「決戦! 真夏のビーチは花盛り♪」
Presented by じろ〜
今は夏真っ盛り、あたしと祐一は二人だけで海に行くことにした・・・はずなんだけどね?
「どうした香里? 頭押さえて・・・もしかして調子悪いのか?」
隣に座っている祐一が大丈夫か? と言った感じであたしの顔をのぞき込んでくる。
「ううん、違うのよ。ちょっと考え事していただけよ」
「そっか・・・せっかく海に来たのに香里の具合が悪いんじゃないかと心配したぜ」
「ありがとう祐一、心配してくれて・・・」
いつものように優しい目で見つめながら、祐一があたしの肩に手を回して引き寄せて耳元で囁く。
「当然じゃないか! 香里は俺の大事な恋人なんだからな♪」
そのセリフで自分の顔が赤くなるのが解る。
「もうっ、よくそんなセリフさらって言えるわね?」
「おうっ、いわゆる愛の力って奴だな!」
「ばか」
祐一の肩に頭を乗せてちょっとだけ甘えてみたりする、なんか自分らしくない気もするけど・・・。
「う〜、香里いいなぁ〜・・・」
恨めしそうにジト目であたしたちを睨んでいる名雪。
「うん、羨ましいよ、ボク・・・」
その割には夏なのにたい焼き食べて嬉しそうにしているあゆちゃん。
「あう〜、祐一のすけべー!」
真夏なのになぜか肉まんを頬張っている真琴ちゃん。
「見せつけてくれますね」
涼しげな表情の彼女はちょっと仕草が大人っぽい美汐さん。
「そんなお姉ちゃんなんて嫌いですぅ」
相変わらず膨れっ面のなのはあたしの妹の栞。
「はぇ〜、香里さんも大胆ですね〜」
全然驚いて見えない表情で驚いているのは佐祐理さん。
「・・・ぽんぽこタヌキさん」
いつもよりぶすっとしているのでちょっと怖い座った目で睨んでいる舞さん。
「みんな、そんな顔しちゃダメですよ。せっかく遊びに行くんだから・・ね?」
どこにいてもいつも健やかな微笑みの秋子さん。
「「「「「「「は(〜)い」」」」」」」
あたしの頭痛の原因と呼べる物がそこの集団だった。
でも、どうしてあたしと祐一が出かけるのが解ったのかしら?
ふと後ろを振り返った時、不意に秋子さんと目が合った・・・それで納得してしまった。
秋子さんがにっこり笑ってあたしを見つめ返したから。
ため息をついてまた祐一の肩に頭を乗せて瞼を閉じる・・・ちゅっ。
唇の感触にびっくりして目を開けると、祐一がニヤニヤしていた。
「いきなり何よ? びっくりしちゃうじゃない!」
「えっ? キスして欲しいって顔してたからつい・・・」
「も、もうっ祐一!」
「あははは〜」
どこから見ても恋人同士のあたしと祐一と、秋子さんたちみんなを乗せて列車はどんどん海に近づいていた。
「お待たせ、祐一」
海に着いたあたしは早速水着に着替えて祐一が待つ砂浜にやって来た。
今日の為に選んだ水着は赤いビキニ、髪もUPにしてみた・・・それを着たあたしを祐一がじ〜っと見つめる。
そうまじまじと見ないでよ、ちょっと恥ずかしいわ。
「おうっ・・・うん! よく似合っているぞ、その水着♪」
「あ、ありがとう」
祐一が親指を立ててウィンクする、あたしは何となく照れくさくって顔を赤くして俯いちゃう。
「なんだよ、そんなに照れること無いじゃんか?」
「い、いいでしょ。なんか恥ずかしいのよ・・・」
「はいはい、それじゃ今日は思いっきり楽しもうなっ♪」
「うん♪」
なんだかんだ言ってもあたしも祐一と一緒に来られたので浮かれているのか、気分が良かった。
でも・・・そう手放しには喜べないのが現実なのよ。
「祐一〜♪」
大きく手を振ってこっちに来る青いビキニ姿の名雪。
「祐一く〜ん♪ うぐぅ!」
って叫んだ側から砂浜に頭から突っ込んでいる向日葵柄のワンピースのあゆちゃん。
「祐一っ♪ あうっ!」
あゆちゃんに押されて一緒に砂浜に転がったのは黄色いセパレートの真琴ちゃん。
「あ、真琴?」
砂浜に埋まった真琴ちゃんを掘り出しているのは緑のワンピースの美汐さん。
「祐一さん♪」
麦わら帽子で日差しを遮って歩いてくるのは白いワンピースの妹の栞。
「あはは〜祐一さ〜ん♪」
鍔が広い白い帽子と笑顔が眩しい佐祐理さんはハイビスカス柄のビキニと腰にはパレオを巻いている。
「・・・祐一」
どことなく嬉しそうなの雰囲気が解る舞さんは大胆な黒のビキニ。
それにしても、舞さんてあんなに胸が大きいのね・・・むっ?
ぎゅう。
「いててて〜」
「まったく、どうしてそうスケベなのかしら?」
「す、すまん。つい目がいってしまったんだ」
抓って赤くなった場所をさすりながら祐一が涙目になってあたしを見つめる。
まあ祐一も男なんだから解らないでもないわよ・・・でもね、恋人の目の前でそんな事して良いと思う?
デリカシーがなさすぎるわよ、祐一!
「どうせあたしはあんなに大きく無いわよ、悪かったわね!」
「そ、そんなこと無いぞ! 香里だって十分大きいじゃないか!」
「そうね、誰かさんが毎日揉んでいる所為かしら?」
「お、おい香里!?」
「あっ!」
あ、あたしったらつい変なこと口走っちゃった!?
口に手を当てたけど・・・遅かったみたい。
強烈な視線があたしの背中に突き刺さる、それも一人や二人じゃない。
ぎこちなく振り向くとそこには夏の日差しの下、どす黒い波動みたいな物が名雪たちから溢れ出していた。
・・・怖いわ。
思わず自分の体が震えてきたから押さえようとしたら、背中からがっしりとした腕に抱きしめられた。
「祐一?」
「安心しろ、いつも側にいるって言っただろ?」
「・・・うん」
祐一に抱きしめられていたら震えも止まって、あたしはそのまま力を抜いて体を預けた。
「なんか怖がっている香里も結構可愛かったなぁ〜」
「なっ!? ・・・もうっ、祐一っ!」
「はっはっはっ〜」
つい雰囲気に流されたまま人目も憚らず大胆にも抱きしめられ、いちゃいちゃしていたのが悪いと反省したわ。
すっかり名雪たちを忘れていた事にようやく気づいたのは、それから十分も過ぎた頃だった。
「お楽しみはもう終わり?」
「うぐぅ、ボクも祐一くんに、その・・・」
「あうーっ、祐一のスケベ! 変態!」
「あの、もう少し節度を持って頂けないでしょうか?」
「そんなことされて喜んでいるお姉ちゃんなんて大嫌いですぅ!」
「はえ〜香里さんって大胆なんですね〜」
「・・・(ちゃき!)」
みんながあたしと祐一ににじり寄ってくる。
逃げ場はないかと辺りを見回したさら、さっきまでいた野次馬もいつの間にかいなくなっていた。
「み、みんな落ち着いて・・・ね?」
「香里・・・その状態じゃ何を言っても説得力ないよ?」
「えっ・・・ああっ!?」
あたしは宥めようとしたが名雪の冷たい視線と低い声に、それ以上言葉を口にできなかった。
おまけに祐一はあたしを抱きしめたまま放さなかった。
「みんな何か勘違いしてないか?」
その声に顔を動かすと、あたしの顔に自分の頬を付けて祐一がみんなを諭すように穏やかに話し出した。
「どう言う事なの、祐一?」
名雪の顔が怪訝な表情を浮かべて祐一を見つめる。
「あのな、俺と香里は恋人同士なの! だからどこでいちゃついても問題無いだろう?」
「そ、それはそうかもしれないけど・・・う〜」
「ふぅ・・・なあ名雪、みんなも聞いてくれ」
抱きしめていた腕をほどくと体を離して横に立つが、あたしの手をしっかりと握り直した。
「今回は本当なら二人きりなんだ、だけどみんなが一緒に来ている・・・これはまあいいや」
「祐一?」
俺に任せろと言わんばかりの笑顔であたしを見つめ返すとぎゅっと握っている手に力を入れた。
解った、祐一に任せるわ。あたしは黙って祐一の手を握り返して応えた。
「おれたちもみんなを気にしないようにしたのは悪いと思う、でも少しは考えてくれないかな?」
「俺も香里も今日を楽しみにしてたんだ、それがこうなってしまった・・・ちょっと残念なんだ」
祐一の言葉を聞く度に名雪たちの顔が穏やかになっていった。
「ごめん祐一、香里、ちょっとしつこかったね」
「うぐぅ、ごめんなさい祐一くん香里さん」
「あうっ、ごめんなさい祐一、香里さん」
「こちらこそ気配りが足りませんでした」
「そうですね・・・ごめんなさい祐一さん、お姉ちゃん」
「ふえっ、佐祐理もごめんなさいです祐一さん、香里さん」
「・・・すまない」
みんながあたしと祐一に頭を下げて謝った、正直あたしは驚いていた。
祐一がこんなにもあたしの事を考えていたなんて・・・。
そうよね、これが祐一の良い所でもあり・・・悪い所でもあるのよね。
「うん、だから今日はしきり直しと言うことでみんなと遊ぼうと思うんだけど・・・いいかな?」
「「「「「「「了承!」」」」」」」
「と、言うことになったけどいいよな香里?」
「ふふっ、今日の所は祐一に免じて許してあげるわ」
「よし! じゃあ思いっきり遊ぶぞーっ!!」
「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」
「あらあら、みんな楽しそうですね?」
「あ、秋子さん。実は・・・!?」
祐一の言葉が途中で止まったのでなんだろうと思ってよく見たら・・・あ、秋子さん!?
名雪たちも言葉を失ってあんぐりと口を開けて秋子さんを凝視していた。
そこに立っていた秋子さんの水着姿は・・・そう、敢えて言うとしたら。
「私脱いでも凄いんです♪」
まさにそれだったわ。
本当にそのプロポーションの凄い事と言ったら、同性のあたしでも嫉妬しちゃうぐらい綺麗だった。
しかも肩ひもがない白いビキニで布地がちょっと少ない、大胆な水着姿を惜しげもなく披露していた。
これで高校生の娘がいると誰が信じるだろうか?
ふと、辺りを見回すといつの間にか消えていた野次馬も戻ってきたかと思ったら、あっという間に秋子さんの周り
に集中して最後には人垣で見えなくなってしまった。
「ま、負けたわ・・・」
あたしは思わず砂浜に膝をついて肩を落とした。
「すいません。あ、祐一さんちょっと付き合って頂けますか?」
「えっ?」
人垣の中から出てきた秋子さんは、祐一の返事を聞く前に腕をつかむとそのまま抱きしめて歩き出してしまった。
「あ、秋子さん!?」
「ふふふ、今日はみんなで遊ぶんですよね? それじゃ私にも付き合ってください♪」
「そ、それはそうですけど・・・」
「だめ・・・ですか?」
小首を傾げて祐一の顔をのぞき込むように微笑んで見つめる秋子さんに、祐一の鼻の下が伸びた。
「い、いや〜そんなこと無いですよ秋子さん! 大歓迎です♪」
「ありがとう、祐一さん」
ちゅ。
そう言って秋子さんは祐一に顔を近づけるとそのままほっぺたにキスをした。
「「「「「「あーっ!?」」」」」」」
「ええっ!?」
「ふふっ、ちょっとしたお礼ですよ♪」
「「「「「「「祐一(くん、さん)・・・」」」」」」」
あ〜あ、せっかく機嫌が良くなったのに・・・まあ自業自得かもしれないわね。
「み、みんな落ち着け! な? おい、ちょっと・・・」
脱兎のごとく逃げ出した祐一の後を名雪たちはおろか野次馬の何人かも一緒になって追いかけ回し始めちゃった。
残された秋子さんと私は顔を見合わせると、どちらとも無く笑い出した。
「不用意にみんなを煽らないで欲しいんですけど・・・秋子さん?」
「ごめんなさい、私もちょっとだけ浮かれていたようです」
ひとしきり笑ったあと、ちょっとだけ顔を引き締めて秋子さんを見つめながら告げた。
「キスはほっぺたまでなら許します」
「了承」
「か、香里〜、見てないで助けてくれ〜!」
「みんなと遊ぶんでしょう? がんばってね♪」
終わり。
どうも、じろ〜です。
HPを公開してもう一年が過ぎました。
その間いろんな事が有りましたが、どうにかこうにかの一年だったような気がします。
いつまで続けられるか解りませんが、自分の小さな力が有る限りがんばってみようと思っています。
少しは文章力も付いたかな? と思うときも有りますがまだまだ未熟者です。
遅い足取りですが一歩一歩前に進んでがんばりたいと思います。
応援してくれるすべての方に感謝を込めて、このSSを送ります。
これからもどうぞよろしく!
2000/7/5 初版