「起こらないから奇跡って言うんです」


二人とも笑みを浮かべていた


「嘘つきですよね、私……」


「……ああ」


頬には涙が伝わっていた


「……祐一……さん」


「……嘘つきには、お仕置きだ」






久しぶりの口づけはしょっぱかった



そして



甘かった





  The happiness of the name, the daily life






桜は散り、季節は暑い夏を迎えようとしていた
栞は日々をあの一週間と同じように、元気に過ごしている
いや、二つ変わったところがある
一つはよく泣くようになったことだ
出会った頃は様々な心の枷から泣くという感情表現を意識的に抑えていた
しかし、病気を克服し、枷から解き放たれた栞は、嬉しいときにはいつものように明るく笑い
悲しいときには涙を流すようになった
あのときは大変だったな……前の日曜日のことを思い出し、苦笑した
朝、些細なことで頭を打ち、大事をとって病院で検査してもらった
幸いにも怪我は大したことはなく、今日一日安静にしているようにとのことだったが
念のために包帯を頭に巻いて出ると外に出ると、泣きじゃくりながら抱きついてきた栞と
少しあきれたような視線を送ってきた香里が待っていた
曰く、ちょうど家の前にいたタクシーに飛び乗り、場所を告げると
この病院に着くまでの約10分間、泣きっぱなしだった。とのことだ
少し驚いたが、栞がそこまでおれのことを考えてくれたかと思うと
小恥ずかしくて………嬉しかった


そしてもう一つは……


もう、あの時のように、時間に追われて過ごす必要はないということだ




ふと気がつくと、栞と目があった
栞は不思議そうな顔で、おれを見つめてる
そんな顔を見ていると、ある一つの思いにとらわれ、栞を抱き寄せた
「…どっ、どうしたんですか、祐一さん」
かすかに見えるうなじのあたりは、赤く染まっていた
おれはそれを見て、耳元に口を近づけた
「栞……好きだよ……」
栞の頬がさらに朱に染まる
「……いきなりそんな事いう人は……」
「嫌いかい?」
栞は心持ち顔を横に振り、続けた




「……大好きです」




祐一には、この態勢では見えないはずの栞の笑顔が、見えたような気がした





Fin...





 後書き

  はじめまして、これが初小説となりましたpitfallと申します
  タイトルの「The happiness of the name, the daily life」、やけに長い名前ですが
  訳「日常という名の幸せ」という意味です
  栞にとっては「平穏な日常」というのが現実ではないので、それを取り戻した幸せ。という意味でつけました
  これからも、どこかで見かけると思いますが、その時はよろしくお願いします
  感想、訂正、、リクエスト、罵声等々はこちらで受け付けています
  次回作の糧としますので、是非お寄せください




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