Pia・キャロットへようこそ!! 2 After Story 



  

 結婚しよう! 

 

 

 Presented by じろ〜

 




 「う〜ん」

 目を覚ました耕治は欠伸をした後、隣に寝ている涼子の顔を見る。

 耕治の胸にすり付くように幸せな笑顔を浮かべて寝ている。

 まだ時間は充分にあるので、耕治はしばらくその寝顔に見つめていた。

 愛しくて愛しくて大事な人の顔を・・・。

 「・・・ううん」

 耕治が起きて十五分ぐらいしてから小さな欠伸をして涼子は目を覚ました。

 「おはよう、涼子さん」

 「おはよう、耕治君」

 耕治だけに見せる取って置きの笑顔で挨拶をする。

 涼子の顔に手を添えて、耕治はいつものようにおはようのキスをする。



 

  

 あの夏から二年の月日が流れた。

 高校卒業と同時に耕治はキャロットに就職した。

 店長も葵も大喜びしたが、一番喜んだのは涼子だった。

 家を出て涼子の隣に住むことになったのだが、今では涼子の部屋に居る方が多かったが、

 とにかく二人はあの夏から幸せの毎日だった。

 「ねえ耕治君、いつ起きたの?」

 「えっと・・・十五分ぐらい前かなぁ」

 「起こしてくれてもよかったのに・・・」

 「涼子さんの寝顔があんまりにも可愛いから見とれちゃって・・・」

 「も、もう耕治君たらっ!」

 赤くなって顔半分をシーツに隠す涼子を見て、やっぱり可愛いと思う耕治だった。



 

 

 着替えてからキッチンに立つと、耕治はキャロットで鍛えられた腕前で朝食を手際よく作り始めた。

 涼子がいつも夜遅くまで仕事をしているから朝くらいはゆっくりさせてあげたいと、耕治が自分から

 朝食は自分が作ると頑として譲らなかった結果である。

 でも、なぜか三人前がテーブルの上に用意されている。

 

 ぴんぽ〜ん。

 

 「おっはよう涼子! 耕治君!」

 そうそう、忘れてはいけない人がここにいるのでした。

 いわずとしれた宴会大魔王こと”皆瀬葵”その人だ。

 「おはようございます葵さん」

 部屋に入ってくるなりテーブルの上を見てニンマリとする葵。

 「いつも悪いわね〜ごちそうになって!」

 ちっとも悪びれてない葵に冷たい視線を浴びせる涼子。

 「そう思うのなら少しは遠慮しなさいよね・・・」

 「ああ〜ん、怒っちゃいや〜ん!」

 涼子に抱きついて甘える葵。

 じゃれ合っている二人を見て耕治は姉妹みたいだなと感じていた。

 「二人とも早く食べましょう、遅刻しますよ」
 




 

 「いらっしゃいませ、PIA・キャロットへようこそ!」

 今日もPIA・キャロットはお客様で満員御礼で賑わっていた。

 現在の二号店のウエイトレスは葵を中心にあずさ、美奈、つかさ、早苗、それに

 店長の妹の留美である。

 ちなみに神楽坂潤は念願叶って役者の道を進んでいて、今じゃ舞台で大人気の役者になっていたが、

 たまにだが店の方にお忍びで顔を出したりもする。

 つかさと留美は耕治がお気に入りのようでそのまま二号店に居着いてしまった。

 早苗はダイエット(?)に成功してウエィトレスと裏方の両方をこなしている。

 美奈は相変わらず耕治をお兄さんとしてなついている。

 あずさは耕治との中もとりあえず落ち着いて、今では悪友みたいな関係になっている。

 とにかくみんなのおかげでキャロットは繁盛で、店長の祐介は満足だった。



 

 

 「それじゃ先に上がります」

 耕治は家に用事があるとかで今日は涼子より先に上がった。

 もちろん帰り際に迎えに来ますと涼子に耳打ちをした。

 それを聞いて涼子も仕事に戻るといつものように働いた。

 「そうだ・・・」

 涼子は仕入れのことで料理長に確認しようと思い、リストを持って調理場に来た。

 「料理長、これなんだけど・・・」

 そういって鍋をかき回している料理長の側に近づいた時、シチューの匂いを嗅いで涼子は突然気分が悪くなった。

 

 「ぐっ・・・」

 

 そして口元を押さえて急いで化粧室に飛び込んだ。

 涼子は少し吐いた後、鏡を見ながら考えていた。

 「もしかして・・・」

 思い当たることはあった・・・。

 「涼子大丈夫?」

 料理長に聞いた葵が後ろから声をかけた。

 「ええ、大丈夫よ・・・」

 葵はその様子見て頭に浮かんだ事を口にした。

 「ひょっとして涼子・・・」

 葵の鋭い指摘に涼子は赤くなって小さく頷いた。

 「たぶん・・・」

 「耕治君は知ってるの?」

 「私も今気づいたからばかりだから・・・」

 そう言ったときの涼子の顔色は少し元気がなかった・・・。

 葵は元気づけるように涼子の肩を抱いた。

 「ちゃんと耕治君に話さないとね」

 「うん・・・」

 少しだけ笑顔になって涼子は頷いた。

 



 仕事も終わり約束通り耕治が迎えに来たので、涼子は一緒に帰ることにした。

 葵はなぜか先に帰ってしまったのを耕治が不思議がっていた。

 いつもなら耕治達をからかいながらビールを買って帰るからだ。

 久しぶりに二人で歩いているけど、どこか緊張しながら言葉少なく歩いていた。

 そして小さな橋の上で耕治が不意に立ち止まった。

 気づいた涼子もその場に止まった。

 耕治は涼子の手をそっと握ると真剣な目で涼子の目を見つめながら話し始めた。

 「涼子さん、ちょっと話があるんだけど・・・」

 「何? 耕治君」

 耕治は高鳴る鼓動を落ち着けるようにゆっくりと話し出した。

 「まだ半人前ですけど、がんばって一人前になります」

 「そして涼子さんとこれからずっと一緒にいたいから・・・」

 耕治は軽く深呼吸してから真剣な目で再び涼子の目を見つめながらいった。

 

 「僕と結婚してください!」

 

 そう言って涼子の左手の薬指に銀色に光る指輪をはめた。

 一瞬呆然とした涼子だったけれど、言われたことに気がついてさらに指で輝いている指輪を見た

 その時、大きく開いた瞳からは静かに涙がこぼれ落ちた。

 「嬉しい・・・」

 そして耕治に抱きつくとその胸に顔を埋めて泣き始めた・・・。

 



 しばらく涼子の背中を耕治は優しく撫でて落ち着かせていた。

 泣きやんだ涼子はそのままで耕治に話した。

 「・・・耕治君、私からも話があるの」

 「何ですか?」

 涼子は赤くなりながらも耕治の顔を見つめながら言った。

 「あのね・・・私・・・」

 そこまで言って無意識の内にお腹に手をやる涼子を見て耕治はピンときた。

 「もしかして・・・僕の?」


 こくん。


 涼子はゆっくりとだけど小さく頷いた。

 耕治は涼子をもう一度優しく抱きしめると耳元で呟いた。

 「涼子さんは女の子と男の子どっちが良いですか?」

 それを聞いて又涼子は泣き始めてしまった。

 「ありがとう耕治君・・・」

 夜空に浮かんだ満月が二人を祝福するように光で照らしていた。

 




 寄り添うように二人が帰ってくると、部屋の中に葵さんがビール片手に待っていた。

 「おっかえり〜涼子、耕治君!!」

 「葵さん?」

 「その顔だと上手くいったみたいね」

 「うん」

 頬を染めて涼子は頷いた。

 そして目敏く涼子の左手に光る指輪に気がついた。

 「もしかして耕治君にプロポーズされたの!?」

 「うん」

 涼子は耳まで赤くして俯むきながら呟いた。

 「う〜んもう飲まずにいられないわ! 今日は朝まで飲むわよ〜!」

 そう言って耕治の頭を抱えるとそのまま部屋に連れ込んだ。

 「ちょっと葵さん・・・」

 「涼子の分まで飲んでね?」

 「とほほ・・・」

 「耕治君がんばって・・・」

 葵のお祝いと称した攻撃に耕治が撃沈されたのは言うまでもなかった。

 



 酔いつぶれた耕治と葵に涼子は毛布を掛けてあげる。

 「涼子さん・・・」

 涼子が寝顔を見ていると耕治が寝言を言った。

 「耕治君、大好きよ・・・」

 そう言って耕治の寝顔にキスをした・・・。

 その時、耕治の腕が涼子を引き寄せる形になってそのまま抱きしめられてしまった。

 「むにゃ・・・涼子さん・・好きだ・・・」

 耳元で言われた涼子はキスしたときより顔を赤くした。

 でもすぐに幸せな表情になると、そのまま耕治に抱きしめられたまま眠った。

 耕治の腕の中で涼子は素敵な夢を見ていた・・・。

 いや、それは夢ではなくすぐに現実となることだった・・・。

 ウエディングドレスを着た涼子の隣にはタキシードを着た耕治が立っている。

 チャペルの音、ライスシャワー、紙吹雪、そしてみんなの声・・・。

 涼子は幸せでいっぱいだった。

 

 

 おわり。
 


 ぴあきゃろSS第二弾です。

 涼子さんと耕治の子供って女の子って気がするな〜。

 もっと上手く書きたいのですが思いついたまま書くとこうなってしまった。

 連載予定のSSの方はがんばって書かないと大変です、とほほ・・・。

 ホームページ正式公開まで日がないしほかにもやることが山のようにあるし・・・。

 次は葵さんか潤のSSを書きたいな〜。

 それではまた。

 じろ〜でした。

 1999/9/5 加筆修正


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