ちりん・・・

  「ほら、鈴で遊ぼうぜ・・」

  真琴も祐一の動きに習って、のろのろと片手をあげて

  ちりん・・・

  弱々しい音

  「今度は俺の番だな」

  祐一が弾く

  ちりんっ

  小気味のいい、澄んだ鈴の音

  「ずっとこうして遊んでいような・・」

  もう、他に何もいらないから

  「な、真琴」

  次はお前の番だぞ。

  真琴。

  真琴・・・?

  「ほら。聞いてるのか?」

  ・・・・・。

  「ちりんちりん、って弾くんだよ」

  「どうしたんだよ、真琴」

  嗚呼、また、大事な人が失われていく・・・

  「真琴」

  行かないでくれ・・・

  「真琴ぉ・・・・」

  祐一の手から、真琴の腕がすっと落ちた。

  ちりん・・・・。

  鈴が、最後の音をたてた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

                     
Kanon二次創作

                 
NIGHTMERAS DREAMSCOPES

                                           written by庄屋
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――    
 
 「うあああああああああああっ!!」

 悪夢からの目覚め・・・・それはいつも気持ちのいいものではない

 ましてや、それが、もっとも思い出したくない事ならなおさらだ

 「またか・・・・どうしたら帰ってきてくれるんだ?真琴、どうしたら・・・・」
 
 此処にいる青年−相沢祐一−も悪夢に悩ませられ続ける人間の一人だった

 「お前が戻ってきてくれるなら・・・俺は何も要らない・・・」
 
 
 
 ・・・ものみの丘で、真琴との別れから、すでに数ヶ月の時が過ぎた祐一も、最初の1週間は部屋でふさぎ込み、
  食事も取らない日々が続いた、しかし、時間がたつに連れて、祐一の様子も元に戻ったようだった・・・表向きは。

  上辺は平静をよそおっていたが、時間がたったぐらいでは、祐一の心に刻まれた傷は癒される事はなかったのだ。
  その証拠の一つが、毎夜毎晩、祐一を悩ます悪夢だった、真琴と出会いから、楽しかった、けれどももう戻ってはこない
  日々の情景が、夢のなかで、展開しつづける・・・そして、最後に祐一を打ちのめしたものみの丘での出来事が・・真琴との
  別れが、夢のなかでも、訪れるのだ。
  
 「ふう・・・・」
 しばらくして落ち着いたのか、祐一は深呼吸するかのように、いままで止まっているんじゃないかと思うくらい苦しかった呼吸を
 再開した
 「・・・・・さて、学校の準備をしないとな・・・」
 そう言って、祐一は着替えて、一階へと足を運んだ・・・
 
 洗面所の鏡に映る自分の姿を見て、祐一はまたしても溜息をはく
 鏡に映るのは、心の傷が消えない原因の一つ、それを見つめる祐一の眼と、鏡に映る自分の顔、それこそが証拠の一つ、
 真っ赤な瞳と真っ白な髪の毛だった、瞳のほうはカラーコンタクトでなんとかなるが、髪の毛のほうは、何度黒に染めても、
 また次の日には真っ白に戻っているのだ、こればかりはどうしようもないので、祐一はそのままにしている
 心の迷いを振り払い、冷たい水をまだ少し眠気の残る自分のにかけ、目を覚まそうとする
 
 そうした後に、水瀬家のダイニングへと足を運ぶ、ふと見ると、秋子さんがすでに朝食の準備に取り掛かっていた
 「あら、祐一さん、おはようございます」
 ダイニングの入り口にいる祐一に気付いたのか、秋子さんは祐一に挨拶する、いつもどおりに右手を頬に当てて微笑む
 「おはようございます」
 祐一も秋子さんへ挨拶をし返す
 「ちょっと待っててくださいね、すぐに朝ご飯用意しますから」
 「いえ、そんなに急がなくてもいいですよ、名雪もまだ起きてこないだろうし・・」
 「それもそうですね・・それじゃあ、ご飯はもうちょっと待ちましょうか?」
 秋子さんの苦笑い(そう見えないこともあるが)をみて、祐一も同じく苦笑していた
 


     
 学校が終わると、祐一はその後、一日中ものみの丘にいることが多かった、特に何をするでもなく、ただ、木に体重を
 まかせ、ずっと町を見下ろす、それだけだった
 いつか、美汐が言っていた、「あの子は、相沢さんに災いを見舞いにきたんですよ」と・・・確かに、真琴は俺に
 災いを運んできた、それは、もっとも苦しい災いだ、大事な人と、愛した人と一緒にいる事が出来ない、
 心を壊す災いなのだ、心の中が、まるで穴が空いたような空虚な感覚に襲われるひどく悲しく、苦しい災い・・・
 
 そんなことを考えているとふと、人の気配がした・・・・
 「誰だ?」
 「また、ここにいたんですか・・・相沢さん・・」
 先程、祐一の考えごとのなかにも出てきた美汐だ
 「天野か・・・・」
 祐一が緊張をとく
 「まだ、こんなところにいるのですか?相沢さん」
 美汐の瞳には、わずかに悲しそうな光が宿ったが、祐一が気付く事はなかった
 「ああ、ここにいるとな・・・落ち着くんだよ」
 「ですが、ご自分の体も少しは気遣ってください、あなたが体を壊しても、真琴は喜びませんよ?」
 美汐の口から『真琴』という名が出た時、祐一の体が少しこわばる
 「やめろよ・・・真琴はもういないんだ・・」
 祐一の言葉にわずかな怒りと悲しみが宿る
 「それが解っているのに、何故あなたはこんなところにいるのですか?」
 美汐とて、同じ悲しみを経験した者同士、祐一の気持ちがわからないでもなかった、なにせ、自分自身がそうだったのだから、
 しかし、それでも美汐は聞かないでいる事が出来なかった、どんなに解っていると思っていても、所詮、他人は他人、
 本人以外に本人の気持ちなどわかるわけはないのだ、だから、だからこそ、美汐は聞いた
 「なぜ、真琴の思い出と戯れているのですか?」
 美汐が言葉を続けようとする前に、祐一がそれをさえぎった
 「負け犬なんだよ、俺は・・・・、災いとの、悪夢との、なにより自分との戦いに負けた、負け犬なんだ」
 祐一の言葉に今度は大きな怒りが宿る
 「だから・・・だからなんだというのですか?私の・・私の知っている相沢さんは・・・私を癒してくれた相沢さんは、
  こんな風に、ただふさぎこんでいるだけの、意気地なしじゃありません!!」
 美汐の口調が始めて強いものになる
 自分だって、こんな言葉はかけたくない、でも、相沢さんがもう一度立ち上がるには、どんなことでもしなければ、
 私を癒してくれた、私が好きになった相沢さんに戻ってもらいたい、もう一度、笑顔が見たい、その気持ちが、今の
 美汐を動かしていた
 「うるさいっ!!お前に、お前なんかに何がわかるってんだ!!ほっといてくれ!!」
 祐一の罵倒にも、美汐は身じろぎ一つせずにじっと、涙の溜まった瞳で祐一を見つめていた
 「私では・・・」
 美汐が、涙声で祐一に訴えかける
 「私では・・・代わりにはなれませんか?、真琴の変わりに、あなたの心の支えになってあげられませんか?」
 美汐は・・・泣いていた
 「天野・・・・」
 「私は、あなたの事が好きです、あなたの笑顔が、見たいんです、私があなたの笑顔の元になりたいんです、
  真琴の代わりでも、なんだっていい、あなたがそんな風になってるところを見たくないんです・・」
 「う、うるさい!!黙れっ!!俺のことが好きだって?だったら、証拠を見せてみろっ!!」
 そういうと、祐一は無理矢理美汐を押し倒した
 「・・・・・・・・」
 祐一が美汐の胸をまさぐる、ふと、美汐と目が合う、凛とした彼女の瞳をみつめると、まるで、責められているような感覚と、
 すべてを見透かされているような感覚が祐一を襲った、恐ろしいまでの不快感に襲われた祐一は、まるで、貪るように、
 美汐の体を無理矢理犯した・・・・・・・・



 すべてが終わったあと、ただ、祐一は美汐をじっと見つめていた、美汐の衣服はずたずたに引き裂かれ、所々肌にも傷がある、
 美汐の体のいたるところを、祐一の欲望が、汚していた
 「あ・・・・・」
 そうして、祐一はやっと気がついた、自分にしでかしたことに、何もしていない、無罪の、それも自分を好きだ、といってくれていた
 少女を、自らの手で、もっともひどい裏切りと共に、汚してしまったのだということを・・・・
 「あ・・あ、天野・・・お、俺・・・なんて事を・・・」
 祐一は涙を流していた・・・泣きながら、自分の下で、体に力の入っていないのか、あまり動こうとしない美汐に、ただ、謝っていた
 ふと、美汐の手がそっと祐一の頭を抱き、自分の胸の所に下ろしていった
 「いいんですよ、祐一さん、つらい時には、涙を流しても、例え他人がいても、泣いたって、無理しなくてもいいんですよ?」
 美汐の声は祐一にはまるですべてを知る女神のような、神秘的な声に聞こえた、そして、それは、祐一の心の「たが」を外すのに
 十分な効力をもっていた、
 「う、うわあああああああああああああああ」
 祐一は、泣いた、服を纏わない、彼女の胸の上で、ただ、ひたすらに、思い切り泣いた
 「それに・・・・」
 祐一が泣き終わると同時に、美汐は喋りだした
 「相沢さんは、自分が負け犬だ、とおっしゃっていましたけど、あなたはまだ、戦ってもいないじゃないですか、
  これからは私も一緒に、あなたの傍で、戦いますから、どうか、気を落とさないでください」
 祐一は体を起こし、ゆっくりと美汐にむかってうなずいた
 「天野・・・・俺は、負け犬だ、だから、もう一度、戦いたい、でも、一人じゃ無理だ、だから、俺の隣で、支えてくれないか?
  できれば、ずっと・・・・・」
 祐一は美汐の方にむかって、美汐の眼をみて、言った。
 「はい・・・・祐一さん」
 美汐は祐一に向かって微笑む
 「天野・・・・」
 「あ、あの、できれば私のことも下の名前でよんで欲しいのですけど・・・」
 美汐はちと恥ずかしそうに上目遣いで、祐一にそう言った  
 「あ、ああ・・・」
 祐一もいまさらでも恥ずかしいのか、頭をポリポリと掻くと、
 「解った、美汐」
 「はい」
 美汐が微笑む、それもいままでは一度も見たことの無い、はにかんだ笑顔で・・・・
 「帰ろうか・・」
 そう言うと、祐一は美汐に自分の着ていたブレザーの上を美汐に着せた
 「その格好じゃ、風邪引いちまうだろ?」
 なぜか、恥ずかしそうだった
 「でも、こういう風にしたのは祐一さんですよ?」
 「うっ、それをいわれると・・・」
 そんな会話をしながら、彼らは、ゆっくりと丘を降りて、町へと歩いていった
 

 「この格好、お母さんにどうやって言い訳したらいいんですか?・・」
 そう尋ねられた
 「う〜ん」
 「やっぱり、無理矢理襲われた、とでも言っておきましょうか・・」
 「おいおい」
 美汐がすこし意地悪な笑みを浮かべる
 「俺はどうすりゃいいんだ?」
 「襲われていたところを助けた、ということにしておいては?」
 「なるへそ」
 祐一は関心している様子だった
 そうこうしているうちに美汐の家についてしまった
 「祐一さん」
 「ん?」
 先を歩いていた美汐が振り返り・・・
 「責任、とってくださいね?」
 「へ?」
 「私、初めてだったんですから」
 そういう美汐の顔は夕焼けの所為もあって、いつもより赤く染まって見えた
 しばらくあっけにとられていた祐一だったが、すぐに笑顔で・・
 「おうっ!幸せにしてやるぞ」
 言われた美汐も恥ずかしかったが言った祐一もかなり恥ずかしかった
 「あ、あう・・あ、」
 うろたえる美汐
 「オッホン」
 突然、咳払いが・・・
 「人の家の前で何をいちゃいちゃしているのかな?お二人さん」
 「お、お母さん!!」
 げ、美汐の母さん?という祐一の呟きはこの際無視だ
 「さ〜て、ゆっくり話を聞かせてね?み・し・お?」
 美汐母は楽しそうだ、娘の恋愛話にすくなくとも興味はあるんだろう
 「あ、祐一さん、それじゃ」
 「ああ。じゃあな、美汐」
 美汐に向かって、手を振る
 「あら、もう呼び捨て?どこまでいったの?」
 やっぱり、美汐母は楽しそうだ
 「あ、折角だから、あなたも上がっていって?え〜と、」
 「あ、相沢 祐一です」
 ペコリとおじぎする
 「相沢君?ささ、あがっていって?」
 美汐母の誘いを断りきれずに結局家にお邪魔して、夜の8時過ぎに美汐の家をでた、
 いろいろ聞かれてしまったが、一応、交際の許可はもらった
 おばさん曰く「若いんだから、これからよ?」だそうな、
 でも、たしかにその通りだ、俺はまだ、これからなんだ、悪夢との、災いとの戦いはまだ終わっていない、
 一度負けてしまったのだから何千倍にして返してやる、続いてるんだ、俺の戦いは、この悪夢の情景のなかでも、かすかな
 希望と共に、これは続いている、紛れも無く、続いている、
 ―――オーケイ、今度は乗ってやるぜ、この戦いに、こっちが勝つまで、続けてやる



                         FIN                     
  
 
 
    


 あとがき

  いやあ、SS初挑戦なんでたいした出来じゃございませんねえ、なんか内容むちゃくちゃだし、ちなみにタイトルの
 「NIGHTMERAS DREAMSCOPS」っていうのは「悪夢の情景」という意味だったと思います(をい
  っていうかラストはバトルロワイアルのラストのほとんどパクリに近いですね・・・
  まあ、一応こんなかな・・・出来ると感想はいただけるとうれしいな〜(もちろん、批判、これは駄目なんちゃうか?なんてのも
  大歓迎です)それが次回作への糧になりますから。え?お前の作品なんか見たくない?そんなこと言う人、嫌いです!(爆)
  っていうかそんなこといわないで〜なんか適当でも、どうか感想お願いしますね?それでは、かおりん萌えのくせに
  美汐SS(なのか?)を書いたりしやがった庄屋でした、これからもよろしくお願いします〜m(_)m

 


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