祐一に大事な娘ができた……
 七年前と同じ子…

 その子との記憶は戻ったみたいだった…

 八年間目を覚まさなかった少女の意識が今朝戻ったそうよ…
 お母さんがそう言った時、祐一はすぐに飛び出していったから…

 あの子…
 祐一が悲しい別れをし…
 そのことで記憶を閉ざし…
 本来ならもう祐一も私も会うはずの無い…
 時々うちにきていた妹のような不思議な子…
 商店街で会ったかわいい元気な子…

 あゆちゃんの意識が戻った…
 それはうれしいことであり…
 同時に祐一が手の届かない、遠くに行ってしまうという事…

 私の思いが祐一に届くことはもう無い…

 私との記憶が戻ることも…

 あのことはもう…

 ……………
 ………
 …

 私はこれから…


________________________________________

                  

                      これから…
                                             

                                              written by がいあ

 

 「ゆういちー、どこにいるのー?」
 日曜、いつもより少し遅めの朝食をとった私は祐一を探していた。
 特に用事は無かったけど、起きたときから姿が見えなかったから…

 「祐一さんなら、さっきあゆちゃんと出かけたわよ」

 お母さんがキッチンからいつもの様にやさしく言った。

 『……そっか…デートだったんだ』

 そう思うとやっぱり少し悲しくなる…
 そう…あの二人は今とても幸せなのだ…
 私なんかはもう入っていけないくらい…
 7年間のあゆちゃんの思いが、祐一の思いが奇跡を起こし
 二人は今幸せで
 私も喜ぶべきはずなのに…

 「私、部屋にいるね」
 聞こえるか聞こえないかの声で言い、私は部屋に戻りまた布団をかぶった

 初めて祐一と会ったこと
 おつかいに行って
 いっしょに寝て
 遊んだこと

 悲しい別れ

 再会して七年経っても私の名を覚えていてくれたこと
 いっしょに学校に行って
 帰りに商店街でイチゴサンデーを食べた時のこと

 …七年経ってもまだ好きだったこと

 いろいろなことが浮かぶ

 ふぅっ…うぅっ…ぇぐっ…
 ゆういち
 私のいとこで…
 悲しいときはいつも側にいてくれる…
 慰めてくれると…思ってた…
 なのに…



 「名雪…」

 お母さんだ…

 「何? どうしたの?」

 涙をぬぐい布団から顔も出さずに応える。

 「祐一さんのこと…やっぱり」
 「っ……お母さんっ!!」

 遮る自分の声のトーンが変わるのがはっきりわかった…
 お母さんは悪くない…でもっ
 …とその時

 ふわっ

 「あっ」
 気づくとお母さんは私を抱いていた…まるで子供を抱くかのように…

 「これからよ…」
 「名雪にはまだまだこれからがあるわ…」
 お母さんはやさしく、でもいつもより真剣な顔で
 「これから…」
 涙が止まらなかった…

 「ふぁいと、よ」
 お母さんは私をぎゅっと抱いて

 「これから…」と…
 何度も何度も私をなでながら
 そう繰り返した…
 ………

 私の想いが祐一に届くことはもうない
 それは七年前と同じで
 私にとって最もつらい事実

 けど今度は祐一がいなくなってしったわけじゃない
 確かに私の好きだった…私に振り向いてくれるかもしれない祐一はもういない
 けど、私のいとこである祐一は今もちゃんといる…


 今日はこのまま泣こう…

 ばいばい、私の初恋

 そしてこれからの私…

 ふぁいと、だよっ!!



                          

                         ―了―




 どーも、がいあです。
 まず誘ってくださったじろ〜さん、ひゃ〜さんに感謝。
 そして、このような拙いSSを受け取り、掲載までしてくださるじろ〜さんに感謝です。

 このSSに関する苦情・感想はこちらまでmailto:gaea-417@juno.dti.ne.jp
          


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