機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−











 祐一が帰ってきてくれた。
 七年前に突然宇宙へ行ってしまった祐一。
 ずっとずっと会いたかった。
 いつも再会の日を夢見ていた。
 帰ってきたらどうしようか?
 そんな事をいつも思っていた。
 そしてその日が来た。祐一が帰ってきてくれた。
 思い描いていたよりもずっとかっこ良くなって。
 これからは一緒にいられる。
 頑張って行こう。
 ね?祐一。

水瀬名雪の日記より











第3話「ジャングル・パニック」













 <ジャブロー地区・大隊長室>

 「現時刻を持って連邦軍地球圏第15師団第06小隊隊長に任命されました、相沢祐一中尉です!よろしくお願いします!」

 「うむ、長旅ご苦労だった。ジャブローにようこそ、相沢中尉。
  私はここの大隊長を務めている、グランベルク・シューマッハ大佐だ。グランとでも呼んでくれたまえ」

 身長190は有ろうかという巨体を揺らしながら握手を求めてきた。
 長身老躯といった表現にぴったりの人物であった。

 「よろしくお願いします、グラン大佐。……ところでどういうご用なのでしょうか?」

 それもそのはず一小隊の隊長がわざわざ大隊長に呼ばれるなど珍しい事なのだ。

 「そう堅くならないでくれよ。まあ、水瀬少将との話でよく聞かされていたからね。興味を持ったんだよ、君にね」
 「はあ………(秋子さん〜、何を話してるんだ〜一体)」
 「それに挨拶も兼ねたかったしな。ついでだよ、気楽にしてくれ」

 そう言うとグランは祐一に椅子を勧めた。

 「さて、君は自分の部隊の事を詳しく知っているかな?」
 「いいえ、第06小隊と言う事しか………」
 「ふむ……まあ、来たばかりだからしょうがないか。よろしい、こちらに来たまえ」

 グランはいきなり立ち上がると、隣の部屋に入っていった。
 祐一も慌てて後を付いて行く。
 入るとそこは作戦室のようだった。
 部屋には何枚もの地図が並べられている。
 祐一を適当に座らせると、グランはおもむろに語り出した。

 「近頃ジオン軍のゲリラ活動が活発になっている事は知っているな?」
 「はい」
 「このジャブローでもその動きは日々高まってきている。……ここには連邦軍の基地があるからな」

 グランは近くにあった地図をテーブルの上に広げた。

 「今回第06小隊の編成したのは深い理由があるのだよ」
 「深い……理由ですか?」
 「ああ、ここを見てくれ」

   祐一はグランの指したポイントを見ると少しだけ顔を歪ませた。

 「基地の近くですね………それに近くに居住区もある」
 「そうだ。このポイントを中心に攻撃を掛けられている。それに徐々にだがこの近辺にも近づいている」

 グランは地図をしまい、祐一の方に顔を向けた。
 その目は驚くほど真剣で、祐一は今回の事の重大さを改めて実感していた。

 「この事態を打開すべく、精鋭部隊の結成が促されたのだ」
 「なるほど……それでさゆ…倉田少尉や川澄曹長などのエースを同じ部隊に………」

 祐一はようやく納得いった、と言う感じの表情を浮かべる。

 「そういう事だ。私も今会ったばかりだが、君には必ずできると期待しているぞ」
 「はっ、ありがとう御座います。ご期待に添えるよう頑張ります」
 「頼むぞ」

 二人は固く握手をすると表情を和らげた。

 「ところで大佐……」
 「なにかね?」
 「自分にはMSがないのですが………」

 祐一の言葉にグランは一瞬呆気にとられてしまった。
 しかしすぐにもとの表情に戻し、椅子に座りなおす。

 「……相沢中尉、君は補給物資の目録をちゃんと見たかね?」
 「え、えと…あの。あまりよくは………」
 「…ふう……今すぐ見に行きたまえ。そうすればすぐに判る」
 「は、はい!失礼しました!」

 グランに敬礼すると祐一は一目散に飛び出して行った。

 「まったく………」

 グランは胸元から煙草を取り出し、一服し始めた。
 背伸びをし、凝った肩を凝りほぐす。
 気分が落ち着くと、先ほどの祐一の事を思い出していた。

 「フ…なかなかどうして、水瀬少将も良い素材を見つけたな……」
 「相沢祐一か………良い眼をしている」

 長くなった灰がぽとりと落ちた。

 「これからが楽しみだ………」

 その眼は息子を見る父親の眼のようだった。












  ◇










 <格納庫・内部>

 「確かに目録に在ったけど………まさかコレとは……」

 祐一は目の前のMSを前に呆然と立っていた。

 「はえー……凄いですね、祐一さん」
 「何もここまでせんでもいいのになあ……」
 「つい一週間前にロールアウトされたばっかだそうです」

 佐祐理がMSのマニュアルを読み上げる。

 「RGM−79M ジム・カスタム、ですか。祐一さんにぴったりの良い機体ですね♪」
 「ありがと……ホントに俺が使ってもいいのかなあ………?」
 「祐一さん。自分の力を過小評価してはダメですよ?」
 「……そう見えるか?」
 「ええ。それに最近ちょっと調子が悪いみたいですけど………」

 祐一を心配そうに見上げる。

 「そうだな…ここんとこプレッシャー掛かってたから気弱になってたみたいだ。元気付けてくれてありがとな、佐祐理さん」
 「そんなことないですよー………私も祐一さんを元気付けられて嬉しいです」

 そう言うと恥ずかしそうに俯く。

 「そう言えば皆はどうしてるんだ?」
 「舞と栞ちゃんはMSの整備をしてます。名雪さんは部屋で寝てますよ」
 「………名雪はなんとなく予想できた」
 「ふえーっ、祐一さん凄いですねー。何で判るんですか?」
 「いや、誰でも判ると思うが………」

 少し呆れていたが、気を取り直して佐祐理の方を向く。

 「とりあえず2時間後に全員作戦室に集合。今回の任務の事を話す。皆に伝えておいてくれ」
 「はい、わかりました」

 佐祐理が走りながら出て行ったのを見送ると、祐一も格納庫を後にした。





















 <連邦軍中将久瀬の執務室>

 久瀬は今じつに愉快だった。
 自分の思い通りに動く、コレこそが久瀬に絶大なる快楽をもたらすのだ。

 「それではこれでよろしいですかな、久瀬殿?」
 「ご協力感謝します、准将」

 二人は近づくと握手を交した。しかし双方の表情は全く対照的なものだった。
 久瀬は余裕の笑みを浮かべているのに対し、准将と呼ばれる男は苦虫を噛み潰したような表情であった。

 「いやあ、助かりましたよ。こうも簡単に指揮権を譲渡していただけるとは」

 (そう仕向けたのは貴様だろうが!!)

 そう叫びたいのを抑え、こぶしを握り締めていた。

 「それでは現時点を持って私が衛星フォボスの統治を行います。准将はご苦労様でした」
 「くっ!」

 忌々しそうに舌打ちをしながら部屋を後にした。
 部屋に一人たたずむ久瀬は、早速これからの事を思案していた。

 「さて、土台は揃った………これからだな」

 久瀬の含み笑いが部屋を満たしていった。






















 <第06小隊・作戦室>

 「よーし、作戦の説明するから席につけー」
 「「「「はーい」」」」

 祐一は残っていた雑務をこなして、作戦室に赴いた。
 全員席についたのを確認すると自分も座り、部屋の電気を消した。
 地図を広げ、ペンライトを取り出す。

 「これから今回のミッションを説明する」
 「くー」
 「まあ、任務と言ってもそんなたいした物じゃない」
 「くー」
 「森の中を索敵しながら………」
 「くー」
 「………」
 「くー」

 ぽくっ!

 「いたいよ〜」
 「お前、作戦行動中に寝るんじゃないだろうな………」
 「いくら私でもそこまでしないよ〜」

   涙目で訴える。どうやら本気で痛かったらしい。

 「いたいよ〜、いたいよ〜」
 「自業自得だ」

 そう言い残すと改めて説明を始めた。

 「話が途切れたが、まあ、簡単に言えば森の中のパトロールだな」
 「パトロールですか?」

 栞が不思議そうに聞き返す。

 「ああ。今回パトロールするポイントが一番重要なとこらしい。以前他の部隊が行ったんだが、見事に全滅だったそうだ」

 メンバーの表情が硬くなった。

 「敵の戦力はどのぐらいなんですか?」
 「それがどうもはっきりしないんだよなあ………多分そんなに大勢で行動するのは無理だから……4,5機ってところかな?」

 こればっかしはお手上げ、と言った感じで肩をすくめて見せる。

 「まあ、祐一さんが居るからある程度危険な任務でも平気ですよー。ね、舞?」
 「はちみつくまさん………」

 祐一はその様子を見て安心した。

「よし、その意気だ!それじゃ今回のメンバーを言うぞ?……佐祐理さんと舞はジムで出撃。
 俺もジム・カスタムで出る。名雪は今回栞と一緒に索敵をしてくれ。………以上だが、質問は?」

 全員、首を横に振る。

「よし、それではミーティングを終了する。各自、作戦開始まで体を休めて置けよ」

 そして、第06小隊初めての任務が始まる。























 <ジャブロー密林地帯・ジオン軍キャンプ地>

 「ふーん、その情報は確かなの?」
 「はい、潜入していた者からの通達です。大丈夫ではないですか?」

 言葉遣いからして部下と思われる男は、少女に電報を渡す。
 少女は見た目14、15歳ぐらいだろうか。亜麻色の長い髪をなびかせながら立っていた。

 「しかし、隊長。いいんですかい?勝手に先行しても」
 「そうっすよ。これじゃまた大尉にどやされますよ」

 ひげを生やした中年の男と眼鏡を掛けた気弱そうな男が少女に問い掛ける。

 「もー、ハラルトとフィレンツェンは黙ってて! いいでしょ、別に。美汐だってきっとわかってくれるわよ」
 「そうですかねえ……美汐の姉御も結構きついからなあ」

 フィレンツェンが愚痴る。その言葉を肯定すかのようにハラルトが頷く。

 「あうーっ………ハインツはどう思ってるの!真琴を止める気!」

 真琴と言う少女はハインツと呼ばれる男に食って掛かる。

 「いえ、私は少尉の命令に従いますが」

 その言葉を聞いて真琴は満足そうに頷くと後ろの二人に振り返り、あかんべーをした。

 「ほれ見なさい!これは命令よ、二人とも。進軍するのよ!」

 ぐっと拳に力を入れる。
 二人はその様子をやれやれといった感じで見ていた。























 <密林地帯・作戦ポイント>

 「レーダーの反応はどうだ?」

 祐一がMSの歩を進めながら名雪達に聞く。

 「まだだよ〜」
 「反応ないですよ」

 「そうか…引き続き索敵頼むな、二人とも」
 「「了解」」

 しばらく一行は歩きつづけていたが一向に敵の気配がない。

 「…なんかいやな予感がするな」
 「?どうしたんですか、祐一さん?」

 祐一の呟きに佐祐理が聞き返した。

 「いや、うん。気のせいだ、気にしないでくれ」
 「変な祐一さん………」

 佐祐理には余計な心配を掛けない為に嘘を言ったが、祐一は尚もイヤな予感を感じていた。


 ピルルルルルルルルル………


 「…!レーダーに反応!数は………2,3………ザクが3機です!」
 「おいでなすったか!」

 操縦桿を握りなおすと、ライフルを構えた。
 佐祐理もビームライフルを構え、迎撃体制を取る。
 舞は右肩のビームサーベルに手を伸ばした。

 「各員、円になるようにしろ!死角を作るな!!ホバートラックは後退だ!」
 「「「「了解!」」」」

 指示を出し終えると、そのまま迎撃の態勢を取った。
 一瞬の間。


 カサカサ


 葉がゆれる。
 次の瞬間、3機のザクが飛び出してきた。

 「くっ!!」

 3機の内の一機がマシンガンを乱射する。
 その弾丸をシールドで防いでいた。
 しかし安心したのもつかの間、祐一の死角に移動していたザクがヒートホークを振り上げていた。

 「もらったあ!!」

 いかつい顔をしたフィレンツェンが口元を歪ませる。

 「させるかっ!」


 ガギィッッ!!


 祐一もとっさにビームサーベルで対抗した。
 お互い激しいつばぜり合いをしていたが、祐一がライフルでザクの頭を殴った。

 「ぐおおっ!!」

 一瞬、フィレンツェンがひるむ。舞はその瞬間を見計らったかのように飛び出した。
 佐祐理はビームライフルを連射して、他の二機を寄せ付けないでいる。

 「………いただく」

 量産型とは思えないスピードで接近する。そして跳躍し、全体重をかけてサーベルを振り下ろす。
 舞は勝ちを確信した。

 しかし次の瞬間。

 「っ!!!!!!」




 

ドガアァァーーーーン!!!






 舞の近くで、爆音が轟いた。
 舞は衝撃波でかなり遠くまで吹っ飛ばされていた。
 どうやら手投げ式の爆弾のようだ。

 「ま、舞!!…もう一機いたのか?」
 「名雪さん、栞ちゃん!レーダーは!?」

 佐祐理がとっさに確認を取る。
 何時の間にか抑えていた二機のザクがいなくなっていた。
 フィレンツェンのザクも後退した様子だった。

 「お、おかしいよ。レーダーには三機しか反応してない!」
 「なんだと!?」

 名雪の言葉を聞いて愕然とした。

 「一体どう言う事なんだ………?」

 その問いに答えられる者は居なかった。






















 逃げた3機は近くの茂みに隠れていた。

 「奴さん達、うろたえてますぜ」
 「ふっふっふ、予想通りの展開だわ!」

 フィレンツェンの言葉に得意満面といった表情に変わる。

 「これで奴らは冷静な判断ができないでしょう」
 「これなら楽に叩けますね、隊長!」

 ハインツとハラルトも余裕の表情だ。

 「………さてお遊びはここまでよ。ハインツ、ハラルト、フィレンツェン!行くわよ〜!」
 「「「了解!!」」」

 ザクのモノアイが点灯する。


 
 「さあ……素晴らしい悪夢の始まりよ………」






続く







 <登場人物紹介>

※ 本作品のオリジナルキャラを紹介します。

○ グランベルク・シューマッハ

連邦軍大佐。ジャブロー地区の大隊長を務める。190cmを超える長身と、
鍛えられた肉体のおかげで怖いと言う印象を覚えるが、実際は温厚で部下達にも慕われている人格者である。
一年戦争時ではかなりの戦果を上げている。
ちなみに年齢は36。妻子持ちである。

○ ハインツ、ハラルト、フィレンツェン

ジオン残党の兵士。階級は三人とも曹長である。
性格を簡単に言えば、ハインツは生真面目で実直。ハラルトは弱気でお調子者。
フィレンツェンは豪快で粗雑である。
現在は真琴の下で動いている。







<MSデータ>

○その3  RGM−79M  ジム・カスタム  主なパイロット・祐一

頭長高・18m/本体重量・42,9t/武装・ビームサーベル×1、ジムライフル×1、60oバルカン砲×2
軍備強化の為にトータルバランス的な面で性能向上が計られている機体。
運動性が従来のジムより若干上がっている。
ジムライフルは量産型のマシンガンを改良した物で、集弾率が高く命中率が飛躍的に伸びている。

○その4  MS−06FZ  ザク2改  主なパイロット・ハインツ、ハラルト、フィレンツェン

頭長高・17,5m/本体重量・55t/武装・ヒートホーク×1、120oマシンガン×1、シュツルムファウスト×1、グレネードランチャー×1、他。
ジオン軍の看板MSとも言えるザクを、総合整備計画により改善された第二期生産型MSである。
武器が豊富なのが特徴である。

  
 






はい、第3話です。
正直真琴は見方にしようか、敵にしようか迷いました。
んで、迷った結果コレなんですがどうでしたか?
私としては良い感じに出来上がりました。………次はどうなるか判らないけどね。

余談ですが、ジム・カスタムのロールアウトが一週間前というのは、私の勝手な解釈なので気にしないでください。

それでは第4話で会いましょう。ちゃお。


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