Piaキャロットへようこそ2 After The Story

「想いを形にして、、、」



あのときの夏から何度目の夏だろう。

あの時の記憶がよみがえるように、耕治はあの公園にいた。
そこで、来るはずのない人を待ちつづける。

ひたすらに、、、ひたすらに、、、、
また、あの明るい声と共にひたすらに想いつずける人が現れることを願いつつ、
今日もあの公園で待ちつづける。
そして、目を閉じれば、あの記憶がよみがえる。


「…」
「わ・い・・わい…・」
「お・兄・・ちゃ・ん」
「・・こう・じさん」
愛しい人の呼ぶ声、そして守りきれなかった人の声がする。
耕治はその声に耳をすます。
耳をすますとそこには、、、あの時、三人ではじめて出かけた遊園地が広がる。

メリーゴーランド。

観覧車。

ジィエットコースター
そして、とても楽しそうに肩の上ではしゃぐ、小さな女の子。
隣には、長く美しい髪をなびかせる、女性。
そう、春恵さんとかおるちゃんである。
「すみません。かおるがどうしても肩車して欲しいと言うので、」
「いえ、だいじょうぶですよ」
「早く、はやく。次はあれに乗ろーよー」
「こら、かおる。余りはしゃがないでちょうだい。落こっちゃうわよ」
「ううー。ごめんなちゃい」
「あはは、かおるちゃんは素直で言い子だな」
「えへへ」

こんな、楽しい日々が永遠につづくと、思っていた。

その日の帰り。
「すっかり遅くなちゃいましたね」
「ええ、でもとても楽しかったです」
「かおるったら、安心して寝てしまって、重くないですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「………………」
「どうしたんですか?春恵さん」
「いま、幸せ過ぎて怖いの」
「怖い?」
「そう。幸せがにげていきそうなきがして」
「ずっと、ずっとそばにいてくれますよね?」
「ええ、あなたが私のことを必要とするならば、いつまでもそばにいますよ」
「耕治さ・ん」
春恵は涙が今にもあふれそうな瞳で見つめてきた。
そして、耕治はその気持ちに答えるかのように、口付けをする。

「うう・ん」

そのとき、かおるちゃんが起きた。
「…おはよう…ございます」
眠そうな瞳を擦りつつ言う。
しかし、寝惚けているらしい。
だが、耕治は気にせず「おはよう、かおるちゃん」と言う。
かおるちゃんも「おはようございます」とはきはきとした声で言う。
が、そんな事もつかの間、またすぐにはしゃぎはじめる。
「かおる、余りはしゃぐと危ないわよ」といったそばからかおるちゃんが転ぶ

それを見た春恵さんがすぐに駆け寄る。そして、耕治も駆け寄る。
「痛くない、痛くない」
「でも、痛いよー」
そして耕治も傷口に触ろうとする。
が、触ろうとした途端に「あぶないー!」と言う言葉と共に突き飛ばされる。
春恵さんが突き飛ばしたのである。
なぜと思った途端に目の前にトラックが通過したのである。
次の瞬間。
ドカンと言う音と共に耕治には綺麗な花が散ったように見えた。

そして、次の瞬間に耕治が見たものは赤に染まった世界だった。
その赤色のものを目で追うと、そこには春恵さんとかおるちゃんが倒れている。

「春恵ー、かおるー」
渾身の力をこめて、、、走り出す。そして、駆け寄る。
「かおる、大丈夫か。おいかおるー」
耕治は大声でかおるちゃんの名前を呼んだ。そして、、、、
「う・ううん・・」
かおるちゃんが気づく。それを見て少し安心した。かおるの体は血まみれの割に傷はなくけがをしていなかった。多分、とっさに春恵さんがかばったのであろう。
耕治はひと安心したのもつかの間、かおるちゃんをその場に起き、すぐに春恵さんのもとに駆け寄る。
「春恵ー、大丈夫か。はるえー」耕治は春恵さんの体を揺さぶりながら、ひたすらに
名前を呼ぶ。
「こう…じ・さん・良かっ・・た。無事…だ・ったん・です・・ね…」
苦しそうに話す春恵さん。
「かお・る…かおるは…」
その先を言おうとした春恵が、言う前に耕治が言う。
「かおるも俺も無事だ。もう、これいじよう喋るな!」
その言葉をを聞いた瞬間、春恵さんの顔が一瞬ほころぶ。
「よかった…」
その言葉と共に糸の切れた人形のように倒れ、動かなくなった。
「春恵。おい、はるえーーー!」
その言葉がむなしく空に木霊する。


「……………」
耕治は目を開けた。
「また、あの夢か」と夕方の公園で一人つぶやく。
「帰ろう…」またつぶやく。
耕治はあの夢の後を思い出しつつ、帰宅路につく。

あのあと…春恵さんの事を引いた奴は捕まった。
「今回の事故の原因は、運転手の飲酒運転に有ります」と警察が事故の原因を言う。
しかし、事故の原因が判ったところで、あの優しい春恵さんは戻って来るはずもなく、
あの明るいかおるちゃんが戻って来るはずもない。
あの事故の後、かおるちゃんは明るく話すこともなくなってしまい、心を閉じてしまった。
この事を思い出すたびに耕治は後悔する。
あのとき。あの時自分が…気づいていれば春恵さんもかおるちゃんも明るく過ごせたはずなのに………。
耕治はあの事を後悔しつつ道を歩いているとひとつの大きな建物の前にたどり着く。
耕治は何のためらいもなく、その建物の中に入っていく。それが当たり前のように…
その建物は病院である。耕治は階段を登りひとつのドアを目指して進む。
そして、あるドアの前でとまりそのドアを開ける。
その部屋はガラスのはられ、中が見えるようになっている。そこに、いる綺麗な髪をした女性を耕治は見つめる。

「春恵」

ガラス越しに愛しい人の名を小さくつぶやく。
春恵さんはあの事故の後、一命は取り留めたもののいわゆる、植物状態になってしまった。
あの事件から何年が経っただろう、未だに目を覚まさない。
それでも、少しでも希望というものが残されて居るならば待ちつづける。

耕治はその場に座り込み、目を閉じた。
「…………」

「……」

「…」

「耕治さん。耕治さん。起きてくださいよ」
春恵さんの声がする。慌てて、目を開けた耕治は目を見張った。
そこには、愛しい人の姿が…
そして、向こうからかおるちゃんが駆け寄ってくる。
「ママー、パパー」
何年ぶりに見たかおるちゃんの笑顔。そして、春恵さんの嬉しそうな顔。
まるで、今までの事故や出来事が嘘のように思えてくる。
「耕治さんどうかしましたか?」
どうやら、深刻な顔をした耕治を気づかい春恵さんが話しかけてきた。
「いや、何でもない。」
「そうですか」
「……」
耕治は嬉しくなった。そして、
「春恵」
「はい?」
「愛してるよ」
それを聞いた春恵さんは、くすくすと笑い。
「私も愛しています。あなた」と言った。


「…ま……え…さ………ん…」
誰かの呼ぶ声がする。
「前田さん。前田さん」
看護婦さんに起こされて、はじめてさっきのが夢だときづく。
耕治は少しがっかりした。だが、次も瞬間には顔がほころぶ。
看護婦さんが言うには春恵さんの意識が戻り始めたというのである。
すぐさま春恵さんのもとに行く
「春恵―」
耕治は春恵さんの手を握りながら名前を呼ぶ。
すると、手を握り返してきた。
耕治は嬉しくなり、何度も春恵さんの名前を呼ぶ。
そのたびに手を握り返してくる。
耕治は泣きながら、

「家族三人、また遊園地に行こうな」と言った。

Fin

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ピロちゃんの最初で最後のSSだと思います。
でも、気が向いたときにまたSSを書こうかと思います。
宜しければ、感想などを頂ければ幸いです。
              From ピロちゃん
1999/11/19


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