To Heart Short Story






 
突撃LOVE☆HEART






 Presented by じろ〜






 そわそわ。

 私は自分でも落ち着かなかった。

 先月はバレンタインで不器用ながらも悪戦苦闘の末、なんとかあいつにチョコを渡せた。

 「手作りだなんて、がんばったんだなぁ♪」

 絆創膏に巻かれた私の手をそっと握ると、撫でながらそう言ってくれた。

 ちゃんと私のことを見てくれている、それが本当に嬉しい。

 普段はぶっきらぼうなくせに意外に優しいところを見せる。

 「おし、来月のホワイトデーは期待して良いぞ」

 な〜んて言いながら似合わないウィンクしてくれちゃって、くすっ。

 でも、本当に期待しちゃって居る自分がちょっとだけ恥ずかしい。

 あ〜あ、この綾香様がど〜してあんなのに惚れてしまったのか?

 ふぅ、でもしょうがないかぁ〜。

 だって本当に好きだから・・・、ね♪






 授業の終了チャイムが鳴ると、鞄を掴んでどきどきしている胸を押さえつつ昇降口に向かう。

 靴を履き替えて外に出ると自然に口元からメロディがこぼれる。

 おまけにスキップなんて踏んでしまう・・・ううっ、浮かれているなぁ〜私。

 自然と早足になるのも仕方がない、今日は約束のホワイトデー♪

 あいつが何をくれるのか、指折り数えて待っちゃったわよ。

 まあ、そんなに大した物期待している訳じゃ無いんだけどね。

 要は気持ちがこもっているかどうかが一番大切なんだし、でもひょっとして結構良い物だったらどうしよう?

 えへへ〜♪

 はっ、いけないいけない、来栖川綾香と在ろう者が道の真ん中でにやけてしまうとは!

 ん、んんっ。

 軽く深呼吸、す〜は〜す〜は〜・・・よし。

 「さあ浩之、ど〜んときなさい♪」

 あいつの学校まで後少しだった。






 校門のところに立って浩之が出てくるのを待つ。

 帰りがけの生徒達が私をちらっと見ながら過ぎていく。

 寺女の制服とこの類い希なる美少女がそんなに珍しいのかしら?

 でもダメよ、そんなに見つめて良いのは浩之だけよ。

 ちょっとだけ視線を気にしながらも、塀に寄りかかって待っているとセバスが迎えに来た。

 浩之と顔を合わせると必ず言い合っているけど、以外にウマが合うのかも知れない。

 「これは綾香お嬢様、いかがなされました?」

 「うん? ちょっとね♪」

 はははと笑いながらあっちの方を向いて適当にごまかす。

 が、横目でちらっと見るとセバスがわざとらしくため息付いている。

 ばればれだけどまあいいか〜♪

 「綾香お嬢様、物好きも程々になさいましたほうがよろしいと思いますが」

 「いいのよ、それとも姉さんに手を出されても良いの?」

 「な、なんですと!? あの小僧・・・やはり芹香お嬢様に、むぅ〜」

 あ、この言い方はまずかったかしら? ごめんね浩之、骨は拾ってあげるから。






 まだ出てこないかなぁ〜なんて校門の陰から中を覗き込むと、漸く浩之がやってきた。

 むっ、一人じゃない・・・しかもその隣には姉さんがいる。

 「よう、綾香じゃねーか、どうしたんだこんな所で?」

 私に気が付いた浩之は普段と変わらずに声を掛ける。

 「ん、ちょっとね・・・」

 答えつつ姉さんを見ると、何やら頬が赤く染まっている。

 よく見ると大事そうに小さな袋を握りしめている、まさかそれって?

 「じゃあな先輩、また明日」

 「・・・・・・」

 「えっ、ありがとうございますって・・・そんな大した者じゃないけどな」

 「・・・・・・」

 「大切に取っておくって、あ・・・まあ食べ物だから早めに食べてね」

 「・・・・・・」

 「おう、またなー」

 「小僧、いつまで話しておる、しっしっ」

 「こらじじい! 俺は犬じゃねえぞ」

 「かぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 「つぅ・・・毎回毎回馬鹿でかい声だすんじゃんえよ!」

 ちょっとセバス、私が居ること忘れているんじゃないでしょうね?

 あ〜まだ耳がき〜んっていっている。

 わめいている浩之を無視して姉さんを車の中に乗せると、すぐに走り出した。

 浩之が手を振って見送ると、車の中から姉さんも小さく手を振り替えして見ていた。

 なんか・・・なんかいい雰囲気・・・むむっ。

 姉さんも潤んだ瞳でじーっと浩之の事見つめていた・・・あれはやっぱり恋する乙女の顔だわ。

 全く・・・私の知らない所で何人の女の子に手を出しているの、浩之?

 少しムカついたので、何時までも手を振っている浩之の背中に軽くパンチをたたき込んだ。






 「綾香〜おまえなぁ・・・」

 「ふん、浩之がいけないんでしょ!」

 ついつい良いところに入ってしまった私の拳。

 背中をさすりながら浩之の目がちょっと涙目になっている。

 「何怒っているんだ?」

 「自分の胸に聞いてみなさい」

 「う〜ん・・・」

 首を捻って真剣に考えている浩之を見て思った。

 どうやら本当に気が付いていないみたい、もしかして鈍いだけ?

 意識してないでそれだけ女の子を気を引いているとしたら極悪だわ!

 「降参」

 両手を上げて降参のポーズを取る浩之をみて、思わず吹いてしまう。

 「くくっ、しょうがないわね、許して上げるわ」

 「ありがとうございます、綾香様」

 「広〜い心を持っている私に感謝しなさい」

 「あのな、自分で言うか? そんなこと・・・」

 あきれた顔にもなりながら、私の肩を掴むと自分の方に引き寄せた。

 立ち直りが早いのは言いトコなのかどうなのか・・・まあ、悪い気分じゃないけどね。

 私も浩之に体を預けると自然に笑顔が浮かんできた。






 「お待たせ」

 キッチンのテーブルに着いて待っている私の前に、ちょっと大きめのどんぶりが置かれた。

 「これがそうなの?」

 「おう、浩之特製『とろろぶっかけ御飯』だ、まあとにかく食べてくれ」

 「うん、いただきます♪」

 お箸を持つと、どんぶりを持ち上げてじっと見つめる。

 ホワイトデーのお返しがどんな物かと思っていたら、浩之ってば・・・。

 『やっぱり手作りには手作りで返そうかと思ってな、まあ座っててくれ』

 私を自宅に連れ込んでからキッチンに連れていくと頬を指でかきながら言った。

 どんな物が出てくるかと思ったら、意外な物にちょっとびっくりした。

 温かい御飯に醤油で味付けしたとろろが掛けてあって、その上にきざみ海苔がのっていた。

 見た目にもおいしそうな感じがしている。

 箸ですくって遠慮なく口に運ぶ・・・お、おいしい!

 もぐもぐ、ごっくん。

 「凄く美味しいわ、浩之」

 「そうか、そりゃ良かった・・・作った甲斐が有ったってもんだ」

 キッチンから浩之も、自分の分を持って椅子に座ると豪快に食べ始めた。

 私も負けじと、セバスが見たら驚きそうな食べっぷりで残りを食べ始めた。

 しかしホワイトデーに恋人と向き合ってとろろぶっかけ御飯を食べるのは私たちぐらいな者ね。

 ふふっ、でもありがとう浩之、とっても嬉しいわ!

 しばし言葉もなく食べることに集中したけど、なんかとっても幸せだった。

 食事がこんなにも楽しいと感じたのは久しぶりだわ。

 「ごちそうさま〜」

 御飯粒一つも残さず綺麗に平らげると、そっとどんぶりをテーブルに置く。

 「どういたしまして・・・ん? 綾香御飯粒が付いてるぞ」

 「え、どこどこ?」

 「ほら取ってやるよ・・・」

 体を乗り出して私の顔に手を伸ばすとそのまま私の首の後ろに手を掛けて引き寄せた。

 ちゅ。

 ああっ!?

 「上唇に付いてたぜ」

 「ば、ばかっ」

 もうイキナリなんて事するのよ!

 しっかし本当に御飯粒が付いていたのかしら?

 今となっては解らないけど・・・でも、嫌じゃなかったからいいかなぁ。






 その後、浩之の家で何となくいちゃいちゃしていたらあっという間に時間が過ぎていった。

 すっかり日も暮れた夜道を浩之と一緒に歩いている。

 迎えを呼ぶからと言ったのに、わざわざ送ってくれた。

 実は私ももうちょっとだけ浩之といたかったから、素直にありがたく受けることにした。

 何となくお互いに話さなかったけど、しっかりと握った手から浩之の温もりが伝わっていた。

 誰もいない月明かりの中、私と浩之の影が一つになって地面に写る。

 こんな時間もなんだかいい、少し神秘的な感じが素敵かな。

 そんな時間もとうとう終わってしまう・・・自分の家に着いてしまった。

 「ありがとう浩之、今日は凄く楽しかった」

 「そっか、ならよかった」

 「じゃあまた明日・・・お休みなさい」

 「おう、またな」

 そう言って私を抱きしめると顔を近づけてくる、私も目を閉じる。

 ちょっとだけ長い、お休みの挨拶のキス・・・。

 「そのまま、少しだけ目を閉じていてくれると嬉しいんだけどいいかな?」

 「・・・うん、いいわよ」

 ごそごそと何かをしている音が聞こえる。

 ここまで来て雰囲気ぶち壊すようなコトしたら、さすがの私も切れちゃうわよ。

 私の手を取ると何かを付けようとしている・・・も、もしかして!?

 指にひんやりした感触が、私が予想した物が間違っていないと教えてくれる。

 「いいか、まだ目を開けるなよ、少なくても後十秒な?」

 「はいはい」

 「じゃあな、お休み綾香」

 ちゅ。

 もう一回軽く唇が触れるだけのキスをすると、浩之が走り出した足音が聞こえた。

 律儀にも、でも胸がどきどきしながらゆっくりと10秒数えた。

 瞼をゆっくりと開くと自分の手を目の前にかざす。

 月に照らされた小さな物が銀色に輝く、そしてしっかりとその手を包み込むように胸に抱きしめる。

 小さくなった浩之の後ろ姿を見つめると不意に目頭が熱くなった。

 「もう、浩之のくせに似合わないことしちゃってさ・・・」

 こぼれそうになった涙を乱暴に拭うと、大きな声で思いっきり叫んだ。






 「大好きよ、浩之!」






 と、いきなり浩之がこけた。

 ちゃんとお笑いな所も見せてくれる奴、あはは〜♪

 ありがとう浩之、最高のホワイトデーだったわ。

 お休みなさい、浩之。

 また明日♪






 終わり。




 じろ〜です。

 ホワイトデーにちなんで書きました綾香SSです。

 バレンタインデーSSじゃなくてホワイトデーSSとは(笑)

 でも、久しぶりに一気に書いたSSです。

 自分でも気に入っています、どうでしょうか?

 ではでは。


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