロニーだが、ゆったりとした回転をしている。コロニー内に地球にいる時と同じぐらいの重力を発生させる為である。
 水瀬秋子艦長が指揮するパッヘルベルは、30〜40から形成されるサイド6の一つ、「リプトン」に駐留していた。
 この小コロニー「リプトン」は、サイド6からもかなり離れた場所に点在し、住居者数、工業・産業共にそれほど発達したコロニーではない。言わば田舎のコロニーなのである。
 パッヘルベルも既にドッグ入りしている。
 そこにはただ静寂がある、はずだった。




 

ィィィィィィィィィィイインンン!!!!!!





 静かだったはずの宙域にMSの駆動音が鳴り響いている。それも複数だ。明らかに緊迫した雰囲気を醸し出している。
 一機のMSを二機のMSが追撃している。
 一見すると追われている一機のMSの方が不利に見えるが、その動きには余裕が感じられていた。
 
 「ゆ、祐一さんはどこに!?」
 「あそこ! あのゴミに隠れたよ!」

 追っている二機のMS、名雪のジム・スナイパーII改と、佐祐理のジム・カスタムが祐一のNT2カノンを必死に押さえようと躍起になっている。
 だが、二人の表情からは余裕が感じられず、急加速の時に訪れる急激なGに辟易していた。

 「甘いよ二人とも………」

 祐一が目の前に現れたコロニーの残骸からいきなり姿を現す。
 名雪と佐祐理は自分たちが予測していない場所から急に現れたので、一瞬、怯んでしまった。
 
 「きゃあ!」

 咄嗟に我に帰った佐祐理がライフルを祐一に向ける。
 が、祐一の姿が視界から消えた。

 「いない? どこに!?」
 「ここだよ」

 スピーカーから祐一の冷静な声が響いてくる。
 気付いた時には佐祐理のMSは祐一のカノンによって後ろから羽交い締めにされてしまっていた。完全に押さえ込まれてしまって、全く身動きが取れないでいる。

 「う、動けません〜」
 「だから全周囲に精神を研ぎ澄ませろって、さっきも言っただろう? 上下左右、360度全てに集中するんだ!」
 「わ、判ってますけど〜」

 などと、やってる内に背後にライフルを構えた名雪が忍び寄っていた。

 「とったよ、祐一!」

 してやったり、という表情で引鉄を引こうとする。正に勝ちを確信していた。

 「どあほう」

 だが祐一には判っていたのか、慌てず騒がず、そのまま機体を反転させ名雪に向き直る。
 そうなると当然佐祐理と名雪が向かい合わせになる格好になる。

 「「へっ?」」

 名雪は呆けたように口を開けたまま引く。佐祐理の方も何が起こったのか判らずぽかんとしていた。

 


 

ビィーーーーッ!!





 突然、佐祐理の機体が機能を停止し、コックピット内がアラーム音で一杯になっていた。
 模擬弾が当たった証拠である。
 そのまま佐祐理は撃墜扱いになっていた。
 一方名雪も、呆けていたところを祐一によって撃墜されていた。
 
 「………二人とも、これが実戦だったら6回も死んでる事になるぞ………」
 「うー………」
 「面目ないです………」

 もうお分かりだろうと思うが、三人は実戦形式の戦闘訓練をしているところである。
 先日のような実戦に備える為に、また宇宙での戦闘経験のない二人を慣れさせる為に訓練を行っていたのだった。
 名雪も佐祐理も大気圏内での戦闘経験は豊富なのだが、初体験である無重力状態にかなり苦労しているようだ。思うように機体を動かす事ができずに、さっきから撃墜されっぱなしであった。

 「二人とも実力はあるんだし、コツさえ掴めれば大丈夫だと思うんだけどな」
 「そんなものかなあ」

 さすがに6回も撃墜されてきた為に、かなり落ち込んでしまっている。さすがに言いすぎた、と感じた祐一はさり気なくフォローを加える。
 
 「そんなものだよ。こういうのは体で憶えるしかないんだ。いくら頭で理解していたって咄嗟の判断が出来なければ意味が無いからな」
 「それはそうですね」
 「だろう?」
 「なるほどね〜………じゃあ、祐一。もう一度お願いできるかな? なんとか感じは掴めてきた気がするの」
 「よし、それじゃ5分後にまた最初の位置から………」

 気を取りなおして再び模擬戦の準備に取り掛かろうとした時に、パッヘルベルからの通信が入った。アラームの音の感じから、緊迫した物では無さそうである。

 『まもなくベルリンが入港します。各員、帰頭して下さい』
 「了解。相沢大尉、以下二名これより帰頭する」

 祐一が訝しげに見ている名雪と佐祐理に事情を話す。

 「二人とも、一旦パッヘルベルに戻るぞ。グラン大佐の艦が到着した」
 「それじゃ、舞と会えるんですね!」
 「ああ。舞や栞も寂しかっただろうしな。早く行って安心させてやろうぜ」
 「はい!」
 「と言うわけで名雪。訓練はまた次の機会にな」
 「うん、私は全然構わないよ。私も栞ちゃんや川澄先輩と会いたかったしね」
 「よし、じゃあ帰るぞ」
 「「了解」」

 久々に、と言っても一週間ほどしか経っていないのだが、祐一達にとっては長い間会っていないような錯覚を覚えたようだ。
 少々、スピードを上げながらパッヘルベルへと戻っていく。
 その後姿は、嬉しさで満ち溢れているようであった。



















 間もなくドッグにサラミス級巡洋艦『ベルリン』が入港してきた。管制の誘導に従い、ゆっくりと係留されていく。やがて完全に係留作業が完了すると、次々と乗組員が下船する。その人々に中には、待望の人物達も混ざっていた。

 「舞!!」
 「………佐祐理」

 タラップを降りきった舞に佐祐理がいきなり飛びついてくる。
 長い航行からようやく開放されて安心している所に、いきなり飛びつかれたものだから少し動揺しているようだ。
 そのまま佐祐理に押し倒される格好になっている。

 「ご苦労様、舞。怪我とかしなかった?」
 「大丈夫。模擬戦をしていただけ………」
 「よかった〜。佐祐理も祐一さんも心配してたんだよ〜」
 「………そう」

 そっけない言葉を発し、そっぽを向いてしまう。さすがの舞も照れてしまっている。

 「………どうでも良いけど、佐祐理」
 「ん? 何?」
 「重い」
 「ふえ?」
 
 ふと我に帰り辺りを見まわしてみる。
 他の面々の顔を見てみると、皆呆然としていた。祐一に至っては、舞に手を振ろう、という格好のまま固まってしまっている。
 佐祐理も状況を見て、ようやく自分のした事が判ったのか、顔を真っ赤にしながら舞を助け起こそうとした。

 「あっ、御免ね!」

 慌てて起き上がると、舞の手を取り立ち上がらせた。
 
 「嬉しくてつい………何処か打ったりしなかった、舞?」
 「はちみつくまさん」
 「よかった………」

 何事も無くホッとする。
 舞の方はというと、何事も無かったかのようにタラップを降りていった。

 「よっ、相変わらず無愛想だな」

 

 

ポカッ




 「相変わらずは余計………」

 祐一の挨拶にいきなりチョップを見舞う。この祐一と舞のやり取りはまさに恒例行事となっていると言えよう。

 「………無愛想ってのは認めてるんだな………」



 

ガスッ!




 今度はかなり力の入ったチョップが祐一を襲う。

 「ぐあっ!」
 「………」

 つぼに入ったらしく、額を押さえながら悶絶していた。音を聞くだけでもかなり効いている様だ。

 「いって〜………何も本気で突っ込まなくても良いだろ」
 「自業自得………」
 
 舞も気にしていたようだ。

 「はえ〜、さすがに祐一さんの方が悪いですよ〜」
 「祐一非道い」
 「そうね。それは祐一さんが悪いわね」
 「うぐ………」

 横から口々に非難が浴びせられる。さしもの祐一も、女性からこうまで言われては立つ瀬が無い。

 「ご、ごめんな、舞」

 背中に痛い視線を感じながら、舞に謝る。

 「別にいい………祐一だから」

 かなり恥ずかしそうだ。確かにこういう場面はどちらの方も恥ずかしいのだろう。ましてや公衆の面前で、である。

 「じゃ、じゃあ立ち話もなんだし、とりあえず部屋に戻ろうか? 積もる話もあるだろうしな!」
 「あ、そうですね。早くお話聞きたいですし」
 「はちみつくまさん」

 柄にもない事をしてしまった祐一は、顔から火が出そうな思いだった。
 ともかく舞達の部屋に案内する為にドックから出ようとする。
 
 「ん?」

 と、突然首を傾げる。
 何か大切な事を忘れているような………

 「なんだっけ………え〜と、なんでここに来たかと言えば、舞と栞を出迎える為で………」

 そこではたと気が付く。
 あわてて振り向いてみると。

 「………いーんです、どーせ私なんか気にも掛けてくれないんですよーだ………いじいじ」

 栞が隅の方でいじけていた。



















 場所は変わって談話室。

 「本当に悪い! 俺が悪かった!」
 「極悪人です、祐一さん………」
 
 祐一は先程から何度も頭を下げて平謝りをしている。一方、栞はと言うと、まだ怒りが収まらないのか、そっぽを向きながら膨れていた。

 「御免な〜、その場の流れでつい………」
 「つい、じゃないですー。とっても傷ついたんですよー!」
 「わ、わかった。今度、なんでも好きなもの奢るからそれで勘弁してくれ〜」

 その言葉を聞いて、急に顔を輝かせる栞。
 その目は期待に満ち溢れていた。

 「本当ですか!? 本当になんでもいいんですね!」
 「あ、ああ………」
 「じゃあじゃあ、30アイスのメニュー、全部が良いですー!」
 「ぐあっ!」

 祐一は言ってからかなり後悔し始めていた。
 30アイスとは、アイス専門のチェーン店で、その品数の豊富さが売りの店である。その数はゆうに30品目を超えているらしい。

 「ま、マジか………?」
 「大マジですー」
 「………判ったよ」

 栞の目を見るだけで嘘ではない事を悟る。祐一はこれも運命と諦めるのであった。

 (とほほ………まだ給料日まで大分有るっていうのに………)

 心の中でそっと泣いていた。

 「それにしても久しぶりに全員揃ったな」
 「本当ですねえ。やっぱりこのメンバーが一番ですよ」

 いままで黙ったままだった佐祐理が感慨深げに言う。
 
 「どうだ、二人とも。もう無重力には慣れたか?」

 祐一が舞と栞に話を振る。

 「………大分慣れた。栞も飲み込みが早い………」
 「そんな〜、舞さんの教え方が上手かったからですよー」
 「その分だと大丈夫そうだな………ちなみにどのくらい訓練をした?」
 「………三日ほど。出航してからすぐに始めたから」

 舞は簡単に言っているが、全く経験をしていない内から三日で慣れる事は容易ではない。
 やはり普通のパイロットには無い資質を持っているのだ。

 「だそうだ、二人とも。俺達はまだ訓練始めて初日なんだからあせる事は無いさ」
 「あはは〜、そうですね」
 「祐一、私がんばるよ!」

 二人を励ますように、祐一が諭す。その言葉を聞いて、佐祐理も名雪も安心したようだ。少し元気が無かった二人だが、今ではもう元に戻っている。
 
 「佐祐理。私も佐祐理達の役に立ちたい。出来る事があれば、何でも言って欲しい」
 「私も及ばずながらお手伝いしますー!」
 「あははっ、二人とも有難うございます。みんなで頑張りましょうね!」
 
 祐一はこの微笑ましい光景を、微笑を浮かべながらジッと見つめていた。何か足りなかったパズルのピースが急にはまり出すような、そんな気がしていた。

 「………やっぱりこのメンバーが最高だな」
 「ん? 祐一、何か言った?」
 「うんにゃ。なんでも」
 「………?」

 不思議そうに首を傾げている名雪を他所に、祐一はただ微かな笑みを浮かべるだけであった。




















 「これが今日までの航海記録です」
 「ありがとう。長旅ご苦労様でした」
 「はっ、光栄であります」

 気品と高級感のあふれる部屋に、一人の実直な男の声と、繊細な女性の声が響く。厳かな中にも、親しみが込められた雰囲気を醸し出している。
 
 「何事も無かったようですね、グラン大佐」
 「はい。敵との遭遇もありませんでした」
 「新型のMS………G・リファインですか?」
 「はい。つい先日、ロールアウトしたばかりのMSで、かなりの高性能機に仕上がっています。実戦テストは、川澄曹長と美坂伍長がそれぞれ行っております」
 「なるほど………」

 書類を眺めながら相槌を打つ。滅多に見られない、真剣な表情だ。

 「しかし宜しいのですか? 新型のMSもそうですが、大半の物資をこちらに移すなんて………」
 「いえ、構いません。自分は戦力は固めた方が効率がよい、と考えております。それにG・リファインはすでにあの二人のデータを組み込んでいますし」

 グランはおどけたようにふっと笑う。その笑顔に釣られるように、秋子もその険しい様相を崩した。
 
 「判りました。ここにも若干のMSがある筈です。そちらの方を要請しておきます。あとは積めこみ作業の時に連絡いたします」
 「恐れ入ります………それでは、自分はこれで。まだ若干仕事が残っていますので」
 「ご苦労様でした。皆さんにもよろしくお伝え下さい」
 「心得ました………では失礼」

 恭しく礼をしながら、グランが扉の外に消えた。
 秋子はしばし扉を眺めていたが、再び書類に眼を戻す。

 「………これで地盤は整いましたね」

 一人ではやや広すぎる感のある部屋に、秋子の呟きが木霊する。

 「いよいよですね………」

 書類から目を離し、天井を見上げるように椅子の背もたれに寄りかかる。その目はやや緊張の色が伺えるが、一点の曇りの無い決意に満ち溢れていた。

 「久瀬中将………あなたの好きにはさせません………」



















続く




















 <MSデータ>

・その14  RX−82R−04  G・リファイン  パイロット・栞
 頭頂高・18、0m/本体重量・44、6t/ジェネレーター出力・1460kw/スラスター推力・112000kg/装甲材質・ルナ・チタニウム
 武装・ビームサーベル×2、ビームライフル×1、60mmバルカン砲×2、ハンドグレネイド×4
 RX−78−2ガンダムのデータを元にした、再設計試作量産型。量産型と言っても、ジムよりジェネレーターの消費効率が良く、ガンダムと比較しても遜色のない高性能機に仕上がっている。
 装甲面でも、従来の量産型に用いられるチタン・セラミック複合材ではなく、より硬質のルナ・チタニウムが用いられている。
 ちなみにG・リファインは試作機の為、都合7台のみ製造された。栞の機体は、その4号機である。

・その15  RX−82R−03/MK  舞専用G・リファイン  パイロット・舞
 頭頂高・18、0m/本体重量・46、9t/ジェネレーター出力・1310kw/スラスター推力・147400kg/装甲材質・ルナ・チタニウム
 武装・メガビームサーベル×1、60mmバルカン砲×2
 栞と同じG・リファインだが、こちらは舞専用にチューンされた機体。川澄舞本人の意向で、不要な武装は一切排されている。
 この機体の特徴でもある、メガビームサーベルは、背部ランドセルのジェネレーターとビームサーベルの柄が直結しており、有線式になっている。そのおかげで従来のビームサーベルの二倍から三倍近くの出力を発揮することに成功している。
 頭部のバルカン砲は、あくまで予備である。



















 <パッヘルベル乗組員内訳>

 ○艦長/水瀬秋子少将
 ○ パイロット
  ガンダムNT2カノン、パイロット/相沢祐一大尉
  ジム・カスタム、パイロット/倉田佐祐理中尉
  ジム・スナイパーII改、パイロット/水瀬名雪軍曹
  G・リファイン、パイロット/川澄舞曹長・美坂栞伍長
○ オペレーター
  右舷オペレーター/メアリー・シンドロワ軍曹(女性・24歳)
  左舷オペレーター/マイクル・ライト少尉(男性・29歳)
○ ドライバー/マローン・コリンズ中尉(男性・34歳)
○ メカニック・チーフ/ウィノナ・バウンス少尉(女性・19歳)

 他多数




















 カスタム「どうも、お久しぶりです」
 栞「こんにちは」
 カスタム「ようやくテストも終了したのでいつも通り書ける事になりました」
 栞「テストの方もなかなかの手応えみたいでしたね」
 カスタム「はい、この調子で連載の方のスピードも上げていきたいですね」
 栞「それはそれとして………やっと合流しましたね」
 カスタム「これでいよいよ火星へと乗りこめますな」
 栞「私のMSも出てきたし、なかなか良い具合ですよ、カスタムさん」
 カスタム「お褒めに預かり光栄。まだまだ活躍の場がありますからお楽しみに」
 栞「期待して良いんですね?」
 カスタム「もちろん」
 栞「それじゃ、その言葉信じましょう。いまから楽しみにしてますよ」
 カスタム「それでは、この辺で〜」
 栞「また次回〜」


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