Original Works 『聖霊機ライブレード』






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 聖霊機ライブレード外伝 第一話「再会」






 Presented by じろ〜






 ユミールが気が付いたとき、彼女は自分の家のベッドに居た。

 「お姉ちゃん大丈夫?」

 心配そうに自分を見つめるメルヴィにユミールは呆けたような表情で聞いてみた。

 「メルヴィ・・・ここは?」

 「うん、お家だよ」

 「そう・・・はっ!?」

 慌てたように起きあがり辺りを見回すと、ユミールは肩を落として悲しそうに俯いてしまった。

 「どうしたの、お姉ちゃん?」

 「ト、トウヤは・・・」

 「あっ・・・あのね、お兄ちゃんの事よく解らないの」

 「それってどう言う・・・」

 「私から説明するわねユミール」

 思わずメルヴィに詰め寄ったユミールを優しく諫めながらパルディアが口を挟んだ。

 「あ、お母さん」

 部屋に入って来た義姉パルディアがベッドの側に近づくとユミールに諭すように話しかける。

 「ユミール、あなたは聖地・・・つまりライブレードが在った場所に倒れていたの」

 「私・・・だけですか?」

 「そう、トウヤさんもライブレードも居なかった・・・あなただけがそこに居たそうよ」

 「そうですか・・・」

 呆然としたユミールの目に涙が溢れ出し一つ二つと滴となって彼女の頬を滑り落ちた。

 「ト、トウヤ・・・うっ・・・く・・・」

 いつも側にいるって約束したのに・・・。

 ユミールの心の中はトウヤに対する思いが一杯で、現実に自分の側にいないと理解したらどうにも涙が

 止まらなかった。

 「お、お姉ちゃん?」

 「メルヴィ、今はそっとしておきましょう」

 「う、うん」

 二人が部屋から居なくなるとユミールはベッドに伏せて枕に顔を押しつけて声を上げて泣き出した。

 「トウヤ・・・約束したのに・・・側にいるって・・・言ったのに、うくっ・・・」

 その夜、ユミールは一晩中眠ることは出来なかった。

 それから数日、ユミールは仕事に復帰はしたがその顔には誰からも慕われた笑顔は消えたままだった。

 また、トウヤがいない寂しさを紛らわすかのように連日遅くまで家には帰ってこなかった。

 「あなた・・・」

 「ふむ、これはいけませんね・・・」

 妻の言葉にいつも笑顔の夫フォルゼンも顔を曇らせて、何とかしないと一計を図っていた。

 二人の目から見てもユミールのその姿は痛ましく悲しい物だった。

 「・・・ちょっと出かけてきます」

 「えっ・・・あ、はい。いってらっしゃい」

 夫がいきなり出かけると言い出して一瞬疑問に思ったが、その行動がユミールの為だと理解したのですぐに

 微笑んで楽しそうにその背中を見送った。

 そして必ず自分の期待した事が訪れると確信がパルディアの心に生まれた。

 「さあ、私もがんばって料理を作って置かないと・・・」

 夫がしたように自分自信が出来る精一杯の事をするために、パルディアはキッチンの方に向かっていった。

 事実、それが間違っていなかったと解るのは夫が帰ってきた時にすぐに証明された。

 そんな二人の思惑には気が付くわけも無いユミールは今日も夜遅くに家に帰ってきた。

 食事もそこそこに部屋に戻って一人になると、彼女の目からは涙がこぼれ落ちる。

 ユミールの脳裏には最後に見たトウヤの笑顔が色褪せることなく存在していたが、それが今の現実を

 思いさせられてしまい悲しみが積もる一方だった。

 「トウヤ・・・」

 自分にとってもっとも大切な人の名前を口に出してみるが、それに応えるべき本人はいない。

 「うっ・・・トウヤ・・・」

 苦しくて苦しくて張り裂けそうな自分の胸を掴むように服をぎゅっと握り、そのままベッドに伏せてしまう。

 「会いたい・・・トウヤに会いたい・・・」

 あの日以来ユミールがは満足に寝ることも出来ず、涙が枕を濡らす日々が今まで過ぎていた。

 「トウヤ・・・」

 無駄だと知りつつも彼女の口からは恋しくて愛しい人の名前が呟かれ、声を殺して泣いた。






 「・・・さて、それじゃ行くか」

 「どうするの?」

 「・・・ライブレードを使う気ね」

 「ああ・・・あれだけのものを壊すとなれば、な」

 「そっか・・・」

 「・・・ちょっと怖いね」

 「ユミール・・・こっちにこねぇか?」

 「・・・え?」

 「ユミールを感じていたいんだ。最後の瞬間まで」

 「・・・うん」

 「気をつけろよ・・・」

 「ね、ねぇ・・・重く、ない?」

 「・・・気持ちいい」

 「も、もぅ・・・でも、私も・・・」

 「・・・行くか・・・」

 「うん」

 「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 そしてライブレードの神剣ダイフォゾンがコアに向かって振り下ろされた瞬間、二人を白い光が包み込んでいった。

 「トウヤ!?」

 ベッドの上で起きあがったユミールは、自分の部屋を見回してそれが夢だったと気づき俯いてしまう。

 「夢・・・そうよね・・・トウヤ・・・うっ・・・くっ・・・」

 幸せな瞬間を見ていられた夢から覚めたユミールを孤独が心を責め立てる、その思いがまた頬を濡らしていった。

 そしてまたユミールの眠れない夜が明けた。






 あまりの憔悴したユミールの為に、イヴェルは無理矢理休日を言渡し今日は家の中でメルヴィとお茶をしていた。

 「・・・」

 ユミールもみんなの優しさは痛いほど感じているのだけど、今の彼女の孤独を癒すことは出来なっかった。

 「お姉ちゃん、元気ないね・・・」

 「ええ。でも、それもきっと今日までよ」

 「どうして?」

 「もうすぐわかるわ」

 「???」

 解らないと言った顔で自分を見つめる娘に微笑んでいるパルディアは、まもなく帰ってくる夫を待っていた。

 そしてそれはきっとユミールの笑顔を見られると感じていた。

 こんこん。

 「はぁ〜い・・・」

 「メルヴィ、ちょっと」

 ドアに向かって行こうとしたメルヴィにパルディアは声を掛けて引き留める。

 「なぁに?」

 「ユミール、ちょっと見て来てくれない?」

 「え、ええ・・・はい・・・」

 かちゃ。

 そしてパルディアに言われて入り口のドアを開けたユミールの目の前にいたのは、待ち望んでいた人だった。

 「あっ・・・」

 両手を胸の前で組んで驚いているユミールの目からはぽろぽろと涙がこぼれた。

 「う、うそ・・・!!」

 「お、おい、ユミール・・・?」

 両手を伸ばしてトウヤの体に触れるとそのまま抱きついてその胸に顔を埋めて思いの丈を語った。

 「トウヤ・・・トウヤ、トウヤ・・・! 会いたかった・・・寂しかったの・・・私・・・私・・・」

 そんな二人の姿を温かい目で見つめていたフォルゼンたちは一安心と言った気持ちでいた。

 「やれやれ、良かったですねぇ」

 「ふふふ、私はユミールがトウヤさんを連れてきたあの日からこうなるって気がしていたわよ」

 「良かったね!ユミールお姉ちゃん!トウヤお兄ちゃん!」

 いつまでも泣きやまないユミールの体を愛おしむように抱きしめて、トウヤは自分も会えた喜びを感じていた。

 「トウヤ・・・」

 「ユミール・・・」

 暫くしたら不意にユミールの体から力が抜けてトウヤは慌ててその体を支えた。

 「ユミール?」

 そう言って彼女の顔を覗き込むと、涙で濡れてはいたが微笑みを浮かべて眠っていた。

 「どうやら張りつめていた物が切れたようですね・・・」

 「そうなのか?」

 「ええ、もうここ何日も熟睡はしていないと思うわ・・・」

 「すいません・・・」

 「いえいえ、トウヤくんが来てくれたお陰でユミールが安心できたのですから・・・」

 「それよりもトウヤさん、ユミールを部屋の方まで運んで貰えるかしら?」

 「ああ、そうだな・・・」

 よっと声をだしてユミールを抱き上げると起こさないようにそっと部屋まで運んだ。

 「お姉ちゃんお姫様みたい♪」

 「そうね・・・トウヤさんにはたった一人のお姫様だからね」

 「うん、これで妹も彼に任せて大丈夫かな・・・」

 「幸せになって欲しいですね」

 仲睦まじい夫婦はお茶を飲んでくつろぎながら、ユミールに幸せが訪れた事に感慨に耽っていた。






 ユミールをベッドに寝かせてから、トウヤは側にあった椅子を引き寄せてそれに座った。

 そして彼女の手をそっと握ってその寝顔を見つめていた。

 「・・・ん、トウヤ・・・」

 「俺はここにいるよ、ユミール」

 そして手を軽く握ると微笑んでユミールも握り返してくる。

 今まで側にいなかった事を謝るようにトウヤはその日ずっとユミールの手を握ってあきる事無くその寝顔を

 見つめながら過ごした。

 そして翌日、熟睡したユミールが目を覚ましたのはお昼を過ぎた辺りだった。

 「ん・・・あ・・・」

 寝起きが悪いユミールはぼーっとしながらもベッドの上で起きあがろうとして、ふとそこにいた人物を見て

 急激に覚醒したのか大きな声を出そうとして口を押さえた。

 「ト、トウヤ・・・?」

 夢じゃないかと確かめようとして、手を伸ばそうとしたユミールはやっと気が付いた。

 自分の手をトウヤがしっかりと握ったままベッドに顔をつけて寝ていることに・・・。

 「あ・・・覚えていてくれたんだ」

 幼い頃不安で眠れないときに良くフォルゼンに手を握られると安心できたと言う昔話をしたことがあったが、

 それを覚えていてしてくれたトウヤを、ユミールは嬉しそうに見つめて幸せを感じていた。

 「ん・・・」

 「ふふっ・・・トウヤの寝顔って可愛いのね・・・」

 寝言を言って顔を動かして熟睡しているトウヤの寝顔を見て呟いたが、そこではっと気が付いて顔を赤くした。

 「わ、私の寝顔も見られちゃったのよね・・・」

 そう思ったら急に恥ずかしくなりあたふたしだしたユミールは誤魔化すようにトウヤを起こした。

 「ト、トウヤ・・・あの、起きて・・・」

 「ぐぅ〜」

 「ねぇ、起きてトウヤ・・・」

 「く〜」

 ユミールは肩を揺すって起こそうとしたが、トウヤはなかなか思い通りに起きてくれず困ってしまう。

 結局それが無駄だと悟ったユミールは諦めて再びベッドに横になると、顔を向けてトウヤをずっと見つめた。

 「ありがとうトウヤ・・・」

 そんな二人の様子を少し開いたドアの隙間から見ていたおしどり夫婦は小さく呟いた。

 「う〜ん・・・意外に奥手なのかな、彼は?」

 「そうみたいですね・・・これはユミールがもうちょっと積極的にいった方が良いかも知れないわ」

 「君みたいにかい?」

 「もうっ、あなたったら・・・お昼はいらないんですね?」

 「ごめんごめん、君の食事が食べられないのは辛いからなぁ・・・」

 「さあ、もう少しだけ二人っきりにさせて上げましょう」

 「そうしましょうか」

 二人で微笑み合って音を立てないようにドアを閉めると、リビングの方に静かに歩いていった。

 しかしその二人の気遣いも、可愛い一人娘の登場で儚く消えることになった。

 こんこん。

 がちゃ。

 「おはよう、ユミールお姉ちゃん!」

 「えっ!?」

 「あっ・・・」

 振り向いたユミールが見たのは、手を繋いで見つめ合ってベッドの上に寝ている自分とトウヤの姿を見て顔を

 真っ赤にして固まったメルヴィだった。

 「あ、あの、メルヴィ・・・」

 「ご、ごめんなさいお姉ちゃん! わ、私なにも見てないから〜・・・」

 「ちょ、ちょっと待って、メルヴィ!」

 すでに時遅く、ユミールの声に振り向きもせず部屋から出ていってしまったメルヴィの後ろ姿に

 手を伸ばした格好で固まってしまうユミールだった。

 そんな二人のちょっとした誤解の原因のトウヤは・・・まだ寝ていた。






 NEXT STORY






 再会を果たしたトウヤとユミールを待っていたのは幸せだけではなかった。

 「これはっ!?」

 「そんな・・・どうして?」

 終戦したばかりのアガルティア近隣諸国を襲う不安の影が過ぎる・・・。

 聖地に寄せられる情報に驚愕するユミールたちの目の前にそれはいきなり現れた。

 「いくぞ!」

 聖霊機ゼイフォンを駆ってトウヤは一人それに戦いを挑むが、状況はかなり不利だった。

 傷ついていくトウヤを見守っていたユミールが叫ぶとき、トウヤの持っていた共鳴結晶が輝きだす。

 そして光の中から現れた物は・・・・。

 次回、聖霊機ライブレード外伝 第二話「ライブレード再び」



 いきなりSSでしかも連載のライブレード第一話です。

 ユミールのエンディングで、その後の話です♪

 個人的に好きな話でしたから、ゲームクリア後にSSを書いてみました。

 年上のお姉さんって好きですか? って感じです♪

 さて、一応シリアスな展開で進めたいと思っています。


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