With You 〜みつめていたい〜 Another Story
天都みちるの教えてあ・げ・る・♪
Presented by じろ〜
「は〜い正樹君、今日もすご〜く気持ちよく寝ていましたね♪」
「えっ、いや〜昨日の深夜映画を見ていたらついつい寝るのが遅くなりまして・・・はははっ」
「ん〜そうね・・・確かに昨日の映画は面白かったわね♪」
「そ、そうですよね」
「でもね、ここはどこで今は何しているのかなぁ〜?」
「え〜っと、ここは学校の教室で今はみちる先生の英語の授業時間です」
「Good! 正解のご褒美に先生から正樹君に素敵なプレゼントを上げちゃうわ♪」
「あははは・・・」
「それじゃ後で職員室まで来てね、みちる楽しみに待っているから♪」
「とほほ〜」
「あら〜困った正樹君の顔も結構可愛いわよ♪」
「はぁ〜」
チャイムが鳴るとニコニコして教室を出ていくみちるとは対照的に、正樹は机に突っ伏していた。
「にゃははは〜災難だね、正樹君♪」
「せっかく人が起こしてやってるのに、何があと五分だ?」
「うっ・・・その辺は感謝するが、出来ればみちる先生に気づかれる前に起こしてほしかった」
その姿勢のまま、正樹はミャ〜コと冴子の言葉に力無く応えた。
「正樹、あんたね〜人があれほど夜更かししちゃ駄目だって言ったじゃない!」
「ま、まあまあ菜織ちゃん、そんなにきつく言わなくても・・・」
「仕方ないだろう菜織、面白かったんだから・・・それに引き替え真奈美ちゃんはやっぱり優しいなぁ〜」
頭を上げて幼なじみ達の顔を見るのだが、菜織にはふてくされたように、真奈美にはニッコリと笑う正樹だった。
「ちょっと正樹! 何なのよそのあからさまに違う態度は?」
「な、菜織ちゃん、落ち着いて・・・」
真奈美が宥めている隙に正樹は鞄を持つと菜織の脇をすり抜けて、足早に教室を出ていこうとした。
「こら〜! 待ちなさいよ正樹!」
「それじゃ真奈美ちゃんとミャ〜コちゃんと冴子とおまけの菜織、みちる先生に呼ばれているからお先!」
それだけ言うと自慢の足であっと言う間にみんなの視界から消えてしまった。
「にゃははは〜菜織ちゃんの負けだね♪」
「こう言うときは便利だよな、あの足は・・・」
「くっ・・・憶えていなさいよ、後でとっちめてやるんだから!」
「程々にね、菜織ちゃん」
そう言った真奈美に振り返ると、菜織はニッコリと笑いながら彼女の肩をしっかりと掴んだ。
「そうね・・・でもその前に真奈美にお礼しないとね?」
「わ、私用事思い出しちゃったから・・・」
「今日はロムレットに行ってケーキが食べたくなっちゃった、ねえ〜真・奈・美?」
がっちりと押さえられた肩と菜織の笑顔に真奈美は逃げられないんだと悟ってしまった。
「はう〜今月厳しいのに・・・」
「さあっ! ハニーレモンパイが私を呼んでいる〜♪」
嬉しそうに小躍りしている菜織を見ている真奈美の肩をミャ〜コと冴子がぽんぽんと優しく叩いた。
「がんばってねん、真奈美ちゃん♪」
「あたい達は自分で出すからさ・・・」
意気揚々な菜織ととほほ〜な顔になっている真奈美を含めた四人は、仲良くロムレットに向かう為教室を後にした。
ガラッ。
「失礼しま〜す」
「は〜い、みちるずっと正樹君の事を待ってたわよ〜」
「あのみちる先生・・・授業が終わって15分しか経ってませんよ?」
「それはさておき正樹君、さっそくみちるから愛のこもったプレゼントを上げましょう♪」
「はぁ〜」
みちるの笑顔を見て正樹はどんな宿題が出されるのか、今までの経験から嫌と言うほど解っていた。
「今日から毎日、正樹君のお家でみちると一緒にお勉強しましょう♪」
「はい?」
「あ、チーズケーキなんてもちろん食べたくないから♪」
「あの?」
「そんな、夕食なんてお構いなく〜♪」
言いたい事を言いながらも手早く帰る準備を済ませると、正樹の手を掴んで歩き出した。
「さあ正樹君、お家まで案内してね♪」
「?」
訳が解らない顔をして首を捻っている正樹を引きずるように、みちるは正樹の家・・・ロムレットに向かって
迷うことなくスキップしながら歩いていった。
「??」
結局、正樹は家に着くまでみちるの言っている事が理解できなかった。
から〜ん。
「いらっしゃいませ」
ロムレットの扉が開くと、ここの看板娘で正樹の妹でもある乃絵美が入ってきた人に声を掛ける。
正樹が溺愛するほどの儚い感じの美少女である乃絵美は、菜織達や商店街の人達にもの凄く可愛がられている。
「ただいま乃絵美」
「お帰りなさいお兄ちゃん・・・とみちる先生?」
「は〜い、こんにちは乃絵美ちゃん」
「こ、こんにちは」
ぺこりとお辞儀する乃絵美は正樹とみちるが手を繋いだままなのでちょっとだけ頬を赤らめた。
「ん、どうした乃絵美? 顔が赤いぞ・・・」
「お兄ちゃん・・・その、みちる先生と手を・・・」
「えっ・・・おわっ! いったいいつから握っていたんですか?」
「あん、正樹君って結構強引だからみちる困っちゃう♪」
そんな事言ってもみちるは正樹の手を放そうとしなくて、更にしっかりと握ってきた。
端から見ればただの恋人同士がじゃれ合っている様にしか見えなくて、乃絵美の顔がますます赤くなった。
「にゃははは〜スクープなのねん、二人は恋人同士だったのねん♪」
「ミャーコ! お前なんて事・・・」
「正樹君・・・」
「正樹、あんたまさか・・・」
「うわっ! みんな何でここに?」
正樹が声がした方に振り向くとさっき学校で分かれた菜織達がお茶をしていた。
「なによ、私達がいたら何か不味い事でも在るのかしら?」
「な、何言ってんだよ菜織、そんな事有るわけ無いだろう・・・のわっ?」
会話の途中でいきなりみちるが正樹の腕に抱きついた為、その豊かな胸の感触に心臓がばくばくしてしまった。
「さあ正樹君、みちると一緒に行きましょう・・・あなたのお・部・屋・に♪」
「な、な、何ですって!? 正樹! どういう事よ?」
「いや・・・そのこれは・・・なんだつまりあれだ、そうあれなんだ」
「なに訳が分かんないこと言ってんのよ!」
「ほらほら〜早く案内してね、時間が勿体ないわ」
「うわっ、みちる先生!?」
先ほどと同じ様にみちるは正樹の手を引きつつ、ずんずんとお店の中を横切って住居の方に行ってしまった二人を
乃絵美と菜織達は暫し呆然と見つめていた。
ばたん。
ドアが閉まる音にようやく彼女達は硬直が解けた。
「真奈美行くわよ!」
「えっ、菜織ちゃん?」
「にゃははは〜これは面白いことになりそうな予感がしてきたのねん♪」
「あ、あたいは店の手伝いが・・・こらっ放せミャーコ!」
「いいからいいから、本当は気になるくせに冴子ったら〜にゃは♪」
「ば、ばか、別にあたいは・・・その・・・」
俯いた冴子の顔がほんのり赤くなっている事に菜織は頭の中で電球がついた様に閃いた。
「冴子、あんたまさか正樹の事・・・」
正樹と言う言葉にビクッとなった冴子は耳まで赤くしてしまったので正樹が好きと言う気持ちがみんなに
解ってしまった。
「冴子ちゃんもそうだったんだ・・・」
真奈美も何となく冴子の態度から彼女の気持ちを悟ってしまう。
『親友としては応援したいけど正樹だけは譲れないわ!』
『冴子ちゃんもライバルだなんて・・・どうしよう?』
『みんなミャーコが悪いんだ! ううっ・・・』
三人の間に微妙な空気が漂い始めていたところに、乃絵美が遠慮がちに声を掛けた。
「あ、あのみんな、みゃ〜こちゃんもう行っちゃったんだけど・・・」
「「「!?」」」
さっきまで側にいたみゃ〜この影も形も無くなって、そこには苦笑いを浮かべている乃絵美しかいなかった。
「二人とも、ここは協力してあのお馬鹿を何とかしないと、学校で何を言いふらすか解らないわ!」
「そ、そうだな、取り合えずミャーコを黙らせないとな!」
「そうね、それが良いのかも・・・」
三人は互いの顔を見て肯くと息が合った動きで正樹の部屋へ・・・もといみゃ〜こを捕獲するためにロムレットの
中を駆け抜けた。
残された乃絵美はふぅと軽くため息を付くとテーブルの食器を片付け始めた。
「残念だなぁ、私も・・・ううん、でも・・・後でお兄ちゃん達におやつを持って行こうっと」
まだまだ乃絵美の心の中で一番大好きなのは正樹で在るらしい。
それが交際を申し込まれても断り続ける乃絵美の心を表しているとは、にぶちんな正樹は気が付いていなかった。
なんとか正樹の部屋の前でみゃ〜こを捕獲した三人は、ガムテープでぐるぐる巻きに縛って転がすと静かに
そして素早くドアに耳を付けると中の様子を窺う事に集中した。
「・・・・・・」
『う〜ん聞こえないわね・・・』
『うん・・・』
『声が小さくて・・・わかんねえなぁ』
『冴子』
『何、菜織?』
『あんたも結構正樹の事好きなのね』
『な、あ、あたいはその・・・正樹がみちる先生に変な事しないかと心配して・・・』
『ふ〜ん本当にそうなの?』
『それじゃいけないのかよ!?』
『ちょっと二人とも静かにして!』
真奈美にもの凄い真剣な顔で睨まれて、二人は肩を竦ませると菜織はすぐにニヤリと笑って真奈美の顔を見つめた。
『な、何菜織ちゃん・・・変な顔して?』
『変な顔で悪かったわね、それよりも真奈美って案外怖いわね・・・』
『?』
そう言われた真奈美は自分がした事が解らないのか、きょとんとして菜織を見つめた。
『はぁ〜もういいわよ、で何か聞こえた?』
『うん、だんだん声が大きくなってきたの・・・』
『どれどれ』
三人は再びドアに耳を付けると中の様子を窺った。
「・・・あん、そこは違うの、ここにそう・・・」
『!?』
「ここですか?」
「うん、いいわそうよ・・・」
『!?』
「正樹君って飲み込み早いじゃない、その調子よ」
「そうですか? でもみちる先生の教え方が上手いんですよ」
「正樹君、今は私の事みちるって呼んでもいいわよ」
「ええっ?」
『!!?』
「あっ、待ってもう少し落ち着いて・・・」
「すいません、俺焦っちゃって・・・」
「もうせっかち何だから・・・だめよ、時間は有るからゆっくりね」
「はい」
『!!!?』
正樹とみちるの会話を聞いている三人の頭の中は程度は違うけど同じ事を考えていたらしく、顔中真っ赤にして
ドアに顔をめり込ませるように張り付いていた。
「みんな、何しているの?」
「「「ドッキン!?」」」
驚きながらも声を出さないように自分の口を手で塞いで振り向くと、ケーキと紅茶をトレイに乗せている乃絵美が
首を傾けて怪訝な顔をして立っていた。
変なポーズで固まっている三人の間を縫って正樹の部屋のドアをノックしてから声を掛けた。
「おにいちゃん、お茶を持ってきたんだけど・・・」
「乃絵美か? 入ってきていいぞ」
「うん」
乃絵美がドアを開けると我先にと菜織達が正樹の部屋の中になだれ込んだ。
「「「正樹(君)!」」」
「なんだ、どうしたんだ菜織、真奈美ちゃんや冴子まで?」
彼女達の目の前には机に座って勉強していたらしい正樹とその横で教科書を持って立っているみちるだった。
「あ、あははは〜」
「いえ、あの、その・・・」
「あ、あたいは・・・あ」
「ふ〜ん・・・なるほどなるほど、さしずめ正樹君が心配だったって所かしら?」
みちるの、部屋の外で何をしていたか全て解っていると踏まえた笑顔に三人は顔を引きつらせた。
「?」
「くすっ」
正樹が何だろうと首を捻っている側で乃絵美が苦笑いを浮かべてその様子を眺めていた。
と、正樹の部屋にみちる、菜織、真奈美、冴子、乃絵美の五人がひしめき合ってフロ〜ラルな香りが漂っていた。
ちなみに後一人、みゃ〜こはガムテープでぐるぐる巻きにされたまま、廊下に転がされて一人しくしくと涙していた。
お茶をしてから再び勉強する二人を後ろからジト目になって睨んでいる姿はあんまり乙女らしくなかった。
その視線をひしひしと感じているはずの正樹は、勉強に集中して全く意に介してなかった。
もちろんみちるはそれを知っているが、みんなに見せつけるように必要以上に正樹に体をくっつけて
自分をアピールしていた。
「あ、正樹君ここはこっちの言葉を使うのよ」
「なるほど、こうなるんですね?」
「Good! それを忘れないでね♪」
「はい」
勉強があまり好きではない正樹がわき目もふらず勉強する姿にちょっとだけ見とれている菜織達を横目で見ながら
みちるは密かに必殺の一撃を考えていた。
「さあ、今日はここまでね」
「う〜ん生まれて初めて勉強をした感じです、ありがとうみちる先生」
「ううん、正樹君はやれば出来るタイプなんだからそれが当たり前なのよ」
「それにみちる先生の教え方って本当に解りやすかったです」
「うん、それじゃもう私の授業では居眠りしちゃ駄目よ?」
「あっ、明日からはちゃんと起きてます」
「OK♪」
今日一日で正樹にもの凄く親密になった様に感じたみちるを、恋する乙女達は一段と危機感を煽られてこれ以上
ライバルが増えるのはなんとしても避けたかった。
「じゃあ正樹君、明日の授業楽しみにしているわ」
「はい、今日は早く寝ます!」
「ふふっ、それじゃ今日がんばったご褒美を上げないとね♪」
「えっ、ご褒美って・・・」
一瞬菜織達にニヤッと笑いかけたら素早く正樹の首に腕を回して抱きついた。
ちゅ。
「「「「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」
「それじゃ正樹君、See You Tomorrow♪」
入り口の所で振り返ったみちるは正樹に投げキッスをして、鮮やかな身のこなしで正樹の部屋から帰ってしまった。
残された正樹と菜織達は暫く固まっていたが、緊張が解けたその瞬間正樹の部屋は修羅場と化した。
余談では有るけれど、この修羅場の中簀巻き状態のみゃ〜こがみんなの投げ枕となったのは、
推して知るべし・・・。
「うふふっ、やっぱり彼女達には勿体ないわ〜♪」
上機嫌でスキップをしながら家路を歩くみちるの顔は嬉しそうだった。
「欲しい物は即GETしないと駄目よね〜♪」
みちるは自分の唇に指を当ててさっきのキスの感触を思い出していた。
「これでも一応ファーストキッスなんだからね、正樹君♪」
両手を伸ばしてちょっとだけ夜空を見上げてからみちるは正樹の家の方向に振り返った。
「楽しみにしててね正樹君! みちるが教えてあ・げ・る、色々ね♪」
翌日顔中ひっかき傷で来た正樹を、みちるが勝手に自習にして保健室に連れ込んだのは別のお話である。
それから数年後、正樹とみちるの結婚式で菜織達が暴れるのはこれまた別のお話である。
END
最初に書いたWith YouのSSがこんなになるとは・・・。
あははは〜っ。
まあ乃絵美とじゃ危ない話になりそうだったから敢えて大人の女性、
みちる先生を主役にしてみました。
このゲームの絆って意味は一体どこに行ったのでしょうか(笑)
2000/1/28 第一稿