今日の香里さん11 〜 「香里の回想」

Written by shoe32


「はあ…」

私は気だるい頭と体を何とか起こそうとしたんだけど、

「ふう」

思わずため息を付いてしまった。

「さすがに深夜を越えて早朝近くまでだと睡眠時間は少なくなっちゃうのよね……」

誰に言うわけでもないが、そうつぶやく。
そして横を見て、幸せそうな顔で寝ている祐一の寝顔を目にする。

「まったく、幸せそうな顔で眠っちゃって」

私はそう言って祐一の頬をつつく。でも私の愛する祐一の神経はかなり図太くて、
こうしても気にもとめずにそのまま眠り続けるのよね。
うん、これはいつものこと。だから私もいつものごとく意地悪を続ける。

「ふふふっ。ほらほら」

ぷにぷにぷにぷに

「う、う〜ん、香里……」

「昨日私を寝かさなかった罰よ〜」

ぷにぷにぷにぷにぷに

「香里〜、悪かったからやめてくれ〜」

ふふふっ。寝言でこんな事が言えるのは祐一ぐらいかしら。もしかしたら、夜中、
私に意地悪したのを夢の中で謝っているのかもしれないわ。
……そうよね、よく考えたら焦らしてあんなに私に恥ずかしい思いをさせたのに
幸せそうな顔で眠られると腹が立つわね。だから私がこのぐらい意地悪しても
許されると思わない?

そんなことを考えてると、突然静かになった祐一が

「香里、愛してる……」

と呟いた。
……まったく、寝言でこんな事言うから……起きたとき何にも言えないんじゃない。

私は何となく幸せな気持ちになり、状況を振り返る。そういえば朝食を作ろうと
思ってたのよね。そろそろ起きなくちゃ。

そう思い、布団から出るために掛け布団をどかす。

「あ……」

胸のあたりを見ると、キスマークが残っているのが見て取れた。

「これって結構長い時間残るのよね……」

私はそうつぶやき、ある最近の出来事を思い出した。


あれは栞、名雪、祐一に私の四人で温泉旅行に行ったときの事。
気を利かせたのか、部屋割りは栞と名雪、祐一と私になっていたんだけど、今思えば
それが全ての間違いだったんだわ。


「だ、だめよ。隣には栞と名雪が寝てるのよ。壁だって薄そうだし」

「大丈夫だ。栞はともかく、名雪が起きてるはずはないからな」

「栞だけでも起きてたら意味ないじゃな……うん…」

強引に口づけをしてくる祐一。こんなに激しくされたら私だって拒めなかったわよ。
私は祐一を抱きしめ、キスが終わると彼の耳元で告げた。

「もし気づかれたら、お仕置きだからね」

「うっ、分かった」


このあと、二人は裸で抱き合って眠ったわ。
一応その時は気づかれずに済んだんだけど……次の日の朝、私がせっかくだからと
温泉にゆっくり浸かっていたら、偶然栞が入ってきたのよね。


「あっ、お姉ちゃんも朝風呂ですか。やっぱり温泉にきたんですから、いっぱい
 入らないと損ですよね」

「やっぱり姉妹ね。考えることは同じだわ」

「お姉ちゃんと同じなんて嬉しいです」

栞はとても嬉しそうにそういったのよね。
それが、まるで夢が実現したようなくらいの嬉しそうな顔だったから、私は
なんとなく照れくさくなってしまった。

「まったく、そんな子供みたいなこと言ってないの。それじゃ私は先に出るからね」

ざばっ

「あっ、今入ってきたばっかりなのに……もうちょっといようよ〜」

栞の訴えを無視して浴槽を離れ、栞に近づき、

「じゃ、お先に」

そう声をかけてすれ違おうとしたその瞬間。

「……あれ? お姉ちゃん、胸の所が赤くなってるけど大丈夫? いっぱいあるみたい
 だけど」

こんな時の栞は妙に鋭い。でも本人は何にも分からないでいってるから対処に困る
のよね。この時はさすがの私もあわててしまったわ。

「な、何でも無いわよ」

そういって即座に栞に背を向けたが、それも仇となった。

「でも首筋にもあるみたいだよ?」

「な、何でもないって言ってるでしょ!」

「でも………あ」

そう。私の健闘もむなしく栞は気づいてしまった。

「そ、それってもしかしてキスマーク……?」

「……」

そのとき、私は頭に血が上って顔が赤くなるのがわかったわよ。
私は恥ずかしくなって無言で出ていこうとしたんだけど、

「あ、おねえちゃん〜、無視しないで〜。おいてかないでよ〜」

「……」

「待ってよ〜」

「……」

「一緒に入ろうよ〜」

「……」

「う〜……お姉ちゃんのH…」

「……う」

「お姉ちゃんのH!」

「う、わ、わかったわよ! だから大声でそんなこと叫ばないでよ!」

こんな感じで栞がうるさくて、結局白状しちゃったのよね。


あのときは参ったわ。一応消えてるのを確認して温泉にきたんだけど、湯船に
浸かって体が暖まったらまた出てくるとは思ってもみなかったわ。しかもくっきり
浮かび上がってたみたいで……すっごく恥ずかしかったのよね。

……ふふふふ、もちろんそのあと冷静になった私が口止めをしないはずないわね。
あんなことも言われたし。ふふふふ……。


最後はちょっと危ないけど、一連の事件の記憶が終了したところで私はまた思い出す。

「いけない、朝食作らなくちゃいけないんだったわね。早く起きましょ」

私は今度こそ布団の中から出る。ううう、ちょっと寒い。

そうそう、まだ朝の日課がまだだったわね。

「おはよう、祐一」

私はまだ今も眠っている祐一の頬に口づける。こうして、私の一日は動き出す。


あ、そうそう。栞にばれたあと祐一にお仕置きしたかどうかは秘密ね。
それと、栞にどうやって口止めしたかも秘密にしときましょうか。


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