新世紀エヴァンゲリオン Another Story






 It’s Destiny


 

 Presented じろ〜



 「・・・・・・」

 彼が何かを言っている。

 私は彼を知っている、けど名前が出てこない。

 でも、知っている。

 優しい瞳、温かい笑顔。

 いつもいつも私にくれた。

 「・・・・・・」

 彼が何かを言って笑顔になるとそのまま闇の中に消えていく。

 そして目が覚める。

 親友のアスカにその事を話すとからかわれた。

 「いくら現実に恋人が居ないからって夢の男に恋してど〜すんのよ」

 ・・・自分だって居ないくせに。

 でも、きょうの夢はいつもと違った。






 「綾波、君は誰よりも幸せにならなきゃ駄目だよ」

 初めて彼の声が聞こえた。

 笑顔と同じ温かい声。

 「僕が君にして上げる事ってこれぐらいだけど」

 違う! そんな事無い。

 「ずっと君が幸せになるように祈っているから」

 待って!

 「さようなら綾波、元気でね」

 待って!

 「・・・・・・」

 声が出ない、どうしても出ない。

 彼が微笑んでまた闇の中に消えていこうとする。

 嫌!

 そんなのもう嫌!

 私は、私は心の底からそう思った瞬間、彼の名前を叫んだ。



 「碇君!!」



 彼、碇君の顔が一瞬驚いたようになったけど直ぐに笑顔になった。

 「ありがとう綾波」

 碇君は今まで見たこともない嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

 「碇君!」

 世界が白く明るくなっていく・・・。






 「碇君」

 目が覚めた私は泣いていた、でもこの涙は悲しみじゃない。

 だってようやく名前が思い出せたから・・・。

 だから嬉しくて泣いているんだと思う。

 でも、名前だけしか思い出せなかった。

 「碇・・・シンジ」

 そう、彼の名前は碇シンジ。

 今はそれだけでも嬉しかった。

 「碇君」

 碇君の名前を口にするだけで心が温かくなった。

 「碇君」

 それだけで涙が溢れてくる。

 これは予感。

 碇君とまた会える予感。

 言葉は鍵、そして今扉が開き始めた。

 私は待っている、いつまでも待っている。

 だって彼の笑顔が全ての答えだから・・・。






 学校のお昼休み、アスカとヒカリさんとお弁当を食べながらその事を話した。

 「碇君って言うんだ・・・」

 ヒカリさんは彼の名前を聞いて肯いていた。

 「あんたね〜妄想の彼に名前付けてどうすんのよ!?」

 「妄想じゃないわ」

 「ど〜こが!」

 「・・・猿」

 「うっき〜! 何ですってぇ〜!!」

 「ちょ、ちょっとアスカ落ち着いて・・・」

 「放してよヒカリ、今こいつに礼儀と言う物を・・・」

 アスカを無視してお弁当を食べながら私は心の中で碇君の名前を呼んだ。

 碇君の笑顔が浮かんで心が温かくなった。

 これは妄想じゃない、だって碇君にもうすぐ会える。

 「こら〜何無視してるのよ〜!」

 私の心は期待に満ち溢れていた。






 放課後。

 いつものように三人で一緒に帰る、がしかし・・・。

 お昼休みの事でアスカにおごる羽目になる。

 「いい、トリプルだからね!」

 「解ったわ」

 どうでも良いけどアスカはよく食べる、太っても良いのかしら?

 クスッ。

 今度は猿から牛にでもなるのかしら?

 「レイ、あんた今何考えていたの?」

 「別に」

 「何か気になる笑いを浮かべていたわね・・・」

 「そう」

 「と・に・か・く、アイスはきっちりおごって貰うからっ」

 アスカ猿からアスカ牛・・・。

 とても不味そうな牛だけど、肉が嫌いな私には関係ないから構わない。

 「解ったわ、牛さん」

 「うっき〜! だ、誰が牛よ?」

 「お、落ち着いてアスカ」

 「止めないでヒカリ、やっぱり一度がつんと・・・」

 またきーきー叫んでいる、やはりまだ猿らしい。






 「ん〜美味しいわ〜、やっぱりおごって貰うと良いわね♪」

 「そう、良かったわね」

 アスカはバニラとオレンジとチョコミント。

 遠慮がないのはいつものことだから仕方がない。

 くすっ、牛さん目指してがんばって。

 「私までごめんなさい、レイさん」

 「いいの」

 ヒカリさんはチョコミントのシングル。

 やはり体重に気をつけている、猿とは違う。

 ヒカリさんはいつもアスカから私を庇ってくれるから、そのお返し。

 私はバニラのシングル。

 アイスを舐めながら、二人の後ろをゆっくりと着いていく。

 ふと、空を眺める。

 雲一つない青い空がどこまでも広がっている。

 暫くそのまま眺める。

 このまま青い空に吸い込まれそうな気持ちになる。

 静かに目蓋を閉じる。

 何も聞こえなくなる。






 「ちょっとレイ、信号変わるわよ!」

 アスカの声に目蓋を開けると信号が点滅していた。

 私は歩き出そうとした、その時。

 前から来た人とぶつかってしまった。

 こん。

 何かが地面に落ちた音がした。

 それはちょっと大きい十字架のペンダントだった。

 どこかで見たような・・・。

 私は手を伸ばしてそれを拾う。

 「ありがとう、大事な物なんだそれ」

 頭の上から声が聞こえたので顔を上げる。



 !!



 そこにいたのは・・・。



 「碇君」



 彼は、碇君は私の言葉に応えるように微笑んだ。



 「元気そうだね、綾波」



 この瞬間、私は全てを思い出した。



 NERV、使徒、エヴァ、そして・・・碇君!






 私は手に十字架のペンダントを持ったまま碇君に抱きついた。

 「碇君」

 力一杯抱きしめてその胸に顔を押しつける。

 「碇君」

 閉じた目から涙がこぼれた。

 「碇君」

 「綾波」

 碇君が私の名前を呼ぶ。

 夢じゃない、幻でもない、今確かにここにいる。

 トクントクン。

 鼓動が聞こえる、それに温かい。

 「綾波、その放してくれない?」

 「いや」

 「綾波」

 「いや」

 私は更に腕に力を入れて抱きしめる。

 「どこにも行かないから」

 「いや」

 もう放したくない、絶対に。

 「約束する、ずっと綾波の側にいるよ」

 「本当?」

 胸から顔を上げて碇君の顔を見る。

 「うん、約束する」

 私が一番大好きな微笑みで応えてくれる。

 「碇君」

 つま先立ちになって背伸びをして目蓋を閉じた。

 そして・・・。



 KISS。



 碇君の腕が私を強く抱きしめる。

 もっと、もっと強く抱きしめて・・・。

 私を放さないで、碇君。






 「ちょっとあんた達! 何恥ずかしい事やってんのよ!?」

 私達は顔だけアスカの方に振り向く。

 顔を真っ赤にしたアスカがこちらを指さして叫んでいる。

 ヒカリさんは赤くなった顔に手を当てて、こちらを見つめていた。

 「アスカは相変わらずだね」

 「毎日猿みたいにき〜き〜叫んでいるわ」

 「くすっ、そうみたいだね」

 「ええ」

 二人で笑い合う。

 「こら〜! そこの二人、あたしを見て笑ってんのよ!?」

 碇君は私の体を放したけど、直ぐに私の手をそっと握ってくれる。

 「さっ、行こうか綾波?」

 私は碇君に教えて貰った最高の笑顔を浮かべた。






 「うん、碇君」





 信号が変わった時、碇君が私の手を引いて歩き出した。



 反対の手に十字架のペンダントをしっかりと握って。



 そして私も歩き出す、碇君と歩くこれからを・・・。






 「ただいま、綾波」






 「おかえりなさい、碇君」






 END





 久しぶりのエヴァSSです。

 イメージは同タイトルのCDシングルから取りました。

 実は久しぶりにエヴァの映画を見たら、書きたくなってしまいました。

 あのままレイがいなくなるのはなぜか寂しかったので、シンジと幸せに

 なるための世界の初めの部分にしてみました。


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