―LAW?―CHAOS?―

二章「Raqia―Tophet―」

2001年2月19日
作者:Meta


 「神」は在るか。
―「在る」。言い切れる。当然の事だ。
「神」が「人」を、「世界」を創ったのか?「人」が「神」を造ったのか?
 考えるまでも無い。「神」こそが絶対、「神」こそが創造主だ。下らない事を考えるのは、下らない虚妄は「罪」でしかない。
 ならば、救いは―?
 救いは、神が与える物か。
 救われた者? 「在る」のか?
 考えろ。―答えが出ないのは、判っている。

 「人」は「人」だ。それ以外の何者でもなく、それ以上でも、それ以下でもない。―違う者は、どうなる。

 「傲慢」だ。―「正義」だ。
 「愛」だ。―「欲情」の事か。

―「答」―




 黒い闇が広がっていた。
 無限とも思える、日の光一つ射さぬ、風の流れる音さえ流れぬ、深い闇。自分の体を見るが、そこもまた闇、夢を見ているかのような、モニターからただ闇を見ているような感覚。身を横たえているのか、立っているのか、それすら判らない。
 記憶を辿ろうとするが、無理だった。
 巨大な光。全てを飲み込む超光。
 意識さえ飲み込まれていた。
―何を考えていた? 俺は。「俺」……「俺」?
―声が、聞こえた。
―声?
―「正義を守れ」「何が神だ」「悪魔だよ、お前は」「天使として、俺は」……ああああああああ! 何だ!? 誰だ!? この声は! 声、声、声……どれもが違う声であり、同じ声だった。
―「天使」「悪魔」。……ユダヤ教、キリスト教……何だ!? 何を考えている、俺は!? そうさ、知っている。別に不思議は無い。天使も悪魔も、メディアにだって溢れている。生活している上で必ず見る事になる。おかしい訳じゃない。
 闇が明けて来た。光が射す。
……立ち上がらないと。

 目を開ける。薄汚れた路地裏だった。
 何故ここに居るのか、何をしているのか、それすら判らなかったし、どうでも良かった。
 若い男だった。
 まるでテレビの登場人物を見ている気分だった。自分? 自分とは、何だ? ―どうでも良いかもしれない。酷く疲れていた。眠りたい。……「駄目だ」。……「声」は聞こえなかったが、擦り込まれるようにそう「思っていた」。
 服は汚れ、所々破れ、煤けていた。焼け焦げたようなトレーナー、裾の半ばまで裂けたジーンズ。
 もう「声」は聞こえなかった。闇でもなく、悲しみと虚しさだけを内包した静寂が在る訳でもない。雑多で猥雑な人の声と、時折それを掻き混ぜる車の排気音が取って代わっていた。ビルに凭れ掛かり、刷り上るように立ち上がる。
 そっと触れた頬と手には、乾いた血がこびり付いていた。
 フラ付く足を抑え、姿勢を安定させる。……嫌な臭いのする所。漠然とそう思った。
「よーお、兄ちゃん」
 男の目の前に立っていたのは、年の頃なら10代の少年達だった。数の上では3人。この界隈を根城にしている、使い古した言葉で言うなら「チーマー」だった。数の多さを強さと錯覚し―今は3人だが、普段はもっと多いのか―、他者と自分を区別、自己主張する為のアクセサリーで身を飾り、周囲から抜け出そうとする為に、暴力を翳す事で優越感に浸る。そんな雰囲気が滲み出ていた。親に擁護されている身で、まるで自分を中心に世界が回っているかのように振舞う。―あまりに、愚かで、馬鹿馬鹿しい。
 壁に凭れたままの男を見据え、ニヤニヤと男を見ている。ワンサイズ大きなジャンパーを着た少年が、笑いながら言う。
「何? にーちゃん、服、ボロボロ? ケンカでもしたのー?」
 手馴れている。人を虐げる事に慣れた口調だった。
―頭が痛い。
「金持ってなさそうだけどさ、一応、平和的に、金、ちょーだい?」
「持ってる分だけでいーからさ、暴力反対だろ?」
 毛糸の帽子と、顎鬚が笑う。
 嫌な口調だった。何故かは判らないが、酷く苛立つ。
―これが「人間」か? ……俺が戦っていたのは……「戦った」? 誰と? 判らなかったが、だが、酷く悲しい目をした男の姿が思い浮かんだ。―「人間」。違う、こんな下衆じゃない。……無いのか? 「信念」は? 「正義」……何だ?
―人間。
―俺も、か。
 痛い。頭が。
「―が」
「あ? 何? 頭オカシイの?」
 男が口を開いた。
 威圧するかのように、ジャンパーが男の顔を覗く。
―何だ? 俺は? 何を言っている?
 男を、良い「カモ」だと判断したらしい。
 ジャンパーが、男の腹を蹴り上げようと右足を振り上げ、だが、ジャンパーは悲鳴と共に地面に転がっていた。
 怒号を発し、髭が男に殴り掛かる。ジャンパーが何故転がっているのか、理由は判らなかったが、男が「タダのカモ」ではない事を理解したらしい。手に嵌められた、ギラ付くメリケンサックが、男の顔を狙う。
 人間であるなら、本人のキャパシティ以上の攻撃を受ければ、壊れる。メリケンサックであれば、優に「通常」の人間、駆け出しの格闘家だろうと、部位によっては骨を折るのは、容易い。格闘家と呼ばれる人種であっても、ダメージを与える事は可能だ。顔に当たれば、顎の骨、頬骨などは簡単に折れる。
 だが、認識していないのか、男はそれを受ける素振りも、避けようとする姿勢も見せない。ことさら速い突きではないが、ケンカ馴れしているようではある。
―人間。
 虚ろな瞳を向けたまま、男の体が揺らぎ、髭の体は完全に横に外され、のめっていた。
―人間人間人間人間―
 声が、聞こえた。―またか!?
―『殺しちまえよ』―
―殺す? 俺が? ……誰を?
 男の反応は早かった。手近に居た髭の頭を強引に掴み、フラ付いていた足元で、そのまま鷲掴みに持ち上げる。凄まじい腕力と握力だ。
声は激しくなっていた。
―武器を、持ってただろう?
―あれは、オモチャか?
―武器は、相手を斃す為に有る。
―斃す。誰をだ? 俺を?
―ああ、そうか。
「ひっ……」
 か細くうめく髭を横に振り投げ、壁に激突させる。
 瞬く間に二人が意識を失い、ようやく、残った帽子は、相手が「狙ってはいけない」ものだと言う事に気付いた。
 背を向け、一度だけ二人を気遣う素振りを見せた帽子は、完全に逃げる前に、首元を鷲掴みにされていた。
「ま、ままま待ってくれ! お、俺は、まだ、あ、あああああんたに何もしてねえ!」
 力が込められ、帽子の足が地面から離れる。
「―っぅぐぐぐぐぐ、ぐええあっ!?」
 正面から掴まれている訳ではないが、男の指先は帽子の首を飛ばさんばかりに喉に食い込み、いくら体を揺すっても、まるで揺らぐ気配すら見せない。口から泡を吹き、帽子の意識が飛ばされて行く。
 急速に、流れる滝の如く、男の記憶がデタラメにフィードバックされる。
『敵』
―俺を、狙った。
―殺そうとした?
―武器を持っていた。
―敵だ。
―敵―敵敵敵敵敵敵敵敵―
 殺さないと。
―何を言っている!? 俺は!?
 意識が遠のくような、しかし視界は確かに「そこ」にある感覚。―あの闇の中と「同じ」!? 俺は、何だ!?
 考えても判らない、意識さえ遠のき、視界が暗転する。
 だが、男は「そこ」に居た。
「―クソが」
―ぼとり―
 帽子の首が落ち、次いで、体が地面に崩れ落ちる。吹き出した鮮血を袖口まで浴び、男が、掲げていた右腕を降ろす。
 意識を取り戻し、壁に張り付いていたジャンパーが、目の前で起こった惨劇に目を見開き、歯を鳴らす。
 男が、路地裏に、僅かながらに差し込む光に目を上げた。良い天気だ。
 右手を、虚ろな瞳の前に掲げる。
 俯き、笑う。
「……なあ」
 誰に向けた言葉か、ジャンパーは怯えた目で男を見ていた。髭の意識は、まだ戻っていないらしい。
「「天使」って、居ると思うか?」
―そうさ。
 怯えたままのジャンパーに重ねる言葉は無く、男は笑う。
 哄笑が上がる。血に濡れたコンクリに、深い路地に、反響する笑い声が山彦のように響く。笑い笑い笑い笑い笑い―
 右手を、「塊」と化した帽子の側のジャンパーと髭に差し向け、男は笑みを収めた。
「クソが」
―俺は「俺」だ。




―兄貴。
―兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴ああああああああ! 兄貴、どこに居るんだ!?
―誰が正しいか? 判る訳が無い。そんな物は。それで「良い」んだ! 兄貴が「正しい」。だから、他はどうでも「良い」!
―俺が、誰より兄貴を判っている。―判った「気になっていた」だけじゃないか!
―兄貴の事を誰より知っている。―「知っていたと思っていた」だけじゃないか!
―兄貴の事は、俺が守る―「守られただけ」じゃないか!
―兄貴に守られ、その結果……どうなった!? 俺の所為だ……! あああああああああああああああ!

 「悪魔の子」「化け物」。―そう、呼ばれた。
―身内は無い。何故か? 捧げたからだ。「星に」。
 誰がだ? ああ、俺か。……いつからだ?エッジ。俺の名だ。……いつからだ。そう、呼ばれるように、名乗るようになったのは。
―「聞えた」。いつからだったか。そんな物を憶えてはいなかったが、誰が話しているのか、どこから聞えているのか、頭に、「直接」、「声」が聞こえるようになった。12の時だった。両親に話し、笑われ、それで終わりはしなかった。昼夜を問わず繰り返される「声」に、発狂寸前まで狂った。暴れ、喚き、家中を滅茶苦茶にし、取り押さえられ、精神病院に連れて行かれた。
 3ヶ月間、檻のような物の中に閉じ込められた。
―何をした。
―「声が聞えたんだ」。
―悪くない。聞えたから、誰も「助けてくれなかったから」。
 檻の中でも「声」は聞えた。「声」。不定期で、何を言っているのか判らない。
 「燃やせ」「殺せ」「死ね」「好きだ」「愛しているよ」……ああああああああああああああ!
 明確な「声」が聞えた時もあった。
『お前は愛されているのか?』
 不躾に、いきなり聞えた。声に出して、返す。
―誰に。
『両親、友人、世界にある、誰かに』
―判らない。どうでもいい。止めてくれ。
 止めてくれ。聞きたくない。
『愛しているのなら、何故、こんな場所にいる』
―黙れ。
「声」が笑う。笑う、笑う、笑う笑う笑う笑う……檻の中に響き、反響し、頭の中で荒れ狂う。
―黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ……消えろ。
 お前が、色々な事を言うから、俺はこんな所にいる。お前が悪いんじゃないか!
『「違う」。「真実」だ。これは』
―何がだ。
『お前は愛されていない。誰からも。社会的にも、道徳的にも、お前は「悪」でしか無い』
―何だ。だから何だ。俺にどうしろというんだ?俺が何をしたというんだ?
『暴れただろう? こんな場所に居るだろう? 悪だ。お前が「居る」事で、両親も奇異の視線に晒される羽目になった』
―それは……。
 言い返せなかった。真実だ。だが。

―誰も、お前を愛していない。

 違う……誰かが。―「両親?」「判るかよ、そんな物」

―ダレモお前ヲ愛シてイなイ。

 誰か……。―「誰かが、愛してくれる?」「そうさ」

―ダレモ、オマエヲアイシテイナイ。

 誰も……。―「妄想だ」「違う」

―誰も、俺を愛さない……。

 愛されて、いない……? ―「事実だ」「……違う」

―誰も、俺を愛さない。

 誰か、愛してくれ。

―誰も俺を愛さない。

 愛してくれ……何故?

―ダレモ、俺ヲ愛サなイ。

 愛……何だ?

―ダレモオレヲアイサナイ。

 だから……何だ。

 愛、愛愛愛愛愛愛愛アイアイアイ……愛……何だ? 黙れよ……黙れ。
―悪くない。誰も、助けてくれなかった。
 声は続けられた。明確な言葉が返って来る事は少なくなった。夢は、訳の分からない夢しか見なくなった。
 鳥の卵が孵る。孵る寸前、木から落ち、拉げる。
 笑うピエロが、笑う人間を蹴り上げ、どこからか取り出したピストルで笑いながら撃つ。マズルフラッシュと共に体が変形し、原形を止めない人間も、また、笑う。
 恨みでもあるのか。俺に。止めろ! もう、止めてくれ!
『受け入れろ』
―何をだ。
『自分を。でなければ、お前は卵であり、崩れた塊だ』

―受け入れろ。自分を。愛されていない、自分を。

 自分を……? どういう事だ。答えろ!
 シーツを跳ね上げ、起きる。油の浮いた汗を拭い、腕を見た。
 人間かよ。これが。
 ははは。これが、俺か。あはははははははははははははははははははは。……あははははははははははははははははは!
 黒く、右腕は左腕の大きさを3倍していた。爪は映画に出てくるかのようなコンバットナイフであり、触れれば斬れる刃だった。
 右腕を無造作に持ち上げ、ベットの淵に振る。異音と共に、ベッドの上部はパイプごと折り砕かれていた。
 涙が流れていたが、笑っていた。どうでも良い。……いや、夢かも知れない。これ、その物が。目が覚めたら家のベッドの上で……そうでなくても、きっと、間違い無く、病院のベッドの上で目を覚ます。
 眠り、起きる。
 普通の腕だった。
 腕。普通だ。普通の腕だ。……夢!? ……ははは。そうさ。
 俺は普通だ。そうだ。普通だ。ならば、こんな所に居るのは「おかしい」じゃないか。
 食事の配給、様子を見に来る医者、全てに言った。
「普通だ。ここから、出せ」
 ああ、また言っている。これは仕事だ。……「判る」そう、考えている。……何だよ。出せよ。俺が何をしたんだよ。
―みしり―
 棒状のスナック菓子でも握ったようだった。手が、鉄格子に「めり込んで」いた。
―何だ!?
 普通のまま、普通の「手」だ。……どういう事だ!?
 慌てて引き抜いた腕が、鉄格子を折り取っていた。金属音を床に撒き散らし、転がる格子に視線を落とす気にはなれなかった。
 違う……何だよ、これ。
「……は」
 声が、漏れていた。
「ヒャッ……」
 笑っていた。
「ヒャッハ……」
 笑う。
「ヒャッ……ハ……ヒャアッハハハハハハハハハハ!」
 徐々に鉄色に変色し、爪を刃へと変質、硬化し、サイズを拡大して行く手を抑える事は出来なかった。涙は出なかった。―笑えた。
 人間。……ああ、人間さ。そうだろ?人間の腕は、はははは……これか?
「どうした!?」
 異変を聞き付けたか、あるいは、どこかに仕掛けた、「監視」する為の、まるで「犯罪者」を見るような「監視カメラ」があるのか、医者の数人が、警備員を含めて駆け寄って来た。
―そうさ。……そうさそうさそうさそうさそうさそうさ。お前等だ。お前等が俺をここに入れたんだ。閉じ込めたんだ。「こんなふうに」したんだ!
「な、何が、うわっ」
 切り取られ、抉り取られた鉄格子に驚き、医者達は、そこから「這い出して来た」「物」に、更に驚いていた。
「……ヒャ……ッ……ハ、ヒャッハア! 死ね……死ね死ね死ね死ね……死ねよ、消えろよ、壊れちまえよ、俺みたいに、お前等、全員!」
 少年とは思えない声だった。低く、暗い物を奥に潜ませた声。とても、若干12、3の少年が発する声ではない。バスの奏者より、尚、低い声。
 瞬時に、掲げられた右腕に、放電する紫電が宿る。いつの間にか左手も「そう」なっていたが、そんな事はどうでもよかった。もう、どうでも。
―死ね。壊れろ。消えてしまえ。散れ、砕けて、壊れて、消えろ。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね……! 死ねよ!
 掲げた右手が輝く。
 望みは叶った。

 服は着替えていた。生憎、着せられる服は白衣のような服だったが、来るまでに運良く病院の車が来た。運転手が乗っていたので、丁度「良かった」。どうせ、病院に行っても、何も「無い」のだ。「問題」無い筈だ。あったとしても、構う物か。どうせ、「病院」の関係者だ。
 「塊」だけ捨てて、ジャンパーとジーンズを貰った。今は冬だ。寒いのは嫌だった。
 家の前に来た。「ただいま」と言った顔は、笑っていただろうか。そんな事を考えていたら、笑えた。
「どうしてここに!?」
 父親「だった」。―「ここに!?」驚くなよ。いつまでも「あそこ」に置いておく気だったのか?
 右腕を薙ぐ。驚く顔が最後に映ったが、すぐに「無くなった」頭と、「綺麗」に散った赤に、どうでも良いと感じた。
「何をするの!?」
 母親「だった」。―「何」? 「決まって」いる。固めた拳を振った。抉られ、腕に巻き込まれ、四方に「散って」いた。何かを言おうとしたようだが、どうでも良かった。口に入って来た血は、錆のような味がした。不味かった。色は綺麗な赤に「満足」出来た。
―凄い力だ。何でも出来る、誰でも消せる。蒼い雷のような物は綺麗で、物を燃やす事も出来た。「考え方」次第だ。最初の病院では、雷を受けた医者は、訳の判らない事を言いながら床をのた打ち回って、喉を掻き毟っていた。目を抉る警備員や、髪の毛を千切る、他の医者も居た。「面白かった」のでしばらく見ていたが、時間が無いと「感じ」て、頭を踏み潰して殺しておいた。静かになって、「嬉しかった」。
 外に出た後だった。「聞えた」のは。
 明確な声ではない。だが、その通りに体を動かした。
 天を裂き、夜陰を焦がす雷光が、病院と同じく、家を瞬時に瓦礫と炭の山に変えていた。
 受け入れた。―受け入れよう。……なあ、名前は?
―ムルムル。

 18になっていた。「力」は素晴らしい。偉大だ。普段はヤクザの用心棒をしていた。簡単な殺しを請け負う事もあった。法治国家の日本にあって、この「力」は「この」仕事をする上で、証拠も残らないというメリットがある。重宝出来た。「仕事」を受ければ、何の証拠も残す事無く、消す。
 簡単だ。簡単で、楽で。つまらない訳ではない。その際の「赤」だけは、何度見ても飽きなかった。「赤」を見る為だけに、銃やナイフを使う事も多かった。特に、刃物は良い。射し、抉り、切り開く。ペイントするのは楽しいが、証拠は残してしまう。だが、楽しい。そう止められる物ではない。
 抵抗しようとする者は良い。良く「吠え」、良く「無く」。―「歯応え」のある者など、居る訳も無いが。
 喧嘩も、した。
 だが、相手が死なないように、だ。殺すのは、「楽しむ」時と、「仕事」だけだ。半死半生にするのも、また、楽しい。
 横っ面をフックで振り抜く。相手の体重に合わせて撃った。思い切り殴れば、体重が300キロあり、幾ら首を鍛えたレスラーだろうが、一撃で首が吹き飛ぶ。
 口の中を切った学生が、泣きながら許しを乞っていた。―仕掛けて来たくせに。
 街中を歩いていて、肩が当たった。金髪で、息が臭い。胸倉を掴んで来たので腹が立ったが、滑稽で笑いそうになった。
 連れて来られた場所は空き地だった。アーケードの中にあり、入って来る人間も、まず、居ない。特にこの真昼は。空は快晴、良い天気だ。
 倒れた学生の口の中にコンバットブーツの踵を突っ込み、抉る。一撃で全て折れた歯が飛び散り、靴を濡らした。
 泣きながら転げ回っていた。うるさいし、面倒だったので、腹に軽く数発蹴りを入れたら、大人しくなった。気絶したのかもしれないが、内臓破裂位は起こしたかも知れない。どうでも良いが。そこまで考え、ふと、思った。重大な事だ。
―しまった。
 腹が減った。血の臭いが鼻に付いていたが、とりあえずは腹を満たす事が先決だ。クリーニングに行ったり、家に帰ったりすれば、これ以上に腹が減ってしまう。駄目じゃないか。そんな事。
 何か良い所があっただろうか。アーケードの中は色々な店があって楽しい。「祭り」のようじゃないか。
 ―ははっ、楽しいな。おい。そうだろ? 俺? ……「お前」、か?
「ラーメンって気分じゃないんだよな……」
―昨日、食べた。ヤクザを半殺しにして川に投げ込んだ後、腹が減ったからだった。豚骨に醤油を隠し味に入れた物だそうだ。そこの店主に聞いた。美味かった、と言ったら、笑いながら教えてくれた。「良い」人だ。何かあっても、この人を殺すのは止めてやろう。家でも作れるか、と聞いたら、スープを分けてくれた。あそこは良い店だ。また行こう。だが、問題があった。朝も食べたのだ。今はラーメンの気分じゃない。……問題だ。どうするべきだ? 気分的には、そうだ、肉だ。
 目に入って来たのはハンバーガーショップだった。新製品が出るのが速い。
―たまには、悪くない。先ほど路地裏で半殺しにし、今頃死んでいるかもしれない学生の事は、ハンバーガーの匂いの想像に完全に消されていた。

 閃光!爆音!
 マズルフラッシュが闇を裂き、ラピッドファイヤが周囲の音を消し去る。
―敵は……何人だ? 「いつもの」奴等か。確かに、強い。だが、殺せる……殺せば良い。
 コンビニで買ったビーフジャーキーを一カケラ、口に放り込む。
 いつからだったか、最近か。俺を狙うようになった奴等が居た。ヤクザの報復かと最初は思った。だが、すぐに違うと判った。動きの洗練された感覚、訓練は受けているのだろう、銃の扱いにも淀みが無い。闇流れの粗悪品しか持った事が無かったが、殺して奪った銃は最新型、使い易さが気に入っている。
 AA2000を抜き出す。ダブルアクション、オートマチック、カスタムされた物で、装弾数は20発。
 スライドを引く。セーフティは掛かっていない。マガジンを確認し、コンクリートの壁に張り付く。
―これだ。泡立つ皮膚の感覚。見せろ……お前達の力を!
 口の中に広がる干し肉の味が舌に心地好い。……ああ、見せろ。見せろ……見せろ見せろ見せろ! お前たちの力……赤を!
 走り出て来た白と黒い服の男達。胸に掛かるはロザリオ、手に握るは各々の武器。……おお! 歓喜が走る。
 SMGが牙を剥いて吠える。足元に、壁に、動きに合わせて9ミリパラベラム弾が踊る。―無駄だ。連射力で破壊力をカバーするつもりだろうが、俺―「ムルムル」の結界を破る事など、この世の誰にも出来はしない!
 足が自然に動いていた。3人の両端の男にトリガーを絞り、頭をザクロに変える。正面の男に走り込み、腰から愛用のナイフを抜き出す。
 目の前に、驚愕と恐怖に凍る司祭の顔が映る。……終わりだよ、お前は!
 血に曇るナイフはダマスカス、刃渡りは360ミリ、うねり、絡み付く複数の鉄の波紋は美しく、素晴らい。ここに絡むべき色は一つだ。ああ……見せろ! 「赤」を!
 喉に向けて振っていた。一閃した光の後を引き、赤が跳ねる。……おおお! これだ……! 素晴らしい!
 ダマスカスに絡む赤を眺め渡す。……そう、これが俺である「証」。

 雨が降り出していた。
 ツナギとコートをいきなりの土砂降りが濡らして行く。
 通りに抜けた全身は、赤と黒の斑に染められていたが、気に止める者は居なかった。傘は持っていない。染み込んだ赤は抜ける事無く、車のヘッドライトに映える。
 オートマチックは懐に突っ込んであるが、それもまた、気に止める者は、居ない。目を合わせる者すら居なかった。
 アーケードに足を向ける気にもなれなかった。―「感じた」。
―どこだ? この感覚……ああ、俺と同じ!?
 獣のように、嗅覚と聴覚、視覚をフルに活用して通りを抜ける。すぐに気付いた。死臭だ。
 白と黒の無数の「塊」。
 先の自分が骸に変えた物ではない。無数の骸を足元に、曇天を振り仰ぐ男。若い。俺と同じ……少し上か? 判らない。右手には抜き身の刃―日本刀を握っていた。
―どこか、惹かれた。
 思わず近寄り、顔を覗いていた。距離は2m。良く判った。背は自分よりは低い。だが、平均から見ては低い訳ではない。自分は189、そうそう自分より高い者は居ないが、男は175ほどにも見えた。
 顔がこちらを向く。左目の脇の傷痕が目立つ。黒い瞳が、雨を落とす髪の奥から、自分を射抜いていた。
「―何だ」
 男が言う。
「ヒャッハ……。お前「も」、か?」
 笑い、右手を掲げる。紫電が雨を蒸発させた。
「お前も、か」
 男がそのままに返す。瞳に怯えの色はない。自分の力に絶対の自信を持っている、或いは、もはや何もかもがどうでも良い、諦めている、虚無を宿しているといった瞳だ。
 見たい。
 この男の力を。
 力を。―赤を。
「……敵は同じ筈だ。何故、戦う?」
「ヒャハ……決まってんだろ? 見たいんだよ。お前の「赤」を」
 男が呟いた。「―何が決まっているんだ?」
「……意味の無い戦いは、虚しいだけだ」
―意味?戦う、意味? 何だ? 俺の戦う理由……意味。
「……どーでも良いぜ。ヒャッハ、見せろよ」
「止めろ。無意味だ」
 足が動いていた。飛び掛り、瞬時に変化させた爪に紫電を宿らせる。相手は俺と「同じ」、通常兵器は通用しない。
 爪が男に迫る。
「―!?」
 雨を切り裂き、唸りを上げるよりも速く振られた右腕は、大地を砕き抉り、無数の骸の数個を焼き、しかし男の影すらも捉えていなかった。
 馬鹿な!? 絶対の自身を持った一撃、仕留められないまでも、ダメージを与える事は確実に出来る筈の一撃だった。
「無意味だ。言った筈だ」
「ヒャッ……ハア!」
 声がしたのは自分の真横、右手側、横殴りに振った爪は男の「人間」の手に受け止められていた。
―馬鹿な!?
「止めないのか」
 静かに、雨の音に紛れてしまわないかと思わせるほど静かに、男が言う。
 強い。……戦ってみたい。戦わなければ。……教えてくれ。俺に。答えを。知っているんだろう? お前は。
「止めない……教えてくれ」
 何を、とは言わない。男が数秒の沈黙の後、口を開く。―理解、したのか。
「……名前は」
「……教えたら、教えてくれるのか?」
 言葉が口を付いて出ていた。
 男が軽く頷く。
「エッジ」
「……日本人だろう?」
―嘘じゃない。用心棒をしていた時、一度だけ、そう呼ばれた事がある。刃物の扱いが上手いから、だそうだ。
 この名前を使おうと考えたのは今だが、何故か、この男には、そう「言わなければ」ならない気がした。以前の「名」など、言う気になれない。
 男が僅かに眉を顰める。が、すぐに先までの表情に戻り、次の瞬間には手に持っていた刃を地面に突き立てていた。
―理解、してくれたのか? 素手で、という事か。
 懐を探り、オートマチックを投げ捨てる。調子が悪くなるかもしれないが、構う物か。首を傾げてでもいるかのような、そんな男の仕種が、対話しているようで楽しく、嬉しかった。―嬉しい? ……嬉しい、どれだけぶりだ?これだけ、そう「感じた」のは。
 爪を収める。鉄色の腕は瞬時に肌色を取り戻し、拳を作った。
「ヒャッハアッ!」
 武道も何も、齧った事すらない。だが、戦う事には絶対の自信があった。男との間合いを一気に詰め、左足を大きく踏み出す。振り被った右腕はそのままに、左足を軸に回し蹴りに移行した。フェイントの一撃、男は何でもないかのように、下がるだけでかわしていた。
 体勢を横に流した刹那、男は間合いを詰め、潜り込むように肩を掴み、肘を突き込んで来ていた。
 ずしり、と重い感覚、巨大なハンマーで錐でも打ち込まれたかのようだった。肩と胸の付け根に走った衝撃と痛みで、息が詰まる。
 武道を齧った事は同じく、無いのだろう。だが、エッジの肩に走った痛みは本物であり、ここ数年、感じた事の無い感覚だった。
 呼吸を無理矢理整える。一撃、放てれば良い。体重は85キロ、ウエイトに任せれば、「力」を解放しないまでも、常人を遥かに上回る腕力と運動神経は、一撃で巨岩すら粉砕する。
 右手を掴み、さらに左の肘を打ち込む。その体勢のまま、左の肘が跳ね上がっていた。
 古流柔術に似た技があるが、男がそれを知っているかどうかは判らなかった。エッジの視界が一回転し、背中からぬかるんだ水溜りに落ちる。頭の辺りに、男が突き立てた刃が見えた。刀を使われていたら? だが、素手なのだ。
―息が詰まる。肩が痛い。
「ヒャハ……強え」
 ことさら、技術で劣るとは思えない。だが、相手も「同じ」。下手をすれば、自分よりもパワーが上かもしれない。場数は、どちらが上か。
 戦い―殴り合いの、単なる戦い。どちらが、どれだけ格闘技に長けているか? 違う。そんな事では戦いの優劣は決まらない。単純な殴り合いでも、用は「相手を殺せるか」と言う事に尽きる。故に、古流武術は退廃し、今では型だけの物になっている。空手にしろ、柔道にしろ、同じだ。「格闘技」に優劣は無い。もっと言えば、「格闘技」である、それをやる必要は無い。あるのは、本人の「力」。弱ければ死ぬだけだ。奪われるだけだ。「スポーツ」として、護身として、「大会」? 力比べが楽しいか? 本来の目的は、即ち目の前の敵の「滅び」だ。そんな事をするから弱くなる。一定以上に強くなれなくなる。戦い。負ければ死ぬのだ。死にたくなければ、奪われたくなければ、戦い、殺せば良い。欲しければ、殺し、奪えば良い。
―そして、これは「戦い」だ。殴り合い、確かにそうだが、この男は、「強い」。それは即ち、自分と「同じ」であるという事だ。―楽しい。
 一瞬、男が笑ったように見えたのは気のせいか。宙に待った男が、スニーカーを突き出すように落ちて来る。狙いは首筋、一撃で仕留めるつもりか。体重はそこまで重くは無いだろう。しかし、俺と「同じ」だ。単純なパワーが凄まじい。踏まれれば、常人ならば間違い無く、頚椎を折られて、死ぬ。転がり、避け、立ち上がる。呼吸を整え、男を見据えた。
 下手に踏み込めば、先と同じ目に合う可能性は高い。次は、どんなカウンターを入れられるか、判った物ではなかった。
 強い。
 強いじゃないか。
 こんな奴が、居たのか。
 なら……こんなに強いのに、何故戦わない?
 何故、「そんな」に「悲しい」目をしている?
 理解出来ない。……させてくれ。
 男が揺らぎ、踏み込んで来ていた。打ち下ろすような掌低、何とか構えた両腕が痺れ、休む間もなく膝が跳ね上がって来た。街場の喧嘩ではけしてこんな動きをする物は居ない。行動を止める事の出来る者が居ないからだ。
 両腕が纏めて跳ね上げられる。腕が折れるかと思う蹴りだった。
 次いで、男の体が突き出された。肩からの一撃、靠にも似た、しかし、打ち、抉るような一撃。息が漏れ、呼吸が詰まる。
―くそっ……。
 強いじゃねえか。―強い強い強い強い。
 右腕を振る。殆ど無意識に出した拳が、男の左手に止められていた。
 男の体が反転する。脇に右腕を抱えられ、膝関節を上から蹴られ、倒れ込んでいた。死臭が充満するぬかるみに顔を突っ込まれ、口に雨が入って来る。右腕に激痛が走る。
―折る気だ。
 間違いない、そう思えた。自分なら、関節を極めるなどしないが、同じ状況では、まず、絶対、そうする。―みしり……ぷちり。
―マズい。
 声を上げなかったのは、殆ど意地だった。久々に―初めて味わった激痛。腕拉ぎか何かなら、腕の靭帯が伸びる方が先だが、これは殆ど変形の脇固めだ。腕の力を抜けば、瞬時に折られる。
―良いさ。
 くれてやるよ。
 ふっ、と力を抜く。一気に右腕に掛かる力が強くなり、折れる、と思えた。良い。構う物か。折り取られても、自由になった一瞬に、一撃でも報いてやる。
―「報いる」?
 いつの間にか、「報いる」。自分がこの男に「勝てない」とインプリンティングされているのが妙におかしかった。
 激痛と反撃の予感にエッジが備えたとほぼ同時に、右腕は強圧から開放されていた。
―何だ?手を抜かれた?
 男が下がる。
「まだ、やる気か?」
―手を抜かれたのか。
 おかしかった。この、自分が。
 笑う。
 強い。……あああ……一体、どこまで深い!? この男は!?
「……ヒャアッ……ハア!」
 殴り掛かる。疲れ、傷付いた体の、渾身の一撃だ。
 避けられもせず、受けられる。
 殴り飛ばされ、地面に打ち付けられかける体を、ギリギリで受け止める。目の前に現れた男の指が、二本だけ伸ばされていた。
―目潰し。
 転がって避けたが、「殺す気」だ。なら、何故、「力」を使わない?俺は。この男は。
 冷静で、容赦がない。冷徹な殺意は、間違い無く、男が「自分と同じである」と、エッジに感じさせた。受けるにも体力が削られていた。
 楽しい。
 ああああああ……! 何故だ!? この男は、何故、そんな目をしたまま、こうして立っている!? 戦っている!?
 殴る。―かわされた。擦り上がる膝が、鳩尾に突き刺さる。込み上げる嘔吐感、前にのめる所を、頭を掴まれ、押し下げられる。短い呼気と共に、―がつっ! ―延髄に鋭く重い激痛が走る。
―肘か。
 エッジは、打撃音を、耳の近くに聞いた―気がした。男の膝が突き刺さり、エッジの体がゆっくりと、前のめりに崩れる。ぐらり、と。しかし、完全に崩れる前に、男がエッジの首を鷲掴み、重心を素早く膝に落としていた。延髄に突き刺さる男の肘は、あまりに速く、鋭く、重く、激痛が走った瞬間には、エッジの体は大地に伏していた。
―楽しかった時間だが、終わりだ。
 残念だった。体が、足すら、限界に来ていた。「力」を開放せずに戦い、ここまで「楽しい」と感じたのは初めてだ。
 男が視界の端だけに映る。こちらの疲労も、もはや目に見えている事だろう。雨の中、立ち尽くす男の姿が揺らいだ。
「終わりだ」
 肩に、腹に、足に、腕に。横殴りの、正面からの、打ち下ろすかのような乱打を浴びせられた。
「く……ッはァッ!? アアアアアッ!」
 意識が途切れかける。瞬時に異形と化した腕が紫電を宿らせ、男の顔を襲う。エッジが意識してではない。自己防衛本能が、身を守る為にそうさせた事だった。エッジの意識は消えかけていた。降り頻る雨の中、時ならぬ一条の雷光が下る。紫電が雷球と化し、裏路地その物を発光させ、エッジの右手を中心に刹那の雨の全てを蒸発させた。
「……そうか」
 男が呟き、しかし、その場を一歩も動こうとはしない。
 エッジが右腕を叩き付ける。
 男がゆらりと右手を上げた。
 超光が掌を中心に収束し、エッジの紫電の拳を受け止めていた。
「ッあ!」
 青白い光と紫電が交錯し、ばちばちと白と紫の光を散らす。
「無駄だ」
 紫電を白光が打ち消し、散らし、男の手が紫電を握り潰す。それでも前に出ようとするエッジに、男が懐に潜っていた。
「寝ろ」
 エッジの腹目掛け、男の光を宿した拳が走る。
 声が聞えたのは、離れた場所か目の前か。意識が飛ばされていた。

 意識が開けた。
 目の周囲は血で汚れていたが、大丈夫だ。見える。眼球は潰されていなかったし、目に血は入っていなかった。
 黒い雲が視界に入って来た。雨音が聞える。だが、体を濡らす雫は無い。
 アーケードの屋根が視界の隅に入った。路地裏、アーケード街の裏か。
 壁に凭れさせられていた。
―生きている。……違う。「生かされ」ている。
 「力」を使わなかった。「殺される」と感じた事が、不思議だった。
「起きたか」
 声が掛かった。低く、静かな声。声の主は判っている。
「ヒャハ……良いのかよ。殺さなくて」
 目を声のする方に向けた。いつのまにか、どこから持ち出したのか、ボロボロの鞘に刀を収めた男が、立ったまま壁に凭れ掛かっていた。自分と同じく壁に凭れてはいるが、その立場、立ったままと倒れた自分が、勝者と敗者をそのまま表しているようで、また、笑えた。
 刀を傍らに立て掛け、男が呟きに近い声で返す。
「死にたかったのか」
「ヒャッハ……判らねえよ。そんな事。どうせ、遊びだ。何も、かもが」
「刹那的だな」
「判るか……よ。ヒャッハ」
 エッジは倒れたまま、視線を空に移した。腐った色だ。
「答え……が、見付からねえ。……もう、少し……だと、思った、んだけど、よ」
「答え? 何のだ?」
「俺の、答え、だ」
 呼吸するだけで激痛が走る。エッジが続けた。
「アンタ……の、答え、を……教えて、貰おうと、思ったんだけど、な」
「他人に教えられるような生き方はしてない。学校も行かなかったからな」
―行けなかったからな。男が苦笑した。
「ヒャハ……なあ」
「何だ」
「誰か……俺を愛してくれてるのか?」
「愛?」
「ああ」
 男が同じく天を仰ぎ、すぐに言った。迷い無く。
「知るか」
「……そう、か」
―判っている。答など、出る筈も無い。
 目を閉じかけるエッジに、男が続ける。予想に反した言葉だった。「答え」。
「愛……友情、ああ、美徳だな。……で、お前はそこに何を求める?」
―美徳……判らない。だが、そんな気がした。
「判らねえ。……必要な気がした」
「そうか。……なら、そいつは「気」だけだ。気にするな」
 意外な言葉に、エッジが声を詰まらせる。男が言う。
「突き詰めた美徳の果てに何が有る? 自己犠牲が美徳か? ……俺は、戦う。生きる。……何があっても」
―男が言う。意味は判らなかった。何に付いて語っているのか。自分の事、か。
「死に急ぐな。生きろ」
―生きろ。……言われた事が、有ったか?
 頬で固まった血が、溶けた。
 泣いた。5年ぶりだった。
 声は出なかった。涙だけが止めどなく流れる。喉の動きに合わせて体の傷が開き掛け、激痛が走ったが、どうでも良かった。
 見下ろす男が、自分の理解者に思えた。
「アンタが、俺を愛してくれるのか?」
「俺は同性愛者じゃない。他を当れ」
「そういう意味じゃねえよ……」
 眠くなって来た。眠れば、男がどこかに行ってしまいそうなのが怖かった。
 降り続ける雨の中、立ち続けていた男が不意に刀の鞘を握った。―「しつこいクソ共だ」
 言葉に遅れたのは、僅かにどれほどか。
 轟音が耳を劈き、極光が質量を伴なって路地を襲う。
 通過した光が、路地その物を倒壊させていた。コンクリの壁を砕き抉り、アスファルトに、30cmを越えるクレータ―を刻みながら進む。
「生きてるか?」
 男が言う。―「何とかな」
 エッジは身を起こし、頭上を振り仰いだ。暖かい光が、周囲を覆っている、そんな気がした。
 極光を弾き飛ばしたのもまた光、自分と、男―男を中心に、光の壁が半径5メートルほどのサークルを形成していた。男の突き出した右手を中心に、光が渦巻き、伸び上がる。
―これが、この男の力……? 強い、光だ。何者にも侵し難い、絶対の領域、力。
「ルシフェル……! これまでだ! 偉大なる我が主の御名の元、貴様を滅ぼす!」
 男の遥か先に視線を飛ばす。白い服の男達が半ダース、各々の武器を構えている。先の連中の―増援か。だが……先の連中とは、違う。「感じる」のだ。
「クソが……! 吠えるな! 勝手に着け回して、勝手に滅ぼす、勝手に殺す、か!? それの、どこが神だ!? 何が美徳だ!?」
 吐き捨てるように言った男が、鞘を腰溜めに構えた。
 先に襲った光は、白い服の男達が……!? 確かに、先まで戦っていた男達だ。別の……。俺達と「同じ」、「敵」!?
―あの男だけに戦わせるのか!?
 考えるよりも先に、男が言った。
「寝てろ。傷に触るぞ」
 言うや、左手の親指が鯉口を切る。垂直に構えられた鞘が僅かに引かれ、右手が柄に添えられる。
「死ね、クソ共!」
 男が残光を引いて駆け抜ける。形その物は居合だった。初刀の抜き打ちの銀光が、鞘走りと共に雨粒を薙ぎ払う。
 半ダースほどの男達、その内の走り込もうとした男達が、何れも、通り抜けられた部分を確実に失って崩れ落ちる。技術云々ではない。純粋な「力」で、強引に、だ。
―強い。
 驚愕に震える残りの男達の内、数人は、まだその闘志を萎えさせてはいない。「判る」。「何か」有る。
 男が、何言かを呟いていた。
「―ルヤンカス!」
 大地を割り砕き、地下水の噴出とも水道管の破裂とも取れる水が吹き上がり、「それ」を確認した時、エッジも、白の男達も声を失っていた。その理由は違えど。
―……俺と、「同じ」!?この力は……知っている! 「俺の他にも」居たと言うのか!?
「馬鹿な……DL―Sランクの悪魔!?主神レベルだと!?」
 白の男達の内、それは誰が言った言葉だったか。どうでも良かった。次の瞬間、男達の残り半数が、水の大蛇に飲み込まれて消えていた。
 咆哮を上げる大蛇の背後、エッジの前で、男が悲しげな瞳で楽しげに笑う。「―この程度か!?」
―強い。この男は。
 安心した。自分が介入する余地など無い。腐った空に目を向けようとして、エッジは男に声を掛けようとしたが、それより先に口が呟きを発していた。「マベロードッ!」
 男が振り返る。空間が捻れ、変化し、六芒星の光芒が黒い光を惹いて伸び上がる。
 巨大な「剣」が、空目掛けて疾駆していた。―ビルの上の男に。悲鳴を上げ、男が腹を剣にブチ抜かれ、落ちて来る。紅い線を引き、更に剣は血を求めて疾走する。
―そう、俺と「同じ」。この力……異質な力を、この男も持っている!
 男と同じ力を持っているという事実が、妙に嬉しかった。
 大蛇と剣が殺戮を初め、男は刀を鞘に収めた。あの分なら、出番は無いだろう。
「―貴様ぁぁぁぁぁッ!」
 殺戮を逃れたか、一人の男だった。そして、「判った」。「同じ」だと。レイピアに光を纏わせ、男に突き掛かる。
 男が振り返るより先に、エッジの右手が動いていた。
―殺す。この男を、やらせはしない。
「壊れろぉぉォッ!」
 男の背後に、黒い球体が収束、爆発し、黒いドームが瞬時に広がる。
 後に残るは、廃人と化した男のみ。
―「同じ」でも、こいつは「弱い」。「壊れた」から。
 男が、僅かに表情を変えた。
「精神破壊か? ケースの精神を破壊するとはな」
 男が微笑む。背後から飛び込んで来た黒い剣が、白服の男を串刺しにして、胴を、頭を叩き割る。
 死臭が漂って来た。雨も、血をまだ完全には洗い流せない。粗方、終わったようだ。
 男が、隣に腰を下ろした。
―男が、色々な事を話した。一言一句逃さずに聞いた。男の生きて来た道。男が戦う理由。―「生」。
「……判ったか? これが俺が戦う理由だ。俺は、生きたいから殺す。こいつらが、俺を狙う限り」
「ああ」
「浅ましいと思うか? 俺を」男が言った。
「いいや」本心だった。
 犠牲者を飲んだ大蛇は大地に還り、黒い剣は血を吸ったまま空間へと消える。雨の静寂が帰って来たが、空間には死臭が渦巻いていた。
 男が笑うように言った。
「お前も召喚能力者だったか……ケースの。一体、何だ?」
 笑う男が嬉しく、答えようとする所に、男が畳み掛けた。
「ありがとう」
「……?」
―訳が判らなかった。何故、礼を言われる? そういえば、以前に礼を言われたのは、いつの事だったか。
「助けられたからな」
 恐らく、絶対、助けは要らなかった筈だ。しかし、嬉しかった。―必要とされたかった。
「ムルムル」
 唐突に言った。男への答だ。
「ん?何がだ?」
「俺の、「力」だ」
「成る程」
 男が微笑む。呟くように言った。
「ムルムル……か」
「……何だ?」
「グリフォンに乗った魔界の騎士、ネクロマンシーを司り、生と死を繋ぐ、30個の軍弾の長。……元、座天使か」
「……そうなのか?」
―男の言った事は本当だろう。第一、別に、嘘でも良かった。しかし、気になった。「騎士」。
 騎士……。忠義、忠誠、絶対の……。どこかで、本で読んだような記憶がフィードバックされる。
「ああ」
「詳しいな」
「そうでもない。自然にな」
「……アンタは?」
「さっきの連中も言ってただろう? 「ルシフェル」。俺だ」
―ルシフェル。悪魔の王。……ああ、そうか。
 なら、俺は。
「なあ」
「ん?」
「頼みが有る」

『……俺の剣は、アンタに捧げる。この力、忠誠、絶対の、な』
―俺は、この人を守る騎士で在ろう。

『兄貴、って、さ。呼んでも良いか?』
―守ろう。

『クリフォト?ヒャハ、俺も、いいのか?』
―この人を。

 久遠に。



『生きろよ!』
―兄貴!何を言ってる!?生きるのは、兄貴の筈だろ!?
 ああああああああああああああああああああああああああああああ!
 思考が混濁する。頭の中でデタラメに記憶が荒れ狂う。―兄貴と居た頃、兄貴の笑顔……。
―何故、お前は生き延びている!?お前……お前お前お前お前……俺は!?
「兄気ィ……ヒャッハ……ッそぉ……そ……ッそ……クソクソクソクソクソクソクソクソくっそおおおおおおおぁぁァッ!」
 がつっ!……壁に埋められた柱、部屋を支える支柱の一つに轟音が響き、同時に亀裂を立てて壁が崩れていた。
 高天原市の中央、センター外に位置する安ホテルの一室だった。エッジが拳を引き抜くと同時に、がらりと音を立てて壁が崩れ落ちて行く。
 肩で荒い息を吐くエッジの背後では、スプリングのイカれたソファの上で、ひたすらにコーンフレークを咀嚼し続けているチェンの姿があった。
 部屋の中には気配が10近く、何れもクリフォトのメンバーが座り、或いは立っている。7割がアジア系、3割がコーカソイドで、その内、ケースであるのはアジア系のみしか居らず、5人だ。
「なあ……もう、良いだろ? ここにはもうロウウイングの施設は有りゃしねえよ。さっさと引き上げようぜ」
 エーイーリー所属、ベルゼブブ配下のティオだった。身長はエッジに近く、かなりの長身で、横幅で言えば、エッジすら上回る。が、エッジとは違い、「太」かった。国籍は不明だが恐らくは中国系、判り易いモンゴロイドで、今は日本語で喋っている。正面の男に。
「……まだ、ロウウイングの残党は居る」
 痩身の男だった。中世的な雰囲気を宿した男は、顔立ちの美しさでいえば、女性の一流モデルすら足元にも及ばない。絶対零度を纏ったようなその雰囲気が、明らかに他者を拒絶していた。備え付けの固いベッドに腰を下ろし、膝に突いた肘を顔の前に置いている。
 「荘平」。ただ、組織内ではそう呼ばれている。国籍は日本。それ以外の事は一切不明の、「ルシファー」に並ぶクリフォトの実力者だ。
 本来、「ルシファー」が部隊を指揮していない。何故か、といえば、文字通りルシファーが一人だけで行動しているからだった。強力な召喚術を操る「ルシファー」の前には、いかな部隊もその行く手を阻む事など出来ず、部隊など持つ必要が無かった。
 天津神区の戦い、「ルシファー」は個人として行動し、残りの人間は各隊から掻き集めた者で、「ルシファー」その者は一人だった。
 唯一、共に行動する者があった。
―なのに……クソッ……俺も、チェンも、守られただけじゃねえかッ!
「ハッ、あんた、まさか敵討ちのつもりか? あの男の? 「ルシファー」の? ハッハ、確かに強かったがな……強いだけ、だろ? 所詮それまでだったんだよ。何なら、俺が変わりに幹部を……ッがァ!?」
 ティオが口から血と歯を同時に吹き出し、床に叩き付けられていた。ずんっ……床が自身の如く振動する。重い。
「テメエ……どういうつもりだ、エッジ」
「ヒャハ……そのまま返すぜ、このブタが。刻んで殺して燃やして捨てるぞ、あァッ!?」
 拳を振り抜いた姿勢で、エッジが狂的な瞳のままティオを見下す。振り向きもせずにコーンフレークを咀嚼していたチェンも、ティオの言葉にスプーンを放す。
「弱いから消えたんだろお……あいつは。良いんだよ。強い奴が残れば」
 がしっ!めきいっ!……エッジの腕が変化、ティオの首を鷲掴みに、宙に吊り上げていた。ティオの体重は200キロ、エッジにとっては苦にもならない重さだ。
 ティオの頚椎がめりめりと音を立てる。
「もう一回……言ってみろよ、ヒャハアッ!」
「テメエ……調子コクんじゃねえぞ、このサイコが……!」
 ティオの右腕が黒味を帯び、岩の如き形状へと変化し、エッジの腕を掴む。
「言ってやろうか……弱いから、だ。お前等の「ご主人様はよ! 「ご主人様」。ヒャッははははは! お似合いだぜ、飼い犬共!」
 ティオは言うと同時にエッジの腕を握り潰そうとして、その姿勢のまま固まっていた。動かないのだ。
「な……」
「ヒャハッ……」
 エッジが笑う。
「ヒャハハハッ……」
 笑う。
 立ち上がり掛けていたチェンはスプーンを手に取り、食事を再開していた。「―悔い改める時間は無いな」
「ヒャアッハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
「うげぇあっ!?」
 ティオの「変化」、「開放」され掛けた体がいとも簡単に宙を舞い、地面に叩き伏せられていた。
 エッジが馬乗りにティオに重なり、「変化」した右腕で殴る。
 血が顔面から吹き出し、歯が折れ飛ぶ。
「ヒャッハ、何を言った?」
 左手の爪が顔面に飛び、右端から目、口の端に掛けて頭蓋骨ごと裂く。ティオの、声にならない絶叫が響き渡る。
「この口か?」
 笑う。
 立ち上がり、右腕にブーツを振り下ろす。べきっ……変化した腕ごと骨が粉砕され、無造作に千切れ飛ぶ。
「ヒャハハハハハッ!? ああ、脆いな、おい!? 強いのか、お前が? ヒャハハハハハハッ! 兄貴は俺より遥かに強いぜ!?」
 部屋に響き渡る絶叫。助けに入る者は、無い。
 エッジの爪先が、無造作に腹に振られる。肋骨がヘシ折れ、叫ぶティオの絶叫に、エッジの哄笑が重なる。
「苦しそうだな、オイ? ダイエットさせてやろうか、ヒャハッ」
 エッジの爪が腹に飛び、腹の肉ごと腸を抉り取る。べちゃっ……避けた数人の男達の背後、壁に腸が潰れて張り付いた。
「ヒャハッ! ヒャハハハハハハハッ! ヒャアッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアッ!」
 エッジが身を抱えて笑う。ティオがもがく。エッジが笑う。笑う。笑う笑う笑う―。
「ヒャアッハ、次はどこが良い?ああ……」
 エッジが屈み込む。
「顔か?」
 エッジが右手が握られ、―ぶんっ……ぐしゃっ!―ティオの顔面を叩き潰していた。
 笑う。
 笑う笑う笑う笑う笑う。
「ヒャハッ……ああ? 何を言ってる?」
 血と肉塊と化したティオの上で、エッジが笑う。
「ヒャッハ、何も言わねえよなあ……ッハハハハハハハハア!」
 エッジが物言わぬ塊の上に、ブーツを連続で振り下ろす。チェンは幾分ふやけたコーンフレークの流し込んでいた。箱にして3箱、牛乳だけで6パックが消費されていた。
―許されない。
―兄貴を侮辱する者。
―殺す。
―殺す殺す殺す殺す……一センチ四方にも切り刻み、炎の煉獄に叩き落す。
―あああ……ああああああ……兄貴。見てくれ。俺はあなたを侮辱したゴミを排除した。なあ、微笑んでくれよ。
 エッジが蹴り続ける。部屋の中に、打撃音と液体を啜る音だけが木霊する。
ぶんっ……ずじゃあっ!―蹴り続けるエッジの足の先、既に赤黒く、原型を止めなくなった塊が、床の一部ごと黒い「闇」に包まれて「消失」していた。
「悪い……。汚した」
 視線を正面に向け、言う。
「気にするな。お前がやらなければ、後ろのコーンフレーク好きが灰にしていた。でなければ、私が消滅させていたよ」
 荘平が、顎を組んだ手の上に置いて答える。ベルゼブブの能力は正に「滅び」。エッジとチェンが仕える主人と同質の能力の一つを保持している。間違い無く、クリフォト、ロウウイングの両サイドで最強の能力者の一人だ。
「すまない。エッジ、チェン」
 右手の、人差し指をエッジの方に向けた荘平だった。「ベルゼブブ」。ルシファーに次ぐ者にして、ミカエリスの階級に記され、プランシーには悪魔の王とされ、グルジェフには秘儀参入者にして深遠なる知識を持つ者といわれている。零落させられし、フェニキアの、カナンの神だ。偉大な知識を持ち、崇拝された神でさえ、これだ。誰が正しい!? 絶対神、唯一、か!? 愛され、頼られても、自分の意思に、「絶対なる意思」とやらに逆らう者が、等しく悪だとでも言うのか!?
 その力は凄まじい。判っている。エッジとチェンを合わせて尚、荘平に勝てるかどうか、考えるまでも無かった。
「私の所為だ。あの時、止めていれば……いや、違う。あれが罠だと気付けば……」
 声には深い後悔の色が滲んでいた。
―そう、判っている。
 「ルシファー」の友人にして、唯一肩を並べる者。
 荘平の首元で、銀の十字が踊る。銀のクロス……もう一人、たった一人、これを付けていた者を、クリフォトの中で知っていた。……知って「いた」!? 違う!
「アンタの、せいじゃない。ヒャッハ……俺が、迂闊だっただけだ。アンタには、俺が責められるべきだ」
―本心だった。
「……」
 荘平の腕が下げられ、エッジの足元には綺麗に抉られた床の染みだけが残った。―じゃっ……荘平が再び向けた指の先、壁に張り付いた腸と血が壁の一部ごと消失する。
「ここに居る者に告げる」
 荘平が部屋を見回し、言う。
「これより、エーイーリー、ベルゼブブはクリフォトの指揮下を離れ、独断で行動する。一名は本部に戻って伝えよ。引く者は引くが良い。いずれ、戦いの日は来る。だが、私はそれを待ちはしない! 奴等が言う約束の日など迎えさせない、奴等に約束された場所など有りはしない!審判を下すのは奴らの神ではない! 我々が奴等を裁き、奴らの死を持って全てを終わらせる! 我はロウウイングの存在をけして許しはしない。最後の一人も残しはせず、偽りの神の使徒を名乗る害虫どもを、一匹残さずこの世から消し去ってくれる!」
 荘平が見回す部屋の中、荘平と視線の合ったダークスーツが、一つ頷くなり退出する。本部に向かっただけだ。
「私の友人は奴等と戦った。……死んではいない! 強く、誰よりも強いあの男は、けして滅ぶ事など無い! 私に、彼に恩義を感じる者は、私と共に立て! ロウウイングを、これより剿滅する!」
 荘平の言葉に全員が頷いた。チェンが皿から甘くなった牛乳を飲み干し、―からっ……ん。スプーンを放り投げる。
―そうだ。
 殺してやる。滅してやる。兄貴は消えちゃいない。あいつらを、あいつらを全て「星に捧げれば」、きっとまた、俺に笑顔を投げ掛けてくれる!
 剿滅。
 皆殺しだ。
「ヒャハ……」
 笑えた。




 鏡祐が本部に戻ったのは11時だった。雨は降り続け、空は腐った色をしている。
 葦神鏡祐。25歳。「ミズガルズ」本部の司教にして、大司教だ。
―悪魔を滅する。
 それは同じだ。だが、ロウウイングとは違う。何もかもを縛り付ける偽りの美徳、それを掲げる事のどこに正義がある?
 ああ、俺たちは「戦い」、「邪魔」をする者を排除して行くだけだ。「真実」も「正義」も、全てはその「過程でしかない」。
 1階のロビーは広い。人気の失せた礼拝堂だ。別にステンドグラスがある訳でも、十字架を掲げている訳でもない。ロウウイングとは違う。
 考えていたからか。気付かなかった。
「だーれだっ!」
 高い、アルトの声が響く。同時に、鏡祐の視界が暗闇に閉ざされた。声は流暢な日本語だった。
「セシル。……離れろ。邪魔だ」
―こんな子供めいた事をする人間は、知り合いの中には一人しか心当たりが無い。
「うわっ、ひっどー。だからモテてるのにも気付かないんだよ。格好良いのに」
「そう思うなら離れろ。邪魔だ」
 繰り返すように鏡祐が言う。
―何故、くっ付きたがる? 普段は本でも読んでいるか、テレビを見ているが。邪魔だ。
 鏡祐の言葉は本心からだった。
 鏡祐が自分の視界を遮る手を掴み、前に引き摺り出す。
 シャンプーとリンスの匂いがする金髪が頬を掠め、くすぐったさを頬に残して行った。
 年の頃なら10代後半か。間違い無く、そう見える。金髪の、愛くるしい少女だった。トレーナーに、キュロットと、本人の魅力を充分に引き出しているセンスは意識しての物か。いずれにしろ、この荘厳で、夜中には不気味としか言えないロビーには不釣合いだ。
「ユウ君トコ行って来たんだよね、今日」
「ああ」
 返すのも面倒で、適当に頷いていた。
「なら」セシルが顔を覗きこんで来た。
「お土産は?」
「ケーキと、オレンジジュース。……両方とも日本製で、ジュースは直送の果汁100%だ」
「うわっ、ホント? 嘘嘘、ねえ、どこ?」
「もう飲んだ。ケーキは置いて来た」
「えー!? それ、お土産って言わないよー」
 首に絡み付くセシルを引き剥がし、面倒そうに鏡祐が言う。「出て来い」視線は先から柱に注がれていた。
「気付いてましたか」
 セシルと同じく、流暢な日本語が返って来る。10代20代の乱れた日本人の日本語と比べれば、こちらの方が余程綺麗な発音といえるのではないか。
「白々しい。……気付かれているのを知っていたろう?」
 鏡祐の言葉は溜め息と共に吐き出された。「何の用だ」
 鏡祐とセシルの背後、ギリシア彫刻を模して作られた柱の影から、豊かなブラウンの髪を肩まで垂らした女性が微笑みながら歩き出た。
 年は鏡祐よりは若いか。10代後半か、20前後の美しい少女だ。
「良い雰囲気でしたので。邪魔するのも悪いと思いまして」
「え? そう、ホントにそう見える? アリシア姉さん」
「下らない事を言うな」
 鏡祐の味気ない言葉にセシルがむくれ、アリシアが微笑みながら鏡祐の正面の席に座る。
「お帰りなさい。……外は寒かったでしょう?」
「そう思うなら家にでも帰っていれば良かっただろう? 遅くなると言った筈だ。……暇な奴等だ」
セシルが鏡祐の首に腕を絡める。「何よ」
「私もアリシア姉さんも、せっかく待っててあげたんだよ? あーもう、何でこんな気の利かない奴が司教やってんのかしら、ここ」
「そういう場所だ。偽善者集団でも、悪人の巣窟でもない。良い場所だろう?」
「どーだか」
 セシルが笑い、顔を鏡祐に摺り寄せる。アリシアが微笑みながら席を立ち、鏡祐の背後の自販機の前に立っていた。
「何かお飲みになられます? ……本当なら、紅茶でも入れて差し上げたいのですけれど……すみませんね、ここでは」
「いや、構わん。すまんな。アリシア」
「いえいえ……オレンジジュースですか?」
「寒いからな。……カフェオレをホットで」
 鏡祐の首に巻かれた、細く、白い手に力が込められる。ぎゅっ……「なーんで姉さんには優しいのよ!」
「セシル。あなたは?」
「あ、私はコーラ」
 アリシアが両手にカップを握って歩いて来る。「はい、どうぞ」
 鏡祐に暖かい紙コップを握らせるなり、アリシアがセシルの襟首を掴んで引き剥がしていた。
「む〜、何よ、姉さん、羨ましいの?」
「飲み辛いでしょう?」
―俺の意見は無いのか? その言葉では。
 アリシアがセシルにカップを握らせ、鏡祐の右隣に座り直していた。「それで」
「橿原司教は何と?」
「はぐらかされたよ。「アレ」についてはな」
 苦笑する鏡祐に、アリシアが苦笑を重ねる。「そうですか」
「ユウ君、あなたより全然話上手いもんねー。格好良いし」
「あら、私は鏡祐さんの方が格好良いと思いますよ」
「ありがとう、アリシア。……それより」
 スーツの懐に手を差し入れる鏡祐に、セシルが言葉を重ねた。「……私だって、そう思うわよ」ボリュームが小さ過ぎて、鏡祐の耳に入ったかどうかは疑問だった。
「日本の事件の事は、聞いたか?」
「日本……ですか、いえ、聞いていませんが。……すみません、最近、テレビも見なくて」
―言っている事は、本当だ。アリシアは、ニュース番組所か、テレビすら見ない。本を読んでいるのは良く見かけるのだが。
 アリシアの膝の上に数枚の、A4サイズの用紙が置かれる。「見てみろ」
 アリシアの眉が潜められた。
「……冗談、ではないのですね。これは……残念な事に、恐らく」
「冗談なら、両手を上げて喜ぼう」
「んー、ねえねえ、何?」
 セシルがアリシアの手から紙を引き取る。反応はアリシアと同じだった。
「……DL―Sランク……複数!? 冗談!? こんなのが開放されたら、星が狂うわよ!? ……サマナー、なの!?」
―セシルが驚くのは、判る。テレビで流れているような情報は、極限まで規制された、1%の真実にも満たない。
 事に、アメリカはロウウイングの勢力が強い。真実など、どう知ろうと言うのか。
「クリフォトのな」
 事も無げに返す鏡祐に、セシルが震える声を返していた。「何でそんな風にしてられる訳!?」
「相手は判っている。……やろうと思えば、そいつは既に「やっている筈」なんだ。何故、やらないか」
―簡単だ。相手は、判っている。
 生きたいから、滅びを拒否するから、そんな事はしない。何故か? 人間だからだ。だが、やっている事は「悪」その物だ。許せない。許す訳には行かない。正義を気取るつもりは毛頭無いが、「世」の摂理を乱す者を排除するのは、我々の「務め」だ。
 Sランクの悪魔を呼び出すという事は、本来は国家転覆なり、地形の破壊なり、大掛かりな目的を持っている事が殆どだ。Aランクの悪魔でも呼び出せば、大陸を吹き飛ばす事位は可能だろう。ましてやケース、本人その物が超強力な「悪魔」だ。ロウウイングに伝えられる、伝説ともされるセクンダディに、四大熾天使。その一人でも居れば、一国を滅ぼす事は容易いとも聞く。
―ならば、対立するロウウイングが無ければ、ロウウイングが全てを支配出来ると言う事か!? 美徳を掲げ、それを信念に「悪魔」を狩る、ならば、「全て」を「狩り尽くした」後は、支配者にでもなるつもりなのか!? それこそ悪だ。それを正義としているのだから、始末が悪い。支配の中に、愛も、正義も、けして生まれはしない!
「……したく、ないから?」
 セシルが鏡祐の顔を見る。
―或いは、「何か」を「守ろうとしている」からか!? 「悪魔」が!?
 顔に出すのは癪だった。鏡祐がそのまま続ける。
「正解だ。……それに、その戦いで、グレイが行方不明になっている」
「あの性悪が!? ……でも、まあ、驚くほどの事でも無いわよ。あんなの、飾りみたいなモンだし」
 セシルがコーラを飲みながら、鏡祐の右隣、アリシアとは逆に座る。
「―そうね。ただ、天津神達はどうなのかしら?」
 返したのは、鏡祐でもアリシアでもなかった。セシルがソファの背に体を預けながら視線を後ろにやり、アリシアは物憂げに正面の闇を見据えている。セシルが、僅かに表情を歪めた。
「今日は私達が全員集合みたいね。……お帰りなさい、鏡祐。少し遅れたわ」
「ユリアか。……どうでも良いが、普通に入って来たらどうだ? お前等。……何だ、それは?」
 ロングの銀髪を腰まで下ろした美女だった。少女かもしれないが、その落ち着いた雰囲気と物腰には、やはりその言葉こそが相応しい。透き通るような白い肌に滑らかな髪の艶、艶かしくさえある銀色には、性別を問わず惹き付けて止まない何かがある。
 美女が手に下げた紙の箱を揺らしつつ、活発な印象の微笑を浮かべる。「ああ」細い手に掴まれた紙の箱が持ち上げられた。
「これ? アップルパイ。あなたに作っておいたの」
「今までか? ……暇な奴だな。3人揃って」
「つれないわね。女神が勢揃いだって言うのに。……アリシア、セシル、食べる?」
 不機嫌そうだったセシルが、途端に顔を輝かせた。「良いの? ユリア姉さん?」女神と言うにはどうかと思った。
 ユリア、アリシア、セシル。それぞれが「ミズガルズ」に仕える巫女であり、ユリアは鏡祐の秘書兼護衛も兼ねていた。華奢な体に秘められた力は、一人で師団レベルを相手取る事も容易く、神霊クラスの魔王と渡り合う事も可能だ。
 セシルが紙の箱を開け、切り分けられたアップルパイの一つを挟み込むように拝借する。アリシアは微笑みながら首を振って辞退した。「で」
「どうなの? 日本は。……天津神の事」
 シルクのドレスがソファと擦れ合って音を立てる。アリシアが膝の上の用紙、その一枚をユリアに手渡した。
「何々……日本語ね、あなた達用? 良いけど、別に。……へえ」
 驚きの薄いユリアに、アリシアが首を傾げる。
「お姉様、知ってらっしゃいました? この事件」
「直接的じゃないわ。……でも、テレビでもやってたわよ? 隠し切れるレベルの破壊じゃないもの。あれは。サマナー一人の手で起こされた事件とは認めたくないのが事実ね」
―そう、サマナー一人が起こした事件とは、考えたくない。勿論、破壊には何人かが関わっているのだろうが、まず、間違い無く、破壊の核となったのはSランクの悪魔であり、サマナーだ。……「バチカル」!
 3人に、詳しく話す必要は無いと思った。無闇に心配を掛けたくは無い。……特にセシルは、先走って何をするか、判った物ではない。
 鏡祐が言う。
「天津神の事は?」
「チェックは入れてるわ。けれど、イグドラシルも完璧じゃない。……日本は危険な場所よ。私達にとって。……下手に天津神に手を出せば、封じられた者とはいえ、ただではすまない気がする」
―その通りだ。高天原に住まう神々の力は、日本という国に常に密着し、しかし沈黙し続けている。一度力を開放すれば、どれほどの力があるのか。「自分達のように」、「力」として「在る」のか、それとも祀られているだけなのか、判らないだけに、より、不気味な部分もある。国生みの、遥かな天空の神々の力―国津神とは、また、違う力の持ち主達だ。国津神―今の所、動きは無い。
 鏡祐が苦笑した。
「国津神がどう動くかは、気にならないんだな」
「まつろわぬ神々が……ね。土蜘蛛にでも気を付けるのかしら? ……当面の問題じゃない。武将でも出て来るなら、話も変わるけど」
「冗談は止してくれ。……まあ、だが、確かにな。信仰すら薄れ掛けた今の状況では、天津神の封印がどうなっているか判らない。……問題は、それを「伝えている」家が「どうなっているか」だな」
「ええ。武神や大神に目覚められると厄介だわ。潰しておきたいけど、手を出す訳にもいかないでしょ?」
「天孫降臨以前の神々は、まあ、良いだろう。……下手に手を出して、ロウウイングとクリフォトから挟まれる訳にもいかん。……我々の今の状況は「第3者」だ」
―そう、この立場を利用しない手はない。今の状況、双方が共倒れになってくれるのが効率的で理想的だ。
「さしずめ、私達は爪の船に乗る火の民かしら? ……最後に漁夫の利を取ろうとする」
「多神教ならではですね」
「破壊だけだ」
 微笑むユリアに、鏡祐はコーヒーを一口含んで答えた。アリシアも小さく微笑んでいた。
「ラグナロクは起こさせない。……その為に俺達が居る。……無論、審判などもさせはしないさ」
「日本に行くの?」
 口の周りをハンカチで拭い、セシルがテーブルの上に座った。キュロットからハミ出した足が鏡祐の前で揺れているが、鏡祐の表情に変化はない。いつもの事だ。
「そのつもりだ。いつまでもマゴ付いては居られん。……ユウの動きが気になる所だが、止むを得ん」
「橿原司教の事? ……それともゲートの事?」
 ユリアが聞いた。「判っている」。予想出来た質問だ。返す答えも、また。
「両方だ」
「良い答ね」
「テキスト通りにな」
 セシルが指を弾き、テーブルから飛び降りた。
「やっりィ!日本行き、決定?ああ、ハイパーテクノロジーの国、ニッポン!行きたかったのよ、私」
「あら、そんなに行きたかったの?」
「ハイスクールの友達にお土産。電子ペットとね、えっと……色々」
 日本の大型メーカー製品だ。自立型の反応センサーが組み込まれていて、反応数がデタラメに多い。アメリカでも手に入らない事は無いが、予約が常に満タンで、買える事は少ない。「教会」の「巫女」として仕えるセシルには、手に入れ辛い事この上ない商品だ。
―何故、あんな物を欲しがる?
 セシルの身の回りには、やたらと電子機器が多い。日本製品が80%を締め、性能の良さがお気に入りだと言う。年頃の女の子が、サンリオグッズを集めたがる心境か?違う気がする。
 鏡祐は、あまりその電子ペットが好きでは無かった。ロウウイングに言わせれば、「人が人を創る事など、愚かでしかない」のだろう。クローンの製造を禁止するのにも、裏で深く関わっていたのはロウウイングだ。逆らえば、問答無用で消すのだろう。が、ロウウイングと同じで嫌だったが、犬や猫を模したその機械を、あまり好く事は出来なかった。―新発売は、確かモーターを組み込んだ鳥だったか。
 鏡祐が額を抑えていた。「おい」
「お前を連れて行くとは言っていないぞ? ここの事もある」
 途端にセシルが不満顔になる。
「えー!? やだよ、連れてってよ。連れてかないと、夜中にあなたの布団の中、潜り込むわよ?」
「朝起きたら隣で寝てて「責任とって」って?」
 ユリアが笑う。
「そうそう。それで、鏡祐が私の面倒見るの。ずっと」
 アリシアが手の甲でセシルの頭を叩いた。
「悪い冗談です。……姉さんも」
「冗談じゃないよ。連れてってくれなかったら、本当に、やるもん」
 アリシアが溜め息を吐いて鏡祐を見る。
「……最初から連れて行くつもりだ。……多少荒い事になるが、覚悟はして貰うぞ?」
「勿論」……あなたと行きたいだけだし……。呟きは、小さ過ぎて鏡祐の耳には入らなかった。
 鏡祐がアップルパイを箱から取り出す。
「一つ、貰う」
 ユリアが微笑んだ。
「どうぞ」
「……なあ、ユリア」
「何?」
「俺達は、正しいか?」
 鏡祐の問にユリアは目を丸くした。悪戯をする子供のように微笑み、言う。
「ヤーウェ神にお伺いを立てたら?」
「おお、神よ、って?」
 セシルが横合いから笑う。ユリアが鏡祐に向き直った。
「でも、簡単よ。私はあなたに着いて行くわ。正しいのは、あなた。私にとっては、それだけで充分よ」
「……お姉様。それ、「私達」にして頂けません?」アリシアが言った。
「気が付かなかったわ」
「あ、私も」セシルが言う。
―黄昏は、近いか? ……違う。永遠に、そんな物を起こさせはしない。
 空の色は相変わらず腐っていたが、それも良いと思えた。

〜To be continiued〜


葦神鏡祐 なんてーか、アレです。正体バレバレです。「ミズガルズ」大司教。

セシル セシリアとかが本名でしょうか。それは置きつつ、正体バレバレです。ええ、と言うか、一気に3人出しました。姉妹の順で考えて下さって結構です。末妹。金髪。頭は良いっぽい。

アリシア セシルの姉。物腰穏やかな少女。正体バレバレ。鏡祐、何気に好かれてます。次女。天然の茶髪。

ユリア セシル、アリシアの姉。正体バレバレ。長女。銀髪。てか、この三姉妹、全員髪の色違うけど、ホントに姉妹か……って、まあ。

荘平 本名不詳、日本人。デタラメに強い美青年。「エーイーリー」の統括者にして、クリフォトの大幹部。


えーと、では……。

すみません。

 今回は、神話的な部分を抜いてやってみようと思ったのですが、北欧連中が出て来たお陰で、ベラベラ喋ってます。と言うか、眠い状態で一気に書き上げたので、内容が……修正確定ですか、これ。
 多神教が混じる事で、どういう話になるか、というのも目的です。結局は駆逐的な関係でもあるのですが。
 今回、鏡祐と三姉妹が出ました。鏡祐は名前が今回。ユウだけ出てるのもおかしいし、こちらがノースサイドのメインですので。多分、三姉妹の正体はバレバレです。と言うか、3人と言う時点でバレバレです。北欧神話を読めば、一発で気付くと思います。
 クリフォトでは、ベルゼブブが出ました。出しました。メインの一人ですが、デタラメに強いので使い方が注意です。クリフォト=アジア、ロウウイング=西洋と言うイメージがあり、ベルゼブブも日本人です。勿論、逆の人間も居ますが、荘平はアジア系の美男子です。
 ミズガルズの信念は、ロウウイングとは異なっていて、人が人を裁くのはおかしい、と捉えています。ですが、結局は悪魔の駆逐、それに代わりは無く、信念の根源は同じです。
 天津神は、出て来る事に決定っぽいです。崇められ、祀られていますが、駆逐されてるみたいな印象、ありませんでしょうか。強力です。国津神は……多分。大六天とか(何故)。




 メール……お願いします。

 HP

 それでは、失礼致します。


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