フルメタル・パニック! Short Story






 
Go Go テッサ♪

 

 

 Phase:






 

 がたんごとん、がたんごとん。

 晴天の下、列車は目的地に向かって順調に進んでいる。

 その中に、一組の若いカップルが向かい合って座っていた。

 「はい、サガラさん♪」

 「どうも」

 手渡れたカップを口に運んで一口飲んで、相良宗介は車内のあちこちに目配せをする。

 「どうかしましたか、サガラさん?」

 「いえ、何でもありません」

 「そうですか・・・あ、おにぎりもあるんです♪」

 「はっ、いただきます」

 お茶に続いておにぎりを手渡すなど、さっきから宗介の世話をしているのはもちろんテッサである。

 がつがつとおにぎりを頬張る宗介を嬉しそうに見つめながら、テッサは今幸せの真たっだ中に浸っていた。

 なぜ二人が列車に乗っているか、それは前回の商品であるペアの宿泊券付きのチケットを使っている

 事に他ならないのである。

 しかしそこで一つ問題が発生した、それはテッサの護衛が手薄になることである。

 マンションや学校の周辺だと宗介はもちろんの事、メリッサやクルツと言ったSRT要員の護衛が

 四六時中付いている為かなり安全だと言えた。

 だが、旅行となるとそうはいかない・・・最悪な場合、宗介一人で対処しなければならない。

 結果、その事が宗介を緊張させ今のような行動に走らせている。

 今や宗介の心の中でテッサの存在は確実に大きくなっていたことに、彼自身も少しは感じているらしい。

 そんな複雑な心境な宗介とは正反対に、テッサの気分は天にも昇る勢いで急上昇中だった。

 二人っきりの旅行・・・そう、まるで新婚旅行みたいだと想像して顔を真っ赤にして喜んだりしていた。

 そうなるともう想像が止まらない、テッサの頭の中にはあれやこれやとこれから起きるかもしれないいろんな映像が

 総天然色で所狭しと広がっていた。

 片や緊張した顔で辺りを伺う男の子、片やニコニコして時たま耳まで真っ赤にして狼狽える女の子の

 ちょっと変わった初々しいカップルの二人を乗せて列車は目的地に到着した。






 ざざ〜ん。

 夏の終わりとあって人影がまばらな砂浜で、宗介はパラソルを立てて辺りを監視していた。

 「ふむ・・・」

 一番危険なのはやはり地雷か? それに原始的だが落とし穴もあり得るな・・・。

 どこの世界に片田舎の砂浜に地雷を仕掛けるの奴がいるかはさておき、宗介は自分の大きなバッグから

 ナイフを取り出して慎重に辺りの砂浜に刺して危険物を探索した。

 「サガラさ〜ん!」

 暫くそれを続けて安全が確認できた頃、汗だくになっている宗介の背中に嬉しそうな声が掛かる。

 「お待たせしました、サガラさん」

 「いえ、そんなことありません」

 宗介にじっと見つめられていて急に恥ずかしくなったのか、もじもじしながら頬を染めている

 テッサの水着は普通の白いワンピースだった。

 無論、清楚なイメージを壊さないようにとメリッサの助言を生かした結果でもあるが、彼女の白い肌には

 本当によく似合っていた。

 「あの・・・どうですか?」

 照れながらもさりげなく腕を後ろに組んで水着姿を披露しているテッサは期待を込めた瞳で宗介を見つめる。

 「白い水着がよく似合っています」

 さすがの宗介も普段かなめにあれだけ調教・・・もとい躾をされているせいか、気の利いた言葉を

 言えるように成長していた。

 「良かったぁ・・・ありがとう、サガラさん♪」

 ぴた。

 やはり海に来て開放的なのか、テッサはいつもより大胆に宗介その引き締まった体に抱きつくと

 ぎゅっと体を押しつけて喜んだ。

 こ、これは・・・いかん、これは非情に良くない・・・。

 テッサの柔らかい感触が素肌なのも相まって、いつもより敏感に感じることが出来てしまった。

 そんな宗介の赤くなった顔を見上げていたテッサは、意識してくれているんだと解ったので更にえいっと

 自分の体を惜しげもなく押しつけて暫く宗介の様子を楽しんだりした。






 「ぬぐぐ〜・・・」

 「カナちゃん、落ち着いて・・・ね?」

 親友の恭子が隣で何かを言っているがそんなことは全く聞こえていないし、今やかなめの視線は双眼鏡の先で

 べたべたしている宗介とテッサにロックオンされていた。

 「ソースケの奴ぅ〜、鼻の下のばしてでれでれしてぇ〜」

 「それはないと思うけど・・・」

 「いやっ、絶対でれでれしてるわ!」

 拳を振り上げて断固として言い張るかなめに、恭子はため息を付いて肩を落とすしかなかった。

 もうすでに手遅れかもしれないよ、カナちゃん・・・。

 親友の恋を応援したいが、すでに状況はかなりテッサが押していると二人を見て思う恭子は、

 苦笑いしかできなかった。

 ところでどうしてかなめたちがここに来ているのかと言うと、名目上不純異性交遊が起きてはいけないと

 生徒会長の林水に強固に進言して、更に強引に旅費まで出させて後を付けてきた。

 大義名分を掲げて宗介たちを監視しているわけだが、実際二人を見ていたら嫉妬の炎がめらめらと

 燃えさかってしまい、今の状態と相成った。

 それに付き合わされている恭子もかなり可哀想であるが、本人は案外平然としているようだった。

 「もう我慢できない! 今すぐあの二人に・・・うっ?」

 ぱた。

 「カナちゃん?」

 いきなり立ち上がって歩き出そうとしたかなめは、そのまま灼熱の砂浜に顔から突っ込んで倒れた。

 しかし起きあがる様子すらなく心配した恭子がひっくり返すと、かなめの目は渦巻きのようにぐるぐるだった。

 「肝心なところでこれじゃだめだよ〜、カナちゃん・・・」

 断っておくと今は夏である、しかも真っ昼間だからお日様もぎらぎらと輝いていたりする。

 つまりそんな炎天下の中、帽子も被らずおまけに頭に血が上ればどうなるか・・・結果、今のかなめのように

 熱射病に掛かることは必然である。

 ちなみに恭子はちゃんと麦わら帽子を装備していたため、難を逃れていた。

 ちょっと間が抜けている所がかなめのチャームポイントでもあるが、今回はそれが裏目に出てしまった。

 結局、ため息を付いて肩を落とした恭子が気絶したままのかなめを足を持って日陰の方に引きずって行った。






 かなめがそうなっている頃、波打ち際で戯れるテッサは宗介と恋人気分を満喫していた。

 「えいっ」

 ぱしゃっ。

 「うぷっ」

 「うふふっ♪」

 「むっ」

 「こっちですよ、サガラさん♪」

 水を掛けながら逃げるテッサと追いかける宗介は、どっから見ても誰に聞いても全員がそうだと言わんばかりに

 遊んでいる二人は楽しそうなカップルそのものだった。

 そして段々と深い方に進んでこれ幸いにとテッサは沖の方に向かって泳ぎだした。

 運動が苦手の筈のテッサがこれほど上手いとは思っていなかった宗介は、その優雅さに暫し見とれてしまったが

 慌てて後を追って泳ぎだした。

 かなり沖まで来て疲れたのか仰向けになって海に漂いながら、青空を見上げるテッサの顔は満足だった。

 「本当に・・・ここに来て良かった」

 幸せな気分に浸りゆったりしていると近くで水音がしたので顔を向けると、遅れてきた宗介が追いついてきた。

 「お疲れさまでした、サガラさん」

 「いえ・・・それにしても驚きました」

 「私が泳げないと思っていたのですか?」

 「そ、そんなことは無いのですが・・・その」

 「ふふっ、その何ですか?」

 ちょっと意地悪そうに自分を見つめるテッサに宗介は、心の中を見透かされたのが恥ずかしくて海の中に顔を

 半分沈めてぶくぶくと泡を浮かべた。

 それから暫く二人で海に浮かんで休んだ後、泳いで帰る時にそれは起きた。

 「それじゃあそろそろ戻りましょうか、サガラさん」

 「了解です」

 帰る時はゆっくりと泳ぎながら気分良く泳いでいたテッサが宗介の前でいきなり海中に沈んだので、

 また悪戯でもされるのかと思っていたがいつまでたって浮かんでこない事に慌てて自分も潜った。

 海の中で目を凝らすと片足を抱えて息を漏らして沈んでいくテッサを見つけ、急いで近寄ると顔を引き寄せて

 その唇に自分の口を合わせて空気を送り込んだ。

 「・・・!?」

 途切れ掛けた意識が戻ってきたテッサが目を開くと宗介の顔と唇の感触に大きく目を見開いた。

 サ、サガラさん!?

 苦しい気分から一転して嬉しさと恥ずかしさで海の中でも解るぐらい顔中が真っ赤に染まった。

 そして海面にでるまで抱きかかえられたまま、テッサは宗介の体にしっかりとしがみついていた。

 「ごほっ、ごほっ・・・うっ」

 「大丈夫ですか?」

 「ぐっ・・・ごほっ、だ、大丈夫です」

 なんとか呼吸を整えたテッサは頭を上げて宗介の顔を見たら、ほっとしたのか涙がこぼれだした。

 「あっ・・・ぐすっ」

 「大丈夫ですか?」

 「は、はい・・・ひっく」

 口ではそう言いながらも宗介にしがみついたまま泣き出すテッサを、真っ赤になりながらも泣きやむまで

 ずっと抱きしめたままだった。

 泣きやんだ頃を見計らってテッサの手を引きながら砂浜に戻ってきた宗介は、彼女の体を抱き上げた。

 「サ、サガラさん!?」

 「運びますからじっとしていてください」

 「あ・・・はい」

 真剣な表情でじっと見つめられたテッサは、子猫のように大人しくしてそのまま抱かれていることにした。

 助けてくれた事に心の中で感謝しつつ宗介の横顔を見とれているテッサの大きな目は潤んでいた。






 つった足を宗介に丹念にマッサージをして貰いその後じっとしている間、テッサは宗介から目を離さなかった。

 海の中で人工呼吸のつもりで唇を合わせたのは頭では解っているのだが、胸の奥は熱く静まることは無かった。

 「テッサ?」

 「・・・」

 「テッサ?」

 「・・・・・・」

 「大丈夫ですか、テッサ?」

 「あっ、は、はい、何ですか!?」

 ぼーっと宗介を見つめていたテッサはびくっと体を震わせて、慌てて宗介に返事をした。

 「そろそろ旅館の方に戻りますか?」

 「あ、その・・・少し散歩でもしたいって・・・」

 「そうですね、少しだけなら足も大丈夫だと思います」

 「ありがとう、サガラさん」

 更衣室で宗介はタンクトップにデッキパンツ姿に、テッサはコットンの白いサマードレスに着替えてから

 夕日がオレンジ色に照らす砂浜を二人で歩き出したが、もちろん宗介と手を繋いでいるテッサは上機嫌でいる。

 そしてどこかテッサを見つめる宗介の瞳もどことなく優しくなっている。

 絶対に恋人同士にしか見えない二人は、ゆっくりと時間を惜しむように歩いていた。

 すでに夕方になり人気もほとんど無くオレンジ色に染まった世界に二人だけしかいない感じが幻想的で、

 それがテッサに夢の中にいるような幸せな気分を味合わせていた。

 そして、ふと立ち止まったテッサは宗介の前に回り込んで真剣な表情で見つめた。

 「サガラさん・・・」

 「はい」

 「聞きたい事が有るんですけど、正直に答えてくれますか?」

 「自分に解ることでしたら」

 テッサは自分に言い聞かせるように力強く頷いて、宗介の瞳を見つめた。

 「私はサガラさんが・・・好きです」

 自分の言葉で表情が固まる宗介を見つめたまま、テッサは自分の心に秘めていた思いを告白し続けた。

 「だから教えてくれますか、私のことをどう思っているのか・・・」

 何も言わない宗介を見つめるテッサの瞳は、段々と気持ちの高ぶりなのか潤み始めていた。

 「私は・・・私はあなたの心が知りたいんです!」

 思い詰めた表情で自分を見つめるテッサを、宗介の目は何かを考えている様子が伺えた。

 その様子を見たテッサはくすっと笑い、くるりと後ろを向いて海を見つめながら独り言のように言葉を告げた。

 「今すぐ答えてくれなくても良いです、でも・・・せめてこの旅行が終わるまでに聞かせて貰えますか?」

 少しだけ振り返って頬を染めているテッサに宗介は頷いてから答えた。

 「解りました、必ずお答えします」

 「ありがとう、サガラさん」

 「いえ」

 言いたいことを言って満足したのか、近づいて宗介の手を抱きしめるとにっこり笑って頬を擦りつける。

 「そろそろ帰りましょう、サガラさん」

 「は、はい」

 「ほらほら、今日の夕飯楽しみなんですよ♪」

 子供のようにはしゃぐテッサに引きずられる格好で宗介は自分たちが泊まっている旅館に歩き出した。

 そして食事をしながら今夜は何かが起きるかもしれないと言った予感が二人の脳裏を過ぎった。






 そして誰も居なくなった砂浜が盛り上がって中から出てきたのは、二機のM9”ガ−ンズバック”である。

 膝をついて降着状態のM9のコクピットから降りてきたのは水着姿のメリッサと、もう一機からはトランクス姿の

 クルツだった。

 「ふ〜っ、今回は死ぬかと思ったわ」

 セクシーダイナマイツな体を海の中に沈めながら汗を流して、メリッサは気持ちよさそうにため息を付く。

 「まったくだ、しかし今回のはなかなかの一品になりそうだぜ」

 同じように海の中で汗を流してお風呂のように浸かっているクルツは、今回の写真が飛ぶように売れると

 確信して頭の中はお金が飛んでいた。

 「とうとう告白したのねテッサ、それじゃ今夜は・・・ぐふふっ」

 「ああ、テッサもとうとう女になるのなかなぁ?」

 「ちょっとクルツっ」

 「あん、どうした姐さん?」

 「小豆と餅米を調達してきなさい」

 「なんで?」

 「決まっているでしょう、お赤飯作ってテッサに上げるのよ♪」

 「それは止めた方がいいと思うけどなぁ・・・」

 「なぜ?」

 「だってそんな事したら覗いていたのがばれちゃうじゃないか?」

 「大丈夫、アンタから聞いたって言うから♪」

 「姐さん、あんた鬼や」






 つづく。




 


 ずいぶん間が空いてしまいました・・・ああ、季節が夏から冬に(笑)

 まあこのお話の中では夏の終わりです(^^;

 今回は前後編のように続いていますので次は温泉編ですね、しかも混浴♪

 もちろんかなめのリベンジも有るでしょう、そしてカメラ片手に決死の進入を謀るメリッサとクルツ。

 果たして一番美味しいところを持っていくのは誰か?

 そしてテッサの想いに宗介はどう答えるのか?

 もしかしたら意外な者が現れたりして・・・くすっ。

 がんばれテッサ、幸せはもうすぐそこまで来ているぞ!

 



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