機動戦士ガンダム外伝−レジェンド・オブ・カノン−

















ボクには7年前の記憶がない。
 どうしてかはわからない。
 ただそこだけすっぽりと抜け落ちている。
 だから戦う。
 戦い続けるしかない。
 ボクにはそれしかないから………

月宮あゆの日記より




















第8話「ジャブローの危機」



















 <ジャブローに繋がる地下水路跡>

 美汐の部隊は、今はもう使われてはいない地下水路を通っていた。
 地下水路、と言っても、既に原形を留めていないほど荒れ果てている。
 爆撃のせいだろうか、所々に大きな池が出来上がっている。
 そして今もなお、天井から岩盤が落ちてきたりしている。
 美汐達は頭上を注意しながら、潜水しながら進んでいた。

 「………もうすぐでゲートに到着します」

   ハインツが定時連絡をする。
 一同の顔に緊張が見え隠れしている。
 美汐は表情が変わらないために、緊張しているのかしていないのか判らない。
 彼女以外(ハインツとフィレンツェンは除くが)の各員は慎重に進んでいった。

 「………各員に伝えます」

 美汐がおもむろにモニターを繋いだ。
 全員の視線が美汐に集中する。

 「この作戦は勝つ事が目的ではありません。連邦の足をいかにして止めるかが問題なのです」

 美汐が全員に注意を促す。
 そこにいる全員が神妙な面持ちで耳を傾けていた。
 
 「狙うのはMS格納庫、および製造工場です。居住区には絶対侵入しないように。………それでは健闘を祈ります」

 通信が切れる。
 美汐は軽くため息をはくと、体の力を抜いた。
 彼女のMSはコンテナに積まれている為に、動かさなくても良いのだ。
 他のMSにコンテナを牽引されている。



   

ピピピピピピピピピ………




 突然美汐の機体に通信が入った。
 やや不思議な顔をしながら回線を開いた。

   「はい」
 「大尉」

 モニターに映ったのはハインツだった。
 珍しい、と思った美汐であったが表情には出さなかった。

 「どうしたんですか?」
 「………いえ…」

 どうやら他の機体には繋がっていないようだ。
 美汐の機体にのみ連絡が繋がっている。

   「………絶対、生きて帰りましょうね。大尉、いえ……美汐さん」
 「………はい、必ず」
 「………」
 「………」

 ハインツの突然の言葉に驚いた美汐は、一瞬呆けていたが、ハインツの心意が判るとすぐに微笑を返していた。
 ハインツもその微笑を見て、表情を和らげた。

 「真琴も撤収作業に入っていると思います。こちらも急ぎましょう」
 「了解です」

 通信が切れる。
 切れた後もしばし最終点検などをしながら、決戦の時を待っていた。
 全員生き残ることを祈りながら………






































 <火星衛星フォボス・中継基地>

 「どういう事なんですか、これは!!」

 作戦室から怒声が響いてくる。
 同じく作戦の内容を聞いていた他の者達は、驚いた表情で見ていた。

 「………質問は手を挙げてから発言してくれたまえ、エル・アーバイン大尉」

 久瀬は全く動じていないのか、表情を変えずにエルに問い掛けた。
 しかしその久瀬の言葉はエルには届いていなかったようだ。

 「ジャブローの直接侵攻など、無謀に程があります!」
 「貴様! 中将になんて口の聞き方だ!!」

 修正を加えようとした側近だったが、その行為は久瀬によって止められた。

 「まあまあ、落ち着きたまえ。………君の言いたい事はとても良くわかるよ。確かにジャブローは連邦軍の最重要拠点だ。一筋縄では行かないだろう」
 「だが、こちらも重要なイベントの真っ最中だ。できる限りの兵力を残しておきたいのだよ。わずかでも良い、少しでも敵の内部をかく乱するのが今回のジャブロー侵攻の真実だ。………どうだい? これで判ってもらえるかな?」

 エルはじっと久瀬の方を睨んでいたが、不意に目をそらした。

 「………理屈では判っています。ですが一個小隊だけと言うのは余りにも………」
 「私も心苦しいが………せめて彼らの無事を祈っていてくれたまえ」

 そう言うと久瀬は気落ちしているエルの肩を叩いて励ましていた。

 「………取り乱して申し訳ありませんでした。失礼します」

 エルは弱々しく敬礼すると、おぼつかない足取りで作戦室を後にした。
 久瀬はその後姿が無くなるのを確認すると、表情を一変させ、側近に囁いた。

 「………エル・アーバインの動向を調べろ。早急にな………」

   邪悪に口を歪ませるのであった。






 エルは部屋を出た後も、湧き上がる悔恨と猜疑に頭を抱えていた。
 通路をなにか考え事をしながら歩いている。

 


 

ドンッ!





 「うぐぅ!」

 思わず誰かとぶつかってしまった様だ。
 我に帰ると少女が痛そうにうずくまっている。

 「あ、あゆちゃん!」
 「うぐぅ………ひどいよ、エルさん………」
 「ごめん、ちょっと考え事してたから………怪我はないかい?」

 あゆに手を差し伸べながらすまなさそうに謝罪する。

   「うん、ボクは何ともないよ。………なんか難しい顔してたみたいだけど、どうかしたの?」

 服についたほこりを払いながら尋ねる。
 エルは言葉に詰まってしまった。
 先ほどの出来事を話すことがためらわれた。
 あゆに余計な心配を掛けたくなかったからだ。

 「いや、その………あはは、今日のご飯は何かなーって思って………」

 とっさに口からでまかせを言い、愛想笑いを浮かべた。

   「なんだそんな事考えてたの〜? エルさんも意外とお茶目だね♪」

 エルと一緒になって笑うあゆ。

   「そ、そうなんだよ。よかったらこれから食事に行こうか?」
 「え、一緒で良いの?」
 「もちろんだよ。あゆちゃんもお腹空いてるんだろう?」
 「うん! ボク、もうお腹ペコペコだよ!」
 「よし、じゃあいこうか」

   何とか話題を避けることができたので、エルはホッと胸をなでおろした。
 別段、腹は減っていないエルであったが、あゆの手を引きながら食堂へと入っていった。

 




































 <ジャブロー地下水路ゲート跡>

 真っ暗な地下水路にポツンポツンと明かりが見える。
 明かりと言っても裸電球の類だが。
 そのほとんど暗闇の状態で二,三人の作業員が崩れた岩盤などを取り除く作業をしている。

   「しっかし、派手に壊されたもんだなあ。めちゃくちゃじゃないか」
 「完全に復旧不可能だな、こりゃ」

 作業員達は目の前の岩盤を集めながらあまりの悲惨な状態に感嘆の声をあげた。
 
 「あれ?」
 「どうした?」
 「いや、なんか水面が揺らいだような感じがしたんだよなあ………」
 「見間違いじゃないのか?」

 手を休めて水面の方まで歩いていく。
 その時である。




 

ズバアアアーーンッ!!!





 水路から勢いよく巨大な物体が飛び出してきた。
 作業員達はあまりの出来事に、腰が抜けてしまっていた。
 巨大な物体が地面に着地する。
 美汐達のMSであった。
 ハインツが周りを見まわしながら何かを探している。
 
 「大尉、見つけました。二時方向にゲート発見です」
 「了解………コンテナ、破壊します」

 美汐の指示でコンテナが爆発した。
 中から美汐のケンプファーが姿を現した。
 ジャイアント・バズを背中に背負い、足にはシュツルムファウスト、ショットガンを手に持ちながらゲートに向かって加速した。
 他のハイ・ゴッグ、五機がケンプファーの後に続く。
 次の瞬間、あっという間にゲートを破壊し突入していく美汐達を、作業員達は呆然としながら見つめていた。



































 <ジャブロー・司令部室>

 「なんだと! ジオンの部隊が進入!?」
 「はい! たった今入った情報です!」

 グランはその報告の内容が信じられなかった。
 壊滅寸前まで疲弊しているジオンが、直接乗り込んでくるなど、どうみても無謀としか思えなかった。
 そのため、少々虚を点かれたような感じになってしまっていた。
 しかし、すぐに気を取り直して伝令に伝える。

 「ポイントは!?」
 「はっ! ………006ポイントからの進入を確認しています!」
 「………よし、ハーバート中佐に02、03小隊の出動を要請しろ! こちらも06小隊を派遣する!」
 「了解!」

 伝令がすぐさま飛び出していくと、グランは06小隊に対し召集を掛けた。






 召集を掛けてから5分で祐一と栞以外の3人が集まった。

 「相沢中尉と美坂伍長はどうした?」

 グランが佐祐理に尋ねた。

 「それが………連絡は取れたのですが、ここに来るまでに30分程かかるところに居るので………」

 佐祐理が申し訳なさそうに言う。

   「そうか………私のほうからも連絡してみよう。倉田少尉はジムカスタムで出てくれ。川澄曹長と水瀬軍曹も出動だ。倉田少尉が臨時でキャップを務めてもらう」

 矢継ぎ早に指示を出す。
 3人の少女達は真剣な表情で聞き入っていた。

   「先んじて02、03小隊が迎撃しているものと思われる。早急に合流してくれ。………君達の健闘を祈る」

 3人は敬礼をすると、足早にMSデッキへと向かった。
 思わぬ敵の出現にずいぶんと混乱しているのか、どこもかしこも慌しくなっている。

 「もー、せっかくいい気持ちで寝てたのにー」
 「あははー、ぐっすり寝てましたからねえ」

 名雪は走りながら愚痴をこぼしている。
 どうやらずっと昼寝をしていた様だ。
 よく見ると所々に寝癖がついている。
 
 「祐一さんが居ないけど頑張りましょうねー!」
 「もちろんですよ!」
 「………はちみつくまさん」

 佐祐理が気合を入れるかのように二人を激励した。
 ちなみに3人ともノーマルスーツに着替えている。
 一体いつの間に着替えたのであろうか。
 謎である。

 




 3人がデッキに着く頃には、既に発進準備が整っていた。
 すぐさまMSに乗り込む。

 「………祐一さん、ちょっとお借りしますね……倉田佐祐理、ジムカスタム行きます!」
 
 管制官からOKのサインが出る。
 それを確認しながらバーニアを吹かしていった。
 
 「………川澄舞、出ます……」
 「水瀬名雪、ジムキャノンいっきまーす!」

 それぞれ、陸戦型ジム、ジムキャノンで発進する。
 3機のMSが颯爽と戦場に飛び出していった。






































 <ジャブロー・ポイント006付近>

 「………人型14、タンクもどき7、戦闘機8………小隊が二つといったところでしょうか」

 美汐が目の前の現れたMSたちを前にし、呟くように話していた。
 あちらも警戒しているのかビルの影に隠れながら機をうかがっている。

 「フィレンツェンは左翼の敵を、ハインツは格納庫を叩いてください。特に人型には注意するように………迅速、かつ正確に。補給も援護もありませんから長期戦は絶対に避けなくてはなりません」

 美汐は素早く指示を出し、戦闘態勢を整える。
 
 「大尉は?」

 フィレンツェンが尋ねてきた。

 「私は右翼の敵を………」

 簡単に言っているが、右翼側には敵戦力の7割が集中している。
 
 「危険です。護衛を一人ぐらいつけてください」
 「駄目です。そんな事をすると余計に時間がかかります。………それでは」

 ハインツの忠告を袖にして、いきなり飛び出していった。
 他の者達も美汐に続いて飛び出して行く。
 
 「出てきたな、ジオンの豚共!」

 ジムのパイロットがスプレーガンを撃つ。
 美汐達はさして慌てずにビームを避けていった。
 逆に美汐のケンプファーはバーニアとスラスターを最大限に活用して縦横無尽に掛け回っていた。
 連邦兵達はその機敏な動きに驚きを隠せなかった。
 ケンプファーの動きに翻弄されたパイロット達は掻き回され、徐々に隊形を崩されていく。
 
 「何だこの動きは!速すぎるっ!」

 瞬間、ジムの頭部が破壊される。
 ハイ・ゴッグのビームが貫いたのだ。
 ケンプファーの動きに気を取られるあまり、他のMSへの注意心が削がれた為であった。
 
 「目にばかり頼っていると良いパイロットにはなれませんよ」

 美汐は背中のジャイアント・バズを構え、発射する。
 ズドン、という凄まじい衝撃が伝わってくる。
 発射されたミサイルはそのままMS格納庫の方へ吸い込まれていった。




 

ズガアアアアァァァーーーーン!!!!



 激しい爆音が響き渡る。
 格納庫はほとんど原形を留めていなかった。

 「まずは一つ………」

 横方向に水平移動しながら呟いた。
 しかし美汐の移動した方向には、待ち構えていたかのごとく大部隊が待機していた。

 「こんな大勢で出迎えてくれるのですね」

 さらりと冗談を言う美汐。
 彼女はこの状況においても全く動じることはなかった。
 そのまま敵部隊に突入する。
 
 「ばかめ! たった一機でのこのこと来やがって!!」

 連邦士官が待ってました、とばかりに迎撃態勢に入る。
 美汐は敵の部隊が固まっているのを確認すると、腰部に付いていたチェーンマインを取り出した。

 「チェーンマインにはこういう使い方もあるんですよ」

 そう言うと彼女はチェーンマインを敵部隊に投げつけた。
 敵の真上に。

 「!? このノーコンが! どこに投げてやがる!」
 「………」

 美汐はすかさずショットガンを取りだし、投げたチェーンマインにめがけて発砲した。
 弾丸は吸い込まれるかのようにチェーンマインにヒットした。
 次の瞬間、閃光と共に爆発したチェーンマインから無数の散弾が飛び出してきた。

 「ぐああっ!!」

 ものすごい勢いでばら撒かれた散弾は、ジムのコックピットやカメラアイなどを簡単に貫いてしまった。
 
 「こ、こちら02小隊! ジム3号機・5号機、ガンタンク1号機・4号機、戦闘不能!! 他の機体も小破多数!!」

 無常とも思われる報告がされる。
 02、03小隊とも通常の作戦が組めなくなってきていた。
 
 「ハインツ、フィレンツェン、首尾はどうですか?」
 「………すみません、一人助けられませんでした」
 「こっちも格納庫ヤルときに一人死なせちまいました………」

 口惜しそうに答える二人。
 
 「そうですか………厳しいようですが、気にしてはいけません。余計な事を考えていると死にますよ。覚えておいてください」

 気落ちしている二人を叱咤する。
 
 「彼らのためにも絶対にこの作戦を完遂します」
 「「了解!!」」

 再び動き出す。
 今度は一丸となって叩く作戦のようだ。
 美汐のケンプファーとハインツとフィレンツェンのハイ・ゴッグがそれぞれ一機ずつジムを叩いていく。
 戦況は著しく美汐達の方に傾いていった。
 そんな時であった。



 

ダウン!ダゥン!!


 
 わずかな油断であった。
 そのわずかな油断が命取りとなってしまった。
 
 「たっ、大尉! ぐわああ!!」

 フィレンツェンはいきなりの攻撃に、避ける事ができず致命的な損傷を被っていた。
 
 「フィレンツェン!!」
 「………くっ、新手か」

 ハインツはフィレンツェンに駆け寄ろうとしたが、銃撃が激しく近づくこともできなかった。
 だが、不意にフィレンツェンのハイ・ゴッグが起き上がる。

 「へへ………駄目だこりゃ、脱出機能が壊れてやがる。………それじゃ、最後の置き土産と行きますか!!」

 そう言い残し、ハイ・ゴッグの手に付いているミサイルユニットを開放した。
 ミサイルを発射してから数秒後、フィレンツェンの乗るハイ・ゴッグは大爆発を起こした。
 ミサイルはそのまま格納庫に命中し、跡形もなく消し去っていた。
 フィレンツェンの執念の一撃であった。
 
 「フィレンツェン!………くそぉっ!!」
 「落ち着いてください、ハインツ」

 悔しがっているハインツを美汐は静かな声で諭していた。

 「しかし、フィレンツェンが………!」
 「悲しむことは後でもできます。今は生き残ることです。………無事に帰って弔ってあげましょう……ね?」

 音声通信だったので表情はわからなかったが、少し声が震えていた。
 そんな美汐を目の当たりにし、ハインツはようやく落ち着きを取り戻した。

 「………はい、絶対生き残って見せます」
 「その意気です」

 二人の間に、確固たる信頼関係ができあがっていた。

 「さて………真琴の言っていた青いジムが出てきましたよ」
 「はい、あいつのせいでフィレンツェンはやられました。………このままで済ますつもりはありませんよ」

 凄まじいほどの気迫が二人を包んでいるのであった。






 一方、現場にたどり着いた06小隊の面々は、早速ハイ・ゴッグを倒したことにより勢いづいていた。

 「残り2機ですね………名雪さんは後方支援を。舞は私と一緒に来てね」
 「了解!」
 「ラジャー………」

 佐祐理の指示通りに展開する。
 
 「………でも02,03小隊ともほぼ全滅とはよほどの相手ですね。………舞! 気をつけてね!」
 「……おっけー……」

 舞は佐祐理に向かってVサインをすると、ビルの間を縫うように進んでいった。
 佐祐理もすぐ後を追う。
 少し進むと開けた場所に出た。
 だがそこには美汐達の洗礼が待ちうけていたのである。

 「………! 右!?」

 舞は素早く後ろに飛びのく。
 すぐ前方をシュツルムファウストが掛けぬけていった。

 「ほう………」

 美汐が感嘆の声をあげる。
 
 「反応は良いみたいですね。他のパイロットとは段違いです」
 「………」

 聞こえてきた声が女性のものだったので舞は少し動揺したが、それを表に出すことはなかった。

 「でもまだまだですね。まだ荒削りな所がありますし………私が指導してあげましょう」
 「(ピク)………それはどうも。なんなら試してみる………?」

 少し頭に来たのか、加速しながらケンプファーに向かっていった。

 「駄目っ、舞! 挑発に乗らないで!」

 しかし佐祐理の声は舞には届かなかった。
 
 「……参る……」

 舞は小さく呟きながら、ビームサーベルを抜き放った。
 美汐はそんな舞を嘲笑うかのように待ちうけていたのだった。




































 <その頃の祐一と栞>

 (やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい!!!!!!!)

 祐一は走っていた。
 一秒でも早くMSに乗って出撃するために。
 だが無常にも彼の要る場所は自分の部署とはまるで反対側に在るのであった。
 さらに、

 「はあ、はあ、はあ………ゆ、ゆう、いちさん………はあ、はあ、………ま、待ってください〜………はあ、はあ」

 全力で走っていたために、栞が倒れそうなぐらい疲れていた。

 (だめか………栞をこんな所において行けないし………)

 栞を心配して立ち止まる。
 さっきから走ったり立ち止まったりを繰り返しているのだ。

 「栞、少し休もう」
 「はあ、はあ、すみません………」

 近くの芝生に腰を下ろす。
 出動命令が下されてもう15分になろうとしていた。
 気ばかりが焦ってくる。
 ふと、彼の目にMS格納庫が映った。

 「………」
 「…? 祐一さん、どうしたんですか?」

 栞の言葉を無視してじっと見つめる。

 「そうだっ!! 近くの格納庫からMSを借りよう!」

 いきなり大声を上げながら立ち上がった。
 その声の大きさにびっくりする栞。

 「栞っ! 行くぞ!」
 「わっ! ちょ、ちょっと待ってください。まだ呼吸が………」
 「ええい、やかましい! ………しょうがない、こうだ!!」
 「え? え? え? えーーーっ!!?」

 いきなり栞を抱き上げる。
 所謂、お姫様だっこというやつだ。
 慌てふためく栞をよそに、祐一は大急ぎで目の前の格納庫に向かった。

 「そ、そんな事する人っ……き、き、嫌いですよっ!!」
 「黙ってろ! 舌かむぞ!」
 「うううう〜〜〜!」

 はたから見てるとかなり恥ずかしい光景であった。






 門の前に「第9MS格納庫」と書かれている。
 そのまま格納庫の中に入るとガランとなっていた。
 メカニックも二人いるだけだ。

 「なんだあんたは?」

 メカニックの一人が尋ねてくる。
 
 「余ってるMSは無いですか? お借りしたいのですが」
 「はあ?」

 わけが分からないと言った表情である。
 祐一は焦りながらも理由を話していった。
 栞はと言うと、さっきの事が頭から離れないのか、ずっと顔を真っ赤にしていた。

 「そういう事か。だが残念だったな、もう全部出払っちまってるよ」
 「そうですか………」

 がっくりとうなだれる祐一。
 そこにもう一人のメカニックが近づいてきた。
 
 「君、もしかして相沢祐一中尉かい………?」
 「え? ……はい、そうですけど」
 
 その男の目の色が変わった。
 驚きの表情を浮かべている。

 「おい……もしかして、水瀬中将から推薦されたっていう………」
 「秋子さんが!?」

 思わず声をあげる祐一。
 その様子をメカニック達は真剣な眼差しで見ていた。

 「………相沢中尉、ちょっと付き合ってもらえないか?」
 「え? あ、はい」

 その言葉を聞くと、メカニック達は地下の方に降りていった。
 歩いている間、ずっと沈黙が包んでいた。

 「祐一さん、急にどうしたんでしょうね?(ヒソヒソ)」
 「さあ……俺にはさっぱり(ヒソヒソ)」

 後ろの方でヒソヒソ話をしていたが、地下にたどり着くと信じられないものが待ちうけていた。
 祐一と栞は呆然とし、驚愕の表情を浮かべる。
 彼らの見上げるそこには、かつての英雄が佇んでいた。
 そう、連邦の象徴とも言えるあの機体………。





 
 「ガンダム………」







続く















<MSデータ>
・その9  RX−75  量産型ガンタンク  主なパイロット・連邦兵
 頭頂高・15,0m/本体重量・56,0トン/武装・40mmガンランチャー×2、120mm低反動キャノン砲×2
 長距離砲撃戦を目的として開発された連邦軍初のMS・ガンタンクの量産型。
 キャノン砲の威力はなかなかのものだが、近づかれるとほとんど何もできない。
 はっきり言って弱い。
 ただ、初期のガンタンクと違って回頭が出来るのが唯一の救いだろうか。




















はい、少し遅くなってしまいましたが第8話の完成です。
 今回でやっとガンダムが出せました〜(^^)
 このガンダムの詳しいデータは次回書きますので。

 なんか美汐が主役みたいですね………
 相変わらず回りくどい書き方なので、全然話が進まないし。
 それにしても学校が始まると忙しくてなかなか書けませんねー。
 まとまった時間が欲しい………
 
 それでは次回もおたのしみに〜
 

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