機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−










ジャブロー。
南米にある連邦軍総司令本部である。
俺は来た早々そこに行かされる事になった。
秋子さんの頼みだし、何か考えのあってのことだろうけど………
それにしてもジオンが何か良からぬ事をしているらしい。
俺はジャブロー付近の小隊の隊長に任命される事になった。
どうやら秋子さんがそうなるように手回しをしたらしい。
それにしても買かぶりだよ、秋子さん。
隊をまとめるほどの技量は俺には無いっていうのに………
まあ、秋子さんの期待を裏切らないように精一杯頑張りますか。

          

相沢祐一の日記より









第2話「再会」









<大型輸送機・ミデア内>

「うっわー、綺麗だなー」

明け方。海面から顔を出す太陽がすべて包みこむかのように輝いている。
ずっと宇宙にいた祐一にとっては全てがものめずらしいものなのである。
ましてや太陽が水平線から顔を出す瞬間など見ているはずも無く、子供のようにはしゃいでいた。
ミデアの横をたくさんの鳥達が並んで飛んでいる。
なんとも美しい情景だった。

「相沢中尉、もうすぐジャブローですので物資の最終確認をお願いします」

外の風景に見とれていた祐一はその声で我に返った。

「あ、ああ、はい。わかりました、すぐ行きます」
 
「お願いします」

乗組員の報告を再度確認しながら祐一は格納庫へと向かって行った。
ちなみに祐一はジャブローに向かうと同時に、補給物資の輸送も頼まれており、慣れないながらもこのミデアの艦長を務めているのだった。
あまり人の上に立って指示するのが得意ではない祐一だったが、
秋子の頼みでは断れるはずも無く、早くジャブローに着かないかと、待ち望んでいるのだった。

  (はあ………秋子さん、遊んでるんじゃないかな………)

祐一は相変わらず愚痴をこぼしていた。















<秋子の執務室>

コンコン。

「開いてますよ」

秋子は黙々と執務をこなしている所に男が入ってきた。

「失礼するよ」

秋子が顔を上げるとそこにはハンサム、と言った感じの優男が立っていた。
年齢は20歳前後だろうか。この年で中将のポストを持っているなど、非凡な才能が伺われる。

「あら…久瀬中将ではございませんか。私に何かご用ですか?」
「いや、なに。ただの世間話をしに来ただけさ。………おい、お前達は下がっていろ」

久瀬、と呼ばれた男が振り向くと三人の護衛が付いていた。
その眼光に怯えたのか、護衛達はそそくさと退室していった。

「やあ、すまないね。いつも護衛はいらないと言ってあるのだけれども、どうしても聞かなくってね。見苦しい所を見せてしまったよ」

先ほどの剣呑な雰囲気とは裏腹に微笑を浮かべながら秋子の方を振り向いた。

「いえ……ところで一体どうしたのですか?」

「いや、風のうわさで聞いたのだが……随分と肩を持っている奴がいるそうじゃないか。確か………相沢祐一とか言う者だったかな?」

秋子は少しだけ眉をひそめたが、

「そんな……別に肩を持っているわけではありませんよ」

「しかし君が自ら命令を下すなんてめったにないじゃないか」

「……昔からの知り合いなのですよ、相沢中尉とは」

そう答えると再び書類に目をやった。

「君がそこまで期待しているとは………それ程の人物なのかい、彼は?」

「ええ、そうですね。これからの未来を託すにはうってつけの者です」

きっぱりと、秋子は言い放った。

「ほお………」

久瀬は表情を硬くすると秋子を睨み付けた。だが秋子がそんな事で動揺するはずも無く、軽く受け流していた。
どうやら『未来を託す』という部分が気に入らなかったようだ。

「ふん…まあいいか。仕事中に悪かったね。それでは、ごきげんよう」

そのまま久瀬はきびすを返すと部屋を出ていった。
出て行った後も不機嫌な表情を隠さずに、肩を怒らせながら歩いていた。

(水瀬秋子め………気にくわん)

(相沢祐一か……ふん、こんな奴に何ができるというのだ。笑わせてくれる……)

久瀬は一人ほそく笑むのであった。


 














<ジャブロー駐屯地>

「んーっ、やっと着いたあ!」

長旅を終え、目的地であるジャブローに着いた祐一はしばしの間、開放感に酔いしれていた。
補給部隊の艦長と言っても、あくまで臨時の艦長なので荷物の確認をした後は何もする事が無く、暇を持て余していた。

  (さーて、これで艦長の代理も終わりだし今日はゆっくり寝ますか……)

「あのー……」

(いや、その前に一杯引っ掛けるか?)

「もしもし〜?」

(でも一人で飲んでも味気ないしなあ………)

「(すぅーっ)あのーっ!!すいませーん!!」


「どわあっ!!」

いきなり大声で声を掛けられ、祐一は驚きのあまり転びそうになった。

「あ、やっと気づいてくれた」

「こらーっ!いきなり大声で話し掛ける奴が………って……?」

祐一が振り向くと青く長い髪を持った少女が立っていた。それもかなりの美少女と言って良いだろう。
その少女は祐一の顔を見るなり、驚きの表情に変え、次の瞬間目に涙を浮かべていた。

「ちょ、ちょっと。ねえ、何で泣いて………」

「………祐一?」

「え………?」

「やっぱり祐一だ………」

少女はそう呟くといきなり祐一に抱きついてきた。

「祐一、会いたかったよ!!」

「お前、名雪、か?」

「うんっ!そうだよ!名雪だよっ!!」

名雪と呼ばれる少女は更に抱きついてきた。
祐一も最初はあっけに取られていたが、落ち着きを取り戻すと懐かしさがこみ上げてきた。

「はははっ!名雪、お前本当に久しぶりだな!!何年振りだ?」

「七年ぶりだよっ!ずっと、ずっと待ってたんだから!!………それなのに全然帰ってきてくれないんだもん……」

「……ごめんな、名雪。この埋め合わせは必ずするから」

急に祐一の体から離れると、涙をぬぐって笑い顔になる。

「イチゴサンデーで我慢してあげるよっ!」

「ああ、いくらでもおごってやるよ!」

祐一も名雪との再会によって今までの疲れもとれるような思いだった。

 















「へえ、それじゃあ名雪もここに配属されてたのか」

「うん。それにしてもお母さん、人が悪いよ〜。こんな大事な事内緒にしとくなんて〜」

「……秋子さん、これを狙ってたな…。本当に人が悪い」

二人は近くの休憩所に入って落ち着いていた。
名雪は祐一がここに来るとは秋子から聞かされていなかった。おそらくびっくりさせようと思っていたのだろう。
何もそこまでしなくても、と思う祐一であった。
それでも、名雪は祐一と再会できた事を素直に喜び、
祐一もまた見知らぬ土地で孤独を味わっていたためにこの出来事は歓迎すべきものであった。

  「ところで、名雪。お前はどこの部隊なんだ?」

「私?えへへ、実は最近異動して新しい部隊に配属されたんだよ」

「へえ、そうなのか」

「うん。…確か第6小隊だったかな……」

「え………第6小隊?」

祐一はその言葉を聞いて目を丸くした。

「……?そうだけど?」

「……俺、そこの部隊の隊長に任命されたんだけど………」

「………うそ」

今度は名雪の動きが止まった。

「………」

「………」

「………」

「………」

沈黙。

「ええーーーー!!!??」



「ぐわっ!?」

名雪の近くにいた祐一はその叫び声に鼓膜の破れる思いがした。

「えー!!うそうそうそ!!ほんとに!?」

「お、おい、名雪…もうちょっと落ち着いて……」

周りの視線が痛い。
しかし名雪にはそんな事お構いなしだった。

「じゃあ、じゃあ、一緒にいられるんだね!!?」

「う、まあ、そうかな………」

「やったー!祐一と一緒、祐一と一緒!!」

「な、名雪……お願いだから静かにしててくれ………」

「えへへ………祐一が隊長さんかあ………手取り足取り教えてもらってその後………、なんちゃって(ポッ)」

聞いちゃいなかった。

「そ、それより名雪。俺達の配属される部隊のことなんだが………他の人はどうなってるんだ?」

「………うにゅ?なんか言った?」

「………」

その時祐一は秋子の人選を呪ったという。




















<連邦軍・基地内宿泊施設>

二人は休憩所をあとにして、そのまま自分達の部屋のある宿舎に戻ってきた。

「何っ!!それじゃあ、舞も佐祐理さんも栞も一緒の部隊なのか!?」

「うん、そうだよ。さっきも皆で奇遇だね〜、って話してたとこだもん」

祐一は驚きを隠せなかった。
自分の部隊に所属する隊員が全員知りあいだったからだ。

  (秋子さんの権力って本当にすごいんだな………)

祐一は改めて秋子の事を尊敬していた。

「お母さんもやる時はやるよね。私、本当に感謝してるよ!!」

「……うん、そうだな。俺も知らない奴とやるより知ってる奴の方が気をはんなくてもいいしな………」

「ところで皆はどうしてるんだ?ここにいるんだろ?」

「さっき連絡しておいたよ。もうすぐ来るんじゃないかな」

「そっか。皆と会うのも久しぶりだから楽しみだなあ」

祐一は何か懐かしい物を感じながら天井を見つめていた。

倉田佐祐理、川澄舞、美坂栞の3人は祐一の昔からの友人なのである。

名雪を含めてこの3人は同じ士官学校に通っていた。

その時外の方がにわかに騒がしくなっていた。

「なんだ?」

「なんだろう?」

徐々にこっちに近づいてくる。

バンッ!!


勢いよくドアが開けられる。

「祐一さんっ!」(佐祐理)

「……祐一!」(舞)

「祐一さん!」(栞)

開けたと同時に祐一のもとへなだれ込んできた。

「のわっ!」

  いきなり三人も抱きついてきたものだから、支えきれず後ろへ倒れこんでしまった。

「なんで連絡してくれなかったんですかーっ!すごく会いたかったんですよー!」

「………祐一ひどい」

「そんな事する人嫌いです!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!一人ずつ話してくれ!」

「ううー、抱きついたりしてずるいよ〜。私も〜」

その後そこにいた5人全員、宿直に厳重注意を食らったのは言うまでもない。



















「はえーっ、それでは秋子さんが手回しをしてくれたんですか」

なんとか落ち着きを取り戻し、祐一のこれまでの経緯を聞いていた。

「ああ、俺もびっくりしたよ。何せメンバー全員が俺の知ってる奴らばっかなんだからな」

「あははー、それはここにいる全員が思ってますよ。ね、舞?」

「………でも、嬉しい」

舞は顔を赤くしながら祐一の顔をちらちらとうかがっている。その仕草に祐一は笑顔をほころばせた。

「ずるいよ〜。そっちばっかり盛り上がって」

「そうですよっ。こっちは皆さんの為にお茶を淹れてるんですから」

台所の方から名雪と栞の愚痴が聞こえてくる。

「でも、ジャンケンで負けただろうが」

「祐一さん、レディファーストって知ってますか?」

「栞、俺は男女平等なのだよ」

「あははーっ、誰も祐一さんを取ったりしないから大丈夫ですよー」

「「ぶーぶー」」

二人は愚痴を言いながらてきぱきとこなして行った。

「しかし、いいのかな?佐祐理さんも舞も前の部隊ではエースだったんだろ?
 栞と名雪もすごい優秀らしいじゃないか。そんなのが俺の部下になるなんて………」

「何言ってるんですか。祐一さんと一緒に居られる事がすごく嬉しいんです。倉田先輩も、川澄先輩も、水瀬先輩も同じ気持ちなんですよ?」

(それに祐一さんのお手伝いができるなんて、こんな嬉しい事はないし………)

栞が祐一を諭す。その場に居る全ての者が同じ気持ちだった。

  「………そっか。ありがとうな、栞」

そう言って栞の頭をなでる。
栞は顔を真っ赤にしながら気持ちよさそうに目を細めていた。

「あ、そうでした。私たちの事も話さないといけないですね」

そう言うとスッと立ちあがった。
それに習って他の3人も立ち上がる。

「皆!整列!」

「「「はいっ!」」」

佐祐理の掛け声ですぐさま立ち上がり整列する。
祐一は一体何事かと驚いていた。

「相沢隊長!ただいまより倉田佐祐理、以下隊員の紹介をいたします!」

「このたび相沢中尉の指揮下に入ります、倉田佐祐理少尉です!担当はパイロット、乗機は陸専用ジムです!」

「……同じく川澄舞曹長です。パイロット担当です。乗機は陸専用ジムです………」

「同じく水瀬名雪軍曹です!担当はオペレーター及びパイロット、乗機はジムキャノンですっ!」

「同じく美坂栞伍長です。担当はソナーナビゲーターです。その他雑務をしています」

「「「「よろしくお願いしまーす!!!」」」」

「はは、ははは………(汗)」

なぜか先行きの不安を隠せない祐一であった。





     続く


 




<MSデータ集>

※ ここでは作中で登場したMSを紹介・説明をします。


○その1  RGM−79(G) 陸専用ジム  主なパイロット・佐祐理、舞

連邦軍初の量産型、ジムを陸専用にチューンしたもの。コストパフォーマンスもそこそこで各地区で運用されている。
今回佐祐理機と舞機として登場しているが、二人の物はかなり仕様が違っている。

・ 佐祐理機………頭頂高・18m/本体重量・42,3t/武装・ビームライフル×1、ビームサーベル×2、3連装ミサイルポッド×2
  佐祐理用にチューンされたもの。腰部にミサイルポッドがマウントされている。

・ 舞機………頭頂高・18m/本体重量・41,2t/武装・大型ビームサーベル×1、ビームナイフ×1、ビームガン×1
  白兵戦を主とした機体。これは射撃の得意でない舞の為に追加武装したものである。 脚部のシリンダー部分を改良し運動性を上げている。


○その2  RGC−80  ジムキャノン  主なパイロット・名雪

ジムを砲撃戦仕様に再設計した機体。右肩にキャノン砲を装備し、装甲を強化している。一年戦争の中期当たりにそこそこ量産されていた。
頭頂高・18m/本体重量・44,1t/武装・60oバルカン砲×2、ビームスプレーガン×1、240oキャノン×1







いやはや苦労しました。MSを出すとかいって最後の方で名前だけ出した程度でしたからねえ。
あとMSのデータなどを作ってみました。
ガンダムを知らない人でもいいようにと言う事で作ってみたのですが………どうでしょう?
ちなみに祐一君は私の独断と偏見でモテモテ君にしてみました。

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