新世紀エヴァンゲリオン Another Story
It’s Destiny〜OnceMore〜
Presented じろ〜
「碇シンジです、よろしく」
少年が自己紹介すると、クラスの女子達が我先にと質問するために手を挙げ、男子達はその容姿を見て
敵が来たと渋い顔をした。
「全く・・・昨日はあんたのおかげで偉く恥ずかしかったわよ!」
「私は嬉しかっただけ」
「ちょっと! 人の話聞いてんの?」
「アスカには関係ないわ」
「き〜っ、レイあんたね〜!」
「猿」
「むっき〜! なんですって!?」
「ア、アスカ落ち着いて・・・」
教室の中でいつもの口げんかが始まっているのを、クラスメイト達は定例行事みたいに見ていた。
アスカがレイに突っかかってヒカリがそれを宥める。
第三新東京市立第一高校の中でも美人の二人がいる二年B組は今日はいつにも騒がしかった。
原因は昨日の事であるが知っているのは騒いでいる当事者達だけだから、クラスメイト達は『今日は激しいな〜』
ぐらいにしか思いつかなかった。
「惣流の奴、何か今日はいつもより激しいなぁ・・・」
「あの日か?」
どかっどかっ!
そう呟いていたケンスケとトウジにブーメランの様に飛んできた鞄が器用に二人の顔を直撃した。
「聞こえているわよ、あんた達!」
アスカが鞄を投げたポーズのまま不埒な事を口にしていた二人を睨んでいた。
「おまえなぁ・・・手加減てもんをしらんのかぁ?」
「全くだよ、だから恋人が出来ないんじゃないのか?」
どかっどかっ!
今度は親友のヒカリの鞄をこれまた器用に二人の顔面を捉えていた。
「大きなお世話よ! いっつもジャージしか着ない奴と変態カメラマンに言われたくないわよ!」
びしっと言い放ったアスカだが、二人は目をぐるぐるさせており聞いちゃいなかった。
「おっはようみんな、さあさあ席についてちょ〜だい♪」
朝からテンションが高い担任である葛城ミサトがニコニコしながら入って来た。
「起立、礼、着席」
クラス委員長のヒカリの声に朝の挨拶を済ませると、待っていたとばかりにミサトが教壇の机に両腕を叩き付けた。
「喜べ女子! 嘆くな男子! 今日は転校生を紹介する〜♪」
ミサトが廊下に向かって呼び掛けると、ドアを開けて背の高い男の子が入ってきた。
教壇に立つと自己紹介を始めた。
「初めまして碇シンジです、よろしく」
少年が自己紹介すると、クラスの女子達が我先にと質問するために手を挙げ、男子達はその容姿を見て
敵が来たと渋い顔をした。
「あ〜〜〜〜〜っ! あんたは昨日の!?」
その声にクラス全員の視線が集中した。
アスカが立ち上がってシンジの事を指さしたポーズのまま睨んでいた。
「あら〜アスカったらもう知っているの? 目ざといわねん♪」
「なっ・・・違うわよ、そんなんじゃないわよ!」
「顔を真っ赤にして言っても説得力無いんだけどねぇ〜?」
「そ、それはっ・・・!」
ミサトの指摘通りアスカの顔は耳まで真っ赤になっていた。
それを見たクラスメイト達は皆同じ事を頭の中で想像していた。
『ま、まさかあのアスカが!?』
どんな男に交際を迫られても袖にしていたアスカが事も在ろうに転校生の男に一目惚れか?
しかしそんな雰囲気を察知したのか、もう一人の美少女が動き出そうとした。
真っ赤になったまま口をパクパクしているアスカを一別してからレイが立つとミサトに告げた。
「葛城先生、先に進めてください」
「あら? レイもこの子に興味有るわけぇ〜?」
「はい」
そう言ったレイの顔をクラスメイト達は見逃さなかった。
みんなは出会ってから初めて見たレイのその笑顔は、凄く嬉しそうに温かい微笑みだった。
「おいケンスケ、綾波が笑うとるで・・・」
その側でケンスケはトウジの問いかけに答える前にカメラのシャッターを切りまくっていた。
『売れる! これは間違いなく大ヒットだ!』
ケンスケの頭の中はこれからのもうけの事で一杯だった。
「ん〜・・・まあこのままって訳にいかないから先に進みましょうか♪」
ミサトは立ち上がった二人の美少女をニヤニヤしながら見つめていた。
「じゃあ、よろしくシンちゃん♪」
シンジは相変わらずのミサトに苦笑いしながらも自己紹介を続けた。
「えっとここの街に来たのは初めてなので、みなさんよろしくお願いします」
そう言って微笑んだシンジの笑顔にクラスの女子達は一発でノックアウトされ、男子達は渋い顔をして
睨んでいた。
もちろんレイは微笑んでいたがアスカもまた胸を押さえて激しい動悸を押さえていた。
『な、なんであたしの胸がドキドキしなきゃなんないのよ!?』
ちらっと顔を上げた瞬間、シンジと目が合ってしまい固まっているアスカにシンジはニコッと笑いかけた。
「!!」
とうとう首まで真っ赤になって座り込んでしまったアスカをレイがジト目になって睨んでからシンジをジト目で
見つめ返した。
「?」
なんで睨まれたのか訳が分からないシンジはレイにも笑いかけると、拗ねたようにそっぽを向いて席に座ってしまった。
「あちゃ〜これは結構来るもの有るわねぇ〜♪」
ミサトでさえドキッとする笑顔にクラスは興奮のるつぼとかした。
ぱんぱん。
「は〜い、みんな静かに・・・それでは質問タイムに入りましょう♪」
「はいっ、ミサト先生!」
「ん? じゃあ相田君♪」
みんなが見守る中ケンスケは一番聞きたい事を聞いてみた。
「え〜っと碇君・・・」
「シンジでいいよ、相田君」
「そ、そうか、じゃあ俺もケンスケでいいよ」
「うん解った」
「ズバリ、シンジに好きな人または恋人がいますか?」
『相田ナイス!!』
クラスメイトの心はこの時だけシンクロしていた。
「うん、いるよ」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
「おっけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ちなみに上が女子達で下が男子達の叫び声である。
騒いでいるクラスメイト達を手で制してケンスケは先を続けた。
「それじゃ・・・その人は好きな人?それとも恋人?」
「うん、恋人だよ」
「「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」」
女子達はあきらめのため息、男子達は安堵のため息であった。
「じゃ、じゃあどんな女の子かな?」
「うん、それはね・・・」
シンジは教壇を降りるとゆっくりと歩いていくと、クラスメイト達はその動きに注目した。
レイの席の側に立つとそっぽを向いたままの彼女の手を握ると、立ち上がらせて自分の胸に抱き寄せた。
「この娘だよ」
抱きしめられたレイは大好きな匂いに包まれてると解ったら直ぐに笑顔になり自分からもシンジに抱きついた。
「「きゃあ(うぉ)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」
教室が揺れるほどの叫びが学校中に響き渡った。
「な、な、何やってんのよあんた達!? 離れなさ〜い!!」
「いや」
その中でもアスカの怒号はいつにもまして大きかった
「ちょっとみんな! 他のクラスに迷惑だから静かにして!」
ヒカリの制止は無いに等しい物だった。
「いいわよぉ〜あたしもその辺興味有るしぃ〜♪」
ちゃっかり傍観を決め込んでいるミサトは生徒達を煽って楽しんでいた。
しかし、ミサトは教頭先生から朝の騒ぎの事で小言を言われてさんざんな日になってしまった。
「帰って来たんだ、僕は・・・」
シンジの呟きを聞いたレイはお帰りなさいの意味を込めて改めて抱きしめた。
END
前作「It’s Destiny」の続きになっちゃいました。
この世界ではシンジとレイだけが前の記憶を持っているようです。
ちょっと積極的なシンジになりました、でも敢えてそれで良いかなと思います。
苦労してたからね。