Kanon 電波的 Short Story






 ハッピーエンドはお約束♪






 日曜の午後と言えば誰しもゆっくりとしたいものだと思う。

 少なくても俺はそうだ。

 おっとすまん、俺は相沢祐一、どこにでもいる平凡な高校生だ。

 両親の都合でいとこが住むこの町に引っ越してきて一年が過ぎた。

 秋子さんと名雪とそれなりの楽しく過ごせてとても幸せだ。

 そして友達も沢山できたが、名雪はこう言う・・・。

 「すけべだよ、祐一」

 そうなんだ・・・ってちがうわ!

 どうしてか友達のほとんどは女の子ばかり、それもみんな美人で可愛い。

 自称親友の北川とか言う奴はこう叫ぶ。

 「俺にも一人分けてくれ!」

 そんなことしらん、それより恋人でも作ればいいのに・・・なぁ?

 えっ? 俺はどうなのかって?

 んんっ、そうだな・・・まあ特定の恋人って言うかどうかわからんが

 一応、名雪と恋人同士だ。

 まあ深い意味も込めてだが・・・にやり。

 「う〜、嫌らしい顔してるよ、祐一」

 「ぐあっ! どこから入ったんだ、名雪?」

 「もちろんドアからだよ〜」

 「そうか、俺はてっきり壁をすり抜けて来たのかと・・・」

 「そんなこと出来ないよ〜」

 「いや! 秋子さんの娘である名雪に出来ない訳が無い!」

 「う〜言い切られても困るよ〜」

 「冗談だ」

 「う〜・・・あ、それよりさっきの事なんだけど・・・」

 「さっきの事?」

 「一応じゃないよ、祐一!」

 「何が?」

 「私、祐一の恋人だよね、ね?」

 期待を込めて俺を見つめる名雪の顔をじっと見る、結構可愛い。

 「・・・そうだな」

 「今の間はなに、祐一?」

 「気にするな、ただの間だ」

 「う〜気になるよ〜」

 「さて、コーヒーでも飲みに行くか」

 足早に部屋から出た俺の後を名雪が慌てて着いてくる。

 「う〜ごまかしてない、祐一?」

 「気のせいだ、名雪」

 「気のせいじゃないよ、祐一」

 「あんまり細かいこと気にすると禿げるぞ、名雪」

 「それは嫌だけど、でも〜」

 「イチゴサンデー奢ってやるから」

 「わ〜い、ありがとう祐一〜♪」

 そう言って名雪は俺の背中に抱きついてきた。

 「こらっ、離れろ名雪」

 「嫌だよ〜」






 仕方なしに名雪を背中に張り付けたままで階段を下りてきたら、

 チャイムが鳴ったのでドアを開けた。

 「こんにちは、祐一くん」

 「新聞いらないよ、それじゃ」

 「うぐぅ、ボクのこと嫌いなの祐一くん?」

 「はっはっはっ、そんなこと有るわけないだろう、あゆ?」

 「なんかすっごい棒読みなんだけど?」

 「気にするな、禿げるぞあゆあゆ」

 「ボク、あゆあゆじゃないもん!」

 「すまん、おまえはうぐぅだったな・・・」

 「うぐぅ、違うよ!」

 「今、うぐぅって言ったじゃないか?」

 「祐一くん、嫌い!」

 「そうか? おれはあゆの事大好きだぞ」

 「うぐぅ、そんな真剣な顔で言わないでよ!」

 「何だ、我がままな奴だなぁ・・・」

 「普通に言ってよ、祐一くん!」

 「俺が悪かった、まあとにかく上がれよあゆ」

 「うん、お邪魔します」

 あゆと一緒にリビングに行こうと歩き出してふと思った。

 あれ? 何か忘れていないかな?

 「祐一・・・」

 その答えが背中から聞こえた。

 「よう名雪、元気か?」

 背中に張り付いていた名雪だった。

 「ずっと無視した〜・・・酷いよ祐一」

 「ごめん名雪、そう言うつもりじゃなかったのだが・・・」

 「嫌だよ、許さないよ祐一・・・」

 あ〜あ、涙目になって俺を睨むなよ名雪?

 「解った、今日から一週間帰りにイチゴサンデー奢ってやるから」

 「ありがとう祐一、嬉しいよ〜♪」

 ふぅ〜なんとか事態は転換した・・・わけじゃないようだ。

 なぜならここにも子供がもう一人俺の服の裾を掴んで見つめていた。

 「うぐぅ、祐一くん」

 「うっ・・・」

 「ボク・・・」

 「解った、あゆにもたい焼き食わせてやるからそんな目で見るな!」

 「わ〜い、ありがとう祐一くん♪」

 「ちぇ、本当にそう思うなら態度で示して見ろ、あゆ?」

 「えっ? うん、いいよ」

 ちゅっ。

 「あーっ!?」

 あゆの奴いきなりなんて事するんだ!? ・・・でも満更でもないな、俺。

 「えへへ、これでいい祐一くん?」

 「お、おう」

 ぎゅう。

 「ぐぁ? こら、首を絞めるな名雪!」

 「極悪だよ〜祐一」

 ぎゅうぎゅう。

 「だから絞めるんじゃない・・・う、うぐぅ」

 「ゆ、祐一くん、しっかりして!」

 「す、すまんあゆ、後は頼むぞ・・・」

 「死んじゃ嫌だよ祐一くん!」

 「あゆ・・・」

 「祐一くんが死んだら、ボクのお腹にいる子供はどうすればいいんだよ?」

 「はい?」

 瞬間、俺達は指先一つ動かせなかった。

 言ったあゆ自身も口を押さえたまま沈黙した。






 「うっうっ、酷いよ〜酷すぎるよ〜祐一」

 「うぐぅ、酷いよ祐一くん」

 号泣する二人を前に俺は小さくなるしかなかった。

 いつもなら夕飯前ののんびりした雰囲気があるリビングは重苦しかった。

 実は名雪も妊娠していると秋子さんが教えてくれた。

 名雪は秋子さんに相談したら俺に話しなさいと言われてたらしい。

 それでさっき俺の部屋に来たのだが、それどころでは無くなってしまった。

 そう、すべては俺の責任だ。

 俺の節操のない下半身の所為だ・・・たぶん。

 「祐一さん」

 「秋子さん・・・すいません、俺・・・」

 「謝る相手が違いますよ、祐一さん」

 「はい」

 俺は二人の顔を見つめてから頭を下げる。

 「すまん名雪、あゆ」

 「う〜」

 「うぐぅ」

 泣きながら俺を見る二人の顔は悲しみに満ちていた。

 今更ながら俺は二人に対してなんて事をしたんだと唇を噛み締めた。

 もう悲しませないと誓った筈なのに・・・。

 「本当にすまない、名雪、あゆ」

 俺はもう一度二人に頭を下げて謝る、それでどうなる訳じゃ無かったけど。

 「う〜」

 「うぐぅ」

 それでも二人の目からこぼれる涙は止まらなかった。

 俺は・・・俺はどうしたらいいんだ。

 俺は無力だった、ただのガキだった。

 しかし、そんな俺に一人の女神が救いの手を差し伸べた。

 「祐一さん」

 「秋子さん、俺は・・・俺はっ」

 「祐一さんがする事は何ですか?」

 「えっ?」

 「いい訳をする事じゃありません、解りますね?」

 本当なら怒っている筈の秋子さんは優しく微笑んで、俺の手を引いて

 二人の前に促した。

 「さあ、祐一さん」

 泣き濡れた顔で見上げる名雪とあゆを、俺は・・・。






 抱きしめた。






 それから数ヶ月後、俺たちは。

 「祐一、ちょっとこの娘お願い〜」

 「おう・・・ほ〜らパパだぞ〜小雪」

 名雪から生まれたばかりの小雪を引き取る。

 「くー」

 「やっぱり名雪の娘だな、よく寝ているなぁ」

 「違うよ、祐一の娘だよ」

 「そうだな」

 「うぐぅ、祐一くん」

 「どうしたあゆあゆ、楽しそうだな?」

 「うぐぅ、ボクあゆあゆじゃないもん!」

 「はっはっはっ、そうだったな」

 「うぐぅ、それより笑ってないで助けてよ!」

 「おお悪い、ほら来いなゆ」

 赤ん坊と一緒になって遊んでいるあゆからなゆを引き剥がす。

 「うぐぅ〜」

 「うん、こっちもやっぱりあゆの子供だなぁ」

 「違うよ、祐一くんの子供だよ」

 「しかし子供が子供生んでもなぁ・・・」

 「誰の所為だと思っているの、祐一くん?」

 「うむ、俺の所為だ!」

 「うぐぅ、胸張って言う事じゃないよ!」

 「そうか?」

 「そうだよ!」

 「一応そう言う事にしておくか・・・」

 「うぐぅ、一応じゃないよ」

 「ダメですよ、祐一さん」

 「ぐあっ、すいません秋子さん」

 「おかあさんです」

 「はい?」

 「ですから、私の事はおかあさん呼んでください」

 「そうだよ祐一、もうお母さんって呼ばなきゃダメだよ」

 「そうだよ祐一くん、おかあさんなんだからそう呼んでよ」

 「そ、そうは言ってもなぁ・・・今更ながら照れるんだぞ」

 「う〜、祐一?」

 「うぐぅ、祐一くん?」

 「ほら、祐一さん♪」

 「秋子さん、楽しんでいませんか?」

 「ええ、毎日が賑やかで楽しいですよ祐一さん♪」

 俺が三人に勝てる筈もなく、両手を上げて降参のポーズを取る。

 「はぁ・・・解りました、秋子おかあさん」

 「了承」

 「うわ〜久しぶりに聞いたよ」

 「うん、でもさすが秋子おかあさんだね」

 まさにその通りだ、俺も心からそう思う。






 あれから何があったのか・・・気が付いたら法律改正で一夫多妻制が施行された。

 何故だか国会でだれ一人反論する事無く採決された。

 ちなみにその様子をTVで見ていた秋子さんが小さく「了承」と呟いたのは、

 俺にしか聞こえなかったようだ。

 やっぱり秋子さんは・・・おっと秋子おかあさんは謎だらけだった。

 でも、そのお陰で今俺たちは幸せな時間を過ごしていた。

 こんなに幸せで良いのかと俺は最近思う。

 ぴんぽ〜ん。

 「ああ、俺が出るから頼む」

 そう言って大事な娘をそれぞれ手渡して玄関に向かった。

 「はい?」

 がちゃ。

 「あはは〜お久しぶりです、祐一さん」

 「久しぶり、祐一」

 「佐祐理さん、舞、本当に久しぶりだなぁ・・・それで今日は?」

 「はい、実は祐一さんにご相談したい事が有りましてお伺いしました」

 「相談ですか?」

 「はい、実は佐祐理と舞のお腹に子供がいるんです〜」

 「はちみつクマさん」

 何となく思い当たる伏が無きにしも在らずの俺の背中に冷や汗が流れた。

 「そ、それってまさか?」

 「はい、祐一さんの子供です♪」

 「はちみつクマさん」

 「ぐあっ」

 その時、俺の背後からもの凄い冷たい空気が流れてきた。

 「祐一」

 「祐一くん」

 「うぐぅ」

 「可愛くない」

 「ここはギャグじゃない、舞!」

 「すまない」

 「どう言うこと、祐一?」

 「どう言うことなの、祐一くん?」

 「あ、佐祐理が説明しますね〜」

 名雪とあゆの責めるような質問を佐祐理さんがにこやかに説明を始める。

 「あはは〜実はこの間、舞の誕生日だったんですが、そこに祐一さんが来たときに・・・」

 『おおっ、これみんな佐祐理さんが作ったのか?』

 『はい、どれでもお好きなのどうぞ〜』

 『それじゃあ・・・おまえを先に食ってやる〜』

 『きゃあきゃあきゃあ♪』

 『祐一』

 『なんだ舞、今佐祐理さんを食べる所だからちょっと待ってくれないか?』

 『私も食べて』

 『えっ?』

 『食べて・・・ね』

 ぷつっ。

 『二人とも美味しく食べてやる〜!』

 「と、言うことで佐祐理と舞は祐一さんに美味しく食べられちゃったんです〜♪」

 何と言う解りやすい説明だろう、ありがとう佐祐理さん。

 「はっはっはっ、そう言うことだ」

 「う〜、えばらないでよ〜祐一!」

 「そうだよ、なにえばっているんだよ祐一くん!」

 「ぐあっ・・・」

 「祐一さん」

 「あ、秋子おかあさん、これはその・・・」

 「了承」

 「はえ〜良かったですね舞、秋子さんに認めて貰いました〜」

 「かなり嫌じゃない」

 「解っていますね、祐一さん?」

 「は、はい、心得ております」

 そう、だから俺は佐祐理さんと舞を抱きしめた。

 「はえ〜祐一さん?」

 「祐一?」

 「二人とも幸せになろうな!」

 「はい、祐一さん」

 「(こくこく)」

 「お母さんが了承したのならしょうがないよ」

 「うん、秋子おかあさんだからね」

 解ったような解らないような相づちして頷き合う名雪とあゆだった。

 この日から新たに妻二人とまもなく生まれる子供が新しく家族に加わった。

 「賑やかで良いですね♪」

 秋子おかあさんは変わらず嬉しそうだった。






 しかし事態は更に急速に激変していく事になった。

 佐祐理さんと舞が我が家に来てから一ヶ月もしない内に、新たなる来訪者が水瀬家を訪れた。

 あ、ちなみ俺の名字は最近相沢から水瀬に変わっていた・・・理由は解ると思う、だから聞くな。

 秋子おかあさんお薦めのジャムを食べたいと言うなら止めはしないけどな。

 話がそれたな・・・先に進もう。

 ぴんぽ〜ん。

 嫌な予感がひしひしと感じられたが逃げる訳にはいかなかった。

 がちゃ。

 ドアを開けたそこにはやっぱり・・・ぐあっ。

 「お久しぶりです、祐一さん」

 「あ、ああ、元気か栞?」

 「はい、もうすっかり元気になりました」

 「久しぶりね相沢・・・あ、今は水瀬だったわね」

 「何の用だ、香里?」

 「ずいぶんなご挨拶ね、水瀬君」

 「ぐあっ」

 なんか香里に言われると、もの凄く嫌な感じだ。

 「見てください祐一さん、こんなに大きくなりました」

 と、自分のお腹をさすって嬉しそうに笑った。

 栞、おまえもか・・・。

 「そんなこと考える人嫌いですぅ」

 「ぐあっ、思考が読まれている!」

 「誰だって読めるわよ、あなたの考えなんてね」

 「ぐあっ」

 って、俯いた俺の視界に香里のふくよかなお腹が・・・ん?

 「おい香里、そのお腹・・・」

 「ああ、これ? もちろん妊娠しているのよ」

 「北川のか?」

 「冗談は顔だけにして、あなたの子供に決まっているでしょ!」

 「何時の事だ!?」

 「この間たまたまショットバーで会った時、ホテル行ったじゃない?」

 「あ、あの時のかっ!」

 「そうよ、まさか忘れた訳じゃ無いでしょうね?」

 「だって香里、あの時は安全日だって言ったじゃないか?」

 「なによ、だからってあたしが気絶するまでがんばったのは誰よ?」

 「ぐあっ」

 どうして俺は絶倫なんだ!?

 この節操のない下半身が・・・ちょっとだけ嫌かも。

 そんな俺たちを冷ややかな目で見ていた俺の妻たちがそこにいた、もちろん秋子おかあさんも。

 「最低だね、祐一」

 「最低だよ、祐一くん」

 「あはは〜祐一さん、佐祐理ちょっとだけ悲しいです」

 「祐一、佐祐理を泣かせるな」

 「ぐあっ」

 はい、みんな俺が悪いんです、反論できません。

 「祐一さん」

 「解っています、秋子おかあさん」

 俺は香里と栞をお腹に気遣いながらそっと抱き寄せた。

 「二人とも幸せになろうな!」

 「はい、祐一さん」

 「ま、良いでしょう、よろしくね祐一♪」

 「了承」

 俺の家族に更に新たな妻二人と今にも生まれそうな子供が加わった。

 「ますます楽しくなりますね、祐一さん♪」

 秋子おかあさんの機嫌はすこぶる良かった、はぁ・・・。

 でも、俺って幸せ者なんだろうな うん。






 俺の妻たちは全員無事出産を終えて、今や我が家は毎日がお祭り騒ぎだ。

 名雪の娘、小雪はいつも寝ているから静かで助かる。

 あゆの娘、なゆは落ち着きがない・・・ちびあゆだ。

 佐祐理の娘、佐緒理はいつも笑顔で可愛い。

 舞の娘、命は無表情だが佐緒里と仲がいい。

 香里の娘、香はちょっと偉そうな顔つきだ。

 栞の娘、志穂は三度の飯よりアイスが好きらしい。

 なんだかこう見ると俺には似て無いなぁ・・・。

 むしろ母親そっくりだ、うん・・・ちょっと寂しいなぁ。

 それにしても何で全員女の子なんだ?

 そこはかとなく誰かの意志を感じるのは錯覚では無いと思うが・・・。

 だからまだ何かあるんだと思うぞ、俺はな。

 ぴんぽ〜ん。

 ほらな、そうなんだよ、そんなに人生すんなりいく訳が無い。

 俺は冷ややかな視線の妻と子供たちに見送られながら玄関に向かった。

 がちゃ。

 そこにいたのは天野と・・・あの日、俺の前から消えてしまった真琴だった。

 「こんにちは、相沢さん」

 「あう〜」

 「この・・・ばかやろうっ」

 俺は怒りながらも真琴をぎゅっと抱きしめた。

 「あう〜苦しいよ、祐一」

 「それぐらい我慢しろ、俺はもっと苦しかったんだ」

 「あう〜」

 ちょっとだけ力を緩めて俺は何回も真琴の頭を撫でた。

 「すまん天野、ちょっとだけ待ってくれ」

 「はい、待っています」

 「すまん」

 何とか落ち着いた俺は真琴の体を離したが、手はしっかりと握っていた。

 「また会えて嬉しいぞ、真琴」

 「うん、なんかね、みんなが力を貸してくれたの」

 「そうか」

 「だからね、真琴は人間になれたの・・・今度は本当の人間に」

 「そうか、良かったな真琴」

 俺は本当に嬉しくて何時までも真琴を抱きしめていた。

 「それでね、あの・・・祐一に見せたいものが有るの」

 「ん、なんだ、なんでも見てやるぞ」

 「美汐〜」

 「はい、落とさないようにしっかり抱いてね、真琴」

 「あう〜」

 と、天野が真琴に手渡した物は可愛い赤ちゃんだった。

 「美琴って言うの」

 「可愛いな、真琴そっくりだ」

 「祐一の子供だよ」

 「おう、ありがとな真琴」

 「あうっ♪」

 すやすやと眠っている美琴の顔を充分眺めてから天野の側に近づいた。

 「世話掛けたな天野、ありがとう」

 「いえ、大したことしていませんから・・・それよりも相沢さん」

 「なんだ天野、おまえも見せたい物が有るのか?」

 「はい・・・」

 むう? 珍しく天野の顔が赤くなっているぞ。

 しずしずと差し出した腕の中にこれまた可愛い赤ちゃんが寝ていた。

 「名前は真美です」

 「俺の子供だな?」

 「はい」

 消えてしまった真琴を思ってよく二人でものみの丘にずっといたんだよなぁ。

 その時まあ・・・いわゆるお互いに求め合った結果が目の前に有るんだ。

 「まったく、黙っているなんて天野らしいと言うか・・・」

 俺は天野の頭を自分の胸に引き寄せ抱きしめた。

 「は、恥ずかしいです、相沢さん」

 「天野、訂正しておくな・・・今の俺の名字は水瀬なんだ」

 「そ、そうなんですか、すいません」

 「だからな、これからは祐一と呼んでくれ」

 「あ、はい・・・祐一さん」

 「良くできました」

 真琴と同じように何回も頭を撫でてると天野、いや美汐も段々と嬉しそうな

 照れたような微笑みを見せてくれた。

 「あう〜祐一、真琴も撫でて!」

 「おう、ほら来い」

 「うん」

 こうして俺は二人を抱きしめながら暫し頭をなで続ける、妻たちの視線を背中に感じて。

 「やっぱり祐一だね」と小雪を抱いた名雪が言う。

 「うん、祐一くんだね」となゆを抱いたあゆが言う。

 「あはは〜またお友達ができましたね〜、舞」と佐緒里を抱いた佐祐理が言う。

 「相当に嫌いじゃない」と命をおんぶした舞が言う。

 「そこが祐一なのよね」と香を抱いた香里が言う。

 「本当に祐一さんです」と志穂を抱いた栞が言う。

 そして最後に秋子おかあさんがあの言葉で締めくくる。

 「了承」

 ああ、おれは今最高な宝物に囲まれていた、幸せだな。






 しかし外に出れば俺には敵が待っていた。

 「相沢、覚悟ーっ!」

 俺はいきなり背後から雄叫びを上げて襲いかかってきた人物をさっと避けると、

 振り向きざまにパンチを顔面にお見舞いした。

 「誰だおまえ?」

 「ふっ、貴様が忘れても俺は忘れん!」

 「だから誰だって聞いてるんだが?」

 「元生徒会長の久瀬だ」

 「しらん、俺は仕事中だから相手にしている暇は無い」

 「逃げる気か?」

 「あほ、俺には養わなきゃならない妻と子供が大勢いるんだ」

 「貴様、まさか倉田さんを毒牙に掛けたのか!?」

 「一つ言って置くがな・・・今の俺の名字は水瀬だ、もちろん佐祐理もそうだ」

 「うぬっ!」

 「じゃあな」

 「どこに行くんだ、相沢?」

 「だから俺の名前は水瀬だって・・・ひょっとして北川か?」

 「ひょっとしなくても北川だ、久しぶりだなあ・・・おっと今は水瀬だったな」

 目の前に突然現れた男は、かつてのクラスメイトで自称親友の北川だ。

 「だれが自称だ?」

 「細かいことを気にするな、ところでどうしたんだこんな所で?」

 「ああ、おまえを待っていたんだ・・・この手で成敗するためにな」

 「はあ? 何言ってんだおまえ?」

 「良くも俺の美坂を・・・あまつさえ妹の栞ちゃんまで毒牙に掛けるとはっ!」

 「何時おまえの香里になったんだ? 妄想は止めた方がいいぞ」

 「相沢・・・」

 「何度も言わせるな、俺は水瀬祐一だ! それじゃ俺仕事に行くから・・・」

 「天誅ーっ! 相沢ーっ!!」

 「おわっ!? 今度は誰だ?」

 久瀬とか言う奴といっしょで雄叫びを上げながら襲いかかってきたが難なく避けると、

 足を引っかけたら地面に顔から突っ込んだ。

 「どうでも良いが、大声上げながら襲いかかったら意味無いと思うが?」

 「う、うるさい! よくも水瀬さんを汚したな!」

 「いきなり変な事言うな? 名雪と俺の中はらぶらぶ絶好調だ」

 「くっ・・・おのれぇ〜!」

 「ところでおまえ誰?」

 「元クラスメイトで水瀬さんファンクラブ会長で会員第一号、斉藤だ!」

 「しらん」

 「俺もしらん」と北川が妙に真面目な顔でハッキリ言う。

 「私も知らないな」と鼻にティッシュを詰めた久瀬が言う。

 「なんだとう!」

 何故だかよくわからんが、三竦み・・・ちょっと違うか? まあそんな事どうでもいっか。

 おれは睨み合っている三人を置いて、会社に向かった。

 さあ、今日も一日みんなの幸せのためにがんばるぞー!






 余談だが、その後三人でなぜか口論になり殴り合っている所を警察に捕まったらしい。

 まったく、人生ちゃんと生きないとダメだぞ?






 「「「貴様がそれを言うのかーっ!?」」」






 「了承」






 聞こえる筈のない秋子おかあさんの声がどこからか聞こえた様な気がした。






 はっぴーえんど、だよ!







 電波が来ました(笑)

 それだけです、くすくす。

 では。




戻る

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル