機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−














 第06小隊の結成からはや一週間。
 私たちは初めての任務を受けた。
 内容はジャングルのパトロールみたいなものだそうだ。
 いつも任務のときは一人だったから寂しかったけど、今度は佐祐理も祐一もいる。
 ………相当に嫌いじゃない。

 終わったら祐一に遊んでもらおう。

川澄舞の日記より

















第4話「密林の狐火」
















 <ジャブロー・ジャングル地帯>

 「一体どうなってるんだ………」

 祐一は逃げたであろう方向に目をやりながら呟いた。
 ほかのメンバーも同じ気持ちであった。

 「レーダーはやっぱり反応無しか?」
 「うん…さっきの爆弾にチャフも混ざってたみたい。レーダーは全然だめだよ〜」

 名雪は必死に索敵を試みているが、一向に成果が現れない。
 チャフ・グレネードは細かい金属片を濃縮して作った特殊手榴弾である。爆発すると金属片をばら撒き、電子装置をかく乱させる効果があるのだ。
 このためレーダーには全くといっていい程映らなくなってしまったのである。

 「ソナーはどうなってるんだ、栞!」
 「さっきからやってるんですが、ほかの反応物が多すぎて判別できないですっ!!」

 栞の報告を聞いて舌打ちをする。

 「とりあえず態勢を立て直そう。…舞、大丈夫か?」
 「………大丈夫」

 先程の爆発で吹き飛ばされていた舞だが、幸い軽い損傷で済んでいた。
 しかし頭が少しふらふらするのか、なんとか佐祐理の手を借りて起き上がっていた。
 その様子を見た祐一はほっと胸をなでおろした。

   「チャフの効果はあとどれぐらいなんだ」

 改めて栞に聞く。

 「最低でもあと10分ぐらいです」
 「10分か……」
 「効果が薄れてからを待ってたんじゃ遅すぎるな………」

 しばし考え込む祐一を見て名雪は不安そうに問い掛けた。

 「どうするの、祐一?……逃げる?」
 「いや、こっちがこの状態なんだから、相手も………」

 祐一は急に言葉を止めると、険しい表情になった。

 「祐一?」
 「………来る」
 「え?」

 何が来るの、と聞こうとしたが祐一はすでに臨戦態勢を取っていた。
 ライフルを構える。

 「え…でもレーダーは相変わらずだよ?」
 「わかるんだ、なんとなく………でもどこからだ、クソ!」

 祐一は見えない何かを感じ取っているようだった。






























 「チャフの効果はてきめんのようね」
 「敵はいつものジムが二機、新型が一機か……」
 真琴は余裕の表情を浮かべていた。

 「ハインツ!例の通信装置の方はどうなってるの?」
 「はい、問題ありません」

 ハインツは淡々と答える。
 その様子を満足そうにしている真琴は、顔を引き締めて他の二人に声をかけた。

 「二人とも、準備はいいわね!」
 「いつでもオーケーですぜ」
 「こっちもオッケーっす」

 二人に確認を取ると自分も操縦桿を握りなおす。
 真琴の目つきが変わった。
 それはまさに獲物を狩るときの獣の眼であった。

 「それじゃ、行動開始!!」
 「「「了解!!!」」」

 四機のMSがジャングルの中を駆けていった。






























 一方、祐一たちは後退をしていた。
 チャフの有効範囲外まで戻るつもりなのだ。

 「まだ出られないか?」
 「まだだめ〜。結構広範囲に撒かれちゃってるよ」

 名雪の緊張感のない声が聞こえる。

 「まいったな……こんな見通しの悪い所だとレーダー無しじゃ辛いもんな」
 「でもそれは相手も同じだと思いますよ?」
 「多分な………でも………」

 佐祐理は何か煮え切らない祐一を不思議そうに見た。

 「祐一さ……」



 

ダダダダダダダダダダダダ………!!!!




 「もう追いついてきた!?」

 佐祐理は信じられないといった感じで呆けていた。

 「もしかして………」

 木に隠れながら銃弾を防いでいた祐一はあることを思いついていた。

 「サーモ・グラフィーか………」
 「…!?なるほど!だからレーダーが効かなくても大丈夫だったんですねー!」

 祐一の推論に感嘆の声を上げる。
 しかし祐一はなおも厳しい顔をしていた。

   「とりあえずタネは判ってきた……問題はどうやってこの状況を脱するかだな」

   言いながら木陰から飛び出し、振り向きざまライフルを掃射する。
 乗り込もうとしていたザクの肩口を掠めていった。
 慌てて後退するザク。
 その隙を見逃さずライフルを撃ちながらダッシュする。

 「逃がすかっ!」

 すかさずビームサーベルを抜く。
 接近されて動揺したのか、一瞬マシンガンの射撃が遅れていた。


 ズシャアアッ!!!


 「ぐああっ!!」

 ザクの右肩を見事に切り裂いていた。
 止めを刺そうとしたが蒼いカラーのMSの登場によってそれは阻まれた。

 「蒼い機体……グフかっ!」
 「私の部下たちをいじめないで欲しいわね!」

 今までの奴とは違う、祐一は強いプレッシャーを感じていた。

 「祐一!そのMSだよ、さっきのレーダーに反応しなかったの!」

 名雪の報告が入る。
 その声を聞きながら佐祐理と舞のほうにも目をやる。
 二人とも苦戦しているようだった。
 しかし先程までのあせりは無くなっており、冷静さを感じさせていた。

 「二人とも大丈夫そうだな」

 すぐさま眼を元に戻す。
 ちょうどグフがヒートサーベルを抜いているところであった。
 両手に持ち替え、ブースターを吹かしながら突っ込んできた。

 「戦闘中によそ見するなんて良い度胸じゃないのよ!」

 祐一のジムから劣化ウラン弾が放たれる。
 その銃弾を右に左に避けながら接近してきた。

 「このぉっ!」

 グフがヒートサーベルを振り下ろす。
 祐一はその斬軌を横に移動して避けた。
 それを見た真琴は口元をゆがませた。

 「かかったわね!」

 グフの左手を祐一に向けた。
 次の瞬間分銅みたいなものが射出される。
 ヒートロッドだ。
 今の祐一の態勢では避けることができなかった。

 「!?しまった!」

 とっさにライフルにヒートロッドに絡ませた。
 すかさず手を離す。
 猛烈な電撃がジムライフルに襲い掛かっていた。


 ビビビビビビビビビ………!!!!!


 「ぬあっ!!」

 あたり一面に閃光が走った。
 真琴は仕留められなかった悔しさからか、コックピット内で地団太を踏んでいた。
 祐一のほうもこのままでは不利なため、バルカン砲で牽制する。
 真琴は後退するとそのまま再び森の中に入っていった。

 「こいつはちっとばかしヤバイかな………」

 ライフルが失われたのだ。
 これで接近戦でしか戦えなくなってしまった。
 改めて新型の武装の少なさを呪ったのであった。

 「振り出しか……」


























   一方、佐祐理と舞のほうは形勢を逆転していた。
 一機は舞の華麗な剣技によって翻弄され、もう一機のほうも佐祐理に押されていた。

 「こ、こいつら前の部隊とは強さが桁違いだ!」
 「完全に予想外ですね………」

 フィレンツェンとハインツが焦りと驚きの表情を浮かべる。
 フィレンツェンは形勢を再逆転しようと、一旦後ろに下がりマシンガンを撃とうとした。

 「甘い………!」

 この時がチャンスとばかりに腰に懸かっていたビームガンを取り出す。
 慎重に狙いをつけて発射した。

 
 

ドシュドシュドシュドシュッ!!



   全弾撃ち尽くしてしまうのではないか、と思えるぐらいの勢いで連射する。
 元々舞は射撃が得意ではなかった。
 訓練のテストでも後ろから数えたほうが早い、といった内容だ。
 しかしこの場合至近距離だったため、外すことは無かった。

   「ぐうっ………」

 ハインツのザクのメインカメラを見事に撃ちぬいた。
 体の方にも何発か当たったのだが、運が良いことにコックピットは無事であった。
 だがこれ以上の戦闘は誰の目から見ても不可能であった。

 「当たった………」

 撃った本人が一番驚いていた。
 まさか当たるとは思わなかったのだろう。
 だがそこは軍人である。
 気を引き締めて佐祐理の援護に向かった。
 だがその時である。

 
   

ヒュンッ



 突然背後から細いワイヤーが飛び出してきた。
 気づいた舞が振り返る。

 「…!!?しまっ………!」

 気づいた時には遅かった。
 何時の間にか忍び寄っていた真琴のグフがヒートロッドを撃ち込んでいたのだ。

 

 

ズビビビビビビビビビ………!!!!!




 「くうぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!!」

 舞のジムに紫電が走る。
 電撃の影響を受けた舞は苦悶の表情を浮かべた。

 ひとしきり攻撃を加えた後、真琴はヒートロッドを収め舞の方に近づいてきた。

 「どお?近づいたの気づかなかったでしょ?…これが"密林の狐火"と呼ばれる所以よ」

 やはりレーダーには何も反応しなかったようだ。
 その忍び寄る神出鬼没さは、正に狐火の様相を呈していた。

 「動かしても無駄よ。かなりの出力で食らわしたから立ち上がることもできないよ」

 誇らしげに言う真琴を尻目に、舞は必死にジムを動かそうとした。  舞に焦りが生まれてくる。

 「無駄だって言ってんのわかんないかなあ。そろそろサヨナラしよっと」

 言いながらヒートサーベルを抜く。


 

ジ…ジジ………



 ジムの至る所から火花が飛び散っていた。
 さすがの舞も諦めていた。

 「じゃあね、バイバイ」

 ヒートサーベル振り下ろす。

   (祐一、佐祐理、助けて…!)

 「やらせるかあっ!!」
 「やらせませんっ!!」

 二つの声がジャングルに響き渡った。




   ガジィィィッッ!!!



 舞がゆっくりと眼を開けると、振り下ろされたヒートサーベルを、佐祐理と祐一のジムのビームサーベルで防いでいた。

 慌てて飛びのく真琴。
 改めて祐一と佐祐理は臨戦態勢を取った。

 「悪いな、舞。見つけるのが遅れた。まあ、笑って許せ」
 「あははーっ。危なかったね、舞」
 「二人とも、遅い………」

 舞は必死にチョップを入れようとしたが、機体が動かないのでどうしようもなかった。

 「なんで!?どうして!?3人ともやられちゃったの!?」

 真琴は二人の登場に驚きを隠せなかった。

 「くっ!!しょうがない、出直しよ!!」

 そう言うときびすを返し、引き返していった。

 「ああっ!逃げちゃいますよ!!」
 「いいよ、佐祐理さん。深追いすることない」

 警戒を解くと舞のほうに顔を向けた。
 まだ動けそうも無かった。

 「舞、大丈夫か?」
 「…大丈夫に見える?」
 「ああ、ピンピンしてる様に見えるぞ」
 「…祐一ヒドイ……」
 「さて、佐祐理さん。任務も終わったし、データも取ったし、帰るとするか」
 「あはは、そうですね」
 「…佐祐理ヒドイ……」
 「ほら、舞も帰るぞー?」
 「早くしないとおいてっちゃうよー?」
 「…二人とも嫌い……」

   ふて腐れた舞を見て、二人は笑った。
 その後助け出した後、二人は舞からチョップの嵐を見舞う事になった。

 ちなみにあの3人組みは何時の間にかいなくなっていた。
 運良く逃げたのだろう。



























 「でも今回お前ら役立たずだったな」
 「あーっ!ひどい、ひどい!私達は私達なりに頑張ったのに〜!そんな事言うなんてひどいよ〜」
 「そんな事言う人嫌いです!」

   「冗談だって、冗談。そんなに怒るなよ」
 「う〜っ!言って良いことと悪いことがあるよっ」
 「そうですよ!」

 二人はかなりのご立腹のようだ。

   「わかった、わかった。なんか奢るから、それで許してくれ」
 「えっ!本当に」
 「本当ですか!?」

   先程とは打って変わって、目を輝かし始めた。

 「ああ。二人とも何でもいいぞ?」
 「じゃあ、私イチゴサンデー!」
 「私はアイスクリームがいいです」
 「………そう来ると思ったよ」

 そのまま祐一は財布が軽くなるまで奢らされたそうな。








続く




<MSデータ>

○その5  MS−07B−STX  グフ・ステルス仕様試験型  主なパイロット・真琴
 頭長項・18,2m/本体重量・55,7t/武装・ヒートサーベル×1、ヒートロッド×2

   グフの局地戦タイプ。主に隠密作戦を前提に考えられた機体で、通信機能が大幅に強化されている。運動性を上げるためにスラスターの強化や余計な武装が省かれているのが特徴だ。
 この機体の一番の特徴は、他の機体に比べレーダーに映りにくい、ということである。
 ミノフスキー粒子の濃い場所やチャフグレネードを使用した場合はほとんど映らないと言っていいだろう。

 








はい、ご無沙汰でしたね。
 なんとか第4話完成です。
 今回色々書いていたんで自分でも分けが分からなくなってしまいました(^^;
 学校も始まるんで何とか頑張って書いていきたいですね。
 それでは、アディオス!



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