機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−
























 ボクの望んでいる人は、あのガンダムの人かもしれない………
 ただ漠然と思う事だけれど、そう感じる。
 あの人に出会う事さえできれば、ボクは………変われるかもしれないんだ。

 

月宮あゆの日記より





















第25話「感応」




















 <11月6日 7時19分 倉田佐祐理隊>

 パッヘルベルから飛び立った佐祐理隊が、真琴達の部隊と遭遇したのは、発進してから20分後の事であった。

 「倉田中尉! 高速接近中のMS隊を確認! 2時の方向!」

 先行していた別働隊が戻ってくる。
 恐らくは軽い小競り合いをしていたのであろう。何機か被弾した機体が存在した。

 「了解。貴方達は後ろに下がってください! 佐祐理達に任せて!」
 「はい! 御武運を!」

 仲間のジムが後ろに下がっていく。
 











 同じ頃、真琴達も佐祐理隊の存在に気が付いた。
 1機の黄色い機体が、5機のザクを引きつれてパッヘルベルに向かっている。
 その黄色い機体、ネッツーキの暗いコックピットの中で薄ら笑いを浮かべている少女の姿があった。
 モニターの照準を秋子達の艦艇に合わせる。

 「ふふふ………このネッツーキ。そこら辺のMSとは格の違いがあると言う事を、思い知らせてあげるわ………」
 
 そしておもむろにトリガーを引く。
 ネッツーキの両肩に装備されているメガ粒子砲が、その牙を剥いた。





 

バシュウウウゥゥゥッ!!!!!






 その時、パッヘルベルの左舷につけていたメルボルンが火を吹いていた。
 
 「何事ですかっ!?」
 「メルボルンがやられました! 敵のMSにやられたんですっ!」

 秋子が叫ぶ。
 パッヘルベルのブリッジで様子を見ていた、オペレーターのマイクが轟沈するメルボルンを横目に見ながら悲鳴を上げていた。

 










 「メルボルンが!?」
 
 佐祐理の後ろで火球になっていたのが、かつてのメルボルンだと言うのが判ると、いっそう表情を険しくした。

 「佐祐理さん!」
 「栞さんは傍を離れないで!」
 「はいっ!」

 少々困惑した栞に伝える。
 
 「くっ! ビームライフルよりも強力なビーム砲とでも言うのですか!?」

 佐祐理のコックピットの内に敵の位置が知らされる。と同時に肉眼で確認できるほどにまで、接近されていた。

 「蒼いジムっ! ここで会ったが百年目よ!」
 「新型のMSっ………!」

 真琴は佐祐理のジム・カスタムを補足すると、照準を彼女に合わせ始める。
 砲門が鈍い蒼の色を発すると、すぐさま加熱されたメガ粒子の集合体となって弾き出した。
 
 「! アレには当たれない!」

 回避行動。成功。
 だが後続のザクが更なる攻撃を繰り返してくる。
 佐祐理隊と真琴隊。
 数の上ではほぼ互角である。
 あとは、パイロットの力量と経験が物を言う。

 「私だって戦えるんです!」

 栞も恐怖と戦いながらビームライフルを連射する。
 だが、ロクに照準も合わせていない為に、ほとんど当たる事は無かった。
 
 「栞さん、慎重に! 闇雲に撃っても当たりませんよ!」
 「は、はいっ!」

 佐祐理が栞に叱咤を送る。
 佐祐理の大きな声に、ようやく栞も冷静さを取り戻していた。
 一旦、攻撃を止めて辺りの状況を確認する。

 「………!!」

 目の前の光景に思わず息を呑んだ。
 接近した1機のザクが、ヒートホークで栞達の仲間であるジムのコックピットを、潰していたのだ。
 そのままジムはぱたりと動かなくなる。
 相手のザクは、それを確認すると、次の目標を見つけるかのように、カメラアイを動かしていた。
 
 「油断をすれば………私もああなるの……!?」

 目の前の凄惨な光景に、栞の体はおこりにでもかかったように震えていた。
 









 一方、真琴の後に出撃した香里達は、真琴の応援に向かっていた。

 「へえ………あの娘も結構やるのね。だったら、そんなに増援はいらないか………」
 「じゃ、どうするよ、香里? このまま敵さんの艦艇に突っ込むかい?」

 香里を隊長とするリック・ドム隊は、香里・北川の他に3機のリック・ドムIIで構成されている。
 もちろん、香里と北川の機体もリック・ドムIIだ。多少、カスタマイズ化は成されているが。
 
 「そうね………じゃ、潤はこのままパッヘルベルを攻撃してくれない? そうした方が効率いいかもね」
 「こっちは判ったが………香里はどうする?」
 「私はあの娘の増援に向かうわ」
 「一人で大丈夫か?」
 「大丈夫よ。そんなにやわじゃないわよ、私は」
 「それもそうだな………じゃ、後でな」
 「ええ………あ、ちょっと待って!」

 行こうとする北川を引きとめる。
 
 「ん? どうかしたか?」
 「あまり無理しなくてもいいわよ………どうせすぐ引上げることになるんだから」
 
 意味深な言葉をはく。
 北川も最初は意味がわからない様子だったが、すぐに表情を変えニヤリと笑う。

 「なるほどな。了解。適当にやって来るよ」
 「ん、じゃあね」

 二人で別れを言いながら、二手に分かれていった。
 香里は単独で真琴の増援に、北川と3機のリックドムはパッヘルベルへ。それぞれ針路を変更していった。











 「真琴さん! あまり前に出すぎないで下さい!」

 ハラルトが真琴に呼びかける。
 たしかに真琴のMSだけ、出過ぎである。

 「判ってるわよ! でもね、忘れたのハラルト!? あの蒼いジムには痛い目に合わされてるでしょうが!」
 「それは判ってますよ………っと!」

 ハラルトのザクがマシンガンを斉射しながら真琴のネッツーキに近づいていく。
 真琴も手に持っているミサイルランチャーを佐祐理の部隊に向けて発射した。

 「これでも食らえっ!」

 小型のミサイルランチャーガンから発射されたミサイル群は、正確に佐祐理達の方に向かっていった。
 当然、相手は避ける。
 だが、追尾型のミサイルだったのか、上方へ逃げていったジムを追いかけるようにして、曲がっていったのである。

 「し、しまった! 誘導ミサイルかっ!!」

 ジムのパイロットが叫ぶ。
 それが、彼の最後の言葉となった。
 そのままミサイルの洗礼をまともに受けた機体は、閃光を上げて消えていった。
 
 「フン、ざまあ見なさい!」

 真琴が誇らしげに笑みを浮かべた。
 空になったランチャーガンを投げ捨てると、ハラルトとハインツに呼びかける。

 「ハラルト! ハインツ! 私は蒼いジムを落としにかかるわ! 援護お願い!」
 「「了解!!」」

 真琴と二人の部下が後に続く。
 彼女達の仲間達が戦っている空域から離脱し、佐祐理のジム・カスタムに向けて加速を開始する。
 
 「佐祐理さん! 耳付きが来ました!」

 栞は耳付き、と言った。ネッツーキの事だ。
 ネッツーキの頭部には、動物の耳のようなセンサーが付いている。
 栞はそれを見て言ったのだろう。

 「追いこみが早い………!? このままでは………っ!!」

 接近が早い。
 そして、同時に攻撃を加えながら。
 真琴は立て続けにメガ粒子砲を放ってくる。
 間髪を入れずに、ビームの波が襲い掛かってくるのを、佐祐理、そして栞は懸命に回避を続けていた。
 各部アポジモーターをフルに使いながらビームを掻い潜るが、一つのビームの筋が栞の機体を目掛けて襲いかかってきた。

 「あぶな………っ!!!」

 一瞬、ぞわっとした感覚が背筋を走っていった。
 急いでリア・ノズルを回転。機体を反転させ、ビームをやり過ごした。
 だがその時。

 


 

ピシッ!  パンッ!!





 「きゃあっ!!」

 G・リファインのモニターに、大きな亀裂が生じたのである。
 直接ビームが当たらなかったものの、そのエネルギーの余波によってMSに影響を及ぼしたのである。
 開いた亀裂から空気が漏れる。
 だが瞬時にトリモチで、亀裂を塞いでいった。

 「………直接当たっていたら、死んでいました………」

 栞はホッと胸をなでおろした。
 
 「………痛っ!」

 栞は右腕に鈍い痛みを感じた。
 訝しげに自分の腕を見る。ノーマルスーツと共に、自分の腕が切れていた。
 
 「血が………」

 恐らくはさっきの破片で腕を切ってしまったのだろう。切れた腕からは、次から次へと血が流れ出している。
 痛みは思ったほど感じなかった。綺麗に切れ過ぎた所為であった。
 無重力下のコックピットの中で、血が水玉のようにふわふわと浮かんでいる。
 栞はその光景を綺麗と感じていたが、それが自分の血液言う事を思い出すと、すぐに真剣な表情に変わった。 
 栞は換気装置を作動させ、邪魔な血液の雫をダクトに吸い込ませる。
 すぐさまモニターを確認。
 くっ付いているトリモチのせいで少々見ずらいが、戦闘には支障が無いようだ。
 正面を見据え、敵の接近を待つ。

 「もう絶対、油断はできないんですね………私は」

 一瞬の油断。
 それが命取りになる事を、自分の肌で実感した。
 また一つ、学習する事ができた。











 香里と別れた北川は、迷う事無くパッヘルベルに向かっていた。
 北川のリック・ドムIIの他に、3機のリック・ドムが追従している。
 距離はかなり離れている。
 MSに装備されている望遠装置を使わなければ、まだパッヘルベルを補足できないぐらいに、である。
 
 「さて………香里に良いところを見せないとな………リック・ドム隊! さっさとケリるぞ!」
 『了解!』

 北川の呼びかけに、威勢の良い声が返ってきた。
 その様子を、北川はニヤッと笑いながら満足そうにしていた。
 だがその時、北川に何か異様なものを感じさせた。

 「………?」

 奇妙な雰囲気を感じ取った北川は、すぐにMSを急停止させ、辺りを伺う。
 後を追っていた仲間達も、訝しげに北川を見ていた。

 「?? ………中尉、どうしました?」
 「いや………なにか変とは思わないか?」
 「………なにかって………何がです?」
 「見ろ………俺達とパッヘルベルの間に空間………綺麗過ぎると思わないか?」

 確かに言われてみればそんな気もする。
 今まで通って来た所には、少なからず隕石の欠片やゴミが浮かんでいたはずだ。
 それが、目の前の空間には全くと言って良いほど無いのである。

 「気のせいじゃないんですか?」
 「そうだと良いが………!!?」

 北川は驚愕した。
 光るものを見た気がする。
 だが、気付くのにはほんの一瞬遅かった。

 「各機、散開!! やられるぞっ!!!」
 「え………?」

 北川の声に反応して振り向いたパイロットは、次の瞬間自分のMSが砕け散るのを見た。
 
 「! ちゅ、中尉ーーー!!! うわ〜〜〜っ!!!」

 ビームの直撃であった。
 リック・ドムは成すすべなく、その四肢を散らしていった。

 「ちっ………お前らっ、落ちつけ!」

 いきなり仲間がやられた事に、パイロット達は面白いほど混乱していた。
 ただ一人、北川だけが冷静に状況を把握していたが。

 「………超長距離ビーム砲だと………? それにしては正確過ぎる!!」

 最初は戦艦の主砲だと思った。
 だが、普通の主砲では、こうも正確に撃てる筈が無いのだ。
 では、他の武器があるのか?
 北川は今だ判らぬ敵の存在に、寒気を感じていた。

 「とにかく、隠れるんだ! このままでは絶好の的になる。隕石の裏に回りこめ!」

 北川の一喝に、今まで右往左往していた者達が、一斉に北川の指示に従う。
 慌てて隠れる場所を探すのであった。

 「くそっ!! あそこには何が居るってんだ!」

 北川は、歯を食いしばりながらパッヘルベルをにらみつけていた。








 
 パッヘルベルの艦橋に佇んでいる、1機のMS。

 「フフフ………我が狩り場にようこそ。歓迎するわ………」

 妖艶に舌なめずりをしながら、次の標的を探す少女がいた。 
 ジム・スナイパーIIのパイロット、水瀬名雪である。
 普段の彼女の姿はどこにも無い。そこに居るのは、狩りを楽しむ女豹であった。
 先程の一撃には、確かな手応えがあった。確実に1機を仕留めたと確信する。
 
 「我が聖地を脅かす下賎なる者達………死神の裁きを受けなさい………」

 例の祈りを囁きながら、バイザー越しに狙いをつける。
 目の前には綺麗に掃除された空間があった。
 名雪はこのような絶好の狩り場を作るために、あらかじめ邪魔な隕石やゴミを掃除していたのである。
 この鉄壁の守りを突破していくには、相応の技量を持った者しかできないであろう。
 
 「死に人の魂よ………迷う事無かれ………」

 引鉄を引く。 
 恐ろしいまでの光量を放つビームが、接近していた北川の部隊を襲った。
 そのまま光はすうっと闇に吸い込まれた。
 
 「………」

 手応えは………無かった。
 どうやら射程範囲外にまで逃れたようである。

 「ちっ………!」

 忌々しそうに舌打ちをする。
 獲物を取り逃し、少々悔しがっているようだ。
 だがそれも一瞬の事で、すぐに表情を消し、再びスコープを覗き込む。
 名雪の顔は、付属のバイザーで顔半分が隠れており、口元だけが見えている。
 その口元には、薄い笑みが零れていた。

 「フッ………まあいいわ。時間はいくらでもある。進むか退くか、それは貴方達の自由よ………」

 冷たく、黒光りしたスナイパーライフルの銃口を北川達の方向に向けながら、ぴたりと動きを固定する。
 
 「持久戦は、スナイパーである私の得意分野………根競べといきましょう………?」

 名雪の背筋にぞくぞくした感触が走る。
 恐怖からではない、単に緊張からでもない。
 狙う者と狙われる者の関係。
 その置かれた者達の立場に、湧き上がる興奮を隠せないのだ。

 「………我は聖地を守るアラモの砦………最後まで守りぬく………!」






































 <同日 7時10分 相沢祐一>

 整備と補給を完了した祐一のNT2カノンは、舞の同伴を拒否し、たった一人で暗い大海原に飛び込んでいった。
 舞の方はと言えば、苦戦を強いられている佐祐理達の方に向かったようだ。
 
 「………」

 祐一は、ただ黙々と機体をフォボスの方に向けている。
 遠くの方で閃光が走っている。
 戦いの火花があちこちで起こっていた。

 「フォボスの警備は薄くなっているはず………それをつけこめば勝てる!」

 確信は無いが、そう感じていた。
 事実、フォボス付近の敵の数は、やや少なくなっている。
 皆、前線に出はじめているのだろうか、そんな気がする。
 宇宙に無数に広がっている、スペース・デブリを避けながら慎重に歩を進める。




 

キンッ………!





 「くっ………」

 その時祐一の脳裡に、もやがかかったような映像が映し出される。
 その映像には、乳白色のゲルググJの姿が映っていた。
 それは、あたかも夢の中で映画を見ているような、そんな感じだった。

 「なんだ………っ! こっちに近づいてくる?」

 自分の感覚に酷く戸惑う。
 予知夢か、幻影か。
 今の映像が本当の事であれば、近づかない方が無難であり、当然の選択であった。
 ましてや祐一は優秀なパイロットだ。まかり間違っても、迂闊な事はしないはずである。
 だが、

 「ははっ、俺は何やってんだろうな………?」
 
 カノンは後退する事はせず、そのまま進みつづけていた。
 自分の行動に思わず苦笑を漏らす。
 頭では判っていても、身体が勝手に動いてしまう。それも、敵軍のMSに向かってだ。普通ならば正気の沙汰ではないだろう。
 何が祐一をここまで駆り立てるのかは、自分自身すら判らなかった。
 ただ、ゲルググのパイロット、月宮あゆに逢ってみたい、という願いがそうさせるのか。
 
 「どうこう言ってる場合じゃないな………みんな、すまん。俺は………」

 きっ、と前を見据える。
 そして、今まで向かっていた方向から90度に機体を反転させた。
 
 「俺は逢わなくちゃいけない気がする!!」

 手がかりは自分の脳裡に映った映像。
 それだけを頼りに、あゆのゲルググJを探し始めた。



















続く




















 カスタム「こんばんは〜………」
 栞「疲れてますね」
 カスタム「ええ………HPの作成とかあったから、思うように動けなかった」
 栞「まあ、まだ次回もある事だし、しっかり休みなさい」
 カスタム「そうします………」

 
 

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