「あと五分〜!」

 きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ。

 ばたん。

 タイヤを鳴らして従業員の駐車スペースに車を止めると急いで車を下りた。

 「おっはようございま〜す♪」

 今日も元気に挨拶をしながらキャロットのドアを開けて中に入る。

 私、木ノ下留美! 恋に仕事にがんばる花の乙女で〜す♪






 Pia・キャロットへようこそ!!2 Short Story



 
ルージュの伝言



 Presented by じろ〜






 「おはよう留美さん、今日も遅刻ぎりぎりですけどね」

 着替えて事務所までやって来たら、書類を整理していたマネージャーの涼子さんにチェックを入れられちゃった。

 「えへへ、でも遅刻じゃないよ涼子さん」

 「でももう少し余裕を持った方が、毎日急がなくてもいいんじゃないかしら?」

 「ううっ、それはそうだけど・・・恋する乙女は準備が大変なんです!」

 「はいはい、それは置いといて仕事をして貰えますか、木ノ下留美さん?」

 「はぁ〜い」

 な、なんか涼子さんの視線に殺意めいたものが見えたのは留美の気のせいかな?

 とにかくフロアの方に行かないとね・・・。






 「おはようございま〜す」

 挨拶しながらフロアに来るとウェイトレスのみんなが集まって話していた。

 「あらおはよう留美ちゃん」

 「うん、おはよう葵さん」

 「おはよう留美さん」

 「おはようですぅ留美さん」

 「おはようあずささん、美奈ちゃん」

 「留美さんおはようだわん♪」

 「おはようつかさちゃん♪」

 「おはよう留美さん」

 「おはよう潤君」

 葵さんを筆頭にあずささん、美奈ちゃん、つかさちゃん、潤君、そして留美を含めた

 ここにいる人達が今のキャロットのウェイトレスなの。

 みんな綺麗で可愛くて美人揃いなんだけど、その中で留美を選んでくれたのがその・・・

 えへへ、耕治くんなの。

 そう、「前田耕治」くん・・・留美の大好きな人、うん凄く格好いいんだぁ〜。

 お兄ちゃんよりも素敵でなんと言ってもあの笑顔! あれは反則だよ〜。

 留美は出会った時、その笑顔を見て一目惚れしちゃった。

 でもねそれだけじゃないんだよ、留美が傷ついた時も優しく一晩中抱きしめてくれたんだよ、えへへ。

 もう留美にとっては最高の恋人なの!

 その耕治くんも卒業と同時にキャロットに就職して約束通り留美の側にずっといてくれるの。

 だから毎日が楽しくて幸せな気分で過ごしていま〜す♪






 「あれ、耕治くんはいないの?」

 「耕治君なら今日は荷物が沢山届いたから倉庫整理をやっているわよ」

 留美の質問に葵さんがにやにやしながら教えてくれた。

 「あ、そうなんだ・・・う〜ん」

 「どうしたの留美さん?」

 「あのね、耕治くんにおはようのキスしたかったんだけど・・・」

 「なっ!?」

 あれ、あずささんどうしたの? 眉のあたりがぴくぴくしているし、なんとなく機嫌が悪くなった様な・・・。

 よく回りを見ると葵さんを除くみんなが留美のこと睨んでいるみたい、なんで?

 その中であずささんが睨んだまま留美に顔を近づけてきた、なんか顔赤いけどどうしたのかな?

 「る、留美さん、ひょっとして前田君と毎日その・・・キスをしてるわけ?」

 「う、うん、そうだけど・・・」

 そう答えた瞬間、あずささん達の背後にへんなオーラが見えたのは留美の気のせいじゃないよね?

 「あ、葵さん、なんかみんな怖いよ〜」

 「あははっ、だってしょうがないわよ、みんな耕治君の事を好きなんだから!」

 「え〜っ、そ、そうなの!?」

 葵さんは腕を組んでそうなのよと大きく肯いていた。

 「み、みんな! 耕治くんは留美の恋人なんだからね!」

 思わず叫んだ留美にあずささんはにやりと半角笑いをして留美に宣言した。

 「そんなの関係ないわ、今はそうかもしれないけど奪ってしまえば問題ないわよ」

 「おおありだよぉ〜! それに耕治くんとはいつも喧嘩していたじゃない?」

 「そんな過去の事は忘れたわ」

 あずささん、キャラクターが変わってない? おかしいよ〜!

 「美奈もあずさお姉ちゃんに負けないようにがんばりますぅ」

 ううっ、美奈ちゃんもそうなの・・・。

 「あっはっはっ〜、耕治ちゃんはつかさがゲットしちゃうから〜」

 つかさちゃん、耕治くんはどこかの怪獣とは違うよ〜!

 「やっぱり耕治に似合うのは私みたい、うん」

 潤君がニコリと笑って可愛く首を傾げる、うっ、それは耕治くんの好みかも・・・。

 「私も忘れないで欲しいわ・・・」

 ひっ、いきなり背後で呟かないでよぉ、涼子さん!

 そういえばさっきから黙ってニヤニヤしている葵さんにも一応聞いてみる。

 「も、もしかして葵さんも・・・?」

 「ふふふっ、今夜が楽しみだわぁ〜♪」

 こ、これは耕治くんと留美の最大のピンチになりそうって言うかもうなってるよぉ〜!!






 留美は不気味な笑顔で笑っているみんなを置いて、倉庫の方に走って逃げてきた。

 「はぁ・・・耕治くんいる?」

 倉庫のドアを開けて中に入ると、留美の声に気がついた耕治くんが振り向いてこっちに来てくれた。

 「おはよう留美さん」

 あ〜ん、その笑顔に思わず留美の顔は緩んじゃう、えへへ。

 「おはよう耕治くん♪」

 そう言って耕治くんの胸に飛び込むと留美をいつもの様に優しくしっかりと抱きしめてくれる。

 ちゅっ。

 そしておはようのキス!

 さっきまでのイヤな気分はすっかり無くなって幸せな気持ちに心が暖かくなった。

 「ん、どうしたの留美さん、何かあったの?」

 「えっ、何で分かっちゃうの?」

 留美の髪を優しく撫でながら微笑んでくれる。

 「だって、俺の顔見た瞬間ほっとした顔してたから」

 「ありがとう、でももう大丈夫だよ♪」

 耕治くんて本当に留美の事よく見てると分かっちゃう、それってすっごく嬉しいよぉ〜!

 だからもう一回キスしちゃう。

 ちゅっ。

 「えへへ、大好きだよ耕治くん!」

 「俺も好きですよ、留美さん」

 そう、この笑顔は留美だけの物なんだから絶対に渡さないんだから〜!






 二人でフロアに戻ってくるとそれを見たあずささんが耕治くんの顔をじっと見つめた、すると・・・。

 「ちょっと前田君!? その口紅はなんなのよ〜!!」

 あずささんが耳まで真っ赤になって指を差して叫んでいる、ふふ〜んだ。

 「あ、ふき取るの忘れてた」

 耕治くんは言われてから手で擦り落とした。

 「ごめんね耕治くん、言うの忘れちゃった、えへっ」

 「ううん、気にしてないよ」

 耕治くんは取って置きの笑顔で留美の事見つめてくれる。

 でもね、それは留美からみんなに向かってのメッセージだったから、ごめんね耕治くん♪

 そしてあずささんの顔を見ながら、留美は耕治くんの腕に抱きついて言ってしまうの。





 「だって・・・耕治くんは留美の恋人なんだから〜!」






 終わり。







 どうも、じろ〜です。
 本当に短い話ですが、るみるみの日常のほんの一時を書いてみました。
 でも、じろ〜の本命はあずさなんだけどなぁ・・・。
 まあ、可愛いから許すと言うことで〜♪
 それでは。



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