Kanon SS ♯1
Written by OCT7

『追跡! 謎ジャムの行方は!?』





「はぁぁ、今日も寒いな。」
「相沢君。あなたいつもそれ言ってるわよ。」
「そうだよ。今日は暖かい方だよ。」

とある冬の日。
いつも通り、なにげない会話を交わしながら下校する3人の姿があった。
それは、なんて事のない平和な日常。
しかし、そんな物を一気に吹き飛ばすものがこの世には存在する。

「あっ、お母さんだ。」
「ああ、秋子さんだな。」
「どこかに出かけるみたいね。」
「うん、買い物・・・だね。」
「右手に買い物用のかごを下げてるからな・・・」
「ええ、右手にね・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

会話が止まる。
何故か3人とも、秋子の左手に抱えているものについて喋ろうとしない。
3人とも額には冷や汗が・・・
やがて、お互いが意を決したように頷きあうと、黙っ秋子の後をつけていった。



とりあえず、何事もなく商店街にやってくる。
秋子は、最初にスーパーの中に入って行った。

「祐一、どうする?」

名雪が祐一に意見を求める。

「普通の買い物だろ。」

祐一はそう言って香里の方を見る。

「じゃあ、秋子さんが持ってたあの左手の物体は?」

しばしの沈黙。

「俺達も入るぞ。」

結局、祐一達もスーパーの中まで尾行する事にした。



そして、しばらくした後、秋子と、それに尾ける3人は、スーパーから出て来た。

「今日はお鍋みたいだね。」
「まぁ、おそらくそうだな。」
「あの食材ならね。」
「食べられるものばっかりだったよ。」
「ああ、鍋は食べられるものしか入れないからな。」
「お鍋はね。」

結局、納得のいく結論を得られなかったので、3人はまだどこか行く様子の秋子を尾ける事にした。



「・・・花屋に入って行ったね。」
「も、もしやここで材料のマリファナを!!」
「有り得そうで恐いわね。」
「そんなの花屋に売ってないよ〜」
「冗談だ。」
「家に飾る花でも買ってるんじゃない?」

3人が喋っているうちに、秋子が店から出てくる。

「わっ、たくさんのお花。」
「あれ全部家に飾るのか?」
「そうじゃないの?」
「うち、そんなに花瓶なかったと思うよ。」
「に、庭にでも埋めるんじゃないか?」
「・・・雪でいっぱいの庭に?」

沸き上がる不安を胸に、また秋子を尾けていく。



「・・・・・・・・・」
「・・・なんで薬局なんだ?」
「・・・誰か風邪でもひいてるんじゃないの?」
「・・・あゆちゃんも真琴ちゃんも元気だよ。」
「・・・・・・・・・」
「・・・じゃあね、お二人さん。」
「わわっ、いきなり帰らないでよ〜」
「そうだ、ここで帰ったら薄情だぞ。」
「私、これ以上首をつっこんで死にたくないから。」

そう言って、香里は去って行った。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

二人は、去って行く香里の姿を、ただ見ているしかなかった。



結局、秋子は薬局を出た後は、どこに寄る事もなかった。
そして、夕食の時間を迎えたが、出て来たのは予想通りの鍋で、至って普通の夕食だった。



夕食後。

「おいしかったね。」
「ああ、秋子さんの作るものはなんだってうまい。」
「なんでも?」
「・・・・・・・・・」

名雪のその一言によって、夕食後の幸せが一気にふっとび、夕方のおぞましい記憶が蘇る。

「そういえば名雪、今日秋子さんが買ってた例の花、どこかで見たか?」
「ううん、見てないよ。」
「・・・みんな元気に鍋をつついてたよな。」
「うん。」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

もはや、二人の頭を覆っていた不安は恐怖に変わっていた。



次の日の朝。

「おはようございます、祐一さん。」

起きて来た祐一に、いつものように笑顔で挨拶をしてくる秋子。

「おはようございます、秋子さん。」
「おはよう、お母さん。」

祐一に続いて起きて来た名雪も、祐一に続いて秋子に挨拶をする。

「あら、今日は珍しく早いのね。」
「珍しくじゃないよ〜」

不満そうに名雪が言う。

「そうそう、今日はとっておきの物があるの。」

突然切り出した秋子のその言葉に、祐一と名雪は真っ青になる。

「座って待って・・・」
「あ、俺、今日は食欲ないんで朝食は遠慮します。」
「私、突然朝練が入っちゃったから、お母さん、もう行くね〜」

慌てて秋子の言葉を遮り、祐一と名雪はそう断る。

「えっ? ふたりとも朝ご飯いいの?」

そんな祐一と名雪を見て、既に席についていたあゆが意外そうに言う。

「ああ。俺は死よりは空腹がいいからな。」
「あゆちゃん、骨は埋めてあげるから〜」

そう言い残し、祐一と名雪は家を出て行った。

「えっ? えっ?」

何がなんだかよくわからないあゆだったが、過去、似たような事があったように思い、嫌な予感がする。
そこで、秋子が左手に例の物体を抱えて食卓に戻って来た。


ガタン!!


その左手の物体を見たあゆは、即座に直立する。

「ごちそうさまでした〜」

そう言ってダダダッと家を出て行った。



「名雪、もっとましな言い訳はなかったのか?」
「いきなりだったから、しょうがなかったんだよ〜」

家を出て来た祐一と名雪は、玄関の前で立ち止まっていた。

「しかし、昨日の今日でいきなり出てくるとは・・・」
「あゆちゃん、大丈夫かな。」
「それは見捨てて来た奴の言う台詞じゃないな。」
「う〜」

名雪は返す言葉がなくなる。
すると、玄関からすごい勢いであゆが飛び出して来た。

「おっと。」

自分に向かって突っ込んでくるあゆに、祐一はひょいとよける。


ばち〜ん!!


そのままあゆは門に激突した。

「うぐぅ、痛いよ〜」
「大丈夫か?」
「祐一君が避けた〜!」
「痛いのは嫌だからな。」
「祐一君が逃げた〜!」
「死ぬのは嫌だったからな。」
「あゆちゃん、大丈夫だった?」
「名雪さんも逃げた〜!」

えぐえぐと涙を浮かべながらあゆが立ち上がる。

「それで、新謎ジャムの威力はどうだったんだ?」
「おいしかった?」
「名雪、それは死語だ。」

祐一と名雪があゆに感想を求める。

「うぐぅ、食べてないよぅ。慌てて逃げてきた。」
「なんだ、無事逃げて来たのか。残念だ。」
「うぐぅ、ひどいよ〜!!」

あゆが涙目で反論する。

「でも、結局、誰もあのジャムを食べないで済んだんだから、良かったね。」

名雪のその言葉にピタッと動きの止まるあゆ。

「えっと、ボクが逃げるちょっと前に真琴ちゃんが起きて来た。」
「えっ、そうなの?」
「じゃあ、あゆは真琴を置いて逃げてきたんだな?」
「うぐぅ、仕方がなかったんだよ〜」
「そうすると、真琴ちゃんは今、食卓に・・・」
「真琴って、あのジャムの事知ってたっけ?」

そこで会話が止まる。
そして、3人は家の中の食卓のあるだろう位置に、ゆらりと視線を向ける。



「あうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」



真琴の壮絶な断末魔の叫びが水瀬家半径1km以内に響き渡った。

「ついに、猛毒の域に達したか・・・」
「うぐぅ、逃げてきて良かった・・・」
「真琴ちゃん、安らかに眠ってね・・・」

3人は、いつ自分の身にその脅威が降りかかってくるかを恐れつつ、ゆっくりと学校への道へと歩み出した。



日に日にグレードアップする、正体不明の秋子特製ジャム。
その謎は誰にも解かれる事なく、その脅威の伝説は永遠に続く・・・



Fin


---------------------------------------------------

後書き


どうも、OCT7です。
初めてKanonのSSを書いてみました。
Kanon話題の秋子さんの謎ジャムをテーマに書いてみたんですが、なんか、名雪が壊れているような・・・
いや、話自体壊れてるかもしれませんねぇ。(^_^;)
ちなみにちょっとしたフォローを入れると、秋子さんは例のグレードアップした謎ジャムには、スーパーで買った材料しか使われてません。
花と薬は、秋子さんの知り合いのお見舞いに行く時に持って行くために買ったという設定です。
それで何故か猛毒化する謎ジャム、恐ろしいですね。(^_^;)

「追跡! 謎ジャムの行方は!?」を読んでいただいて、OCT7は大変感謝しております。
もし、感想等をメールで送ってもらえると嬉しい限りです。
それでは、またどこかで会いましょう。


戻る

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル