Kanon 電波的 Short Story






 天使たちの集う場所♪






 第三話「強襲!腹黒い三人組」






 よう! みんな元気か?

 俺だ、水瀬祐一だ・・・ちょっと財布が軽くなってしまったが俺も元気だ。

 結局、美人で可愛い妻たちと保健室で騒いでいる内に入学式が終わってしまった。

 まあ済んだことは仕方がないので先に進むしかないだろう。

 「了承」

 へっ? 何か秋子おかあさんの声が聞こえた気がするんだけど・・・まいっか。






 「あ〜みんな席に着いたな? 俺が担任の北川だ、よろしく!」

 「あ、お父さんに毎回やられているおじさんだよ〜」と小雪。

 「うん、いつもパパに負けているおじさんだよね」となゆ。

 「はえ〜学校の先生だったんですね〜」と佐緒理。

 「・・・馬鹿?」と命。

 「何でこんな奴が先生でしかも担任なのよ?」と香。

 「こんな変なおじさんが担任なんてとっても嫌です」と志穂。

 「世の中不条理ですね」と真美。

 「あう〜あたしあれ嫌〜!」と美琴。

 と、まあ素直な天使たちはハッキリと本音を言ってしまった。

 「おまえたち! 俺は先生なんだぞ? なんだその言いぐさは!?」

 さすがにこんな言われ方をされた北川も頭に来てしまった・・・大人げないなぁ。

 実際、犯罪すれすれの行為で祐一を襲っては返り討ちに合う所を娘たちはしっかり見ていたのである。

 ・・・ん? よく考えなくても人を襲うって犯罪だとみんなも思うだろう。

 「まあまあ先生、いちいち生徒の言うことに腹を立ててもしょうがないと思うんだけど?」

 「なに・・・っておまえ相沢? なんで生徒に混じっているんだ!?」

 「えっ? ああ、俺は別人ですよ、誤解しないでくださいよ先生?」

 「むむっ・・・しかしそれにしてもここまであいつとそっくりとは?」

 「それよりも先生、先に進めて貰いたいんですけど?」

 「おお、すまん・・・おまえを見ていたらつい昔のことを思い出してしまったよ、はっはっは」

 「本当に変な先生が担任になっちゃったよ・・・」

 なんだかんだ言って自分も本音を喋ってしまったのは、折原浩一だった。

 そして自己紹介が始まる中、水瀬家の天使たちの視線は浩一に釘付けだった。

 「それじゃ次は・・・お、おまえか?」

 椅子を引いて立ち上がった浩一は自己紹介を始めた。

 「どうも、折原浩一です。このクラスの水瀬さんたちのお父さんにそっくりですが

 別人なので間違えないように!」

 クラスメイトたちが笑う中水瀬家の天使たちは呟いた。

 「お父さんだよ、お父さんにそっくりだよ!」と小雪。

 「うぐぅ、祐一パパがここにもいる!?」となゆ。

 「はえ〜お父様とお勉強出来るみたいで嬉しいです〜」と佐緒理。

 「祐一パパと一緒・・・」と命。

 「学校でもあの顔見なきゃならないなんて最悪だわ」と香。

 「そんな事言うお姉ちゃん嫌いです」と志穂。

 「文句を言っても仕方がないですね・・・」と真美。

 「あう〜どっちが本物なのよ〜!?」と美琴。

 「だーっ、言っている側から誤解してるんじゃないっ!」

 水瀬家の天使たちのお陰で更に教室が笑いに包まれている中で、北川は密かにほくそ笑んでいた。

 「くっくっくっ、まるで高校の頃に戻ったようだな・・・これならあいつに奪われた俺の青春も・・・」

 どうやら北川は、教壇にある机の影でニヤリとしながら危ないことを想像しているらしい・・・。

 このままでは水瀬家の天使たちに暗黒の魔の手が!?

 どうする我らが祐一!?






 ちょうどその頃、俺は父兄の待合室を抜け出し自動販売機でカフェオレのパックを買って飲もうとしていた。

 ピキ〜ン!

 「むっ? これは・・・俺の美人で綺麗でしかも可愛い娘たちに危険が迫っている!」

 ず〜っと一気に飲み干して俺は娘たちの教室にと疾風のごとく階段を駆け上がっていった。

 「この邪悪な波動・・・確かどこかで感じたことがあるぞ」

 ま、まさか!?

 「あいつがここに居るというのか!?」

 油断大敵火事親父・・・何か違うがそんなことはどうでもいい!

 「させるかーっ、北川!」

 しかし、目指す教室まで後一歩という所で俺の前に立ちはだかる黒い影があった。

 「廊下を走るなんて全然貴様は変わっていないようだな? 旧姓相沢!」

 「お、おまえはっ、久瀬!?」

 「ふっふっふ、・・・この日が来るのを首を長くして待っていたよ」

 「なんだと?」

 久瀬は触覚のように伸ばした髭を撫でながら俺をにやにやして見下ろしている。

 「貴様に佐祐理さんを奪われて十数年・・・やっと復讐のチャンスが回ってきたのだ!」

 なんて事だ! まさかこの学校にこいつらが居るとは!?

 「どうやら俺たちのもくろみ通り母親そっくりの娘に成長したようだな・・・ふっふっふっ」

 「俺たちだと?」

 「そうだ、俺たち三人・・・忘れたとは言わせんぞ、旧姓相沢!」

 「久瀬、北川、それに・・・あれ? 後一人は誰だっけ?」

 「くっ・・・きさまはアホか? 最後の一人はっ・・・むうっ?」

 お互い無言のまま暫くその場に佇んでしまった・・・くそっ、無駄な時間だ!

 「おい・・・」

 「なんだ?」

 「おまえも忘れて居るんじゃないだろうな?」

 「そ、そんなことはないぞ! そうだ、彼の名前は・・・住井だっけ?」

 「同志久瀬! いい加減俺の名前を覚えろよな!」

 「誰だ?」

 突然、階段の下から声が聞こえたのでそっちを見ると・・・ジャージを着たハゲ親父が居た。

 「なんだこのハゲ親父は?」

 「相変わらずふざけたその態度・・・貴様が忘れても俺は忘れん!」

 「だから誰だよ、おまえ?」

 俺は本当に解らなかったのでまじめな顔で聞いてしまった。

 「元クラスメイトで水瀬名雪ファンクラブ名誉会長兼会員番号一番の・・・斉藤だ!」

 「・・・居たっけそんな奴?」

 「きさまっ・・・おろっ? うおっ? ・・・ああぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ・・・・・・。

 俺に近づこうとして一歩踏み出そうとしたとき足下を滑らせて階段を元気良く転げて落ちていった。

 なんだかしらんが勝手に退場してくれた・・・あばよ住井。

 「貴様! 良くも我が同志をやってくれたな?」

 「はぁ? 勝手に自分で自爆しただけじゃないか? 俺の所為じゃねぇっての!」

 俺は久瀬の隙を伺いつつじりじり間を取っていた。

 「ふっ・・・もはや問答無用と言うわけだな、面白い・・・ならばっ!」

 ジャージ姿の久瀬は何やら構えを取りぶつぶつと唱え始めた。

 「くっくっくっ、今日が貴様の命日にしてくれるわっ!」

 ぼくぅ!

 「ぺぎゅるっ!」

 俺の拳が久瀬の顔にめり込んだ瞬間、変な叫び声共に盛大に鼻血を吹き出して崩れ落ちた。

 「漫画じゃあるまいし呪文の途中で攻撃されないと思ってんのか?」

 取り敢えずこのままじゃみんなの邪魔だから、近くのトイレまで引きずってそこにある用具入れの中に

 放り込んでつっかえ棒で扉が開かないようにしてやった。

 「ふぅ・・・時間を取られたな、急がないと!」

 俺は残りの一人を片づけるために教室へと急いだ・・・たのむ、間に合ってくれ!






 そして教室では・・・北川が笑い者になっていた。

 「え〜い、笑うんじゃな〜い!」

 ばんばんと机を叩いて抗議しているが、水瀬家の天使たちによる話は止まらなかった。

 「いっつもいっつも『相沢、天誅!』とか言って飛び出してくるんだよ〜」と、困った顔で小雪がぼやく。

 「そうそう、そのくせいっつも『ほげ〜』とか言ってお空に飛んでいくんだよ」と、なゆが可笑しそうに言う。

 「あはは〜、でも毎日朝からご近所に迷惑ですよね〜」と、ニコニコしながら佐緒理が笑う。

 「・・・変態」と、母親譲りの口調でさくっと言う命。

 「うちの父よりおかしいから、ほんと始末に負えないわよ」と、香が頬杖ついて呟く。

 「迷惑ばかりの先生なんて本当に大嫌いです」と、ポケットから出したアイスを食べながら志穂は告げる。

 「常識知らずもそこまで行くと手の施しようがないです」と、目を逸らしながらため息混じりで真美が言い切る。

 「あう〜あきらめが悪すぎてかっこ悪い〜」と、あっかんべ〜をする美琴。

 そしてさっきよりも大きな笑い声で教室全体が揺れていた。

 「お、お、おまえらは〜・・・」

 いくら何でもここまで言われたら大人の北川と言えど、堪忍袋の尾はぶち切れるまで後わずかだった。

 がらっ!

 「みんな大丈夫か!?」

 「おまえら全員しばいたる〜!!」

 俺が教室のドアを開けて中に入った時、そう叫んで口から涎をこぼしながら水瀬家の天使たちに襲いかかっていく

 北川だった・・・が、だがしかし!

 「志穂」

 「はい、香お姉ちゃん」

 返事をしながら志穂はポケットからだした瓶を香に渡すと、それの蓋を開けて北川の大きく開いた口の中に

 香は思いっきり投げ込んだ。

 がぽん!

 「ぐぼっ!?」

 瞬間、北川の体が硬直したと思ったら顔の色が青から赤にそしてまた青に戻ってそのまま床に倒れたかと

 思ったら、手足をばたばたとめちゃくちゃに動かしていたがやがてぴくぴくと痙攣して動かなくなった。

 さすが秋子おかあさんの謎ジャム、あの頃よりさらにパワーアップしているな・・・ぞぞっ。

 し〜ん。

 静かになった教室の中でだれ一人動こうとしなかったが、命が立ち上がると白目をむいて口から泡をこぼしている

 北川の足を掴んで持ち上げると、そのまま教室の窓を開けて放り投げた。

 「命〜ゴミはくずかごにですよ〜」

 「はちみつクマさん」

 そのセリフに俺を含めたクラスの全員ががたがたと転けた。

 さすが俺の天使たち・・・最強だな、ふふん♪

 「さすが祐一さんの娘ですね? 感動しちゃいました! いや、惚れちゃったかな〜♪」

 いつの間にか俺の隣には俺そっくりの浩一が腕を組んで笑っていた。

 「むぅ・・・浩一君、言っても良いかな?」

 「はい、何ですか?」

 「がんばった者には幸せが来るぞ、人生の先輩からのアドバイスだ」

 「えっとこう言う場合は・・・『了承』で良いんですよね?」

 「うむっ」






 どうやら天使たちの相手が見つかったかな・・・?






 「さて、そろそろ戻らないとあいつらが騒ぐから行くとするか・・・」






 案の定、戻った俺を待っていたのは妻たちのジト目だった、しかも秋子おかあさんまで・・・なぜ?

 「了承は私のセリフですよ、祐一さん」

 うぐぅ。






 つづく。







 電かの第三話、予告と違っても仕方がないです。

 だって電波だもん、くすくす。

 あっちこっちから妖しい電波が飛んでくるんですけど家のアンテナ壊れちゃって(笑)

 さあ、次はどんなお話になるのか? 楽しいなぁ〜♪

 一応予告としては、浩一の優しさに素直になれない香が北川の罠にはまってしまう。

 香がピンチの時、浩一は?

 次回、電かの第四話「瞬間、心重ねて」


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